悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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マヤリト大陸の殺し屋(後編)

「孫……悟飯だと!? まっ、まさか、貴様、孫悟空の息子か!?」

 

 悟飯の名を聞き、驚愕の表情を浮かべ僅かに後ずさる桃白白。その言葉を聞いて悟飯は驚き叫んだ。

 

「どうしてお父さんの名を!?」

 

 強めの気を持つ者同士がぶつかり合うのを察知し、不穏な気配を感じて様子を見に来てみれば、そこに居たのは殺されそうになっている同級生。これだけでも驚きの出来事なのに、その同級生を殺そうとした不埒な輩の口から父親の名前が出てくれば戸惑うのも無理は無い。

 そして悟飯の言葉で彼が悟空の息子であると確信を得た桃白白はその表情に憤怒のものへと変えた。

 

「や、やはり奴の息子か。 くぅー、貴様の父親の所為でこの私が、世界一の殺し屋である桃白白様がどれ程の屈辱を味わったか!!聞くがいい!!私の苦難の日々を!!」

 

 そして桃白白は憎しみの目で見ながら自分の身の上に会った出来事と悟空との関わりについて語り始める。

 

「私はマヤリト大陸で世界一と謳われた殺し屋だった。だが貴様の父に敗れ、損傷した身体を直すためには、それまで稼いだ金の全てを費やしてこのような機械化せねばならなくなったのだ。そして復讐のために参加した天下一武道会、そこで天津飯の奴にまで敗れ、その試合の内容が全国中継されてしまったために私の積み重ねてきた殺し屋としての名声は完全に地に落ちてしまったのだ。そこで私は再起を計るためにマヤリト大陸を出て苦節20余年、地道な活動を続け、私は信頼を築いてきた。そしてそこの九鬼英雄の暗殺に成功すれば私は再び世界一の殺し屋に返り咲く筈だったのだ。それを……それを……貴様等は親子揃って、どこまで私の邪魔をする気だ!! この私の努力を無駄にしおって!!貴様等には血も涙も無いのか!!」

 

 悟飯を糾弾するように叫ぶ桃白白。その勢いに悟飯は思わず圧されながら、英雄とあずみの方を向いて問いかける。

 

「え、えと、あの、九鬼君、忍足さん。何か、悪者扱いされてる気がしますけど、これって僕達悪くないですよね?」

 

「うむ、全く恥じるところは無いな」

 

「当たり前だろうが。つか、殺し屋の癖に全国中継されるような武道会に出て、しかも負けるとか馬鹿過ぎるだろこのおっさん」

 

 鷹揚な構えで頷く英雄と呆れ半分で同意するあずみ。そのやり取りを見て桃白白はますます逆ギレする。

 

「貴様等ああああ!!!  殺してやる、殺してやるぞ!!」

 

 そしてその怒りと共に桃白白の気が高まっていく。その気の強さは百代クラスとは言わないまでもそのライバルであり、英雄の姉である揚羽に近いレベルにまで高まりを見せる。しかもサイボーグ化によって身体が強化されているため、実質的な戦闘力は彼女を超えるかもしれなかった。

 

 

「見たかこの力を!! 私が孫悟空や天津飯に負けたのは、無敗であったことに胡坐をかき修行を怠っていたからに過ぎん!! だが、マヤリト大陸を出て以降、私は必死に鍛え直し全盛期をも超える力を手に入れたのだ!! この力の前には川神院だとか言うこの国の一番の道場の元師範代の男もしょんべんどころかうんこまでちびって逃げ出しおったわ!!」

 

 勝ち誇る桃白白。実際、それは自惚れでは無く、第23回の天下一武道会の頃の悟空が相手ならば勝ててもおかしく無い位の強さを今の桃白白は持っていた。

 

「くそっ、馬鹿でもやっぱ強さは半端ないな。おい孫、頼む。無理やりにでもいい。英雄様を連れて逃げてくれ。あたいはここで時間を稼ぐ」

 

「あずみ、何を言う!!」

 

 その力に絶望を思い出し、自分が犠牲になり、英雄の命だけでも救おうとするあずみ。それに叫ぶ英雄。

 言い争う主従に対し、それを仲裁するため、悟飯は間に入り口を開く。

 

「大丈夫です。あいつは僕が倒します」

 

 きっぱりと宣言する悟飯。それを聞いて呆気に取られる英雄とあずみ。悟飯の真の実力を知らない二人からすれば目の前の強敵を倒してみせると言うその言葉は信じられ無いものだった。

