ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~   作:TRcrant

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お待たせしました。
第5話になります。

自分で絵を描いて挿絵にすればイメージが伝わりやすくていいのですが、時間と私の絵を描く才能のなさという理由であきらめました。
誰かに書いてもらうにも、あてがいないというのが本音ですが(汗)


それはともかくとして、第5話をお楽しみください。


第5話 どうしてこうなった?

喫茶店にお客さんがたくさん来てくれるようになった。

最初はケーキだけだったが、次第にお客さんから他の料理を注文されることが多くなった。

そしてお客さんの数も安定し、二人だけで十分お店を回して行ける状態にまで落ち着かせることができた。

お客の数はそれほど減ってはいない。

ただ、くる時間帯が安定し始めてきただけだ。

それでも、この後も順風満帆にうまくいくであろうと、僕と神楽は思って疑わなかった。

それは21日の午後の事だった。

ピークの時間帯も過ぎたため、お客さんの数がそこそこになり、かなり余裕ができ始めた時間帯だった。

 

「いらっしゃいませ」

 

一人の女性がお店を訪れたのは。

その女性は、青色の髪をした大人のようで、どこか無邪気な子供を思わせる雰囲気をまとった女性だった。

 

「このティーセットを頂けないかしら?」

「かしこまりました」

 

神楽にカウンター席へと案内された女性は、手元に置かれていたメニュー表に目を通すと即座に注文を告げる。

注文を受けた僕は、頼まれたケーキと紅茶のセットをこしらえて、女性の前のカウンター前に置いた。

ちなみにこのティーセットというのは紅茶(注文時に希望すればお茶に変更可能)と日替わりのケーキ(とはいえ、代替チーズケーキといちごのショートケーキだが)が付いたものだ。

飲み物に会うのかは別として、小腹がすいた時やちょっとした歓談でもする際につまむ物としては最適だろう。

お値段は350円にしている。

地味に売り上げトップ10に食い込んでいたりもする。

 

「お待たせしました。ティーセットでございます」

 

僕の言葉がいい終わるのと同時に、女性はティーカップを手にして口元にまで近づけると、紅茶を一口すする。

 

「………おいしいわ。上出来よ、マスター」

「ありがとうございます」

 

女性の良い評価に、僕は軽く一礼をしながらお礼を言う。

やはり褒められるのは嬉しくないわけがない。

紅茶は昔から色々な理由で入れていたため、おいしく入れられる自信があった。

ここで活かされるとは夢にも思っていなかったが。

 

「こっちもおいしい紅茶を飲ませて貰って嬉しいわ。それじゃ、また来るわね」

 

紅茶を飲み終えケーキを食べ終えた女性はそう告げると、代金をカウンターにおいて去って行った。

 

「今の人、何だかどこかのお嬢様のような感じだったね」

「そうだな。さて、次のお客さんが来ている。てきぱきと動かないとすぐに溢れかえるぞ」

 

女性が去って行ったほうを見ながら言う神楽に僕は檄を飛ばして、再び注文された料理を作っていく。

この日もまた大繁盛したのは、僕にとってうれしいことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらにその翌日に22日の午後。

お昼のピークも過ぎ、ようやくお客の数も安定してきた。

食事をとるのはこの時くらいしかないので、そろそろ遅めではあるが昼食の支度にでも取り掛かろうとした時のこと。

 

「お邪魔します」

「いらっしゃいま……っ!?」

 

お店を訪れたお客さんの応対をするべく、フロントに出ていた神楽が固まった。

ただならぬ事態だと思った僕は、一旦火を消して調理を止めると、フロントへと出る。

普通はカウンター席から厨房が見えるように、厨房からでもフロントの様子を見ることができるのだが、人が立っていたりすると顔がよく見えないことがあるのだ。

特に、出入り口前に立っているお客さんの前に誰かが立っていたりすると。

なので、確認するにはフロントに出るしかないため、僕はフロントに出るという選択肢を選んだのだ。

 

「どうした、神楽……っ!」

 

フロントへと出た僕がそのお客の姿を見た瞬間、息をのんだ。

なぜならばそのお客は、ここの世界に来たときに会った、流星学園の関係者の女性だったからだ。

服装も初めて会った時と同じなので、間違いはないだろう。

 

