デート・ア・ライフ ~ CONTINUE TO LIFE ~ 作:真夜
失敗した、とだけここに残しておくことにした。あとは何も言い残すことはない。これから俺の身がどんな目に合うのかなんて想像すらしたくもない。むしろ、目付きは鋭いけど可愛い系の少女を人生の最後に拝めたことに感謝することにしよう。
(それに死ぬ前に見たのが神也の間抜け面だなんて、1ミリも嬉しくないからな……)
そんなことに思いを馳せていると、
「……あんた、気持ち悪い」
と罵声が飛んできた。そしておまけに――
『少女の言うとおりだ。とてつもなく気持ち悪いぞ。 何かに目覚めかけている下人の表情に似ている』
本当に引いているのかさっきまでの嘲笑う感じから、自分にはけして理解出来ないものに向ける軽蔑の眼差しのようなものに変わったような気がする。
「…うるさい、そんな目で俺を見るな」
「なに、それってわたしに言ってる? もしそうならそんな目で見てないわ。ここにもあんたみたいなのいるし」
「だから、違うって!って、……え?」
俺の聞き間違いだろうか。ここにも罵声を浴びせられて恍惚とした表情を浮かべるヘンターイがいるのだろうか。
言っていることがいまいち頭に入ってこなかったので、令音さんに顔を向けた。
「いや、変な勘違いをされても困るので言っておくけど、わたしではないよ」
「じゃあ、誰? もしかして君?」と五河琴里に視線を戻そうとしたすると、突然ピピッと機械的な電子音がして扉が開いた。長身で全体的にスリムな男が入って来た。
「どうしたの? 何か分かった?」
と振り向きもせず五河琴里は現れた男に訊いた。
「いえ、なんだかわたしが呼ばれたような気がしまして」
そう言う男はよく見るとここ――空中戦艦ラタトスクに連れて来られた時に会った最初の人だった。確か神無月という名前だ。
五河琴里は神無月に一瞥もくれずに口を開いた。
「勘違いよ下がって」
「はっ」
警官も軍隊も驚きの速さで五河琴里に敬礼をした。そのまま回れ右をして立ち去ろうとすると、急に「あふんっ」と変な声を上げた。
何が起きたのかよく見えなかったが鈴が静かにゆっくりとした口調で教えてくれた。
『あやつは危ない。完全に究めておる』
「ああ、そうなんだ」
よく分からないがおもちゃ屋のオッサンこと神無月は、何かの道を極限まで究めて能力をカンストしているらしい。能力値999みたいな感じかもしれない。流石、二次元の神『バーチャルゴッド』だ。こっちの世界でも神になったらしい。
(…実際の神様は俺にアドバイスをくれるやつだけど)
この位置から見えるのは新しく出した棒付きキャンディを煙草を持つような体勢で待つ五河琴里にセットしてあげている姿だけだ。あと、丁度今見えた補足事項的なことだけど――
「ここでは食べ終わった棒付きキャンディのゴミを大切にするんだな……」
『ムツキよ、皆まで言うでない。ここではそういうルールなのかもしれない』
「……本当にお前はここの創造主なのか疑いたくなるよ…」
周りに気付かれないように小さくはあ、とため息をつくと俺は神無月へと目を向けた。
「……………」
投げ捨てたキャンディのゴミを大切そうにレースが付いたハンカチで包み込むと、綺麗に折って胸のポケットへとしまっていた。。
『そんなルールがあるわけなかろうに……。ムツキは絶望的な“アレ”かもしれないな。女の子にモテないのも、付き合ったことが歳数無いのも納得だ』
また俺を馬鹿にしてそうなつぶやきが聞こえてきたけど無視して、俺は話しを戻すことにした。
