noside
ナナバルクの両舷から発たれたローエングリンの光条は、
壁の様に展開していたダガーの群れの中程を貫き、
基地の外縁部から伸びるカタパルトに直撃、
発進しようとしていたダガーを巻き込み、盛大な爆発を引き起こした。
「くっ・・・!?何が起きたの!?報告して!!」
自ら出撃しようと、カタパルト付近まで出向いていたスコール達は、
前方から巻き起こった爆煙に驚き、無線機に向けて声を張り上げた。
『か、艦砲による攻撃です!威力が高過ぎて誘爆が止まりません!!』
無線機からはノイズ混じりではあるが、
作業員の悲鳴、そして断続的な爆発音が聴こえてきた。
スコール達は、そこで自分の思慮の浅さを思い知った、
いくら戦争だとは言えども、相手は所詮学生や教員風情、
そこまで覚悟して攻撃を仕掛けて来ているとは思わなかったのだ。
試合や模擬戦のつもりでかかってくる相手には、
殺気を当ててやればそれでケリが着き、いたぶるなり殺すなりする事も出来たであろう。
だが、今の一撃で分かった、
相手は自分達を殲滅する心づもりだ、覚悟も装備も生半可なモノでは無い。
そうでなければ、これほどまでの威力の艦砲を撃ち込んでくる筈もない。
「やるわね、織斑一夏・・・!!そうでなければ、潰す価値もない物よ!!」
自らの仇敵の手口を見せられ、
彼女は寧ろ、喜びに打ち震えた。
向こうもこちらとの殺し合いを望んでいる、
ならば、こちらも全力を以て、殺しにかかるまで・・・。
sideout
side一夏
クックックッ・・・、流石は要塞制圧用の陽電子砲だ、
洒落にならん威力だな。
チャージに時間はかかるが、
その間に俺達が攻め入れば、効果的に事が進むぜ。
「突入する、セシリア、シャル、振り落とされるなよ!!」
「了解しましたわ!!」
「御手柔らかにね!!」
セシリアとシャルに警告を飛ばしてから、
俺はミーティアのスラスターを更に吹かす。
とてつもない加速に、身体全体が圧迫される様な感触を覚えるが、
それすらも俺を留まらせる要因にはなりはしない。
寧ろ、更に行け、更に行けと後押ししている様な錯覚すら覚える。
「な、なんて加速ですの・・・!?」
「身体が全部抉られちゃいそう!!」
セシリアとシャルも、あまりに強烈なGに声をあげるが、
寧ろ、愉しげな声が聞こえてくる。
振り落とされる事もなく、
このGを楽しんでみせるか、上等だ、それでこそ俺の翼だ。
前方に意識を戻して見れば、
三桁を軽く越える程のダガータイプの機体が展開している。
「攻撃開始!!」
「「了解!!」」
射程圏に入る直前にセシリアとシャルに指示を飛ばし、
ミーティアの全兵装を展開し、ロックオンカーソルを合わせる。
セシリアとシャルもミーティアから離れ、
全装備を展開、ダガータイプに照準を合わせる。
「お前達ごときを相手にしてやるほど、
俺達に余裕は無いんでね、殲滅させてもらおうか!」
俺の目的は違うところにあるんでね、
ある程度戦って、後はその目的の為だけに動くさ。
三人同時にトリガーを引くと、
20を越える光条と百を越えるミサイルが一斉に発射され、
前方に展開していたダガータイプの壁にごっそりと穴を穿った。
だが、流石に数が多いからか、
全体的に減ったという印象は受けない。
まぁいい、エネルギーは有り余っている、
メインディッシュまでの準備運動と思えば軽いな。
セシリアとシャルの元気も有り余っている、
ならば、獲物がわざわざ出てきてくれるのをここら辺で待つとするか。
「セシリア、シャル、派手に暴れろ!