「あの、私に何か?」

「あ、いえ。申し訳ありません。こちらへどうぞ」

 

不思議そうな表情を浮かべる女性の声にいち早く我に返った僕は、慌てて謝ると女性をカウンター席に案内する。

神楽も僕に続く様にして、厨房内に入るとコップを取り出してそれに水を注ぐと水の入ったコップを女性が座るカウンター席に置いた。。

 

「ご注文はいかがしましょうか?」

「そうですね………では、ティーセットをお願いします」

「かしこまりました」

 

今巷ではティーセットでもが流行っているのか? と考えながら、僕は日替わりのケーキ(今日はショートケーキ)と紅茶を女性の前に差し出した。

 

「ティーセットでございます」

「ありがとうございます」

 

女性は、僕に笑みを浮かべながらお礼を言うと上品なしぐさでティーカップを持つと、紅茶を一口啜った。

すると一瞬ではあるが女性の目が大きく見開かれた。

どうしたのかと思い息をのむ。

 

「おいしいです」

「ありがとうございます」

 

どうやら紅茶の味を味わっていたようだったので、ほっと胸をなでおろす。

どうでもいいが、この人は僕たちが侵入者であることを覚えていないのだろうか?

それでならばそれに越したことはない。

 

「ところで、紅茶の淹れ方は誰かに教わったのでしょうか?」

 

ティーカップをお皿に置きながら尋ねてくる女性に、僕は何か探りを入れようとしているのかと思い、頭の中で答える言葉を考える。

 

「ええ、私も紅茶はよく飲むので……昔、母が淹れているのを見ていたら、自然と覚えてしまいました」

「そうですか、とてもよく淹れられていますよ」

 

女性は柔らかく微笑みながら、相づちを打つ。

その後、出された料理を食べ終えた女性は、代金を支払うとそのままお店を後にした。

 

「………何か嫌な予感しない?」

「ああ、今日は厳重に警戒しよう」

 

女性が去ってから少しして神楽が耳打ちするので、僕はそう返した。

あの女性は自然な仕草で店内を見回していたが、あれは明らかに何かを調べているような動きだった。

あの人が何かを調べていたのは間違いなさそうだ。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

黒に包まれた空に数多の流星が幻想的な雰囲気を醸し出す夜のこと。

そこは『私立流星学園』のとある一室。

青色の髪の女性……九条 ヘレナとメイド服を着ている紫色の髪の女性……メリロットの二人がいた。

 

「やっぱりあなたの入れてくれる紅茶は最高ね」

「今日は少しだけ茶葉を変えてみました」

 

メリロットの入れた紅茶を口にしたヘレナは表情を緩め感想を口にする。

メリロットはそんなヘレナに表情を変えてないが、どこか嬉しそうな口調で口を開いた。

 

「どんな茶葉かしら?」

「……本日、ヘレナが言っていた”ムーン・トラフト”に行ってきました」

 

軽く深呼吸の要領で息を吐き出し手から告げられたメリロットの言葉に、ヘレナから笑みが消える。

 

「それで、どうだったかしら?」

「……あのお店は外部から完全に切り離されています。おそらくは外敵から身を守るための防衛手段でしょう」

 

ヘレナの問いかけに、メリロットは淡々とした口調で答えた。

 

「それで、あの二人がメリロットが言っていた侵入者で間違いないかしら?」

「ええ、間違いありません」

 

ヘレナの問いかけに、メリロットは断言する。

二人が浩介たちを知ったのは偶然だった。

彼女が浩介がシンたち生徒会へとふるまったお土産の感想を聞いていたことがすべての始まりだった。

 

(そんなにおいしいんなら一度行ってみるしかない!)

 

そんな好奇心にも似た気持ちで向かったヘレナが、浩介たちを見て少し前に親友であるメリロットから聞かされていた不審者の特徴と酷似していることに気付いたのだ。

メリロットを連れて行ったのは念のための確認でもあった。

 

「それで、あの二人はもしかして」

「ええ、その可能性が高いと思われます」

「だとすると、ちょっと厄介ね」

 

メリロットの答えに、ヘレナは顎に手を添えて考え込む。

 

「どちらにしても、あの二人をこのままあそこに置いておくのはさすがに危険ね」

「私もです。あのお二人は放置しておくのは、私の予想が当たっているのであれば危険だと思われます」

 

