ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~   作:TRcrant

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大変お待たせしました。

二つの話を統合していたり、仕事のほうで色々とごたごたしていた関係でかなり時間がかかってしまいました。
この後もこのような漢字になることが予想されますが、ちゃんと投稿していきますので、温かい目で見守っていただけると幸いです。

それでは、本編をどうぞ!


第13話 任務と図書館の恐怖と

無事に生徒会室に差し入れを届けた僕は、理事長であるヘレナさんに校内放送で呼ばれたため、理事長室前に戻っていた。

 

「失礼します」

 

ノックをして一声をかけてから数秒置いてドアを開けると理事長室に足を踏み入れる。

いつも思うが、理事長室に置かれているビリヤード台は似合わないような気がする。

そんな理事長室にいかにもな教師服を着込んだ銀色の長い髪を後ろの方で赤いリボンで結んでいる女性が立っていた。

 

「何度も呼び出してごめんなさいね」

 

そう言いながら、座っていた椅子から立ち上がると、僕に近くまで来るように合図を出した。

僕は理事長席のテーブルの前まで歩み寄り女性の横に立った。

 

「紹介するわね。彼女は千軒院(せんげいん) 清羅(きよら)先生よ。彼女は来月から教育実習で教鞭をとるわ」

「千軒院です。よろしく」

 

ヘレナさんの紹介に、千軒院さん(ここは先生と呼んだ方がいいか)は、こちらに興味がないのか、簡潔に自己紹介をした。

「はぁ……」

とはいえ、ここの学生でもないのだから意味がないのは同じなのだが。

 

(って、あの人ッ!)

 

意味がないと思った相手の顔をもう一度よく見ると、僕はその顔に思わず声をあげそうになった。

それは千軒院先生に見覚えがあったからだ。

彼女は―――

 

「浩介ちゃん、自己紹介」

「あ、すみません。こちらの食堂で働いている大森 浩介です。宜しくお願いします」

 

ヘレナさんに促されるように、僕は思考を止めて自己紹介をした。

自己紹介とは言っても名前と働いている場所という些細なことだけだ。

それ以上の情報を言う必要もなければ口にする気にもない。

 

「それで、用件と言うのは?」

 

僕は早速ヘレナさんに本題を聞き出すことにした。

 

「ゴホン。君を呼んだのはほかでもない。今日ここにやってきた彼女の校舎案内をして貰いたい」

 

僕の問いかけに、ヘレナさんはどこかの映画のセリフ口調で答えた。

 

「あ、案内……ですか?」

その指令に、僕は聞き間違いだと思いもう一度聞き返す。

 

「そう」

 

聴き間違いであってほしいという願望も空しく、ヘレナさんが肯定したことによって指令の内容が確定されてしまった。

 

「一応尋ねますが、僕はまだここに来たばかりですよ?」

「ええ、分かってるわ」

 

僕の問いかけに、ヘレナさんは表情一つ変えずに頷いた。

 

「そんな僕が先生の校舎案内をするというのは、ものすごく無理があります。それこそ貴女科挙職員の誰か……それらが無理なら生徒会長殿に案内させればいいではないですか」

「私も先生たちも手が離せないし、シンちゃんも今とても忙しいのよね~。それに浩介ちゃんにも十分に案内できると思うわよ。もちろん、あなたが必要だと思う場所を案内するだけでいいわ」

 

『だからお願いね』とヘレナさんは最後に付け加えた。

はっきり言おう。

強引だ。

強引という言葉すらも凌駕するほどの無茶ぶりだ。

とはいえ、拒否したら何をされるかわかったもんではない。

まあ、これ以上状況が悪化するようには思えないし、何よりなんだかんだ言って学園内の敷地を自由に歩くことができる口実まで手にしているのだ。

 

「分かりました。校舎案内の役割……拝命いたします」

 

だからこそ、僕はヘレナさんのお願いを聞くことにした。

尤も、最初から僕には拒否権はあって無いようなものだが。

 

「うむ、健闘を祈る」

 

こうして、僕は教育実習生の校舎案内という、非常に重大でなおかつ無理難題の任務を与えられるのであった。

 

 

 

 

 

最初にやってきたのは、僕にとっては戦場と言っても過言ではない食堂……プリエであった。

 

