ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

何とか完成にこぎつけました。
今回はかなり苦労したのが、字数です。
字数をもとの2.5倍にするのは少し大変でした。

そんな裏話は置いときまして、本編をどうぞ


第11話 見回りと遭遇

プリエの後片付けも終わり、九条家の料理人の仕事を無事に終えた夜、僕と神楽は九条家の屋敷の前に集まっていた。

 

「神楽、首尾は?」

「うん、ばっちりだよ。プリエの清掃をするって言ってきた」

「僕の方も万全だ。プリエの明日の仕込をしに行くという名目でここに来た」

 

僕達は何とか抜け出す口実を作り出して、九条家の屋敷を出てきたのだ。

だが、その口実は嘘であるのは言うまでもない。

本当の目的は流星学園内の地脈を調べること、

もし怪しげなものが仕掛けられていれば対処する。

何もなければなければで問題はない。

これが終われば次は裏切り者をあぶりだすのがあるため、そうゆっくりとしていられない。

そんなわけで、今夜一歩目を踏み出すこととなったのだ。

 

「神楽は向こうにある塔の左側を、僕は右側の敷地内を調べる」

「了解!」

 

遠くのほうに薄っすらとではあるが見える、大きな塔の様なものを基準点にして、僕は見回りの領域を決める。

 

「ちなみに、歩きながらマッピングするのも忘れずに」

「分かってるわよ。それじゃ、終わったらここに集合ね」

 

マッピングしておけばこういう時以外でも色々と役に立つことがある。

近道を見つけ出したり、敵に対して奇襲を仕掛ける準備ができたり等々、例を挙げればきりがない

そんなこんなで、僕たちは見回りを始めた。

神剣を片手に僕は道という道を突き進む。

 

「ここは噴水広場のような場所か」

 

少し歩くと最初にたどり着いたのは、噴水広場のような場所だった。

そこを一通り歩くが、特にこれと言って反応はなかった。

その後、教会や高い塔の周辺や、グラウンドを歩くがこれと言って問題はなかった。

魔法陣も同時に探しているが、引っかかることはなかった。

ふと神楽の進捗状況が気になったため、調査をつづけながら念話で神楽に話しかける。

 

【神楽、そっちの状況はどうだ?】

【こっちは順調だよ。ただ、図書館の方に魔法陣が組みこまれてるんだけど】

 

神楽の報告に、僕は詳しく聞いてみることにした。

 

【魔法陣? それは一体どんなものだ?】

【よくわかんない。そういうのは浩ちゃんの領域だもん。でも、軽く調べてみたけれど特に害のあるものには見え

 

なかったから、放置して置いたけど大丈夫かな?】

自分の区域外のことを聞かれたためか、神楽は少しむっとした声色で答える。

だが、それも仕方のないことだった。

僕は魔法陣を詳しく読み解く知識を持っているが、神楽にはその知識がない。

いや、あるにはあるが基礎的なものなので、それに付随した機能があっても読み取れないのだ。

そんな事実を突きつけられれば誰だって気を悪くするだろう。

特に、それがそのことを知っている人から聞かれれば。

だが、神楽の言っていることは、恐らく間違いないだろう。

魔法陣を読み解けなくても、悪意あるものか否かを見分けることは十分にできる。

だからこその判断だ。

 

(でも、そうするといろいろおかしいな)

 

そもそも図書館に魔法陣を組みこむ必要性は感じられない。

誰が組み込んだのは、図書館の管理者かもしくは外部の者のどちらかになる。

前者であれば術者として候補に挙がるのは支所でもあるメリロットさんだろう。

彼女は魔族だ、魔法陣を構築することぐらい余裕のはずだ。

後者であれば言わずもがな、敵である。

だが、害がないという前提条件と照らし合わせるとやはり後者はあり得ない。

 

(いずれにせよ、一回暇を見て確かめてみるか)

 

図書館に魔法陣を組みこむにはそれなりの理由があるはずだ。

その理由を把握するには僕のほうで調べる必要がある。

 

【そうか。こっちも順調だ。何も問題は………】

 

僕が念話で神楽にそう報告している時だった。

気が付くと僕は小高い丘のような場所まで来ていたようで、少し先には目印である塔が見える。

そして、少し先のほうには三人の人影もあった。

黒い服に袖と襟に白いマフラーのようなものがつけられた服を着る金色の髪の男、その前には白色のキャンパス帽子のようなものをかぶる赤い髪の女子学生、そしてその横に銀色の髪を後ろに束ねている一見女教師に見える人達だった。

