気が付けば1年近くが過ぎてしまいました。
とりあえず、これで一区切りです。
「ふう」
ガーリックJr達を見下ろし、一息つく悟飯。しかし、そこで困ったことに思いつく。
「こいつらどうしよう?」
悪とは言え、気絶した相手にとどめを刺す程、悟飯は冷酷にはなれない。それに彼等は未だ人を殺したりした訳では無いため、命を奪われて当然と言える程の悪人とも言えない。
「牢屋に入れても出てきちゃうよなあ」
しかし犯罪者として逮捕しようにも彼等を閉じ込めておけるような施設がある訳も無い。手のうちようが無く困ってしまう。だが、そこで救いの手が差し伸べられた。その救いの手とは悟飯にとって最も信頼する者の声だった。
「大丈夫だ。俺に任せておけ」
「えっ!?」
声に驚き振り返る。すると居たのは緑色の顔にターバンとマントを身につけた存在だった。
その知りすぎた姿に思わず叫ぶ。
「ピッコロさん!!」
「久しぶりだな。それにしても、少し会わない内に随分と見違えたな。いや、昔に戻ったと言うべきか」
1年前とは異なり、精悍さを取り戻した悟飯の姿に嬉しそうな笑みを浮かべるピッコロ。学者と言う彼の夢を尊重しては居たが、同時に師匠としてその類稀なる武術の才能を無駄にしていることを惜しいと感じていた彼にとって、今の悟飯の姿は感慨深いものがあった。
「どうして、ここに!?」
「こいつらの気を感じたんでな」
そう言ってガーリックJr達を指し示すピッコロ。
「悟飯、お前が居れば大丈夫とも思ったんだが、貴様は父親に似て甘いところがあるんでな。ヘマをする恐れもあると思い、急いで駆けつけてきた」
「ははっ」
ピッコロのやや皮肉的な言葉に苦笑いする悟飯。
今回は杞憂に終わったが、父親との、いやサイヤ人共通の悪癖として悟飯には油断や慢心をしやすく、隙が多いと言うのがある。セルとの戦いの時もそれで大きな痛手を負ってしまっている。
「まあ、今回は上手くやったようだな。よくやったぞ悟飯。さてと、目を覚ます前にこいつらの始末をするか」
「どうするんですか。まさか」
ピッコロの言った始末と言う言葉に警戒する悟飯。しかし昔ならともかく、今のピッコロは悟飯達と同じように無抵抗の相手を安易に殺したりすることは無い。
「心配するな。命までは奪ったりはせん」
そう答え、彼が取り出したのは栓がされた一つの小瓶だった。その小瓶には『大魔王封じ』と書かれている。
その瓶を地面に置き栓を外すと、ガーリックJrに向けて両手を向けるピッコロ。
「少々狭いが、我慢するんだな。貴様等にはお似合いの監獄だ。はーーーーーー、魔封波!!!」
そして彼が気合をため、叫びをあげる。すると、4人がまとめて瓶の中に吸い込まれた。それを確認し、瓶に栓をするピッコロ。
「これでよし」
「凄い。こんな技が。けど、それどうするんですか?」
初めて見る技に驚く悟飯。しかし、瓶の中に吸い込んでその後どうするのかと疑問に思う。其れに対し、少し考えるそぶりを見せた後、ピッコロは魔王だった頃を思わせる凶悪な笑みを浮かべ、答えた。
「そうだな。しばらくしたら解放して神殿で召使としてこき使ってやるか。こいつ等がパワーアップしたのは魔凶星と言う星の力だ。その星が遠ざかれば俺やお前は勿論、クリリンやヤムチャでも簡単に鎮圧できる程度でしか無い。そうそう悪さも働かんだろう」
なかなかきつい処遇を告げるピッコロ。ガーリックJr達は哀れだが、自業自得だ。ピッコロに任せようと悟飯は考える。
そしてそこで百代達が近づいて来た。その表情は放って置かれて置かれたためかかなり不機嫌である。
「おい、悟飯。そろそろ私達にその人のことや状況を説明してくれないか?」
「あっ、はい。この人はピッコロさんと言って、僕の師匠で……」
ピッコロのことを説明する悟飯。ガーリックJrのことに関してはマヤリト大陸の犯罪者と言うことで、自分が警察に引き渡して置くと言う嘘の説明がピッコロより告げられた。
「悟飯の師か。ピッコロさん、私とお手合わせお願いできませんか? それとできれば指導も!!」
話を聞いてバトルマニアの百代が試合を申し込む。
そしてここまでくれば自分を遥かに上回る強さなのだと言うことはわかっていると言わんばかりに指導も申し込む。自分を遥かに上回る強者の存在に自信ややる気を失ってもおかしくは無かったが、どうやらある種の開き直りに至ったようだった。
