私にしては頑張ったよ。
そうして駄文が出来たが許してください。
コンクリートがむき出しとなった崩れかけの建物。
その様はまさしく世紀末と言え、荒廃を象徴している。
そんな建造物の一室に俺はいる。
先ほどモンスターを斬り捨てた直後に目の前に座る主人様と瓜二つの少女に連れられ、ここまで来たのだ。
彼女の名前は『天王星うずめ』というらしい。
簡潔にその姿を語れば、若干露出度高めの服装をした男勝りな少女だろうか。いや、単に男勝りなだけでもないのだろう。なんとなくだが、ズレを感じるのだ。己に嘘をついている、もしくは理想を体現しようとしているのか、どちらにせよ歪だ。
そうしてだ、ここに来て俺はようやく理解した。
意味深な主人様の言葉。『面白いモノ』がなんなのかを。
きっと目の前で俺を見つめるこの子が面白いモノなのだろう。
確かに驚いたし、興味も持った。なにより今にも壊れ、砕け、消えてしまいそうな歪んだギリギリの心に惹かれた。
だが、残念な事に人間としては俺の嫌いな部類のようだ。
先ほどから聞かされる話では随分と正義に傾倒している。
光の存在であり、その心を持っているにも関わらず闇を感じる。
人間ならば不思議はない。そもそも善悪両方の資質を持ち合わせるのが人間だ。どちらか片方しか持たぬ者など人間ではない。
だが、うずめちゃんとやらは人間ではない。本来、正義であり、光であり、秩序であるべき俺の怨敵だ。やはり主人様の関係……、唯一俺の知る闇を持つ『女神』と同じ名を持ち、姿を持つからか。
まぁ、うずめちゃんの事は一旦置いておこう。
主人様に何も聞く事が出来ない以上、全ては憶測に過ぎず、確証のない推理などに意味はない。
何よりもうずめちゃんよりも遥かに俺の興味を惹く存在がいる。
なんなんだコイツは?
真顔で空中を泳ぐ、この人面魚はなんだ?
ワケが分からん。
そもそもコイツは生物なのか?
だとしたらやはり魚類か?それとも哺乳類なのだろうか?
エラ呼吸なのか?いや、肺呼吸?もしくは皮膚呼吸、それとも全部なのか?主だった食事はなんだ、プランクトンか?肉か?はたまた魚か?
しかし何故真顔なんだ。理解が出来ない。人面魚なら表情筋ぐらいあるだろう。何故、使わない?デフォルトでこうなのか?それとも特別な事象に対してのみ表情を変えるのか?
「俺の顔に何かついているかい?」
そして、どうしてそんなにイケボなんだ。外見に合わせた声をしろよ。さっきからシュール過ぎ。笑いを堪えるので精一杯、腹が痛いわ。
「いえ、何もついていませんよ。ただ空中を泳ぐ人面魚なんて初めて見たもので」
懇切丁寧な言動を心がける。
俺は口が悪いし、余計な事を口走っても面倒だからな。
この間、主人様が敬語を使ってる俺を見て大爆笑してたが、おかしい所はないはずだ。
「なぁ、スキアス。お前は一体何処から来たんだ?」
うずめちゃん。そんなに俺の事が知りたいのか?目を輝かせて質問するのは構わないが後で後悔するなよ。
「俺が何処から来たか、ですか。答えるのが難しいですね、………強いて言えば空の裂け目からでしょうか」
間違いはない。心次元から直接やってきた俺だが、心次元に通ずるあの裂け目からやってきたのと大して変りはない。
「空の裂け目からって……。あの裂け目の向こうはどうなっているんだ?」
「ここと大差ないですね。荒廃した世界…いえ、次元です」
心次元はボロボロ。
虚無であるあそこには何もない。
あるのは精々、人の心を映し出すという必要なのか首を傾げる機能くらいだ。
「スキアス、次元とはなんだい?」
「申し訳ありません、海男さん。俺にも詳しくは分かりません」
説明が面倒な事を聞くんじゃねぇよ、人面魚。
次元なんていくらでも存在する、並行世界みてぇなもんだ。
大した違いなんてないだろ。あったとしても俺は知らん。
「次元でも世界でもどっちでも良いだろ?なぁなぁ、スキアス!これから飯を探しに行くんだが、一緒に来ないか?」
「それは構いませんが、何故そんなにも興奮なさっているのですか?」
跳ねまわるな、鬱陶しい。少しは静かに出来ねぇのかよ。
