今回は某イラスト投稿サイトで見つけた『宮藤芳佳中佐』の設定からできたものになっています。素人ながら精いっぱい考えて表現したものをどうかご覧ください
物語において『IF』というのは数多くある。もしも別の選択をしていたら、もしもとある人物の生死が変わったら、そう思ったことはないだろうか。私たちが知らない世界で、もしかしたらその『IF』があるのかもしれない。
これは一人の人物の死から分岐した中の複数ある可能性の一つの物語…
───私は甘かった
───人型のネウロイと接触した時、もしかしたら分かり合えるかもしれないと思っていた
───それが間違いだと、あの時の私は気づかなかった
『何をしている宮藤!』
『坂本さん…!』
『撃て!撃つんだ、宮藤!』
『違うんです!このネウロイは…!』
『何をしている!?早く撃て!』
『駄目です!待ってください!』
『惑わされるな!そいつは人じゃない!』
『違うんです、そんな事では…!』
『撃たぬならどけッ!!』
───護るために敵を撃つ覚悟があの時の私はブレてしまった
『きゃあぁー!?』
『少佐!?』
『坂本さんッ!?』
───奴らとわかりあえるという幻想を抱いてしまった
『あ…あぁ…』
『坂本さん、目を開けて下さい…!坂本さん…坂本さん…!坂本さん!!』
───あの時、私にもっと力があれば坂本さんは助かったかもしれない
『坂本美緒大佐は名誉の戦死を遂げた』
『美緒…美緒…!』
『彼女は上官、部下からの信頼も厚く、大変素晴らしい軍人であった』
『坂本さん、どうして…』
『その戦役を終え、ネウロイの脅威から解放された彼女は……』
───坂本さんが治癒魔法をかけ続けても助からないと知った時に涙は流し尽くした
『貴方のせいよッ!!貴方が勝手な行動をとらなければ坂本少佐は!!』
『あのネウロイの事もですわ!いくら人の形をしていてもあれはネウロイです!!』
『すぐに落とさなかったあなたの甘えが、少佐を殺したのよ!!』
───そう、坂本さんを殺したのはネウロイではなく
『私が殺したの』
───私はようやく理解できた
───ネウロイは人類の敵であり、殲滅するべき悪であると
『あなた…』
『ペリーヌさんの言う通りです』
『ネウロイと分かり合えるかもなんて
『そんな甘え切った精神で戦場に出ていた自分に、反吐が出ます』
───自分の甘さで人類にとって大きな損失を生んでしまった
『坂本さんはまだ死ぬべき人じゃなかった』
『もっと多くの人を救えただろうし、もっと多くのネウロイも倒した筈です』
『だから私は坂本さんの分まで……』
───人を救うなんて事私にはできないから
───最期の時まで命燃やして
『ネウロイを殲滅してやる…!』
~~~~~~~~1948年 第501統合戦闘航空団基地(以下501JFW)・海岸~~~~~~~~~
地平線の彼方から太陽が顔を覗き始める頃、一人の女性が海岸沿いで扶桑刀を振るっていた。日に照らされる長い黒髪を後ろに纏め上げてポニーテールにし、扶桑で着用される青と白の制服を着たその女性は、演舞を魅せるが如く華麗な技を披露する一方で、彼女が発する殺気に似た雰囲気は見る者を恐れさせるであろう。
「…フッ!…シッ!」
「ハアァァ…!」
「ズェア!!」
彼女が扶桑刀を振るう度に波が押し寄せて水しぶきが飛び、長い時間行っていた証の汗が飛び散っていく。一太刀振るう毎に圧倒させるような剣幕で続けていた彼女が一度体勢を整えると、基地に設置された時計を確認する。時間を確認すると扶桑刀を鞘に納め、体に滴る汗を近くに掛けてあったタオルでふき取り、水筒の蓋を緩めて中の水で喉を潤わせる。それが終わると元々着ている制服と首にかけている銀色の眼帯の上に、白い軍服を羽織ると基地に歩いていく。