 そして自らに対し勝利宣言を突きつけられたも同然の桃白白はその怒りを更に強める。

 

「倒す!? この俺様を倒すだと!!」

 

「ああ、悔しいがあいつの言う通り無茶だ」

 

 怒る桃白白。あずみも悟飯が適わないと言う点において敵の言葉に同意せざる得なく、無謀だと主張しようとする。だが、そこで彼等の言葉を阻むように悟飯が自らの気を解放して見せた。

 

「「「なっ!?」」」

 

 敵、味方の声が重なる。悟飯の気が百代と戦った時と同等レベル、つまり桃白白に大幅に上回るレベルにまで一瞬にして高まったのだ。

 

「桃白白さん、それだけの力を得るためにあなたは相当な努力をしたと思います。それだけに残念です。その力を悪いことにしか使えないのが」

 

 本当に残念そうにそう言うと、悟飯は超スピードで移動する。その速すぎる動きはこの場に居る者達には目に追えず、掻き消えたようになった彼は一瞬にして桃白白の背後に回りこんでいた。

 

「それと上には上がいるんですよ」

 

 

 そして一言言葉を投げかけると共に手刀を首筋に叩き込む。その一撃で桃白白は意識を断たれ、そのまま前のめりに崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、孫。てめえ、一体何者だ?」

 

 桃白白と言う脅威が取り除かれ、取り戻された筈の平和な状況。しかしあずみは一切警戒を解こうとしなかった。彼女の口から発せられる言葉は自分達の窮地を救った恩人に対するものとしては極めて不適当であるが、同時に無理も無いものとも言える。余りにも強すぎる悟飯の存在は彼女からすればある意味、桃白白以上に得体の知れない存在であったのだ。

 

「えと、その……」

 

 自分に突きつけられた問いに対し詰まる悟飯。力を見せ過ぎたことは悟飯自身理解していた。しかし下手に手加減をし過ぎれば自分が負けることは無くとも、英雄やあずみに対し危害が及ぶ可能性がある。そう考え、一瞬で勝負を決めざる得なかったのだ。

 困る悟飯に対し、意外な所から助け舟が出される。

 

「待て、あずみ」

 

 それは英雄だった。彼はあずみを手で制すると無防備な体勢を晒しながら悟飯に近づき、そして立ち止まると大きく頭を下げた。

 

「我と従者達を救ってくれたこと心より感謝する」

 

「英雄様!?」

 

 その行動に驚愕するあずみ。九鬼財閥の御曹司である彼はそう簡単に頭を下げられる立場には無い。ましてや今の悟飯はあずみが警戒したように不審さを持った人物である。

 しかしそれ等の事情を全て放りなげ彼は深い感謝を示したのである。

 

「あっ、いや、そんな気にしないで。当然のことをしただけだし。そ、それより、これを」

 

「むっ、これは?」

 

 悟飯が英雄に3粒の豆を渡す。

 

「これは仙豆と言うもので食べるだけで傷が治る不思議な食べ物です。これをあの人達に」

 

 李とステイシーを指して言う悟飯。食べるだけで傷が治るなど普通は信じ難い話であるが、川神にはアルコールじゃないのに酔っ払う川神水や食べるだけで性格が逆転するキノコなど不思議な物も存在するが故に、英雄はそれを試してみる決断をした。

 

「あずみ、これはお前とステイシーの分だ」

 

「はい、英雄様」

 

 仙豆を二つあずみに渡した英雄は残った一つを持って李に近づいた。

 

「意識はあるか?」

 

「は、はい……」

 

「うむ、ならばこれを食べてみよ」

 

 苦しそうながらも返事を返す李。話が聞こえていたのか、主の命令だからか、仙豆を受け取るとそれがなんであるかを問い返すことも無く迷わずそれを口に入れ噛み砕く。それとほぼ同じタイミングであずみより仙豆を受け取ったステイシーも同じように仙豆を口にした。

 

「こ、これは!?」

 

「おいおい、これはどんなマジックだよ。それともゴットのミラクルか!?」

 

 二人から同時にあがる驚きの声。仙豆の効果によって彼女達の傷は一瞬にして完治したのだ。消えた痛みと自由に動く身体に二人は信じられない面持ちだった。

 

