2022年10月末追記
今書いてる最新話が現在80000字程度になっていることをここにお知らせとして書いておきます。一年飛ばしてクリスマス+年末年始からクリスマス+年末年始の妄想話になるため、あと1、20000字程プラス…というか前後編レベルになるかもしません。二年ほどお待たせしてしまい申し訳ないです。作者が存命であればエタることは恐らくないのでそこはご安心を。ちなみに、最新話は書きたい+やってみたいことが多々あるので中盤あたりにモリモリしてます。最新話の前書きで注意書きを置いておきます。
(多分こっちに書いとけば見る人が多いと思ったので移動しました)
追記の追記
早くうpしろという方は拙作をお気に入り登録や高評価して頂けるとスピードが上がります。(Tuberみたいなこと言っててすいません。モチベーションが吸いとられてて進行ナメクジなんです。)
追記の追記、そして追記(2023年4月下旬)
機材関連のトラブルで10万字程度の物がそろそろ上げられると思います。GW中に出せますので、もう少々お待ち下さい。
広島県領にあたる柱島という日本の中では些細な島にほんの少しのでも、ある意味とてつもないことが敢行された。廃屋であった小さな鎮守府の再建である。
修復はそこらへんの木を斬り倒して製材するとかではなく、出来るだけ周辺に散らばっている木にニスをかけて使い回しているとのこと。
伝聞口調なのはどうしてかと言われると拘束した上で一方的に話を聞かされているからだ。
話し手は声色から恐らく男だろうか。
愚痴なのか苦労話なのかは不明だがタラタラと何かを口にしているようだ。そんなこちらの意図は知らぬ存ぜぬと言わんばかりに男はケチな作業の話を続ける。
わざわざ廃材を使い回して再建を企てる理由として上がるモノは幾つかあるとのこと。
そのうちの一つとして国々の派閥に属さない第三、第四の勢力として『深海悽艦』という未知の存在が出現したという事だ。
そのなんとかとやらは日の本の国の貿易を妨げているらしい。貿易関連の職ではないし初耳の内容のため実際は分からない。件の彼らを政府は数ヶ月経ってようやく認知したらしい。貿易が立ち行かないばかりに物価は高騰、修復に回す資材を輸入するにもリスクがあるし、仮に輸入が成功して対策本部なる建物を建築出来たとしても今までの失敗の分で完全に損をしているらしい。
これが一つ。
理由として看過出来ないことがもう一つある。深海棲艦が出現する以前からの不景気による財政難により完全に真新しい建物にするのは国力の余裕が無いからと宣ったからである。鎮守府はピカピカにした廃材を使い回して応急処置を施した程度に再建した。
これも一つ。
ちなむ形で『艦娘』なる非公式の存在を作り上げ、自衛隊とは別の戦力として配備しつつあることを聞いた。
事情は現在進行形で聞いている。
聞こえているのだが、話し手の姿は見えない。
何か被せられてるのか目の前が真っ暗だった。首筋の痛みと混乱による心境のめまぐるしい変化と同時に肝心な単語が出てきてしまい、要所に対する質問をする暇が全く無かった。
『そもそも予算が無いのに自衛隊以外の戦力を生産して、憲法に抵触しないのか』、『渋るレベルの予算にしては勢力と呼ぶ段階のモノに勢力を産み出せる余力があるのか』などと言った質問は考えられるだけであって口に出来ない。何か噛ませられている訳ではないのだが上手く喋れない。何故だろうか。とにかく頭がくらくらして仕方がない。
「降りるぞ」
事情を話していた男の声が動いた。
頭を鷲掴みにされたような感触がすると同時に目の前の障壁が取れた。
真っ暗だった視界から目を覆いたくなるような光が差し込んだ。
目をシパシパさせて目の前を見ると小さな椅子らしいもの。
ピントが合わない内に腕を引かれ、階段らしきものをゆっくりと下っていく。
「さて、今日からこの島が君の住居兼家庭兼職場だ。」
「?」
随分と兼ねるモノが多いようだと思い建造物らしきものを探す。