やや距離があったためか、それとも気配を消していたからかこちらには気づいていない様子だった。

だが、明らかに怪しい雰囲気だったため、僕はとっさの判断で近くの茂みに身をひそめた。

 

【どうしたの? 浩ちゃん】

【悪い、ちょと切る】

 

問い掛けてくる神楽に僕はそう告げると、念話を一方的に閉じる。

三人は何やら話をしているようだ。

 

(明らかに怪しい)

 

三人は明らかに場違いなのだ。

そこでようやく気付いたが、今いる空間はまるで先ほどまでいた流星学園ではない異世界だと思ってしまうような雰囲気を醸し出していたのだ。

 

(これはゼロ結界か)

 

ゼロ結界とは、そこにあるという認識をしなければそこにあるものに気付きはしない結界のことを言う。

簡単に言うとテーブルの上にケーキがおいてあると仮定すると、”テーブルの上にケーキはない”と思っている人にはケーキを見ることができないが”そこにケーキがある”と思っている人にはそれを見ることができるというものだ。

すぐに把握できたものの、僕にはどうすることもできない。

とりあえず、三人の話の内容を聞いてみようとするが

 

(っち、もう少し隠れられるような場所があれば)

 

運が悪いことに、今僕が身を潜めている場所を離れると、三人のうち必ず一人に見つかってしまうことになる。

 

(仕方ない……聴力強化でもするか。ついでに気配も消そう)

 

僕はそう考えると自分の気配を消してから、聴力を強化して三人の会話に聞き耳を立てた。

 

「そ─────は、市街地───陣の設置は終了──いうことか」

 

距離があるからか、神としての力を制限しているからかノイズが入ってかなり途切れ途切れではあるが、聞こえてきたのは、男の人の声だった。

 

「予定され───77の魔法陣────市街地の44の魔方陣は設置───」

「確認した」

 

銀色の髪の女性が答え、それに付け足すように赤い髪の女子学生が口を開く。

やはり途切れているので正確なことはわからないが、概要は分かる。

だがそれは僕にとっては衝撃という言葉以上のショックを受けるのに十分だった。

 

(市街地に魔法陣を設置だと!? クソッ! 僕としたことがっ)

 

僕は自分の未熟さを祟った。

いったいいつ設置したのか、疑問ではあるがそれは今は関係ないだろう。

 

「残りは?」

「私と───が学園に潜入し、作業に───」

 

男性の問いかけに、銀色の髪の女性が答える。

 

(重要な部分が聞こえなかった)

 

潜入する人物の名前が聞けなかったのはかなり痛かったか、潜入してくるのがわかっただけでもよしとしよう

 

(そうか、あの女性ともう一人が潜入するんだな)

 

僕は入手した頭の中でたった今得た情報を整理する。

このままじっとしていれば色々と情報が聞けるかもしれない。

 

「妨害――――は?」

「天――動き―――い」

 

男性の問いかけに答えたのは、赤い髪の女子学生だった。

 

(あの女子学生は人間か魔族か……それとも裏切り者の天使か?)

 

本当に声が途切れ途切れなのが悔やまれる。

だが、力を開放すれば彼らにこちらの存在が気づかれるばかりか、対抗勢力があることを教えることになる。

魔族として見られえるのであればのだが、もし仮に神や天使の類だと気づかれれば向こう側にこちらの動きを悟られる可能性がある。

悔しいが、リスクは極力回避することが隠密行動の鉄則だ

 

「奴らに――――こす気概など――――な」

「――――――は組まぬ」

 

ふいに風が吹き始めてきた。

その風の音がさらに聞き取りを困難にさせていく。

だが、何となくではあるがこの三人はあまり友好的な状態ではないようだ。

特に女子学生と銀色の髪の女性の間で無言の県政がされているほどだ。

だが、何だかの目的のために手を組んでいるのであればそれは脅威に違いない。

その後、銀色の女性は七大魔将について話し始めた。

その過程で分かった事だが、どうやら昼間に会ったナンパ男のメルファスさんは、七大魔将の様だ。

敵でないのなら、特に拳を構える理由はないので、特に問題はないが。

 

「貴方の気にしている魔王と死神が、出現した兆候はないわ」

(っ!?)