「んで、俺の事は大体分かってくれたかな? 人間だけど…そうじゃないって。 ……俺ですら理解し辛いけどそういうことなんだ」
いきなり死んで気付いたらこんなことになっていた。誰でも目が覚めたら、世界変わってないかな?なんて考えたことがあるかもしれないけど、実際体験してみると全然嬉しくなかった。むしろ、目が覚めたら――って感じだから“死んだ”という実感すらない。でも、これは夢ではなく死後の世界らしい。
そんなまだ理解していない世界(地獄)で微妙な説明を終えて、艦長である五河琴里、解析官の村雨令音。そして、今だに飴のゴミをしまった胸のポケットに手を重ねて物思いに耽るという作業に勤しんでいる副艦長の神無月恭平を順番に見渡していった。
最後のを抜かして皆、緊迫した面持ちで俺を見つめている。
俺を未知の存在の“精霊”として認識してしちゃったか、と不安に思っているとチリンと助けが舟が来た。鈴だ。
『ムツキよ。ここはいっそのこと精霊の霊力を吸収することが出来るんだ、と言った方がいいかもしれないな。 その方が相手側に余計な詮索や相互の食い違いが生まれなくてすむ』
そして、この世界で二大勢力の一つに属することが出来れば、お主の身のためになるかもしれん。と続けて鈴は言った。
“二大勢力”という単語がなんのことを示しているのか、少し気になりはしたが俺はこいつの言うとおりにすることにした。
そうと決まれば前は急げ。俺は口を開けた。
「そうだな、簡単に言っちゃえば……魂食い(ソウルイーター)? 精霊の霊力を吸収できる存在ってみたいなやつだな」
「「「――――――っ!?」」」
漫画が漫画ならババンッという文字が吹き出しに書いてあることだろう。かの有名なジョジョで例えるなら、新キャラの登場シーンだろうか。
さっきより倍増しに緊迫した空気になってしまった。それも糸が今にも切れそうなぐらい立場が悪化したかもしれない。
沈黙はどれくらい続いただろうか、いや実際はそんな経ってないかもしれない。そのくらい俺の心臓はバクバクと動いていた。額から汗も流れてくる。
そんな空気を壊したのは俺でもなく五河琴里、令音でもない。ましてや神無月でもなかった。機械的なサイレン。津波警報にも似たものが響いてきた。
「な、なんだ!?これ。 何が起こったんだっ」
『ここでも“空間震”を察知できるのだな。なら、好都合だ。このまま精霊と接触したまえ』
そんな鈴の発する訊いたこともない単語に俺は疑問の声を上げた。
「……空間震?」
俺の鈴への問いかけを独り言と勘違いしたのか、はたまた自分たちへの問いとしてとらえたのか、五河琴里が俺を見つめた。
「そう、これは空間震――精霊がこの世界に現界するときに起こす大爆発の一つよ。それは個体によって違うことは――ってそこまで教える必要はないわね」
「それは…なんでだ?」
俺の質問に短くはあ、とため息をつくと五河琴里は答えた。
「あなたのことが信じられないからよ」
また短くそう口にすると少女はバサッと肩に掛けた司令服をなびかせるとこの部屋出て行こうとした。俺はその小さな背中に叫んだ。
「じゃあ、どうすれば俺を信用してくれるんだ」
悪役が正義のヒーローに言うテンプレみたいな言葉になってしまった。でも、今の俺にはそれしか言葉が出えてこなかったのだ。今も俺を手助け(暇だから)してあげよう、と豪語していた神も、ただのお飾りみたいに黙って鈴でいる。
「……………」
(……やっぱりダメか?)