敵が出てくるまでの余興といこうじゃないか!」
「フフッ、かしこまりましたわ、撃墜スコアで競うということですわね?」
「面白そうだね、賭け事みたいで僕は好きだよ!」
言い合いながらも、セシリアはドラグーンを乱舞させ、
シャルは圧倒的な火力を以て、ダガー達を次々に塵へと還していく。
さぁ、楽しめよ、この世の地獄をな!!
sideout
noside
一夏達、チームAがダガー軍団と会敵し、交戦状態に入った頃、
秋良を中心に組まれたチームBも戦闘に突入した。
「くっ!!今までより数が多い・・・!!」
ダガーの数に毒づきながらも、
秋良はシシオウブレードとウィングソーを振るい、
撃たれるビームや、迫りくるダガーを二枚に卸す。
その太刀に迷いは無く、
ただ斬るという強い念が宿っている。
「でも、やるしかないよね・・・!!」
秋良の周囲で射撃援護を行っていた簪は、
ライオットストライカーAより、プロトンライフル及び、プロトンランチャーを抜き取り、
正確な射撃でダガーのコアを撃ち抜き続けていた。
彼等とて、戦うべき時という事は理解している、
ならば、一切の迷いを心に封じ込め、目の前の敵と戦うという事に逃避したのである。
しかし、最初から迷いのない者は、
己が持てる全てを以て、敵と相対している。
「アタシの目的はオマエらじゃねぇからな、切り裂かせてもらうぜ!!」
ソードカラミティを駆るダリルは、シュベルトゲベールを右手に保持し、単機ダガーの群れの中心に躍り出る。
右腕のパンツァーアイゼンを射出、一機のダガーを捉え、
そのままハンマー投げの様に振り回し、周囲に展開したダガーと衝突させていく。
「おらおら!!アタシはこの程度じゃ倒せねぇぞ!!」
左手でマイダスメッサーを引き抜き、
衝突し、身動きが取れなくなっていた敵機に投擲、次々に爆散させていく。
格闘戦を挑んでくるダガーも、
シュベルトゲベールの一閃であっという間に切り裂き、次の敵を求め突き進んでいく。
その姿、正に戦鬼と呼ぶに相応し物であった。
「(ま、美味しい所は全部盟主に譲るさ、
アタシはアタシの出来る事をするだけだよな!!)」
彼女は敵の幹部を相手にするよりも、
盟主である一夏の戦いに水を指さない為に、
雑兵を可能な限り引き付ける役割に徹する事にした様だ。
この戦いはある意味で聖戦、
ならば、自分がその聖戦を汚す事は赦されない。
よって、彼女は敢えて囮という役を自ら被ることにしたのだ。
「(ま、せいぜい楽しませてくれよ、この聖戦をな。)」
sideout
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同時刻、チームCも同様にダガータイプとの戦闘に突入した。
一夏よりアタッカーを任されたナターシャを中心に、
デスティニーインパルス、レッドフレーム改、ドレッドノートの三機は、
ダガータイプに対して攻撃を開始する。
「はぁっ!!」
三機の中でも、デスティニーインパルスを駆るナターシャの気迫は凄まじい物があり、
二本のエクスカリバーで次々にダガーを行動不能に追い込んでいく。
それもその筈、デスティニーインパルスの前身、銀の福音は彼女が目指す標的に貶められた、
つまり、これは彼女にとっての仇討ちなのである。
「出てきなさい篠ノ之 束!!福音の怨み、晴らさせてもらうわよ!!」
「篠ノ之 束!私はお前を赦せない!!好き勝手に世界を乱した罪を、
今日、この場所で償わせてやる!!」
もう一人、篠ノ之 束に対して凄まじい嫌悪感、憎悪を抱く者がいた。
その人物とは、レッドフレーム改を駆る箒であった。
自分の事を理解せずに、ただの偽善を押し付ける束に対し、
彼女は憎しみをその胸の内に宿していた。
その感情は、振るわれるガーベラストレートに、
発たれるビームライフルの光条に込められ、次々にダガーを爆散させていく。
自らの手で、悪を断ち切るという想いが、
展開されたヴォワチュール・リュミエールの光と共に迸り、二機の羽根が蒼空をかける。
そんな二機にも、勿論死角と言うものは存在する、
そして、その角度から攻撃を仕掛けようとするダガーも、当然ながら存在する。
今、一機のダガーが背後からビームライフルを撃ち込もうと構える。
しかし、そのダガーは全く違う方向から発たれたビームに貫かれ、
四散しながらも盛大な爆発を引き起こした。
Xアストレイ形態のドレッドノートに追加兵装<フルアーマードラグーン>を装備した雅人が、
射出したドラグーンによるオールレンジ射撃を行ったのである。
20門を数える砲頭が、ナターシャと箒の死角から取りつこうとしたダガーを灰塵に還していく。
その火力は正に圧巻の一言に尽きる物であり、
取り付く島すら見当たらない。
「俺だって・・・、戦うべき敵は分かってる!!