そして今日もまた、彼女……【
午前の訓練を終えた宮藤中佐は、次の午後の訓練の準備に取り掛かろうとしていた。そんな時後ろから声を掛けてくる人物がいた。薄茶色の髪に後ろを三つ編みにし、服の上からでも分かる豊満なバストが特徴であるストライクウィッチーズの射撃手【リネット・ビショップ】少佐である。
「芳佳ちゃん、ここに居たんだね。ミーナさんが芳佳ちゃんに伝えたいこ…」
「何の要件だ
「…すみません、宮藤中佐。ミーナ司令が宮藤中佐に伝えたいことがあるから指令室まで来てほしいと」
「解った」
言葉少なくそう言うと宮藤中佐は指令室へと歩を進めた。リーネはそんな彼女の背中を悲しい目をしながら黙って見つめていた。
坂本美緒の死亡から4年、ネウロイの侵攻は増す一方であった。かつては週一度の襲撃だったのが今やほぼ毎日の上、同時に2体以上出現する日がある程になっていた。更にウィッチの数も激化する戦場により戦死者が続出、また坂本美緒の一件以来から【19歳後半になった者は戦役から降ろされる】規則が新たに生まれてしまい、その数はネウロイの数に反比例して減少の一途を辿っていた。
501JFWもその例に漏れず大きく変わっていった。【ゲルトルート・バルクホルン】と【エーリカ・ハルトマン】は規則に則って戦役から降ろされ、所属していたカールスランド軍に戻っていった。【サーニャ・V・リトヴァク】は軍に残ろうとしたが【エイラ・イルマタル・ユーティライネン】から引き止められ、本来の両親探しの旅に出ていった。【シャーロット・E・イェーガー】も同じく年齢による引退、彼女に着いていこうとした【フランチェスカ・ルッキーニ】をなだめて後にした。また【ペリーヌ・クロステルマン】はあの日以降宮藤中佐に対して考えが変わっていったのをここに追記する。
今の501JFWに残っているのは宮藤中佐、リーネ、ペリーヌ、ルッキーニそして入隊したての新米ウィッチが複数と現在部隊の指揮を執っている
~~~~~~~~~~~~~~~501JFW・司令室~~~~~~~~~~~~~~~
司令室に1人、両手を顎の近くで組んでいる女性が居た。彼女はここ501JFWの隊長を務めている【ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ】准将である。ウィッチとしては引退したが、本人の高い指揮力から今なおストライクウィッチーズを纏め上げている存在である。そんな彼女の机の向こうにある扉からノックの音がした。
「入りなさい」
「失礼します」
その声と共に扉が開かれ宮藤中佐が姿を現した。彼女はミーナの前に進んでいく。第三者から見たらその重苦しい雰囲気に圧倒されそうなものがあった。
「話とは何ですか、ヴィルケ准将」
「それはあなた自身がよく解っていることでしょう?宮藤さん」
「…さて、何の事でしょうか?」
「命令外の単独出撃、ストライカーの無断使用、無謀にもほどがある接近戦での戦闘…挙げればキリがないわね。あなたが躍起になるのは解るけど、軍人としての規律を乱すのは…」
「小言を言うためにわざわざ呼んだのですか?」
「言いたくもなるわね、でもそれは次の機会にしましょう」
ミーナがそう言うと机の引き出しから一枚の報告書を取り出し、宮藤中佐に見えるように机の上に置いた。それは新たに出現したネウロイの巣に関するものであった。
「先日帰還した巡視兵から報告があってね、新たに発生した巣の調査をしたとき見たらしいのよ……4年前のあの日から姿を消した
その言葉を聞いてそれまで静観していた宮藤中佐の表情が一変した。それは憎しみと怒りに満ちた表情でミーナを睨んでいた。彼女はその表情に眉一つ動かさず自身に向けられる目をまっすぐ見ていた。