ヘレナの言葉に頷きながら言われたメリロットの答えに、ヘレナは神妙な面持ちで考え込むと、何かを思い立ったように、どこかに電話をかけ始める。

その電話は1分もかからずに終わった。

 

「これで良し、と」

「ヘレナ、あまり強引なことはしないでください」

 

ため息交じりにメリロットは、ヘレナに忠告をするが。

 

「分かってるわよ……ふふふ、明日が楽しみね」

「はぁ~」

 

どう見ても分かっていない様子のヘレナに、メリロットは再びため息をこぼした。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「あの………もう一度言ってくれますか?」

「ですから、ここから退去してください」

 

結局、昨晩は何の奇襲もなく、僕の取り越し苦労かと思って店を開けると、黒服の人達がたくさん店の前に立ちはだかっていたのだ。

そして言われた言葉が先ほどの言葉だったりする。

 

「なぜ私たちが退去をしなければならないのですか? 納得のいく理由をお教え願いますか?」

「も、申し訳ありません。守秘義務でお教えすることはできません。とにかくここは退去していただきます」

 

僕の疑問に答えようともせず、黒服たちは力づくで僕を道のほうにはじき出す。

家財道具すべてはあの人たちが処分するとのことだ。

 

(これって人権問題だろ?)

 

神である僕たちが、人権問題を訴えることが出来るかどうかは定かではないが、同じく弾き飛ばされるようにして追い出された神楽も怒りをこらえるのに必死な様子だった。

かくいう僕もだが、あまりにも突然のこと過ぎて何も考えられるような状況ではなかった。

 

「おやおや、これはマスターさんではないか」

 

呆然と椅子などの家具が持ち出される光景を見ながら立っていると、突然横から声を掛けられた。

 

「貴女は、一昨日のお客様ですね」

 

その女性は、一昨日お店を訪れた青い髪の女性だった。

女性は僕の言葉に”そうよ”と返事をすると、お店だった建物のほうに顔を向ける。

 

「ところで、お店は潰れてしまったのねぇ。残念だわ」

「申し訳ありませ――「しかし、そんなあなた達に朗報よ!」――え?」

 

どこか芝居がかったような感じもするが、お客さんをがっかりさせたことに謝ろうとした僕の言葉を遮るようにして、女性はそう言い放った。

 

「あなた達にふさわしい仕事があるわ。料理もふるまえて、しかも住む場所も用意されている、衣食住には不自由しない仕事場が!」

「え、えっと………その仕事ってなんですか?」

 

女性のテンションの高さに、僕は少しばかり引いてしまったが、先ほどから無口だった神楽が苦笑を浮かべながら女性に尋ねる。

 

「それはね~、私に付いて来れば分かるわよん♪」

 

まるで無邪気な子どものようにウインクをしながら応えると、女性は僕達に背を向けて歩き出した。

まるでついて来いと言わんばかりに。

 

「ねえ、浩ちゃん。どうする?」

「そうだな………話位は聞いてみるか」

 

そんな女性の後姿を見ていた僕に神楽が聞いてくるが、このままだと寝る場所が確保できないという問題もある。

ここは女性の後をついて行ってみるのが吉だろうと判断した僕は、神楽に答えると、女性の後を急いで追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここよ!」

「これは……」

「何ともまあ……」

 

女性に連れられて辿り着いた場所は、意外にも今まで入ることが出来なかった流星学園の敷地内にある、西洋風の大きなお屋敷だった。

表札には『九浄家』と書かれていた。

 

「おめでとう! 君達には料理人とメイドの仕事が与えられた!」

「「………」」

 

唐突にかけられた女性の言葉に、僕達は言葉も出なかった。

 

「何よ―、ちょっとはリアクションをしてくれてもいいじゃない~」

 

そんな僕たちに、女性は頬を膨らませながら抗議をしてきた。

だが、こちらとてあまりにも急な展開に頭の中が真っ白になっているのだから少しは勘弁してもらいたい。

 

「それで、どうかしら? 料理人とメイドをやってみない? 二人にとっては、これ以上にない条件だと思うわよ」

【どうする? 浩ちゃん】

【何か狙いがあるような気もするが、このままだと住む場所がない。ここは言葉に甘えておくしかないだろ】

 