 

突然クリアになった銀色の髪の女性の言葉に出てきた単語が、僕の心に動揺を生じさせる。

 

「単―――――過ぎない」

「―――魔王と死神は実在する。リ・クリエが――――達した時―――王は必ず現れ、死神は頻度こそは低いものの必ず現れている」

 

男の人は”魔王”、そして”死神”という人物が現れることを待ち望むような感じが声から聞き取れた。

 

(ここにきてその単語が出るなんて)

 

僕にとってはまったくと言っていいほどうれしくもなかった。

 

(これは、色々と大変なことになったな。すぐに神楽と対策を――――)

 

情報は十分と言うにはほど遠いが、しっかりと聞き出せた。

気配は消しているとはいえ、さすがにこれ以上この場にとどまるのは危険だろう。

そう思ってその場を離れようとした瞬間だった。

 

「はぁ!!!」

「ッ!?」

 

突然、男の人の声と同時に何かが真横で爆発した。

 

(まさか見つかった!?)

 

「そこに隠れている奴。出てきたらどうだ!」

 

魔法を放ったであろう男の人の声がこちらに投げかけられる。

 

(やっぱり、心を乱したからかっ)

 

気配を消すと言っても、完全に消すことはできない。

気配を消す術を使っているエネルギーを探知されてしまうことがあるからだ。

普通は、そういうことがないように力の流れ道を完全にコントロールする。

このコントロール力が、気配をどこまで消せるのかの精度に関わってくるのだ。

そしてそれにはかなりの集中力を要する。

その集中力が先ほどの彼らの言葉で大きく乱されてしまったのだ。

集中力が乱れれば力の流れのコントロールが疎かになる。

そうなれば彼らに気付かれる確率も飛躍的に高まる。

 

「貴方が望んでいる魔王か死神といった所かしら?」

「……いいや、どうやら別人のようだ」

 

女性の言葉に応える男の人に、僕はほっとした気持ちを抱くのと同時に背筋が凍りつくような思いをする。

この男性はこちら側の気配を探っただけでこちらの存在を把握しようとしたのだ。

だが、こちらが神であることなどは向こうには知られていないのはまさに不幸中の幸いだ。

 

「愚かね、私達をこそこそ嗅ぎまわろうとするなんて」

 

銀色の髪の女性の声が聞える。

しかもそれは先程よりも大きく鮮明に聞こえた。

どうやらこちらに向かってどんどんと近づいてきているようだ。

 

(やばいな、早く逃げないと)

 

正直に言えば、見つかって戦闘に入っても余裕でこの場を乗り切れる自信はある。

だが、情報を向こう側に与えるというのは、こちらにとってはかなり痛手だ。

もしも本当に拳をまじわせるのであればせん滅する必要がある。

だが、それもリスクが高い。

彼らの仲間が具体手益にどのぐらいの数があるのかがわからないのだ。

数がわからない以上、無意味に戦闘を繰り広げても意味がない。

ならば、どうする?

人間の振りをするという考えもあったが、気配を悟られないようにしてここにいる時点でそれは無理があるのは明白だ。

 

(この付近に隠れられる場所はない。となると……瞬間移動か)

 

魔法でも瞬間移動ができるが、それをするには少々時間がかかる上に魔力が必要になるため没だ。

 

(だとすると………)

 

残ったのは神の力を使って瞬間移動するという手段だ。

この方法も向こうに情報を与えるリスクがあるのは間違いない

だが、こちらの姿が見られていなければ力の種類が知られても問題はそれほどない。

重要なのは、僕と使った力がイコールになってはいけないということなのだ。

要するに

 

(力を開放して安全圏へ避難する)

 

それが現状での最善の手段だ。

移動先は人気のない噴水広場のような場所。

あそこならばたとえ追いかけられたとしても普通の人間を装えばいくらでもごまかせる上に隠れることも可能という好条件の場所だ。

移動するのもその場所のことを頭に浮かべるだけでいい。

僕は目を閉じてその場所に移動することだけを考える。

するとそれに呼応して白い光がフラッシュのように広がるがすぐにそれが消える。

それと同時に感じたのは水の音と穏やかな雰囲気に戻った空気だった。

目を閉じればそこは僕の思った通り、噴水広場のような場所だった。

 

(早く神楽と合流して報告しよう)

 

僕は念のために周辺の状況を探知しながら、集合場所でもある九条家の屋敷前へと戻るのであった。

 

(本当に大変なことになったな)

 

先ほど知った敵に対して不安を感じながら。




本作はアゼルルートやナナカルートなど様々なルートの話をベースに進んでいます。
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