「先日!?なぜ今になってそんな重要なことを!!奴は私がこの手で討つと…!」
「だからよ。この事を伝えれば貴方は一人出撃するでしょう、
「ッ!」
「調査はペリーヌさんとルッキーニさんに行かせています。もうすぐ帰還するでしょう」
「私は…!」
「話を聞きたければそれまで待ちなさい。それともまた一人で出て仲間を危険にさらす?美緒みたいに」
2人の雰囲気が険悪なものになっているその時、指令室の扉が大きな音を立てて開いた。そこには501JFWに配属されて間もない新人のウィッチの一人が息を切らしていた。ここまで走ってきたであろう彼女は乱れた息を一度整えてから切り出した。
「失礼します!!近海に大型ネウロイが突如出現、現在こちらに猛スピードで接近中です!」
「何ですって!?」
「…!」
「どうやらステルス機能を備えており監視も気づけず、火器の整備もこのままだと間に合わないです!ですのでっ宮藤さん!?」
その時報告を聞いてすぐに新人ウィッチの横を宮藤中佐が通り抜けていった。そして廊下を駆けていく足音と共に彼女の姿は小さくなっていった。
~~~~~~~~~~~~501JFW・発着場~~~~~~~~~~~~
ネウロイ出現に慌ただしくなっているその間を通り抜けて行く宮藤中佐は自身のストライカーユニットの前に到着し装着する。魔力を使用した際出現する犬耳としっぽと足元に広がる魔法陣が出ると飛行準備に移る。魔力によって足元にプロペラが発現して回転し始め、軍服が風に揺れ、背中に装備した扶桑刀の鞘が小窓から漏れる光に反射して煌いた。
「宮藤芳佳、出撃する!」
その一言が発せられると同時に宮藤中佐は飛び出していった。加速を増していくほど体は徐々に前に倒れていき、最後に飛び上がるときに平衡を保って大空へと飛んでいった。後ろから新米のウィッチ達が何かを言っていたがすでに飛び立った彼女には聞こえなかった。
宮藤中佐が飛び立って数十分後、彼女の前方数キロ先に大型の飛行物体が接近しているのが確認できた。それがネウロイだと確認した宮藤中佐は背中の扶桑刀の柄を手に取り、鞘から刀を抜いた。日の光に反射するその刃を握りしめ構え、そしてネウロイに向かって高速で接近していく。
自身に向けられる敵意に気づいたネウロイはビームを発射するが、宮藤中佐はそのビームに対して最小限の動きによる紙一重の回避力で避けていく。下手すれば撃墜されかねない程その動きは危ういもので、しかし確実に避けていく。
ネウロイの懐に入り込んだ宮藤中佐は刀に魔力を集中して込めると、その刃は光り出す。そしてその煌く刃でネウロイの上部の装甲に斬り込んだ。
「シッ!」
「ハァ!!」
「ゼァ!!」
宮藤中佐の刃はネウロイの体の一部をまるでバターのように切り裂き、続けざまに再生する間も与えないようにその刃を振るっていった。その間のネウロイによる反撃のビーム攻撃もまるで見えているかのように回避していく。数度彼女の皮一枚削るが、それを気にも留めず刀を振るい続けた。
そしてついに宮藤中佐の眼の前に赤く輝くネウロイのコアを見つけた。それに対して扶桑刀の切っ先をそのコアに狙いを定める。
「…終わりだ」
そう言うと勢いをつけてその刃がコアを貫通していった。そしてネウロイは悲鳴にも似た音を立てた後、砕け散った。ネウロイの体の破片が宝石のよぅに光りながら散っていく中、宮藤中佐は周囲の確認を終えた後一息吐いて、基地へと帰還していった。帰還の途中整備を終えたリーネ達の部隊が合流したが、撃墜したことをリーネに伝えるとまた飛んでいった。また宮藤中佐が出撃した後、調査を終え帰還していたペリーヌ達も別のネウロイと戦闘していたという報告が入っていた。
