東方絵札録~Card In The Illusion Village~ 作:竹馬の猫友
うp主「誰も新しい能力を与えたからって強くなるとは言ってないぞ。」
雪茂「・・・。」
うp主「ま、いつか役に立つって。」
雪茂「あぁ、うん。」
いつか(いつとは言っていない。)
本編どぞー。
UA2500超えました!ありがとうございます!
人を一人殺した。
能力でその存在が気付けなかった所為だといえばそれまでだろう。だがそれでも僕は人を一人殺した。
今自分の目の前に転がっている死体にも家族がいたかもしれない。家族の稼ぎ頭だったかもしれない。そんな人の命を僕は奪ってしまった。
「うっ…。」
唐突に吐き気を催す。刀から手を離し、両膝を付いて必死に吐き気を堪える。
死体からとめどなく流れる血が僕の手に触れる。ヌチャッとした粘性の液体が僕に不快感を与えてくる。男達がまだ何か言っているが僕の耳には届いてこない。ただ、自分の行った、偶発的とはいえ犯した殺人にとても傷心していた。少し冷静になろうと男達のほうに思考を向ける。
「なぁ、おいってば。おい!…おい、どうするよ。壊れたかもしれねーぞ。」
「…知らない。壊れたならそれまで。…次のを用意すれば良い。…こいつもたった一人死んだだけでこうなっちゃった。」
「…はぁ、興醒めだ。完全にやる気なくなった。帰んぞ。」
そう言うやり取りが聞こえたと思うと男達の気配がどんどん遠ざかっていった。その間僕は終始下を向いていた。前を向くといやでも自分の切った死体が見えてしまうから。
そして男達が完全に離れて気配も感じなくなったところで僕は泣いた。誰とも分からない、面識の無い死体の前で泣いた。なぜ泣いたのかは自分でも分からない。
演技をしていたのを読まれて計略をかわされたことだろうか。犯人を逃したことだろうか。それとも人を切ってしまったことか。なにが原因か自分にも分からない。
ただ目からは涙がとめどなく溢れて両の頬を伝い、地面に落ちた。
ガチャッと小屋の扉が開く音がする。犯人の気配が消えたのを感じ誰かが確認の為にあけたのだろう。
「…あのー、大丈…夫……?―――え?……ゆ、雪茂さん!」
どうやら妖夢ちゃんだったらしい。先程まで慎重に開けていた扉を勢い良く開けこちらに駆け寄ってくる。トンと左腕に軽い衝撃がくる。そちらに目をやると妖夢ちゃんが左腕ごと僕のことを抱きしめていた。悲しそうな顔で。
「…犯人は、」
「…はい。」
「犯人は逃げたよ。ごめん。祢々ちゃんの仇討てなかった。」
そう、祢々ちゃんを殺したあいつらを僕は倒そうとしていたはずだった。それこそ殺す気で挑んでいた。はずなのに、
「それに僕は人を一人殺してしまった。」
「…この死体は雪茂さんが…。」
「…あぁ。」
僕はそれ以上何も言わなかった。妖夢ちゃんも僕の言葉に耳を傾け返事をするだけでそれ以上何も言わなかった。同情しているのだろうか。それとも人を一人殺した殺人者として僕を見下げているのだろうか。しかし妖夢ちゃんの表情からはそういった感情は受けて取れなかった。
「大丈夫です。」
「…何が?」
「こう言っては雪茂さんを少し傷つけてしまうかもしれませんが、確かに祢々は守れなかったですし、里の方でしょうか。その方の命を奪ってしまいました。ですが今回犯人を逃がし人を一人命を奪ってしまったのは雪茂さんが弱かったからです。」
ズキンと心が痛む。そうだ。妖夢ちゃんの言うとおりだ。何がチートのような能力だ。それを使いこなす人間が弱ければ駄目じゃないか。それにさっき魂に取り憑いている宗茂さんから与えられた能力を混乱により使うのを忘れていた。完全に僕が弱い所為だ。体も心も。
「…だからあなたは鍛えなければいけません。今後こういったことのないように。過ちを繰り返さないために。」
「…うん。」
僕はただ弱々しく返事をすることしか出来なかった。そんな僕達を悲しむように空から雨が降ってくる。豪雨と言うまでではないが強い雨。僕を、妖夢ちゃんを濡らし、体についた返り血を流していく。ただ服に付いた血は完全には流れずじんわりと服に広がっていくだけだった。
「雪茂さん。とりあえずあなたは今休まなければ駄目です。」
「そうね。そうしたほうがいいわ。」