もっと気が利いて、少しでも信じてもらえるような綺麗な言葉を並べたかった。でも、出てこないんだからしょうがない。副作用でのた打ち回ることになるかもしれないけど、死ぬまでここにいるのは嫌だ。逃げよう。
出会う前まで、とまでいかなくても捕まる前までreturn――転移して脱出しよう。そう決心を固めて立ち上がろうとすると
「嘘はついてない、綺麗ごとを並べてもない。……いいわ、少しだけ信じてあげることにするわ。」
「ホントかっ!?」
「ひゃっ!!」
つい嬉しくなって俺は五河琴里の手をぎゅぅと握ってしまった。
そして、極めつけに――
「お前ツンツンしてなかったら可愛いんだから、もっと角削れって。そうしたら――」
続けて“女の子っぽいのに”と口にしようと思った瞬間、俺は何も喋れなくなった。言葉を急に失ったわけではない。思いっきり蹴飛ばされたからだ。
ぐふっ、と奇妙かつ嗚咽に似た言葉を吐きながら俺は床に膝から崩れた。的確で鋭い少女の蹴りは俺の溝内を貫通せんと深くくい込み、そして捩じっていった。
『大丈夫か、ムツキよ』
俺にしか聞こえないように鈴が念話で話しかけてきた。
腹から一気に空気が抜けたせいで話せない俺は心の中で呟いた。これが大丈夫なわけねえだろ、と。
『ふむ、そうか。 でも、さっき言おうとしていた言葉を口にするより、さっきの蹴りの方が致命傷にならんかったと思うぞ。むしろ、ムツキは運が良かったと神に感謝と慈悲に泣いて喜ぶといい』
「……………」
今だに痛みで声が出ない。五河琴里に文句を言ってやりたいが俺は睨むことしかできないでいた。
『おい、わたしの話しを聞いておるのかムツキよ? 無視するでない。神の声を――』
俺が痛みでうずくまっているとそんな俺を気にかけてか令音が声をかけてくれた。
「大丈夫かね、医師免許はないがわたしが見ようか?」
「…い、いや……大丈夫っす。それより――」
「令音、そんな奴の心配しなくてもいいわよ。わたしみたいに罵っていれば男なんて生き返るわ。 それより、あんたにはこれからやってもらうことが出来たわ」
何故かぷい、と顔を背けている五河琴里に顔を向けて
「…精霊はいいのか? 現界したんだろ……そんなことしてる暇がない」
何しろ俺自身のために精霊とやらとコミュニケーションをとらないといけない。でなければ、魂が零になってこの世界からも消滅してしまう。
「何言ってんの?暇なんてものは寝る時間を減らして作るものよ」
「は?」
「だから、あんたにも分かるようにもう一度だけ言うわね。…これから暇は一切ないと思いなさい?」
そこまで言うとそっぽを向いていた五河琴里が俺の方を見るとビッと指差した。棒付きキャンディーがぴこぴこと揺れるなか続けるように
「あんたには精霊と対話してコミュニケーションをとってもらうわ!!」
*
空中艦フラクシナスと呼ばれる船から降ろされた俺は街中を歩いていた。
どこを歩いても元居た世界――現実世界には無かった構造物ばかりで落ち着かない。きょろきょろと俺は辺りを見渡しながら指示された目的地まで向かっていた。
そんなとき、
「そのまま真っすぐ進んだら交差点が見えてくるから、そろそろ注意しなさい。その先に精霊反応があるから」
「……りょーかい」
右耳に取り付けられたイヤホンタイプの小型マイクに手を触れると俺は短く答えた。
「何か精霊に反応があったらこっちから指示するから、勝手な行動して機嫌を損ねないようにしなさい。 あんたも死にたくないだろうし」
「分かってるよ。」
「まあ、あんたには変な能力があったわね」
「リターンか? 場所は行ったことがあるところ限定で移動出来るけど、あんま使えないぞ。時間は遡れないしな」
「本当ね。もうちょっと使えそうな能力だったら利用価値あったのに」
「利用価値って……、まあ俺も同感だ」
神から貰った便利なのか不便なのか分からない力。やつ曰く、一度通った道しか転移出来なくてちゃんとイメージしないと失敗するらしい。それもreturnと言っておきながら、時間は遡れない。そして、
「失敗しても頭痛に苛まれるから気を付けろ、ってなんだよ……」
と愚痴を聞こえないように呟いているとだんだんと瓦礫の山が見えてきた。
