デート・ア・ライフ ~ CONTINUE TO LIFE ~   作:真夜

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第1話『仮想世界――通称“地獄”にて』

 

 死後の世界とか地獄とかってこの世にあると思う?

 

 俺はもちろんそんなの存在しないと思っている。

 悪行ばかりをしていると地獄に落ちるとか、善良なことをしていると極楽浄土に行けるとか良く聞く話もあれば、自殺をすると地獄に落ちるとか色々ある。でも、俺はそんなことを一つも信じていない――いや、もしかしたらそれはもう過去の話なのかもしれない。

 それは今見ているものが本当なら実在していることになるからだ。でも、これは俺の最期が特殊だったからかもしれない。確かめようがないからこう思ってるけど、みんなはどうなんだろう。

 

 そんなことは置いといて、俺は今知らない世界にいた――

 

「ここはどこだろう…?」

 

 回りを見渡すと地震によって建物が倒壊したのか何も無かった。あるのは俺の足元に広がっている無惨に壊された瓦礫が山のように積まれているだけ。

 どう見てもそこで人が生活している気配すら感じられなかった。

 ただその瓦礫の山を俺は意味もなくぼーっと眺めていた。

 

「俺は宇隆睦月…。うん、名前は覚えてる……」

 

 くしゃくしゃと頭をかいた。別に痒いとか頭虫が飛んでいたとかではなくて、ただ今の状況が理解出来ないものだったからだ。

 俺はゆっくりと瞳を閉じた。目を瞑って開けたら、いつもみたいに夢から覚めるかもしれない。いつもは空を飛んでる夢から突然背景が変わって広い草原につっ立っている場面になってから目が覚めるのだが、そな工程なんて今はどうでもいい。

 見慣れた俺の部屋――目を開けて最初に見るものはいつも煤けた灰色の天井とオレンジ色の小さな電灯。そのあと寝返りをうって、ベッドの横にある机が目に入る。

 そしてはあ、とため息気味に身体の中に溜まった濁った空気吐き出したあとに、深呼吸の要領で息を吸って一日が始まる。

 そんな日常を思い出しながら閉じていた目蓋をゆっくりと開けていくと、暗闇に光りが差していった。

 うっすらと見えてきた景色は明るかった。目に映る日の光りが眩しい。

 目を細めて慣れるのを待つとやっと見えてきた。

 

「……………」

 

 崩れかけのビルや抉られたような地面。それはまるで何かが落ちてきたかのようなクレーターのように見えなくもない。

 さっきと変わらない風景と埃っぽい臭い。

 

「本当にどこなんだ、ここは…」

 

 心の底から呟くとキーンと耳鳴りがした。

 なんだろう、と耳に手を伸ばすと何かに触れた。触って形を確認していると、ジグザグとしているところもあれば滑らかな部分もあった。

 俺は生まれてこの方、穴なんてものを開けたことはないので、なんでピアスみたいな物が耳朶に付いているのか不思議だ。

 

「なんだろう、これ」

 

『「なんだろう、これ」ではないよ。あまりベタベタ触らないでくれ。流石にくすぐったくなってきたよ』

 

 何処からともなく男でも女でもない中性的な声が聞こえてきた。でも、辺りを見渡しても誰もいなかった。

 あるのは瓦礫の山と蒼く晴れ渡った大きな空。

(どこから聞こえてくるんだ…)

 

『さっきから君は質問ばかりだな。 少しは自分で考えてみたまえ。 わたしは、“ここ”だ』

 

 耳元でチリンと鈴の音色が聴こえた。

 もう一度耳に触れてみると丸いものが付いていた。

 

「あれ? さっきと形が変わってるんだけど……」

 

先ほど触れた時に感じた、ジグザグのところや丸みを帯びていたのかなだらかな曲線を探すけど、どこにもそれらしき触り心地がするところはない。ただの球体だった。

 

『ほら、そうくすぐるな。私が特定の形を持ってない、ただそれだけのことだ』

 

