久々の投稿の割りに短いですが、生存報告を兼ねてアップします。
ウルトラナメックマンとヒューム。2回戦、第一試合を戦う両者が舞台で向き合っていた。仲間達の隣、観客席に座る百代は、真剣な表情で二人の姿を見つめながら自身の考えを述べる。
「この試合が事実上の決勝戦と言ってもいいだろうな。二人の実力は他の参加者と比べても余りに抜けている」
「1回戦を見ても二人が凄いってのはわかったけど、そこまで圧倒的なのか?」
その言葉に対し尋ねる大和。1回戦を見れば二人が強いと言うことはわかる。しかし大和は一般人だ。昔から百代の側に居た分、常人よりは大分目が肥えているし、回避能力などそこらの一般人よりは上であるが、あくまでその程度。彼の視点からすれば壁を越えたレベルの武術家は皆、次元の違う強さの持ち主。見ただけでその優劣を比べることなど出来ないのである。
「ああ桁違いだ。仮に他の参加者が束になってかかったとしてもあの二人には適わないだろう。1対1では勝負にすらならないだろうな」
「そ、そこまでなのか」
百代の答えに目を丸くする大和。大会の参加者の中にはルー師範代など彼も知る実力者が複数含まれている。彼が驚くのも当然であろう。しかし百代が言おうして言わなかった言葉を聞いていれば更に驚愕していただろう。彼女が言わなかった言葉、それは『仮に参加者の中に私が加わっていてもな』と言うものであった。
「世の中広いな。ちなみに二人の内どっちが勝つと思う?」
驚きから覚め、気を取り直した大和の再度の問いかけに百代はしばし悩んだ表情を浮かべた。それははっきりとした答えを持っていなかったからでもあるし、下手に答えてウルトラナメックマンの正体がばれれば悟飯との約束を破ってしまうと思ったからでもある。
「……正直予想がつかないな。1回戦ではどちらもまるで本気を出していなかった。流石にあれだけでは実力を完全に測りきるのは無理だ。見えた一端だけでもとんでもないのは間違いないがな」
言葉を纏め、無難な答えを返しながら百代は内心である期待をしていた。
(悟飯の奴が隠している真の実力、ヒュームさんならひきだせるか?)
悟飯の実力に関し、一緒に修行するようになった今も、自分以上ということしか把握しきれていない。故にこの戦いで彼の真の実力が見られるのではないかと望んでいるのだ。
そしてその願いは一部ではあるが適えられることになる。この日、百代だけでなく、この会場に居る者達は目にすることになる。壁越えと呼ばれる常識の壁を越えた実力者達、そんな彼等の常識さえも越えた世界が存在することを。武術界を揺るがすその衝撃の始まりはこの後、直ぐ展開されることになるのであった。
試合舞台、そこでヒュームが動きを見せる。中腰で拳を上にあげた構えをとると気合の雄たけびと共に気を高め始めたのだ。
「うおおおおおおお!!!!!!!」
膨れ上がって行く気。それ自体はあるレベルを超えた武術家にとっては珍しいことでは無い。問題はその気があまりに膨大なものであったこと、そしてその膨れ上がった気と呼応するように、試合舞台が、いや会場である舞浜スタジアム全体が揺れ始めたことであった。
「うおっ、何だ地震か!?」
「いえ違います!! あの人が発する力があまりにも強すぎて、会場全体を揺らしているんです
「嘘でしょ!? そんなのもう完全に人間業じゃないじゃない!!」
解説されたその言葉に、あまりにも非常識なその内容に驚愕の声をあげるモロ。最もそれは状況を説明した由紀江自身全くの同意見だった。彼女の基準からしてもそれは十分に人間離れした事象だったからだ。
「うわわわわ」
会場中がパニックになる中、一番動揺しているのは審判だった。何せ、震源地から2番目に近い位置に居るのだ。体感で震度4レベルの揺れを感じている状態である。
必死に落ち着こうとし、そしてそこで揺れが止まる。それにより落ち着きが取り戻されるが、一部の者達は未だ驚愕のままだった。その驚愕している者達は気を感じ取れる者達である。
「信じラレないヨ」
「まさか、こんな」
「化け物が!!」
(まさかこれほどとは……。半年前の私の10倍以上、今の私と比べても4倍近いぞ!?)
半年前の時点で既に世界最強、無論マヤリト大陸は除くが、それでもその位置に限りなく近い立場に居た筈の百代の10倍以上と言う文字通り桁外れの力。その強大な力に恐れおののく武術家達。
そして更に一部の者達はより異常な存在に気づく。
(この状況でも悟飯の奴の方は未だ全く気を感じない。気を抑えているのだとしたら、あいつにとってはこの力さえ警戒するに値しないと言うのか? それとも悟飯だという私の予測が間違っているのか?)