「まさかこれほどの効果があるとは。あずみ、お前も食すがよい。二人に比べれば軽症とてお前も軽くは無い怪我を負っているであろう」

 

 二人の怪我が治り、効果が確認した所であずみに仙豆を薦める英雄。しかしあずみは何故かそれを食べようとせず、悟飯の方を向き、彼に問いかけをした。

 

「おい孫、これは古傷にも効くのか?」

 

「えっ、それはどうなのかな? あっ、でも僕のお父さんが昔大怪我をした時、怪我をしてから1ヶ月後に仙豆を食べて後遺症とかは全く残らなかったから、そういう障害にも効くかも」

 

 突然の問い戸惑いながら憶測を交えて答える。その昔、べジータとの戦いで通常の医療では元に戻らない程の怪我を負った悟空。それから1ヶ月が経過し、サイヤ人の生命力ならある程度怪我の治癒は進んでいた筈である。にも関わらずその後で仙豆を食べた悟空は身体に一切の不調を残さなかった。つまり仙豆には身体の間違った治癒をある程度修正する効果もあると考えられる。とは言え、天津飯やヤムチャの傷跡は消せないなどあらゆる状態をカバーする訳でも無いことも確かである。古傷に対し、実際どこまで癒せるのかは試してみなければわからなかった。

 

「……英雄様、これは英雄様がお試しください。もしかしたら腕が治るかもしれません」

 

 その答えを聞いたあずみは仙豆を英雄に献上しようとする。実は彼はその昔、テロの起こした災害で腕に傷を負い、今もまだその後遺症を負っているのだ。

 

「何を言う。あずみよ、我はいらん。それはお前が飲め。他の怪我はまだしもその頬の傷は九鬼の医療技術を持ってしても消すことは難しいだろう。女の顔に傷など残すものでは無いわ」

 

 桃白白の舌によって貫かれた頬。このままではかなり酷い傷跡が残るのは間違いない。古風な感性を持つところがある英雄からすれば治療の手段があるにも関わらず、それを蹴って女の顔に傷を残すなど到底容認できることではなかった。

 

「それは英雄様の腕も同じことです。私の顔などより、英雄様の方を」

 

「ならん!! 会社経営をするだけであるならば、我の腕はそれ程のハンデにはならん。仮に腕が治ったとしても、我には既に背負うものがある。今更、嘗ての夢を追う気も無い」

 

 英雄は嘗てプロの野球選手を目指しており、それに足る才能も周囲の同意も得られていた。しかし怪我によってそれを断たれたのである。一つの仙豆を巡り互いに押し付けあう主従。両者は譲らずその意見は平行線の状態となる。

 

「あの」

 

 だが、この状態は単純なある方法で解消できる。

 

「そういうことならもう一粒だけ仙豆を渡しますからどうぞ二人で食べてください」

 

 要は仙豆が二人分あればいいのである。そうすれば譲り合う必要等なくなる。当然、このことは二人とて少し考えれば簡単に気づけたことだ。しかしそれを言わなかったのには理由があった。

 

「むっ、しかし良いのか。それは貴重なものであったりするのでは?」

 

「確かにかなり貴重なものですけど。でも、僕も女の人が顔に傷を残すのはあまりよくないと思いますし。けど忍足さん、とても譲りそうに無いですから」

 

 仙豆の貴重性を予測したからこそ安易にもう一粒くれとは言えなかったのだ。しかし悟飯の方から申し出を出してくれたことで英雄はそれを受け取る決断をする。

 

「そうか。ありがたく頂戴しよう。では、あずみ、同時に食すぞ」

 

 一粒で十分な効果が得られなかった場合、忠誠心厚い従者はもう一粒試してみようなどと言いかねない。そう考えた英雄は同時に口に入れるよう指示する。その予測通りのことを内心で考えていたあずみだったが、主がひくことは無いと考えその命令には従うことにした。

 そして両者は同時に仙豆を齧る。するとあずみの頬の傷が消え、その他の怪我も治癒される。ここまでは予想通り。問題は英雄の方であった。

 

「英雄様、どうですか?」

 

「どう、九鬼君?」

 

「……」

 

 心配そうに尋ねる二人に対し、英雄は無言で足元に落ちていた石を拾った。

 そしてそれを思いっきり投げた。街頭の光に照らされ、夜間でも見失うことなく飛んだその石は100メートル以上先にまで飛んで行ったのである。プロ野球選手並の見事な遠投であった。それが出来ると言うことは、つまり彼の腕が完全に完治した証であった。