「じゃあ、さっきのはなんだったんだ?って、そんなことより!なんで喋ってるんだよ!?」

 

『また君は質問か。これだから人間は面倒くさいんだ』

 

 呆れるような声でそいつは喋る。恐らく鈴からその声は聞こえるので、声の主は“鈴”としよう。

 鈴は続けるように話をした。

 

『そんなことより、君には失礼なことをしたと思っている。シンヤは私の息子だ。 まさか誤って地獄に落とすとは思ってもいなかっ――』

 

「ちょっとストップ! 訊きたいことはたくさんあるけど、ここは夢じゃなくて現実なのか?」

 

『ああ、現実だ。その言葉すら危うい世界だが、君たち人間が言うところの現実だ。そしてここは自殺した人が送られる仮想世界――地獄だ。 君にはここで本当の命をかけて生き抜いてもらうことになる』

 

「本当の命…?」

 

『まあ、それについては追々説明しよう。 まず君にはここで生活してもらうことになるわけだが、君の命は減り続けている。そこで完全に消えていまう前に回復せねばいけないのだが――」

 

「ちょ、ちょっと待て。重要っぽいことを一気にばーって言われたって、理解出来ないんだけど」

 

「……下界人とは理解に乏しいやつらばかりなのか?」

 

 少しの沈黙のあと、鈴は馬鹿にしたように質問してきた。俺は少しムッとなりながらもこいつの言うことに耳を傾けることにした。

 

「うるせえ、馬鹿で悪かったな。つか、俺は宇隆睦月だ。下界人じゃない」

 

『では、ムツキよ。まず女の子を探してほしい』

 

「初対面で下の名前かよ」

 

 初対面で慣れ過ぎだ。中学校の頃の部活の教師を思い出すじゃないか。因みに詳しく言うなら、「苗字だと男子と被るから」という理由で、女子を下の名前で呼んでいたやつだ。

 それとは少し違うかもしれないが、同じカテゴリー臭がする気がする。

 

『いいではないか、ムツキよ。ウリュウというのは呼びにくいし、長いのだ』

 

「んまあ、いいけど…。それで、女の子を探せばいいの?」

 

こくりと鈴が頷いたような気がする。

 

『そうとも。因みにRPGみたくパーティーにするとかではないから、注意してくれたまえ』

 

「…分かってるよ」

 

 RPGやオンラインゲームみたいだな、と思ったけど、ちらほらと死の単語が混ざっていた。「命は減り続けている」とか「完全に消えてしまう」とかこれは確実にヤバいワードだ。

 ここが現実か夢かなんてのは、今は置いておくことにして、とりあえず分からないことを訊いた。

 

「つか、なんで女の子なの?」

 

『それは君の減った命を回復するためだよ。 一応ここも地獄なんでね、簡単にはいかないようになっているが、今回はこちらの手違いだ。私がサポートしてあげよう。 ……暇だし』

 

「……………」

 

『では、本題に入るとしよう』

 

「おい、ちょっと待て。…とりあえず……、今最後なんて言った?」

 

『いや、何も言ってないよ。 それより早くここを離れた方がいい。二度目は死ねないぞ?』

 

「は?何を言って……。 つか、人の話を軽くスルーすんなって――」

 

 そんな時、ゾクッと何かが身体を包んだ気がした。それは寒気がしたというより、身体全体を撫でられた感じに近かった。

 

「なんか今、身体中を撫でられたような……」

 

『来たか……』

 

 耳元からそんな声が聞こえたと思ったら、風が吹いた。伸びた前髪が目の前でバサバサと暴れまわる。それをなんとか押さえつけると奇妙な光景を目の当たりにした。

 

「人が飛んでる……」

 

 蒼い空に人が飛んでいた。人間だと理解出来たのは、相手が女の子だったからだ。

 黒のボディスーツを着ていて背中には同じ黒い色のアーマー、手には身の丈以上はあるんじゃないかと思うくらい長い銃を持っていた。

(あのアーマーみたいのは……なんだ…?)