「ここがプリエです。学生や教師の大半がここで昼食を食べたりしています」

「そう」

 

僕の合っているかわからない説明に、千軒院先生は興味がないのか、素っ気なく答える。

そこを後にして、次に向かったのは白色の外壁に屋根の一番高いところには、金色の鐘がのある小部屋のようなものが建てられた教会だった。

 

「ここは教会です。日曜日になると一般開放されるらしいですよ」

「………」

 

僕の説明に、今度は無言だった。

しかも無反応というおまけ付きだ。

気を取り直して、僕は再び歩き出す。

次に訪れたのは、高い塔の様なものがある広場だった。

そこは僕がこの世界に来た時に降り立った場所でもあった。

 

「この塔は『フィーニスの塔』と言いまして、中の構造はいまだに解明されておらず、何があるのかがわからなくて危険なために、許可なく立ち入ることを禁止されているそうです」

「なるほどね」

 

どうやら今度は少しだけ興味を持ってもらえたのか、千軒院先生は高くそびえる塔を見上げている。

その後、新校舎は旧校舎等々、必要最低限の学園内を案内して回った。

 

「ここがグラウンドです。主に体育会系の部活動などで使われたりします」

「………」

 

そして、今来ているのがグラウンドだ。

ここが最後の場所だ。

 

「それじゃ、理事長室に戻りましょう」

「そうね」

 

僕は千軒院先生にそう告げる。

千軒院先生は、僕にそう言葉を返すとゆっくりとした足取りで、歩き出した。

それを見た僕は、何とも言えない気持ちを抱きながらその後を追うように歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

(やっぱり似ている)

 

必要最小限の園内の案内を終えて、理事長室に向かう道中、隣を歩く千軒院先生の姿を横目で見るがこの間の夜に目撃した女魔族にそっくりだった。

状況が状況なだけに、魔力の波動パターンを取っていないので断言はできないが、目の色から彼女は魔族でまず間違いないだろう。

 

(僕が出会った人物で魔族なのはこれで6人か)

 

一人は図書館の司書、メリロットさん。

二人目は咲良シンと名乗った生徒会のメンバーの一人。

三人目は夕霧ナナカと名乗った、これまた生徒会メンバーの一人

四人目は夕霧庵という名のお蕎麦屋さんの料理人(恐らく夕霧さんの父親だろう)

五人目はキラフェスの時に現れたナンパ男、メルファスさん。

そして六人目がこの千軒院先生だ。

 

(ここまでくれば偶然を通り越して、なにがしらかの策略を感じるな)

 

思わず苦笑いをしそうになるのを、僕は必死に堪えた。

とりあえず今後は彼女を要注意人物にしようと、一通り考えをまとめた時、ふと千軒院先生は足を止めるとこちらの方に体の向きを変えた。

 

「あなた」

「はい、なんでし―――ッ!」

 

なんとなく居心地が悪くなったときにかけられた言葉に、僕が返事をしようとした瞬間、僕の顎に千軒院先生が手をかけると顔を持ち上げて僕を覗き込むように見た。

そんな状態に、鼓動が早くなるのを感じた。

だがそれはドキドキするといったものではなく、ただ純粋な寒気によるものだった。

彼女の目の奥からはそこしえぬ闇のようなものが窺え、油断しているとこちらまでそれに引き込まれるのではないかという錯覚を覚える。

 

「あなた、何者?」

「な、何者……とは?」

 

まるで氷のように凍てついた千軒院先生の問いかけに、さらに鼓動が早くなるのを感じる。

僕は出来るだけ表情Wを変えずに、平静を装って千軒院先生に聞き返す。

 

「あなた、人間じゃないわね」

「な、何を言ってるんですか? そりゃ確かに私は人より運動神経は良い方ですけど、人間ですって。そんな悪魔でも鬼でも宇宙人でもありません」

 

冷や汗を流しながら、僕は千軒院先生の言葉に反論した。

僕の反論を聞いた千軒院先生は、妖しげに笑うと、そっと僕の顎から手を離した。

 

「あなた、名前は?」

「え?」

 

突然の千軒院先生の問いかけに、僕は一瞬その意味が分からずに聞き返してしまった。

 