俺がこの世界に来て、最初に目にした風景と似たような感じだった。違いと言えば、今度は高層ビルの半壊じゃなくてスーパーとかレストランが空間震のせいで崩れていた。それも『レンガーハット』とか『アルエツ』という看板がなかったら何がそこにあったのか分からなかっただろう。
それらからここがビル街ではなく、そこから少し離れた住宅街だということが分かった。土地勘が全く無に等しい俺は周りの風景を見て判断するしかない。むしろ、建築物の形が未来的過ぎて分かり辛いから尚更だ。
(もうそろそろか……。緊張してきたな…)
この破壊的な空間震を作り出した女の子が近くにいると思うと、喉や唇が渇いてくる。
ゆっくりと辺りを警戒しながら俺は右に取り付けたマイクとは違う方の耳へと手を伸ばした。そのまま鈴をどつく。
「…おい、鈴。精霊は“あの時”の女の子か? それとも違うのが現れたのか?」
『……………』
「おーい、鈴。聞いてるかー?」
『……………』
「っ…シカトか……」
精霊と会うにしてもどんなやつが出てくるのか知りたい。それにさっきの娘なら頭がビビッと痺れるぐらい可愛かったから、(出来るか分からないが)日常会話ぐらい――いや、欲を言いすぎた。名前ぐらい知りたい。
そんな淡い期待を叶えるためにまずは情報を……、と考えての行動だったのに鈴はうんともすんともしない。完全に無視または聞いていない状態だった。
「俺一人で乗り越えろ、ってことかよ…。いつもの癖がでないといいけど……」
いつもの癖、というのはアレだ。どうせあとで分かることだから今は言わないことにする。
今はなんで俺が鈴にシカトされていて、右耳に超小型ワイヤレスマイク(ラタトスク機関との会話用)。左に鈴(神との会話用)が付けることになったのかを説明しよう。
これまた俺が五河琴里に「精霊と対話しろ」、そう命令されたところまで戻ることになる――
「精霊と対話?コミュニケーション?」
「そうよ。会話して好感度を上げればいいの。あんたみたいなクサレゴミムシでもめいいっぱい背伸びしたら、そのぐらい出来るでしょ」
「は???」
どちらの意味も込めて「は??」と聞き直したはずだったけど、軽くあしらわれた。
俺は諦めて今言われたことを思い返してみる。人類を優に超えた存在の精霊と対話――そして、コミュニケーション。対話ということは対等な立場でお話するということ。精霊みたいな能力を持っているからそういう言い方をしたんだろうか。
まあ。そこまではいい。可愛い娘とお近づきになれるならいいことなのかもしれないし…。と邪な考えをしつつ、好感度まで上げる必要はあるの?と疑問に思っていると、
「――つまりは精霊とお話して仲良くなって、彼女らの霊力を吸収――無力化してほしい。ってことさね。」
と五河琴里の隣に立っていた令音さんが付け足した。それでも納得するまでに時間がかかっていた俺にまた違う声がかかる。神無月だった。
「今、勝手に調べさせてもらいましたが、君の身体には精霊と会話することによって霊力を蓄える――いや、吸収する能力があるみたいですね。 特異体質と言うべきか…我々とは違う存在なのか、と理解するところか迷いますが、そこを利用して精霊と打ち解けることができるのではないかとわたしは思います」
「そうね。なんであんたが――」
「ちょい待って。俺は宇隆睦月って名前があるんだ。呼ぶならそっちにしてくれ」
「じゃあ、睦月。なんであんたがそんな力を持っているのか知らないけど、それについてはこっちも一時保留としておいてあげる。 そっちにも色々あるでしょうし」
いきなり呼び捨てですか、なんて野暮なツッコみは俺はしない。それより俺の力について語ったときの五河琴里の表情が一瞬暗くなったのが引っかかる。
そんな少女の変化に気付くことなく、顎に手を乗せると神無月が独り言を呟いた。
「なんでそんな力を持っているのでしょう…」
「……………」
答えようがないので俺が黙っていると、向こうから音が聴こえてきた。
『ほう、これはルート分岐のアラームだな。気を付けて慎重に進まないとバットエンドかもしれない』
バットエンドだって!?と叫びそうになるのをなんとか堪えると、どうしたらいいのか鈴に俺は訊いた。向こう側では緊急用アラームなのか、ウゥゥゥゥゥとサイレンが聴こえてくる。それに続いてカチカチとキーボードか何かを弄る音とパソコンのファンが回るような音まで聞こえてくる。
(な、何をしてるんだ!?)