 テレビとかでよく見るロボットアニメに出てきそうなのに似ている。あえて例を挙げるなら、機動戦士ガン○ムではなくて、どちらかと言えば武装〇姫の方だ。

 空を見上げると俺の頭上をクルクルと旋回していた。

 そんな時、チリンと短い鈴の音が聴こえた。そして短くこう言った。

 

『逃げたまえ』

 

「は?なんで逃げるんだよ。 お前が探せって言ってた女の子が目の前にいんじゃん」

 

『ワタシが言ったのは“あやつら”ではない。 それより狙われているぞ、ムツキよ』

 

「……え?」

 

 ドンッというけたたましい発砲音と視界の隅の地面が吹き飛ぶのは、同じタイミングだった。

 俺はゆっくりと下に目を向けると、そこは鋭い何かに抉られたようになくなっていた。

 これは完全に俺を狙っていた。それも恐らく身体だ。鈴が『狙われているぞ』、と言わなかったら身体なんて動かしてなかっただろう。

 偶然の事が重なって俺の身体はそこの地面のようにバラバラにならなかったが、空に浮かぶ人たちは増えていて、2人から5人になっていた。

 

「これって、ヤバい感じ…だよな?」

 

『当然だ。むしろ今ので死ななかったのが奇跡だろう』

 

「そうなのか……。じゃあ、今から走ったら逃げられるかな……? こう、幸運の少年みたいに…さ」

 

『……………』

 

「な、なあ…ここで黙られると困るんだけど……」

 

 五角形に囲むように銃口が俺の方を向いた。今度こそ確実に俺を仕留める気らしく、背中のアーマーも開いていた。

 万事休すって言葉はこういう時に使うんだろうな。俺は逃げる暇なくこのまま一斉に撃たれて死ぬんだ、と思ったその時――

 ガクンと視界がずれた。いや、正確に言うなら俺が元いた場所が窪んだのだ。

 それはまるで隕石が落ちてきたあとにできる、クレーターのように地面が捲れあがっていた。

 それを目の当たりにした俺も驚いたが、空を舞っている人たちも狼狽していた。

 何をそんなに驚いて……という疑問はすぐ晴れた。

 突然できた大きなクレーターの中心に、一人の少女がぽつんと立っていた。

 

「誰だ…?」

 

 俺はそんなことを口にしていた。

 少女は長い黒髪に紫を基調とした鎧とドレスを組み合わせたかのような服を着ていた。そして、その隣にはRPGに出てきそうな玉座があった。

 

「どうして…女の子が……」

 

『…現れたようだな、“精霊”よ』

 

「せいれい……。 何それ?」

 

『質問したいの分かるが、今はそんな暇はない。来るぞ』

 

「空を飛ぶ人たちがか? 何もしてこないぞ。むしろ警戒体勢って感じだ」

 

『ムツキよ。お前の目は節穴か?前を見てみよ』

 

 一々勘に触る言い方に一瞬ムカっときたが言う通りに一人佇む少女の方を向いた。

 少し距離があるのでぼんやりとした姿だけど、玉座から出ている柄のようなものを握るのが見えた。

 そこからゆっくりと、プロレスラーでも持てなさそうな巨大な大剣を彼女は引き抜いた。

 それは虹色のような、幻想的な輝きを放っていた。

 少女が剣を振りかぶると、その軌跡がぼんやりとした輝きを描いていった。

 

『…これはヤバいな。死を覚悟した方がいいかもしれない』

 

「えっ!? 今なんて言ったんだ!?」

 

『死を覚悟した方がいいかもしれない、だ』

 

「なんでいきなりそんな展開に!?」

 

 言い終わるやいなや、少女は俺の方――いや、空飛ぶ人たちもいる方へとブンと剣を振り抜いた。

 空気を切り裂いて、ものすごい速さで斬撃が飛んできた。

 そんな時、チリーーンと長めの鈴の音が響いた。

 閉じていた目蓋を上げると辺りが薄暗くなっていて、斬撃がゆっくりと――まるでスロー再生でもしているかのように動いている。

 