俺の返答に嬉しさを隠す事もなく満面の笑みを浮かべたうずめちゃん。どうやら、後半の質問は耳に入ってないらしい。
「すまないな、スキアス。勘弁してやってくれ。うずめは今まで俺みたいな知り合いしかいなかったんだ。君に出会えて本当に嬉しいのだろうさ」
なるほど、ぼっちなのは主人様と同じか。
だが、主人様はこんな風には笑わない。いつも影のある暗い微笑みだ。
主人様もうずめちゃんの様に笑うのだろうか。
もしもこんな風に笑うのならば、どんなものだろうか。
少し、想像してみたがやめた。きっと考えるだけ無駄だろう。あの人は自嘲と嘲笑以外に笑わないから。
実は主人様の満面の笑みとか気色が悪くて、想像をやめたワケではないです。
「スキアス」
「何でしょうか?」
先ほどまでぴょんぴょんしていたうずめちゃんがいつの間にか目の前にいる。しかも文句ありげだ。
「それだよ、それ。何でさっきから敬語なんだよ」
「ふむ、理由はいくつか。俺は口が悪いのでそれを表に出さない為。丁寧な言葉遣いで本心を隠す為。あとは出逢ったばかりの貴方方に気を使って、でしょうか」
言葉だって立派な武器だ。人を傷つける。無闇矢鱈に使うわけにもいかない。そして、そんな
「つまり俺たちが信用出来ないってことか?」
「理解が早くて助かります」
意外に頭が回るのな。もっと弱いかと思っていたが。
「なら、敬語はやめてくれ。お互い腹を割って話そうぜ?そうすりゃ信用も出来る様になるさ」
前言撤回だ、随分とアホらしい。
どうすればそんな結論に辿り着く。
確かにうずめちゃんの言う通りなのかもしれないが、信用出来ないと言っているのに腹を割って話すワケがない。
「一理ありますが、不足ですね。そもそも信用していないにも関わらず、腹を割ってなど話せるワケがないでしょう」
ねぇ、そんな風に悲しそうな顔しないでくれるかな。
なんとなく興ふ……じゃなかった、胸が痛むわ。
……………。
しばらく俯いていたうずめちゃんは何かを決心した様な顔で俺を見る。何故かは知らないがその顔は朱に染まっており、目も泳ぎまくっている。
「あ、あの……そのだな……あ、あれだ、…は、裸の…付き合いって言葉がある……どうだ?」
どうだ?と言われても、どういう事だろうか?
……ああ、なるほど。この様子からしてこの子はその言葉の意味を勘違いしている。
裸の付き合いとは、一緒に風呂など裸で過ごして親交を深める事ではない。大の親友という意味だ。つまり過程ではなく結果を表す言葉。見事にこの子は勘違いしている。それを教えても良いが、もうちょっと放って置いた方が面白そうだ。
「お互い裸で話し合おうという事でしょうかね」
ポーカーフェイス、表情を崩すな。面白いからって笑うなよ。そう、そこにいる海男のごとく無表情でいろ。
おや、海男は苦笑いしてる……という事は意味をキチンと知っているらしい。それとなく、アイコンタクトでもしておこうか。
「は、裸……あ、ああ!やってやるよ、俺は天王星うずめ!人に見られて恥ずかしい様な体はしてねぇ!!」
羞恥で頭がショートしているな。何を口走っている。というか必死過ぎるだろ。どんだけ俺と仲良くしたいんだよ。
まぁ、流石に可哀想だし、そろそろ教えてやるか。
「うずめ、裸の付き合いとはとても仲の良い事を表した言葉だ。決して裸で何かをするワケではないよ」
あらら、取られちった。
「……ふぇ??!…え?う、海男それ本当なの?!」
「本当だ。ちなみにスキアスは意味を知っていた様だがね」
いきなりこっちに振らないで欲しいなぁ。
そして、うずめちゃんは真っ赤な顔でこっちを睨まないの。
「まぁ、言わない方が面白そうでしたし、事実面白かったですよ」
「もぅ、2人してヒドイよ!!うずめを馬鹿にして!」
口調が変わっている事にツッコんだ方が良いのかね。
まぁ、あとで良いか。これ以上からかったら泣きそうだし。
「すみませんね、つい可愛くて」
しかし、毎回反応が良いね。顔赤くしちゃってさ。
「……まぁ、暫くの間だがよろしくな、うずめちゃん」
駄文だなぁ。
ごめんなさい。