「名前を聞いているのよ」

「大森浩介です」

 

僕の言葉に若干苛立った声色で、もう一度同じ問いかけを僕に投げかける。

前に自己紹介しただろという言葉は胸の奥に留めておいて、僕はもう一度名前を告げた。

 

「そう。覚えておくわ」

 

そう言うと、再び興味をなくしたかのように口を噤んでしまった。

そして僕たちは再び歩き出すと、理事長室へと向かうのであった。

こうして、僕の無理難題な任務は無事(?)に幕を閉じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月30日

 

放課後の時間帯。

僕は、紅林主任の”今日はもう上がっていいよ”というありがたいお言葉に甘える形で、早上がりさせてもらうことにした。

そしてたまには読書でもと思い、図書館に向かうことにした。

ヘレナさんいわく、『呼んだり借りたりするのは職員でも自由よ』とのことだ。

まあ、貸し出しをするわけではないので後者は関係ないだろうけど。

 

(まあ、貸出方法ぐらいは教えてもらった方がいいか)

 

もしかしたら本を借りるということもあるのかもしれないので、ここは教えてもらう方がいいだろう。

 

「浩ちゃん~」

「……幻聴か」

 

神楽は放課後の時間帯も普通に仕事があるはずだ。

それだというのに彼女の声がしたように感じるのは、僕は神楽と一緒にいたがっているということなのか?

 

「いやいやないない。神楽相手にそれはない」

「あのね、本人を目の前にしてそういうことを言うのは止めてちょうだい」

 

頬を膨らませて怒っているという表情でこちらを見る神楽の言葉に、僕は失敬と返した。

内心で幻聴じゃなくてよかったと思いながら。

 

「どうして神楽がここにいるんだ? 仕事は?」

「私も早上がりさせてもらえたの」

 

どうやら僕たち二人そろって早く上がれたようだ。

 

「それで、これからどうする? 歩き回ってみる?」

「そうだな……」

 

神楽からの問いかけに、僕は少しばかり悩んだ。

九条邸での仕事の開始時刻までは小一時間ほど残されている。

ならば市街地のほうに繰り出して魔法陣が仕掛けられているかを調べるのも手だ。

実は昨夜にそれを行っている。

だが、結果は空振りだ。

流星長は狭いようで広い。

そこからサイズは不明だが魔法陣を探そうとするのは骨が折れる。

それはまるで針の穴に糸を通すようなものだ。

 

「図書館に行こう」

「なんで図書館?」

 

理解できないといった様子の神楽の反応も当然だ。

時間があるのであれば少しずつでも進めるのが鉄則だ。

 

「今はまだ人気が多い。そんな中で調査をするのはあまり推奨できない」

 

何度も言うが、地脈捜査をする際は自分の神具を手にしてゆっくりと歩く必要がある。

そんなことを一目のある時にでもすれば多くの人の視線を集めることになる。

人の目というのは非常に脅威だ。

なにせ、その中に敵の物が含まれている可能性だってあるのだから。

僕が知ることができたのは、あくまでも”黒幕が3名である”ということだけだ。

敵の正確な数は全くと言っていいほど把握できていないのが現状だ。

そんな状況で調査を行うなどまさに自爆行為だ。

 

「かといって時間を無駄にするのもいただけない。ということで、図書館さ。本はいろいろな世界を見せてくれる扉だというし。ちょうどいいでしょ」

「むぅ……」

 

神楽は納得できないのか難しい顔をしたままうなり続けている。

 

「別に神楽も一緒になってこなくていいんだけど? 図書館は僕の趣味で行くようなもんだし」

「うっ。わかりました! 行きます、行けばいいんでしょ!!」

 

僕としては嫌なら九条邸でゆっくりとしていればいいというつもりで言ったのだが、どうやら神楽にとっては別の意味があるように感じたらしく、結局一緒に行くことになってしまった。

そんなこんなで、僕たちは図書館へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

図書館内は外とは違う雰囲気だった。

窓から差し込む夕陽の光と図書館内にある独特な雰囲気が見事に調和している。

これが場所によるものなのかは不明だが何とも心地のよいは雰囲気に感じられた。

 

「さっきから何を探しているの?」

「ここの司書」

 