大切な人を、アイツを護るために俺は戦う!!」
何かを振り切るように、彼はただ愚直に駆け抜ける。
正誤など、後々考えれば良い、
今はただ、己が敵と見定めたモノと戦えば良いのだと・・・。
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各チームがそれぞれ戦闘に突入した頃、
ナナバルク防衛の任を請けた三人は、
拠点に向け、六門装備されているゴッドフリート及び、ミサイル発射管を開き、
攻撃を開始した艦の周囲の索敵に務めていた。
まだ敵影は見当たらないが、
ローエングリンの威力を見せ付けた以上、
ナナバルクが攻略されるのは必然と言えるであろう。
「凰さん、ボーデヴィッヒさん、何処から敵が来るか分かりません、
気を付けてくださいね。」
追加兵装、アサルトシュラウドtypeGを装備したグリーンフレームを装備した真耶は、
回線を開き、同じく索敵を務める鈴とラウラとの通信を行う。
アサルトシュラウドtypeG。
アクタイオンにて用意された、グリーンフレーム専用の追加兵装である。
背面及び肩部にスラスターが増設され、
両腕部側面にはガトリングガン装備型シールドが一基ずつ装備されており、
推力、火力面での性能は大幅に向上した。
その反面、格闘能力は少なからず低下し、
近接戦闘にはあまり向かない仕様になっている。
使用するには、それなりの力量と、
判断能力が当然ながら要求される装備だが、
真耶は自分の適性と合致する事を知り、躊躇うことなく使用する事にしたのだ。
「は、はい!」
「了解です、山田先生!」
真耶からの通信を受け、鈴は少々上擦った声で、
ラウラは力強く返答する。
彼女達とて、一夏の行いに対する憤り、疑念はあれども、
同盟関係にある只中で、自分達を裏切ってはいない彼に任された任務だ、
思うところはあれども、やり遂げる事しか選択肢は残されてはいない。
「秋良・・・、大丈夫かな・・・?」
戦闘の光が瞬く方を見つめながらも、
鈴は心配そうに呟く。
自らが兄と慕う存在が激戦の只中に身を置いているのだ、
心配しない筈が無い。
「大丈夫だ、皆ちゃんと戻ってくる、
だから、私達は皆の帰ってくる場所を守り抜こう。」
「うん・・・!」
仲間を信じ、自分のすべき事をしようと暗に言いながらも、
ラウラは鈴の不安をぬぐい去った。
全員で生きて帰る、その為には、脚となるこの艦を自分達が守り抜くしかない。
そう言い聞かせた時、レーダーに反応があった。
「!敵機接近!!凰さん!ボーデヴィッヒさん!攻撃を開始してください!!」
「はい!!」
「了解です!!」
真耶の指令に、鈴とラウラは己の武器を構え、来る敵機に備える。
自分達の戦果で、仲間達が帰れるかどうかが変わってくるのだ、
責任は重大だが、やり遂げる以外に道は残されていない。
ならば、自分達の死力を尽くし、
目の前の敵を退ける事のみに集中すればいい。
そう割り切り、三機は各方向からせまりくる敵機に対し、攻撃を開始した。
本当の戦争は、まだ始まったばかりである・・・。
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次回予告
敵を退けるチームBに、
狂気の牙が迫る。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
揺らぐ剣
お楽しみに!