「な、なんだ…?何が起こったんだ……」

 

 宙を駆ける人たちも動いてはいるがとてもゆっくりな動きだった。

 

『そう驚くな。これはキミの能力――Accelerationだ』

 

「あ、アク…アクセ……?」

 

『アクセラレーションだ。つまり“加速”という意味だが、これはキミの命を磨り減らして発動している』

 

  意味がよく分からないがここは聞き流した方がいいと判断。手短な疑問を鈴にぶつける。

 

「…今も減ってるのか?」

 

『そうとも。今はワタシが勝手に発動させた。このままではキミが死んでしまうからな』

 

 鈴はさらっと恐ろしいことを口にした。死んでるのに死ぬってなんだよ。“二度目はない”みたいな感じなんだろうか。

 

『二度目の死――つまり、魂が消えて新しく生まれ変わるわけだが――』

 

「それは…浄化されて、みたいな感じなのか?」

 

『いや、その認識とは少し違うな。 二度目の死を迎えた魂は二度と同じ命として生まれ変われないのだ』

 

「つまり…どういうことなんだ?」

 

 全く意味分からん。同じ命には生まれ変われない、とかなんだそりゃ。人は人にしか生まれてこない、ってどっかの宗教団体が言ってたぞ。

 そんな俺をふっと鼻で笑った気がした。鈴にそんなものはないが天界とやらにいる皇なのだ。

 

『こんなこともまだ分からぬのか…。この先、ここで生きていくことは大変だぞ?』

 

「…うるさい。難しすぎて魂のこともこの世界のこともあんま理解できないんだ。ちゃんと説明してくれ」

 

『世界のことはここの住人に訊いてくれ。ワタシは創造主であるが創っただけで、あとは自律プログラムが勝手にやっていることだ。詳しいことは分からん――…ことにする』

 

「…おい、皇様だかなんだか知らねえけど、そっちの手違いで俺はこっちに来ちまったんだろ? なんとかしてくれ」

 

『分かっている。だから、Acceleration:加速とReturn:転移を授けたのではないか。この地獄で生き残る為のせめてものワタシからの情けだ』

 

「……………」

 

この世界の創造主を名乗る皇様とやらは超絶上から目線だった。まあ実際に上から覗いていんだろうから、言葉通りなんだろう。

 そんなことを考えていると、

 

『何か不満でもあるのかね?』

 

と訊いてきた。

 勿論その質問の答えは決まってる。イエスだ。これでありません、とか言ったら神だ。そんなやつがいたら異世界に順応早いな、って思わずツッコンでしまいそうだ。

 

「ありありだ。むしろありすぎて消化できないぐらいだ」

 

 それより落ちて来たときに叫んだ“アイ キャン フライ”という魔法の呪文みたいのを鈴は上げてなかった。ということは、あれは皇のお遊びの一環だったわけで真面目に叫んだ俺は恥をかいただけだったわけか。

 逆に誰も聞いてる人がいなかったことに喜ぶべきか悩み所だけど。

 

『まあ、そんなことは重々招致している。それより話を戻すが――』

 

「…あー、またフルスルーですか……」

 

『キミの時間がたくさんあったらもう少しこの状態でもいいのだが、そうもいかないのだ。手短に話す』

 

 そう言うと鈴は一拍置いてから、また喋り始めた。

 

『――もし、二回死んでしまったらキミという存在は生きていた世界からも消えてしまうのだ。そして、人間としては生まれ変われない。』

 

「じゃ、じゃあ…今死んだら、ゴキブリとか雑草とかに生まれ変わるかもしれないっていうのか…?」

 

『簡単に言ってしまえばそういうことだ。だが、今回はこちらの手違い。だからこの仮想世界――地獄を生き抜けるように手助けをしよう。』

 