この図書館の責任者でもある司書の姿を探しているのだが、中々見つからない。

 

「司書って、確か鬼ロットさんだっけ?」

「神楽、お前時より僕以上にすごいことを口にするよな」

 

まあ、言いたいことは分かるけど。

 

「鬼ロットではなく、メリロットです」

「うお!?」

「みぎゃ?!」

 

そんな僕たちの後ろからささやくようにかけられた言葉に、鳶の木ながら後ろのほうへと振り向くとそこには分厚い本を片手に柔らかな笑みを浮かべているメリロットさんの姿があった。

何となく、怒っているような雰囲気が感じられた。

 

「こんにちはメリロットさん」

「こんにちは」

 

とりあえず挨拶をしてから、本題を切り出すことにした。

 

「本の貸し出しの方法について聞きたいんですけど」

「分かりました。それではこちらへ」

 

メリロットさんに促らされるまま、僕は出入り口の近くにある受付のカウンターへと案内される。

そしてメリロットさんはどこからともなく二枚のカードと二つのボールペンを差し出した。

 

「それでは、最初に一番上に名前を書いてください」

 

メリロットさんに促さられ、僕はカードの一番上のほうにカードと一緒に差し出されたボールペンで名前を書いていく。

隣を見ると、神楽も名前を書いていた。

 

「書き終えましたね。それでは説明いたします」

 

書き終えたのを確認したメリロットさんは貸し出しの方法についての説明を始める。

 

「―――以上が貸し出しの方法になります。理解していただけましたか?」

「はい。分かりやすいご説明ありがとうございます」

 

メリロットさんの説明を一通り聞き終えた僕は、本の貸出方法について完璧に理解できていた。

彼女の言葉はすんなりと頭の中に入ってくるから不思議だ。

図書館司書というよりも教師になった方がいいような気もしなくもないが、やはり図書館司書というのも彼女に会っているような気がすると心の中で納得した。

 

「理解していただけてうれしゅうございます。ですが」

 

僕の言葉に笑みを浮かべるメリロットさんだったが、一瞬で表情を変えると神楽のほうへと視線を向けた。

 

「西田さんはご理解していただけましたか?」

「………」

 

メリロットさんの問いかけに、西田さんは目を閉じたまま何も答えない。

どうやら、この間折檻されたことをいまだに根に持っているようだ。

もっとも、そうでなければメリロットさんの名前を鬼ロットと間違えることはないのだが。

 

「それとも、もう一度始めから説明したほうがよろしいでしょうか?」

「使わないので説明入りません」

「使う使わないの問題ではありませんよ」

 

両者一歩も引かない状況とはこのことを言うのだろう。

メリロットさんは神楽を逃がさないとばかりに神楽の腕をつかんでいるし。

 

「ご理解していただけましたか?」

「…………」

 

腕をつかんだ状態でのメリロットさんの問いかけに、神楽は沈黙を貫く。

 

「それでは、最初から説明いたします。こちらは借りたい本の書籍名を記入するカードになります」

 

メリロットさんは有言実行とばかり日本の貸出方法についての説明を最初から始める。

 

「こちらに借りたい本の書籍を掻きます。ここまでは分かりましたか?」

「…………」

 

メリロットさんの確認の言葉に、神楽は再び無言を貫く。

それを見ていたメリロットさんは目を細めると

 

「それでは、最初から説明いたします。こちらは借りたい本の書籍名を記入するカードになります」

「うげ……!?」

 

再び最初から説明しだしたメリロットさんの説明に、思わず声を上げてしまった。

 

「ここまでは分かりましたか?」

「…………」

 

メリロットさんの二回目の確認の言葉に、神楽は再び無言を貫く。

 

「それでは、最初から説明いたします。こちらは―――」

 

そして再び最初から始められる説明。

それからかかること数時間。

 

「以上が貸出方法になります」

「「ありがとう……ございました」」

 

ようやく神楽が返事をするようになってくれたおかげで、貸出方法の説明を終えることができた。

 

「それと、もう閉館時間ですので速やかにお帰りください」

「「……はい」」

 

外はすでに真っ暗だ。

まあ、約500回以上も繰り返したので当然だが。

何となく、図書館の恐怖というものがまた一つ分かったような気がした。

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