ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~ 作:TRcrant
まさに奇跡としか言いようがありませんが、内容がスカスカなのは仕様ということで(苦笑)
次は少し時間がかかりそうな気がしますが、早めに投稿できるよう頑張りますので、応援していただけると幸いです。
それでは、どうぞ
こうして始まった僕と神楽の追いかけっこ。
追いかけっことはいえ、フライパンを振り回しながら追いかけ続けている時点で、こういう呼び方をしていいものかとも思うが。
いまだにプリエ内をぐるぐると走り回り続ける僕たちはある意味すごいのかもしれない。
……どこにもぶつかったりしないという意味で。
「待て! このケーキ泥棒!!」
「待たないよっ! というより、ケーキ一個で大げさすぎだよ!!」
その神楽の一言に僕の中で、さらに何かが切れる音がしたような気がした。
神楽の言葉は見事に僕の怒りを加速させたようだ。
これこそまさに”火に油を注ぐ”ということだろう。
「もう容赦はしない! フライパンがへし折れるまでお前を叩き潰すッ!!!」
「もうそれただの逆恨み!!」
神楽はプリエの出入り口から外へと脱出するが、それを僕が視ていないわけがない。
外へと逃げる神楽を追いかける速度を一気に上げて距離を詰めていく。
途中で大きな屋敷の前の道を伝いに、再び学園の方へと向かって追い続けている。
後日考えれば、そこは九条家の屋敷前だったが、今はそんな事は頭に浮かばなかった。
そもそも知ったところで意味がないのは明らかだ。
どうやら外では不利だと感じたのか、そのまま校舎の中に入ると階段を駆け上がって行く。
校舎内であれば速度を落とさなければいけなくなるが、それは神楽も同様だ。
だが、身体能力では神楽のほうが上だ。
ドジなところがあるとは言え、油断はできない。
「待て!!」
「待たないよ!!」
そう答えながら、近くにあったドアを開けて中に入った。
「待てやごらぁ!!!!」
「うおわああ!!?」
ご丁寧に閉められた部屋のドアをけり破って中に入ると、窓際にいた神楽へと突進する。
その部屋には栗色の髪の女顔の男子学生と、ピンク色の髪の女子学生達の姿があった。
どこかで見たような気もするが、それにかまわずテーブルを軽く飛び越えながら、神楽に向けてフライパンを振りかぶる。
「チェストォォォ!!!」
「ぎゃああああ!!?」
当たると思ったその一撃は、神楽がその場を離れたことにより不発となった。
かわりに、神楽の後ろにあった窓ガラスを思いっきり粉砕することになったが。
「待てぇ!!!」
「ちょっと、これどうするんだよ!?」
後ろからそんな声が聞こえたが、構っている暇はない。
今は憎き気神楽を懲らしめることのほうが重要なのだ。
廊下に出て神楽の後を追い続ける。
廊下の曲がり角を曲がると神楽の姿がなかった。
「なにっ!?」
どんなに素早く駆け抜けたとしても、後姿が見えないのは不自然だ。
僕は周囲を見渡して神楽の姿を探す。
「ん?」
ふと上を見上げると、そこには上へと続く階段のようなものがあった。
しかもそれは閉まりかけている。
「させるかぁ!!」
僕は勢いよく階段に飛び乗ると、一気に駆け上がり3階へと足を踏み入れた。
そこは何もない空間だった。
だが、そのおかげで、奥の方に駆けて行く神楽の姿を見つけることができた。
「逃がさないぞ! 神楽!!!」
神楽を追いかけながら、僕は声の限り叫ぶ。
「もう勘弁して!!」
神楽も神楽で、そう叫びながら階段を下りて行く。
僕も神楽の後を追うようにその階段をほぼ飛び降りるような勢いで、降りていく。
(どこに行きやがった!)
僕はあたりを見渡して神楽の姿を探す。
すると、外の方に出て行く神楽の後姿がを見つけた。
「見つけたぞ!! 待て!!」
そして僕も駆けだして神楽の後を追う。
校舎を出た時に気付いたが、そこはヘレナさんが言っていた『新校舎』という場所だった。
再び神楽の穂姿を補足した僕は、確実に距離を徐々に縮めながら追いかける。
敷地内を駆け抜けると、最初に降り立った場所……高い塔のある場所にたどり着いた。
「待つんだ神楽!! 今なら500回で勘弁してやるからさぁ!!!」
「それまったく勘弁してないよね!? というより、浩ちゃん目が血走ってるよぉ!?」
この時、僕は神楽を追うことのほうが、楽しくなってきていた。
怒りもそうだがそれとは別の環状が僕を突き動かし続ける。
これがいわゆる、ランナーズハイだね!