『む、まともな選択肢しかないではないか。面白みに欠ける。 ワシはもっとずば抜けたものが――』
「いいから、早くしてくれ!!」
では、行くぞと鈴が言った。そのあとの言葉に続くように俺は口を動かす。
『昔、なんかあったみたいで目が覚めたらこんな体質になってた』
「……昔、なんかあったみたいで…目が覚めたらこんな体質になってた」
それだけではおかしいだろうと、自分なりに考えて「昔の事は記憶が曖昧で詳しくは自分でも分からない」と付け足した。
そんな俺の神妙な面持ち(演技)を見てか、皆納得してくれたようだ。鈴からは『なんて下手くそな演技なのだ…』とクスクスと笑い声が聴こえてきたりもしたが、今は文句も言えない。
苦笑いをしながら五河琴里を見ると、遠いどこかを見て思い出してしるかのような表情を携えると「そう」と短く返してきた。
頭にクエッシュンマークがいくつも出来た俺に、
『その者も近いものがあったのかもしれんな。何しろ――』
「――わたしたちラタトスク機関が目指してきたものが今日あんたが現れたことによって、夢から現実のものになった。 これからがわたしたちのターン。行動開始よ!!」
「はっ!!」
五河琴里の宣言に神無月が敬礼で答えると、向きを変えて出ていく。それに続いて、少女も軍服を靡かせるとここから出で行った。
「さあ、君はこっちだ」
何がなんだかまだ把握しきれてないけど、とりあえず目的の精霊と会話して魂回復、というのは達成できそうだ。むしろ、一人で行動するよりここにいて、いち早く空間震反応を察知して急行した方が効率が良いかもしれない。
「そういえば、さっきなんか言いかけてただろ。何だったんだ?」
『……………』
(…聞いてないなら、まあいいか)
鈴が何か言っていたけど「聞いておるのか?ムツキよ。これだから下等な人類は――」と文句を付けてこないから、そんな大したことではないのだろうか。そんな疑問を持ってもうんともすんとも言わないので、俺は令音さんのあとをついて行った。
そこからは一気に話が進んだ。令音さんから渡された小型マイクを言われた通りに耳に装着すると、「じゃあ、説明は道中するからとりあえずエンカウントしてきて」という五河琴里の声が聴こえてきた。その一言後には俺は地上へと転送されて精霊のこと、空間震のこと。そして、AST発足までのことを色々説明された。
分からないことは鈴が念話で補足したりしてくれた。たまに、適当なことを教えてくるからシカトしたりもしたけど大体理解出来た。でも、そのせいか鈴に話かけても何も聞こえない。
(……まあ、いいか)
そろそろ確認された精霊とご対面してもおかしくない頃合いだろう。この身体にまとわり着くようなプレッシャーはあの時と同じだ。俺はゴクリと生唾を喉の奥へと呑み込むと一歩、また一歩と進んでいく。
「ん?」
そんな時、近くで人の気配を感じた。そうこの崩れた看板の向こう側。微かにだけど瓦礫を踏む足音も聞こえてくる。
五河琴里の話曰く、空間震発令警報が出てからは一般人は皆、例外なく避難シェルターに入るとのこと。だから、こんな空間震によって削られたクレーターの近くに人がいるはずがない。
(……よし、行くぞ)
さっきより一層心拍数を増した心臓に手を当てて深呼吸をすると俺は瓦礫の山を越えて向こう側へと出た――