「お礼は言いたくねえけど……ありがとうとだけ言っとく」

 

『ほお、お礼を言われるとは思ってなかったな。 むしろまた文句か質問をぶつけられると思っていた』

 

「俺はクレーマーじゃない。諦めるところはちゃんと諦める」

 

 とりあえず、今は諦めるところじゃない。手違いなんかで地獄に落とされて、ここで死んだら人間には生まれ変われないだって?冗談じゃない。プランクトンなんかに生まれたら短い命じゃないか。

 俺は顔を上げて不思議な服を着ている少女の方を向いた。

 

「よし、やるか。 ……で、どうすればいいんだ?」

 

『……………』

 

「…おい、聞いてるか鈴」

 

 一応、意気込んでみたけど肝心なことを忘れてた。このスロー再生空間の戻し方を知らなかった。

 制限時間があるなんて言ってなかったから、恐らく自分の意思で解くはずだ。

 

「このスロー空間はどうやって終わらせられるだ?」

 

『Acceleration:終了と言えば終わるが――』

 

「よし、アクセラレーション:終了!!」

 

 薄暗かった世界にだんだんと色付いていく。空の蒼に瓦礫の灰色。そして――斬撃の虹色……

 

「虹色っ!?」

 

 止まっていた時間が動き出したかのようにゆっくり動いていた斬撃波が急加速した。ものスゴい速さで俺の身体へと接近してくる。

 その時、世界がまたスロー再生しているように見えた。でもさっきとは違って、色は付いている。

 これはアレかもしれない。死ぬと思った直前に見るやつだ。

 そんな時、ふと鈴が言っていた言葉が頭を過った。

 

『――Acceleration:加速とReturn:転移を授けたのではないか。この地獄で生き残る為のせめてものワタシからの情けだ』

 

 アクセラレーションとリターン。加速と転移。

 よく分からないが加速は発動中、相手の動きを遅くするみたいだ。でも、その代償として俺の命が削られていくらしい。なら、転移はどうなんだろう。言葉的にはリターンは“戻ること”。だけど、鈴は転移と言っていた。

(んー…、やっぱり分からないな……)

 何故か俺はこんな時でさえ酷く冷静だった。別に死を覚悟してはいるが、この地獄と言われる世界で生きぬくのを諦めたわけじゃない。だけど、頭の片隅で落ち着け、と言われている気がするのだ。

 

「やっぱり、ここはアクセラレーションをもう一回使ってなんとか避けるしかないか……」

 

 そうと決まれば俺は集中した。その瞬間スロー再生な世界は終わった。

 三日月のような形をした斬撃が加速した。

 俺は叫ぶように、

 

「加速しろっ!! ア、アクセラレーション!! ……って、なんで加速しないんだ!?」

 

 変な空間はできないし、世界は変わらず動いていた。

 諦めずに二度目を叫ぼうとしたときにチリンと鈴の音が聴こえてきた。

 

『Accelerationはの発動はもう無理だ。キミの命が少なすぎる』

 

「ほんの少しだけでもいいんだ!! それでも発動は無理なのか!?」

 

『落ち着きたまえ。 したとしてもここから逃げられる保証はないだろう。これだから下界人は――』

 

「あー! じゃあ、どうすればいいんだよ!?」

 

その間もどんどんと死神を引き連れた刃が俺に迫ってきている。流石に焦り始めた。冷静に何かを考えるのももう無理だ。

 

『んーー…、そうだな、Returnなら…なんとかなるかもしれない。 だが、気を付けてくれたまえよ? 戻る位置を間違えたら――』

 

 前を見ると突然現れた少女が放った斬撃が数メートル先まで近づいていた。

 鈴がなんかごちゃごちゃと説明書に書かれている注意事項みたいなことを言ってた気がしたけど、もう細かいことは考えないで第二の能力とやらを発動させるしかないらしい。

 

「よし、リターンだな!? 転移しろ!リターン!!」

 

 俺は手を天へと掲げてそう叫んだ――

 

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