先程までいなかったのに急に妖夢ちゃんの後ろから声が掛けられる。その声に妖夢ちゃんはビクッとして僕から離れる。そして少し間を置いて声の人物は気にせずこちらに話しかけてくる。
「雪茂君。また白玉楼に行きなさい。今のあなたにはそっちの方がいいわ。」
そう言ってその声の人物は指を鳴らす。すると僕の右隣に空間の裂け目が現れる。…あぁ紫さんだったのか。ならばこのスキマはおそらく白玉楼に繋がっているのだろう。しかし、
「…行けません。僕は幽々子さんに顔向け出来ません。」
僕は断った。
祢々ちゃんを守れなかった。祢々ちゃんは白玉楼の居候。たぶん妖夢ちゃんとは友達のような関係で幽々子さんとは主従のような関係だったのだろう。だがその祢々ちゃんはもういない。
「僕は祢々ちゃんを守れなかった。犯人も逃した。きっと幽々子さんはそんな僕を蔑むでしょう。せめて謝罪はしたいです。ですが僕には白玉楼で過ごす権利は無いです。」
「そんなことっ!」
「ちょっとまって妖夢。」
妖夢ちゃんが僕の言葉に異論を唱えようとしたがそれを紫さんが手で制止させる。何かを言いたそうにしているが紫さんは気にせず口を開く。
「雪茂君。私はあなた達が犯人と対峙している間白玉楼にいたわ。幽々子と話をしながらあなた達を待っていたのよ。そんな時ね幽々子がこう言ったのよ。「これは勘だけどたぶん祢々は近いうちに死んでしまうわ。あっけなくね。でも私は悲しまない。なんでかわかる?」と。雪茂君は幽々子がこの後なんて言ったかわかる?」
「…わかりません。」
「まぁ普通分からないわよね。なぜ?と幽々子に尋ねると随分あっさりとした口調でこう言ったわ。「死んでも祢々という魂まで完全に消えることは無いわ。ならばその魂を何かに定着させてその中で生かせればいい。」そういったのよ。」
魂を…定着させる。
そういえば宗茂さんは僕の魂に取り憑いてるといってたっけ。そのような感じだろうか。
今の紫さんの説明で少し気が楽になった。幽々子さんは悲しんでいない。祢々ちゃんの死を死ぬ前からもう受け入れている。ならば僕もここで引きずっているわけにはいかない。
「…あり、がとう、ございます。」
「ほら、いつまでも泣いてちゃだめよ。涙を流した分だけ強くなれるというけれど流し過ぎると心が涙に飲まれてしまうわ。だから今は前を向いて今自分がすべきことを考えなさい。…ここの処理と霊夢と魔理沙は私に任せて妖夢と行きなさい。」
いつの間にか流れていた涙を服の袖で拭い少し枯れた声で「はい。」と答える。妖夢ちゃんも心配そうな顔から少し安堵した顔で僕の元へと歩いてきた。そして両膝を付き座っている僕に手を差し伸べてくる。
「…行きましょう。」
「…うん。ありがとう。」
その手を取り僕は立ち上がる。いつの間にか雨は止み、体と服に付着した血液はほとんど流れていた。
「少しはいい顔になったわね。最後に一つアドバイスよ。」
「…なんでしょうか。」
アドバイスか。能力に関することだろうか。戦い方に関するもの、修行方法。色々考えてみる。紫さんだったらどれでもありえそうだ。
「あなたはもっと人を頼りなさい。あと信頼できる人を一人作りなさい。…ってこれじゃ二つね。まぁいいわ。アドバイスはそれだけ。それじゃ行きなさい。」
「はい。」
人を頼る、か。確かに先程の戦いは最終的に僕が全て背負ってしまっていた。その背負ったものを半分に出来ていたら今回のような結果にならなかったのかもしれない。だが、僕はそれをしなかった。いや、出来なかった。まだこちらに来て日は浅い。そこまで親しい人もいない。紫さんはそれを見越していたらしい。たぶんそのために信頼できる人を作れと言ったのだろう。
紫さんから与えられたアドバイスについて考えていると不意に手を引かれる。
「さぁ帰りましょう。私
「…うん!」
その様子を見て紫さんは顔に笑みを浮かべていた。紫さんに一礼をしてスキマを妖夢ちゃんと潜る。
紫さん。もしかしたら僕には信頼できる人がもう出来たかもしれません。
閲覧ありがとうございます。
と言うわけで一旦戦いは終了です。
そもそも戦いと言っていいものだったのかは分かりませんがね。
そういえば章分けとかしてみようかなとか考えてみたり。
気が向いたらしますねー。
また次回も宜しくですー。
てか、最近カード要素少ないなー。もう別の話になってる気がする、のは気のせいですよね?きっと気のせいです。