ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~ 作:TRcrant
原作キャラが早くも登場しますが、これでよかったのかなと思う今日この頃です。
「ふぅ……」
真っ白な光が薄れ、見えた景色は見たこともない場所だった。
感じたのは暑くもなく寒くもない空気と、僕たちを歓迎するかのように吹き抜ける心地よい風だった。
「ここが人間界か」
「意外と
隣に立っていた神楽は、物珍しそうに周りを見渡していた。
僕達が立っているのは、どこかの高台と思われる場所だ。
後のほうに西洋風の塔が建てられており、それは頂上が見えないまでに高かった。
恐らくここが三界の境目に建てられたものだろう。
この塔の役割は、三界の均衡を保ちやすくするため(言うなれば起点とする)の物だ。
だからこそ、魔界や展開などからこの世界に来ようとすると、必ずこの場所にたどり着くなのだ。
それはともかくとして、塔と反対側を見れば、色々な建物が建っているのが見える。
それと同時に人影のようなものも見つけた。
「あそこに人がいるな」
「え? どこどこ?」
僕の呟きに、神楽は必死に人の姿を探そうとする。
「ここからかなり離れた場所だから、普通じゃわからないよ」
僕はそう言いながら、常時服の内側に装備しておいた、潜入任務に必須のアイテムである双眼鏡を取り出すと、人の気配がする方向に向けて構えながら覗き込んだ。
そこには、肩の部分が赤でそれ以外の場所が薄ピンクの色合いをしたワンピースタイプの服を着ている女子がいた。
しかもそこらじゅうに。
その中に混じるようにして、赤色の上着に黒色のズボンという服装の男子もいた。
「どうだった?」
自分の目で見ることをあきらめたようで、神楽の問いかけに応えず、僕は自分と神楽の服装を確かめた。
僕の服装は白一色だった。
神楽の場合は白色のみの巫女服の感じだ。
これは式服と言い、霊術を使う際に効率化し、霊術の効果が飛躍的に向上する能力を持っている服だ。
ちなみにこの効果というのは攻撃力が増したり、霊力の消費量が減少したりなどなどである。
そのような式服は、周りからはどう見ても不自然だ。
もしこのまま下の方に行けば変な目で見られる。
「神楽、服装を同化させる」
「そうだよね。この服装はおかしいよね」
僕の言わんとすることが分かったのか、神楽は自分の服を見ながら苦笑いを浮かべて僕の方に手を差し伸べる。
同化は手をつないだりすれば簡単にできる。
何せ、同化は僕の中にあるイメージを神楽の中に送り込んで、それを服装に反映させるだけなのだから。
そして、僕は目を閉じて先ほど見た人たちが来ていた共通の服装をイメージする。
その瞬間、僕は体全体に熱を感じた。
それは暑いというよりは、心地よさを伴う温かさといった方がいいだろうか。
それもすぐになくなり、いまだに吹いている風を感じながら、僕はつないでいた手を放して目を開けた。
(よし、うまくいったみたい)
すぐさま自分の服装を確認した僕は、先ほど見た人たちの共通の服装になっていることに心の中で安堵した。
無論、僕の服は男性が来ていたもので、神楽のは女性が来ていた感じの服にしている。
定番の性別が違う服を着せているということはない。
……たぶん
「神楽、そっちはど………」
成功しているかが不安になった僕は、隣にいるであろう神楽のほうに顔を向けた取7ん館、言葉を失ってしまった。
服を変えれば印象も変わると言うが、本当の事だと今分かった。
先ほど見た女性の服装と同じ服を着ているだけの神楽が、見知らぬ誰かだと勘違いするほどの雰囲気を醸し出していた。
「どうかな? 浩ちゃん」
「ああ、似合ってる」
恥ずかしげに頬を赤く染めている神楽の問いかけに、僕はそう答えるのがやっとだった。
「ありがと、浩ちゃん」
かと思えば僕に抱き着いて、喜びをあらわにする神楽はいつも通りだった。
「さてと、下の方に向かうぞ」
「えへへ。了解」
誤魔化すように言ったことはお見通しのようで、神楽は笑みを浮かべながら相槌を打つ。
そして、僕たちは人がいるであろう場所に向かうのであった。
しばらく歩いた僕たちは、周りはきれいな芝生が広がっているグラウンドのような場所に来ていた。
「一体、ここはどこだ?」
「うーん、分からない」
どこかの敷地内なのは分かるがいったい何の建物の敷地なのかがわからない僕たちは頭を抱えるしかなかった。
今着ている服はどう見ても制服だろう。
ともすれば、ここがどこなのかはなんとなくではあるものの想像がついた。
だが、憶測は言えない。
憶測を言えば、固定概念が生まれてしまうからだ。
別にそれが悪いわけではない。
だが、僕の推測が間違っていたとすれば、致命的なミスになる可能性すらあるのだ。
(とにかくここから出よう)
それが今の僕たちに優先されることだった。
「そこのあなた達」
「へ?」
「え?」
方針を決めたのと同時に、突然背後から女性の声に呼び止められた僕達は、飛び跳ねる勢いで驚くと慌てて振り向いた。
そこには短めの紫色の髪に赤い目の、メイド服のようなものを着ている女性が立っていた。
その手には事典サイズの本が抱えられている。
それが何故かこの女性とマッチしているのはなぜだろうか?