圧倒的な力を持った怪物にさえ怯んだ様子を見せない対戦者、ウルトラナメックマン。 彼の異質さが否応無く目立つ。
「おい、審判」
「あっ、はい。申し訳ありません。それでは……」
ヒュームに睨まれ慌てて試合開始の合図をしようとする審判。しかしそこで言葉を阻まれる。
「その前にもう少し離れておくんだな。巻き込まれては命の保証が出来んぞ」
「わ、わかりました。そ、それでは始めええ!!」
忠告に従い二人から離れて開始の合図を告げる審判。その瞬間、ヒュームの姿が試合舞台から消える。実際にはあまりも高速で動いたために消えたように見えただけであったが、この場に居た者達にはそう見えた。そう、『壁を越えた武術家』と呼ばれる実力者達にさえも。
「うおおおおお!!!」
一気に間合いを詰めたヒュームによるラッシュ。最早秒間何発と数える気にすらならない凄まじい連打。無論、威力も相応でウルトラナメックマンと激突し、凄まじい轟音を鳴り響かせる。その迫力ある光景に観客達は目を奪われるが、百代のみは別の点に着目していた。
(悟飯の奴、あの凄まじい連打を全て捌いている!! あの速さに完全に対応してるぞ。それに全く無駄の無い動きだ。今、思えばあいつと初めて戦った時、パワーやスピードは凄かったが、技のキレにさえが感じられなかった。だが、今のあいつにそんな弱点は無くなったようだな)
驚愕の実力を見せたヒューム。しかし悟飯の実力はそれ以上と確信し、悔しさと共に興奮を覚える百代。
そしてそこで試合の様子は変化を見せた。
「はっ!!」
それまで相手の攻撃を防ぐことだけに専念していたウルトラナメックマンが動きを変え、左手を大きく振るい、ヒュームの拳を弾き飛ばす。
そしてそれにより体勢が崩れたヒュームの脇腹に右拳を打ち込もうとした。しかもその拳には先程まで捌いていた攻撃を越えた威力が込められている。直撃すれば一発で勝負が決まってもおかしくない。
しかし腹部を狙ったその一撃は当たらなかった。直撃しなかったのではない。当たらなかったのだ。体勢を崩していた筈のヒュームが突如今までを遥かに超える速度を見せ、その一撃を回避したのだ。
「なっ!?」
完全に捕らえたと思った攻撃が避けられたことでボイスチェンジャーで変換されたウルトラナメックマンの驚愕の声が漏れる。
そして動揺は隙を産む。その隙を逃すまいと右隣に回りこんだヒュームの裏拳が頭部目掛けて迫った。
「くっ」
上体を逸らし何とかその一撃を回避。そのまま身体全体を回転、バク転を繰り返し距離を取るウルトラナメックマン。
そして”赤い気”に包まれるヒュームの姿を目に納めた。
「まさか!?」
「どうした? 父親の技をこの俺が使うのが不思議か?」
漏らした言葉に対し返ってきた答えは2重の意味で衝撃を与えた。界王拳を使えるのは界王に師事を受けた者と、彼等を通し技を教わった仲間達だけである。
そしてその中でその中で子供が居るのは悟空とクリリンだけ、しかしクリリンの子供はまだ幼い。つまりはヒュームの言葉はウルトラナメックマンの正体が悟飯だと確信しており、同時に彼が悟飯の父、孫悟空と何らかの接触を過去に果たしていることを意味していた。
「くくっ、偽名を使っても、住所や電話番号を馬鹿正直に書いては何の意味も無いぞ」
「あっ」
変装し、声も変え、気も隠してきたにも関わらず何故ばれたのか、そんな疑問を抱くウルトラナメックマン、いや悟飯にヒュームが種明かしをする。大会申し込みの参加用紙、そこからばれたのである。
あまりにもまぬけなミス。しかしそのミスを指摘するヒュームの声に嘲る感じは混ざっておらずどこか楽しそうであった。
「こういう間の抜けた所は父親そっくりだな。安心しろ、データは改ざんしておいてやった。お前の正体に気づいているのは今の所、俺だけだ」
「あっ、ありがとうございます」
その言葉にほっとする悟飯。しかし安心したのもつかの間、そこでヒュームは秘密を隠すのにある条件を突きつけてきた。
「ただし、俺に黙っておいて欲しいのならば俺に勝つことだ。正体を隠したいのなら本気でやることだな」
「……わかりました。それから僕が勝ったらあなたとお父さんがどう言った関係だったのかも教えてもらえますか?」
「いいだろう。それでは再開するとするか。っと、その前にウォーミングアップはこれで終わりだ。ここからは俺の方も本気で行かせて貰う」
そう宣言したヒュームは界王拳を解除して見せた。本気と言う言葉から界王拳の倍率を更にあげるのかと予想した悟飯はその行動に訝しげな表情を浮かべる。
そしてヒュームは気を高め、その髪と気の色を”金色”へと変化させるのであった。