はぁ、死にたい。
なんだこれ?
目の前が真っ赤だ。
誰かが泣いている?
ボヤけていて顔が分からない黒い影。
嗚咽混じった声が聞こえる。
その声はノイズがかかったように聞き取る事は出来ないが、悲哀を感じる事は出来る。
これは誰の視点なんだ。
俺か?違うような、正しいような気がする。
だが俺はこんな景色は知らない。ならば俺ではない誰かの記憶でも覗いているのかもしれない。別に珍しい事ではない、闇に侵されたこの身は他者の闇をも取り込むのだ。その際に憎しみの原因とも言える出来事を垣間見る事があるのだ。今回もその一つだろう。
結論が出たのなら、なにも気にする事はない。
いつもの様に報われない誰かの憎悪に浸れば良い。気分が悪くなるようなモノばかりだが、俺にとって救われない何某は同類であり、仲間だ。共感し、同情し、拾い上げてやる。俺は向き合うべき世界の真実であり、影たるソレから目を背ける事はしたくない。
状況から察するにこの誰かさんは死んだのだろう。目の前にいる影は恋人、妻もしくは家族か。しかし幸せ者じゃないか、誰かさん。自身の死に涙してくれる人がいるというのが、どれだけの幸福なのか知っているのだろうか?
良いなぁ、俺にはそんな人はいないから羨ましいよ。
俺は物心ついたときには、もう天涯孤独のホームレスだったし。よくもまぁ、主人様に拾われるまで死なずに済んだものだよ。10歳に届かない年の子供が路地裏で生活してたんだ、もはや生きているのは奇跡だろう。残飯漁って、雨水飲んで、ホントよく病気にならなかったよな。いや、待てよ……なったかもしれないけど、気合でなんとかしただけという可能性がある。
まぁ、それでも褒められたモノのハズ……だよね。
「おい、スキアス。いつまでも惚けたままで人の話を聞かないとは良い度胸じゃないか」
あれ?どうして……?
「え、っと、あ……はい。聞いてましたよ、聞いてました」
そうだ、主人様に『
「……なんだスキアス、またか?」
呆れたように難色を示す。
「……ええ、まぁ」
なぜかは分からないが最近は良くトリップしてしまう。ああ、トリップとはさっきみたいに何某の夢というかなんというか……妄想に入り込む事だ。
「どんなものだった?」
些細な疑問なのだろう。
主人様は人の夢に干渉することは出来るそうだが受動的に受信する事はないらしい。
「視線の主、死亡。恋人かなんかが涙」
「ふむ、リア充か。然るべき報いを受けたわけだ」
おい。それは…
「なんだい、その文句のありそうな顔は?」
「自分が独り身のぼっちだからってリア充僻んでどうするんですか」
はぁ、いつもは凛々しいのに…。
なんでこう残念な時があるんだろうか?
主人様は咳払いをし、場を仕切り直す。
「とにかくだ。話を聞いていなかった君の為に話を要約してあげよう」
「あざーす」
「つまりだ、オレのつくったダークメガミに超次元を滅させる。その為には零次元を通過しなければならないワケだが、その見届け人をやって欲しいのさ」
見届け人。ただ見てるだけの簡単なお仕事のハズだが、俺の経験上この人の命令がそんな楽に終わるハズがない。
「俺に何か隠している事は?」
「たくさんあるが?」
知ってる。あなたは俺に隠し事ばっかりじゃないか。
「そういう君はオレに隠し事はないのか?」
「あるワケないでしょ」
なにその返し。従順な主人様の下僕な俺が隠し事なんてするワケないでしょ。
「で、何が聞きたいんだい?オレのスリーサイズなら教えないぞ。どうしてもって言うなら考えてやるがな」
む、絶妙に知りたい事を引き合いに出さないで欲しいんだが。
そんな事言われたら、
「どうしてもって言うので教えてください」
なんでもするので教えてください。
「教えるワケないだろ、変態」
そんな?!
いつもより3割増しくらいの冷たい目でを俺を見てくる。
興奮するからやめてください。
「ちょっと待てよ、主人様!可愛い下僕にご褒美はないの?!」
「ないに決まってる」
うぅ、ヒドイよ。男の純情を弄ぶなんてさいてーだぞ。
「ま、オレが何を隠しているかは零次元に行ってのお楽しみさ」
短いけど、許してください。
もうなんというか、死にたいです…。
ちなみに主人公の名前はスキアス。
ギリシャ語で闇を意味する「スコトス」という単語と影を意味する「スキアー」という単語を混ぜて作った。
ギリシャ語なのはイストワールの名前の元であると私が勝手に思っている「イストリア」という単語がギリシャ語だから。