女性の言葉を受けて、神楽からの思念通話に、僕はそう答える。

この急展開にはいささかあれだが、こちら側にもメリットはある。

例えば、流星学園の中に侵入がしやすくなるなどが挙げられる。

ならば、僕の出す答えは一つしかない。

 

「宜しくお願いします」

「……お願いします」

 

僕は、目の前の女性に頭を下げながら返答を出した。

神楽も腑に落ちない様子ではあったが頭を下げる。

 

「うむ、いい返事よ! あ、私の名前は九浄 ヘレナよ。何を隠そう、流星学園の理事長だ。よろしくね」

 

目の前の女性……ヘレナさんはここのお屋敷の人(まあ、当然と言われればそうなんだが)だった。

それにしても、時より映画の軍曹のセリフっぽい口調になるのは、一体なんなのだろうか?

そんな疑問を胸に、僕は屋敷内に招き入れられた。

こうして、僕は九浄家の料理人に、神楽はメイドとなった。

 

 

 

 

九条邸内の案内の前にそれぞれの職場の人達と挨拶をした方がいいと言うヘレナさんの言葉で、僕たちは自分の職場の人たちに会いに向かうことになった。

やや長めの廊下を、神楽と一緒にヘレナさんの後について行く。

左右には白色の扉がいくつもあるが、さすがにそれには触る勇気はない。

曲がり角を曲がり、さらに奥まで歩くと大きな広間に出た。

そこにはアンティーク調の家具が置かれており、大勢の人が座れるのではないかと思えるほどの大きさのテーブルが中央に置かれていた。

へれなさんはそこを通り過ぎるようにテーブルの横を歩く。

広間の奥にはイトつの扉があり、かすかに食べ物の匂いを感じたので、恐らくここが厨房なのだろう。

 

「この中があなたたちの職場よ! あ、あなたはその奥のほうね。もう皆には話は通してあるから。検討を祈る!」

 

ヘレナさんはそれだけ言い残すと敬礼をして僕たちの前から去って行った。

 

「「……」」

 

お互いにどうすればいいのかと無言で見つめ合うが、残された道は一つしかなかった。

 

「入るか」

「そうね」

 

覚悟を決めた僕は厨房に続くドアを数回ノックする。

 

「失礼します」

「失礼します」

 

僕に続いて神楽が中へと足を踏み入れる。

厨房は普通のレストランクラスの広さがあり、様々な調理器具がそろっていた。

料理人は約3名ほどだろうか。

穂全員が男の人だった。

筋肉質な男の人もいれば細身の男性もいたりと、様々なタイプの料理人がいた。

 

「頑張って」

「そっちもね」

 

厨房の左奥のほうにもう一つの入り口があるので、神楽はそこに向かって歩いていく。

僕のエールに神楽は苦笑しながら返すと、自分の職場へと向かっていくのであった。

 

「えっと………」

 

残された僕に、3人の視線が集中しているのに気付いた僕は、一つ咳払いをして気持ちを切り替えることにする。

 

「新しくこちらで働かせていただく、大森浩介です。若輩者ですが、よろしくお願いします」

 

当たり障りのない自己紹介をしてお辞儀をすると、初老の男性が僕の前へと歩み寄ってきた。

 

「うむ、私はここの料理長をしている倉松だ。ビシバシと行くから気を抜かないように」

 

僕の前に移動すると男性……倉松さんは、僕を迎え入れてくれた。

 

「はい、よろしくお願いします!」

「よし、ではまずは料理の下ごしらえからだ。あそこにあるジャガイモの皮を1時間ですべてむけ」

「はい!」

 

倉松さんの指示のもと、僕は山積みされていたジャガイモの前に行く。

その量は段ボール3箱、人はこに大体100個入っているとすると300くらいだろうか。

段ボールの横に置いてある包丁を手にすると、僕はもくもくと皮をむいていく。

 

「どうしてこうなったんだ?」

 

思わずこの状況の疑問が口に出てしまった。

それほどまでに衝撃的な出来事の連続だった。

朝、普通に起きたら拠点地を追い出され、一度来たお客の家に迎え入れられて何故かジャガイモの皮むきをするというのは、よくあることなのだろうか?

 

「何か言ったか?」

「いえ、なにも」

 

僕のボヤキが聞えたのか、倉松さんが訊ねてきたので答える。

本当に、どうしてこうなったんだ?




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