 

「ふははははは。九鬼英雄、大復活である」

 

「英雄様!!」

 

 哄笑をあげる英雄と歓喜の声をあげるあずみ。悟飯も嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

「よかった。治ったんだね」

 

「うむ。孫悟飯よ。お前には返しきれぬ程の借りができた。故に我はお前の正体については言及せぬし、言及させぬ。お前自身が望まぬ限りな。そして我は今よりお前を友と呼ぼう。何か困ったことがあれば何時でも我を頼るがよい。我は友としてお前を助けよう」

 

 突然の友人宣言。これは単に借りができたからでなく、利益もなく、寧ろデメリットが覆いにも関わらず自分や従者を助けに現れ、更に見返りも求めず貴重な仙豆を差し出してきた悟飯の心の広さに感銘を受けたからの言葉でもあった。

 

「えっ、あの」

 

「おい、まさか、英雄様の友になるのが嫌ってんじゃねえだろうな」

 

 しかし行き成りそんなことを言われた悟飯の方は当然戸惑う。そんな彼を見て、あずみは睨みつけた。

 

「あっ、いや、そういう訳じゃあ。えと、じゃあ、よろしく九鬼君」

 

「英雄でよい。我もお前のことは悟飯と呼ぼう」

 

「わかった、よろしく英雄」

 

 握手をする二人。こうして友人となる二人。その後、よくも悪くも裏表の少ない二人は思いの他、意気投合し友情を深めていくのだった。

 

「あっ、そうだ。早速だけど、その頼みたいことがあるんだけど」

 

「むっ、なんだ。何でも言うがよい」

 

 そして握った手を離した所で悟飯があることを思い出し、申し訳なさそうな顔をしながら願いがあると告げる悟飯。それを英雄は歓待した。

 

「あの、その……」

 

「遠慮はいらん。我とお前は既に友なのだからな」

 

 願いを告げることを少し躊躇う悟飯。そこで英雄に再度促され、それで決意したようにその願いを告げた。

 

「読書感想文の本貸してもらえないかな?」

 




<設定解説という名の言い訳>

題名通り、設定に対する言い訳です。
小説の設定は作中で語るべきとか言い訳とか要らないという人はスルーしてくださっても結構です。

それでは読んでいただける人、壁越えについてこの作品での設定を解説させていただきます。
真剣恋原作で数十メートルの高さまでジャンプできる小雪が「脚力だけなら壁越えクラス」と言われています。これを基準にすると、第21回天下一武道会時のクリリンやナム当たりは「身体能力的には壁越えクラスだが技量の関係で壁の上位」、悟空や亀仙人レベルからが壁越えとするのが妥当ではないかと考えられます(月破壊は真面目に考え出すと矛盾が多くなりすぎてまともな考察ができなくなるので半分ギャグと捕らえて無視します)。
しかしここで問題となるのは百代の強さがサイヤ人編のクリリンレベルという原作者のコメントがあることです。これを基準にすると百代以外の武道四天王は最低でもラディッツ戦の悟空と同等以上の強さを持っていないと辻褄が合わなくなります。特に1対1でも百代とある程度戦える燕や揚羽は戦闘力にすれば1000以上、どんなに低く見ても700~800はあるでしょう。個々の武器の扱いでは燕は一子レベル以下であることも述べられているため、技量で戦闘力差を埋めているという逃げ道すら封じられてしまっていますし。
そして壁の上らしい淋沖が正攻法の戦いでは燕といい勝負をしてしまっているため、壁越えギリギリのラインと武道四天王クラスとの間にはそれ程大きな差が無いことがわかります。そのため、亀仙人(戦闘力120)を壁越えと考えると矛盾が起きてしまいます。

このような矛盾に対し、設定と描写の中間を取って戦闘力250程度、つまりピッコロ大魔王レベルより上を壁越えレベルと設定しました。ただ、それではマヤリト大陸の旧世代達人達の扱いが余りに酷くなってしまうため、亀仙人、鶴仙人、桃白白、武泰斗様、悟飯じいちゃんの5人は全盛期は壁越えクラスであったが、平和で修行を怠ったり老化により壁越えより下のレベルになった、鍛え直せば壁越えクラスに復帰できると言うのがこの作品での設定です。納得できない方もいるかもしれませんが、ご了承いただけるとありがたいです。
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