~~~~~~~~~~~~501JFW・宮藤中佐の部屋~~~~~~~~~~~~
太陽が沈み月が辺りを照らす光が窓から漏れているその部屋に宮藤中佐が入っていった。帰還していつもの無断出撃をミーナに咎められた後、彼女は食事を取って入浴を終えた後である。部屋に入った彼女は棚に乗っている写真立てに目を向けた。そこにはかつての自分と坂本美緒の笑顔が写っていた。その写真の前に彼女は立ち、言葉を紡いだ。
「坂本さん、今日も私はネウロイを撃破しました。そしてあのネウロイの手がかりをようやくつかむことが出来ました。近日中に奴を討伐するための準備に入ります」
待ち望んでいたペリーヌ達の報告によれば、あの日の人型ネウロイは他の巣を行ったり来たりを繰り返しているようで、その情報を元にした討伐作戦を現在練る所であった。ミーナの忠告が聞いたのか宮藤中佐は無断出撃を行わなかった。その報告後、彼女はベッドに入り就寝していった。
~~~~~~~~~~~~???~~~~~~~~~~~~
そこは一面色とりどりの一面の花で埋め尽くされていた。宮藤中佐はその景色の中にポツンと立っていた。彼女が周囲を見渡すと遠くに人影が見えた。その人影に向かって彼女は進んでいった。
段々その姿が視認できる距離になった時であった。その人影は彼女の着ているものと同じ白い軍服を纏っていて、艶やかな黒髪を後ろにまとめていた。そして人影が宮藤中佐のほうへ振り返った。
そこには右目を銀色の眼帯を付けた女性、坂本美緒であった。彼女の元に行こうと宮藤中佐は進もうとするが、そこから先にどうしても進めなかった。それでも彼女は声を上げていった。
『待ってください!坂本さん!…坂本さん!!』
『………』
「私、あれから強くなったんです!大型のネウロイも倒せるようになって、階級も中佐まで上がりました!もう昔の弱い私ではないです!」
『………』
『だから…お願いです…そんな哀しい顔をしないでください…坂本さん…』
宮藤中佐の眼に映る美緒は、哀しい表情であった。その姿も涙でぼんやりとしていた。涙を拭っても、どんなに叫んでも彼女の表情は変わらなかった。そんな様子の宮藤中佐に対して美緒が口を開き、何かを話そうとした。
『───』
『…どうして私は坂本さんが
美緒が何かを話していることは解る、しかし何を言っているのか今の宮藤中佐には聞こえなかった。そして美緒は彼女から顔を背け、進んでいった。それに気づいた宮藤中佐は進もうとあがくが、先ほどと変わらず進めなかった。それどころが美緒も周りの景色も段々遠のいていくばかりであった。そして彼女の必死の叫びも虚しく、自身の意識も遠くなっていった。
窓から漏れる僅かな光に照らされるように目が覚めた宮藤中佐は、上体を起こす。その眼には涙の跡が残っていて、それを拭うと彼女はベッドから床に足を付けて起き上がる。寝汗で着いた服を脱いで汗を拭っていく。その体には無数の傷が残っており、4年間の戦いで着いたものであった。そして着替えを終えると、首に銀色の眼帯を身に着け、立て掛けていた扶桑刀を手に取ると彼女は部屋から出て行った。
「…強くならなくちゃ、奴らを殲滅なんてできない。昨日も僅かに掠ってしまったから…もっと強くならないと…」
自分にそう言い聞かせるようにして宮藤中佐は今日も訓練を行う。あの人型ネウロイを倒すため、ネウロイを殲滅するため彼女は戦う。
復讐に燃える彼女の行きつく先に何が待っているのか、それは未だに分からない…
今回の話はもう一つ書く予定があります。ここでは宮藤中佐の視点で見てきましたが、ほかのウィッチ達の行動や思惑を中心にしたSSも投稿しますので、そちらも見てくださると幸いです。少しでも早く見せられるよう頑張ります。