そんな高い塔の前を通り過ぎた僕たちは、今度は広いグラウンドのような場所に出た。
そこの長距離走などで使う、ラインが入った場所(トラックというらしい)を走る。
「ほらほらほらほら!」
「もはやまともな言葉が話せなくなってる!?」
グラウンドを10周ほど駆けた後、神楽は抜けるように走り去る。
それを追いかけるようにして、僕もグラウンドを後にする。
「ここの中に、かくまって貰おう!!」
「あはははは、待てぇ!!!」
西洋風の大きな建物の中に入って行った神楽を追いかけて、僕も中に入る。
そこは棚がいっぱい立ち並ぶやや開けた場所だった。
そんな場所に足を踏み入れた僕は、神楽を的確に角へと追いやって行く。
そしてとうとう一番奥にまで追い詰めることができた。
「これが本当の袋の鼠だ!!」
「し、しまったぁ!? 間違えて奥の方に!!」
神楽は、慌てて周囲を伺い逃げる場所を探しているが、全ては無駄なあがきだ。
慌てふためく神楽をしり目に、僕は徐々に彼女との距離を詰めていく。
「神楽、覚悟ぉぉ――――ッ!?」
「ッ!?」
フライパンを頭上に構え、それを神楽に振り下ろそうとした瞬間、僕は背中に突き刺さる得体のしれない何かによって動けなくなった。
それは僕の前に立っていた神楽も同じようで、息を飲んでいた。
きっと神楽のは僕とは違う理由でそうなっているのだろうけど。
先ほどまでの高揚していた気持ちに冷や水をかけられたように、消えていく。
それは冷静さを取り戻したということとイコールでもある。
「そう言えば、ここってどこ?」
「えぇっと……図書館の様だね」
そこは図書館だった。
いくつもある棚は本棚だったらしく、様々な書物が揃えられていた。
「図書館内は、静かにすることがマナー……だよな?」
「ええ……私達は、見事にそれを破ってたよ」
神楽と確認し合うようにつぶやく僕たち。
マナー違反をしていた僕たちは、罪悪感という感情よりも恐怖心で満たされていた。
「僕さ……なんでか後ろを振り向きたくないんだけど」
「同感ね。私も、今は浩ちゃんの背後を視たくはないかな」
この時の僕の表情は、引きつっていたと思う。
神楽でさえ顔が引きつっているのだから
なにせ、僕の真後ろから鋭い槍のように怒りの感情を含んだ視線が突き刺さっているのだから。
本当は見たくないが、見てしまうのが世の定めと言わんばかりに、僕は壊れたロボットのごとく、カクカクした動きで後のほうへと振り返った。
「ひっ!」
そして即座に見なければよかったと後悔した。
なぜならそこには……
「図書館内では、お静かに」
万弁の笑みを浮かべているメリロットさんが立って。
表情は歳暮のような笑みだが、目元は全く笑っておらず、怒りなのかひくついているようにも見えた。
そしてゆっくりとした動きで手を差し伸べてくる。
「あれ? なんで肩を掴むのでしょうか? そしてどこに連れて行くつもりですか!?」
「ふふふ、少しだけお話をしましょう。大丈夫ですよ、お茶菓子もたっぷり用意してありますから」
右手で神楽の腕を、左手で僕の腕をつかむとものすごい力で引きずって行く。
「ぼ、僕は被害者ぁ~!!!!」
「ほんの出来心なんです~!」
僕達の叫びは、図書館内に虚しく響く。
「あなた方とは一度お話をする必要がありますから。……公共マナーについてのお話が」
もはや最後のほうは笑ってすらいなかった。
そうやって引きずられるようにして、僕達は連れていかれるのであった。
そして、それから数分後……
「「ぎにゃああああああああ!!!」」
僕と神楽の悲鳴が響き渡っただろう。
どこに連れていかれたのか、そしてそこで一体何があったのかを、僕と神楽は覚えていなかった。
地獄の先は地獄というが、もう二度と味わいたくはないと心の中でつぶやくのであった。