「今は授業時間中ですが、このような場所でサボりですか?」
女性の視線が鋭く、射抜くような目で僕たちを見る。
今の言葉で、ここが教育施設であることが確定した。
「あの、実は私たち道に迷ってしまいまして」
僕は、何とかこの場を切り抜けようと、とっさに思いついた言い訳をした。
これならば不審に思われることはないだろう。
「おかしいですね。今年度が始まって半年も経ったのに、まだ学園内の位置が分からないのでしょうか? それにあなた達の制服は3年生の物ですよ」
「う゛!?」
僕は女性の鋭すぎる指摘に、返す言葉が無くなった。
不幸中の幸いか、女性の言葉で今の時期が大体10月ごろであることは分かった。
しかし、この制服が3年生を示しているとは……僕のミスだ。
しかも致命的な。
「……私たち、実は極度の方向音痴でして」
「なるほど。確かにそれもあり得ますね。では……」
「え?」
神楽の助け舟に、目の前の女性は静かに目を閉じながら肯定すると、再びその眼を開いた。
その眼には悪魔めいた思惑が見え隠れしていて、僕は警戒を強める。
そうとは知ってか知らずか、女性は僕たちに手を差し出した。
「学生証を提示してください」
「……すみません、忘れてしまいました」
女性の要求に、僕はすぐさまありがちな言い訳を答えた。
だが、それは彼女も予想済みだったようで
「でしたらお名前を教えてください。あなた達が学生であるのなら、学園の方に名前があるはずです」
用意されていたと言わんばかりに返ってきた女性の言葉に、とうとう僕たちは逃げ道が無くなった。
(この人、鬼だ)
きっと、この女性は最初から僕たちがここの人ではないことに気付いていたはずだ。
それなのにこのような遠回しな質問をしてくるということは、まさしく鬼と言っても過言ではないだろう。
もっとも、悪いのは不法侵入をしている僕たちなのだが。
【神楽、こうなったら】
【うん、浩ちゃん】
これ以上ここにいては危険だと判断した僕と神楽は、念話でこの後の対策について確認しあった。
そしてすぐに行動に移した。
「どうしましたか? 貴方達が学生であるのであれば、言えるはず――――」
「「ロケットスタート!」」
僕達が取った行動は、逃げる事だった。
一気に女性が立っている場所とは真逆の方向に向かって駆けだした。
「待ちなさい!」
そんな僕たちを、女性は必死に追いかけてくる。
(こっちは押さえているとはいえ人間の出せる速度を大きく上回っているのに)
驚くべきところは女性の姿がはっきりと見えている状態だということだ。
一日はかかるものの、世界一周が出来てしまうほどの速度で逃げている僕たちについてこれているのは、彼女がただ者ではないことを物語っていた。
だが、待てと言われて待つような性格を僕たちはしているわけがない。
僕達はさらに次なる手を考えていた。
【1,2の3で大ジャンプするよ!】
【オーケー!】
念話で神楽とタイミングを伝える。
もはや僕に残されているのは一つしかなかった。
「1,2の」
「「3!!」」
僕は足に力を込めると、地面を蹴った。
次の瞬間、僕たちは空高く飛びあがっていた。
下にあるものが小さくなっていく光景は昔を思い出させる。
そのまま僕は、体中に霊力を巡らせた状態を続けて空中を飛びながら、人がいない場所を探し始めるのだった。