「くくっ、まるで孫のようだな。いいだろう、気に入った。少しばかり鍛えてやろう。なんなら、お前達も一緒にな」
百代のそんな姿に悟空を思い出し、楽しそうにする。
そして百代を鍛えることを承諾した。これは彼女を鍛え、成長させることが今後も悟飯が修行を続けるいい刺激になるかもしれないからと思ったからである。更についでとばかりに一子達にも声をかける。
「えっ、本当!!」
当然食いつく一子。引き離されては堪らないと燕達も参加を表明した。
そしてタイミングを見計らっていたのだろう。話の区切りがついたところでヒュームが口を挟んできた。
「話はまとまったようだな。お前達に一つ告げなければいけないことがある。こんなことになった以上、大会は一部中止となるだろう。準決勝と決勝はおそらくは行われない。決着をつけたければ本戦でつけるがいい。だが、一試合だけ省略する訳にはいかない試合がある」
「それって、もしかして一子ちゃんの試合かな?」
ヒュームの言葉にピンと来るものがあったのか燕が確信に近い問いかけをする。その言葉に対し、同じく答えに辿り着き、何時の間にか客席から降りてきていた大和が解説を引き受けた。
「準決勝進出者は4位以上が確定してるから本戦行きが決定してるし、ガーリックJrは今回の件で失格。そうなると残りはワン子と淋沖って人とヒュームさんの3人。けど、ヒュームさんは九鬼の関係者として今回の件の責任もとって辞退し、残り二人で最後の本戦出場を争うってとこじゃないかな?」
「なかなか勘のいい赤子だな。凡そ当たりだ。だが、俺の辞退の理由だけは間違っているな。俺は元々今日の試合で武術家を引退するつもりだった」
「えっ、そうだったんですか」
「ああ、俺はあの試合で満足した。今後は後進の育成を行うつもりだ」
長く現役を宣言していた男が退くことを宣言する。
そして一子に目をやった。
「赤子。お前にも期待しているぞ。才能の無いお前がここまで来たこと、正直驚いている。今後、どこまで行くか多少興味がある。立場上肩入れはできんがな」
「えっ、それって……」
「んと、ワン子を応援してるってことか?」
「多分そうじゃないかな」
呆気に取られたような表情の一子。風間の呟きにモロが自信なさげに肯定の意を返す。
「それではな」
去っていくヒューム。
そして実力者に認められた一子はめらめらと瞳を燃やす。
「気合入ってきたわ。5位決定戦まで再修業よ!!」
気合に燃える一子。
そして、それから3日が経過。突貫工事で最低限に整えられた会場では、一子と淋沖の5位決定戦が繰り広げられていた。
「はっ!!」
「ぐっ」
両者の攻防、互いに手傷を負い、体力も消耗して来てはいるが、優勢なのは一子のほうであった。そして決着の時は訪れる。
「これで、とどめよ破砕点穴!!」
一子の薙刀の一撃が炸裂。それをまともに喰らい、崩れ落ちる淋沖。そのダメージは大きく、そのまま彼女が立ち上がることはなかった。
「勝者、川神一子!!」
「よっしゃ、よくやったぞワン子!!」
試合終了、勝者が告げられ、観客席から歓声がとんだ。一子はそれに対し、満面の笑みで答えられる。
そして一子の勝利を喜びながら、悟飯達は冷静に試合の評価をしていた。
「一子さんの相手、動きがおかしかったですね」
「うん、そうだね。多分、この前の葉桜さんとの試合でどこか痛めてたんだと思うよ」
「それが無ければ正直、勝敗は逆になっていたかもな。とは言えワン子の成長も確かだ。今日は、素直に褒めてやろう。そして思いっきり可愛がってやるぞ」
ちょっと怪しい雰囲気を漂わせる百代。とにかくこれで全ての本戦出場者が決定、悟飯、ルー、燕、清楚(項羽)、一子、そしてシードの百代を加えた6人が本戦へと進むことになった。
そして大会本戦まで残り3ヶ月、各自が大会を目標に修行を開始する。
本戦でどのような戦いが繰り広げられるのか、それは未だ誰も知らないことであった。
今後の展開についてですが、予定ではDB映画のあるボスと対決、大会、それで最後にあるキャラを登場させて完結と言う予定でした。
けど、話を膨らませた結果完結できないのではあれなので、完結を優先し途中をはしょるかボスとの戦いを挟むか迷っている状態です。