丁度良いタイミングで眩しさに目が慣れてきたのかぼんやりと景色を把握することが出来た。
見渡す限りの砂、砂、たまに海。建物どこだよ。
視界は相変わらず覚束ない。
階段から踏み出した足はしゃりしゃりしてる感触を捉えた。
潮の香り、押しては返す白波の音。
砂の色と波の音と潮の匂いからここは砂浜だろうことが確かになる。
その海の景色をぼやけた視界が邪魔していて若干憤りを感じるが、そこに怒るのは流石にベクトルが違うだろと理性のツッコミ。
自分で自分にツッコミを入れたところまでがいわゆる"回想"だ。一瞬で愚痴やら何やらがフラッシュバックしたのだがそれはそれ、これはこれ。
そんな経緯で見知らぬとこに連れてこられた僕。正に文字通りの右も左も分からない状態だ。
何故ここにいるのかを回り始めた頭を稼働させて追憶し始める。
あれは確か職場からの帰り道のこと。
疲れでフラフラしていたところに突然名状しがたい痛みと衝撃が走った。その後のことは推測でしかないが、ほぼ拉致同然で政府に召還されたのだと思う。
うっすらと背広の男達から尋問を受けた様な気がする。
静かになった瞬間に二回目の痛み。
意識を取り戻した時には愚痴が聞こえたことから、尋問のステップはクリアしてしまったらしい。
助けてもらおうとも思った。しかし、助けてくれるのは公的機関。目の前の不埒者も公的機関。世も末だ。このままでいても公務執行妨害で騒いで抵抗しても公務執行妨害。八方塞がりで刑務所に連行されるのは理不尽だ。
完全に余談だが、スタンガンで気絶させられ拉致の被害にあったことが分かったのは着任してからおよそ一年先のこと。
ともあれ、当然のように見たこともなければ聞いたこともない島に連れて来られた訳だ。
仕事が素早いところからある程度腕利きなのだろうかとも邪推してみる。
それを考える前に生きるために諦めて現状を受け入れよう。
そう思ったところで政府の黒服が早口で
「済まないが5人の中から早急に選んでくれ、それとせめてもの詫びとして首相からの謝罪文書と委任状ついでにこの"艦娘"だ。受け取ってくれ。」
と言った。
なかなか消えない痛みに顔をしかめながら黒服の顔を見る。作業をこなす労働者の面構えだった。目を慣らす為にしばらくシパシパとまばたきした。そして、口をついて出た言葉が、
「一体何故、僕なんです?」
つまりはそういうことだ。
一体何故なのだろう。適任は必ず他にもいるはずだが。意図を察したのかどうかは分からないが予想の範疇だと言わんばかりに黒服は飄々と答えた。
「君みたいな人間が適任だからさ、無意識下での適性検査もSランクでクリアしている。」
何かしらテストをされたようだ。もっとも今重要なのはそこではないはず。家に帰せと言っても毛頭帰す気は更々無いだろう。でなければ回りくどい不意打ち同然の拉致をする必要が無いからだ。
しかし、せめて選ばれた経緯などは理解したいし今後の為に政府に歩み寄っておきたい、駄目元で聞いてみる。
「僕みたいってどういう事ですか?というか話を聞かせて下さい。」
「時間が無いのだ。次があるんでね。」
次。
その言葉に安堵もしたし嫌悪感も沸くワードだった。
自分以外にも犠牲者が居たのかと驚く反面、憤慨もする。
「つまり、まだ沢山同じような人がいるって事ですか?」
「ああ、君はかなり後の方に召還されているからね。先輩がわんさか居るさ。業務の疑問は心配ないだろう。それじゃあ先程も言ったが最初のパートナーを選んでくれ。」
目が慣れてきたし、体の感覚もあらかた元に戻った。
さて、今の状況を整理しておこう。
横目でチラッと後ろを見た範囲くらいには今しがた降りた客船とも漁船ともつかない船。
目の前には五人の小学生くらいの女の子。右隣を見ると筋肉質なガタイの黒いスーツのサングラスをかけた男が一人。後ろを振り替えると透き通るような青い海。青というよりはまさに水色。旅行なら是非とも行きたいくらいの絶景。
よそ見をしていると黒服が眉をしかめた。慌てて女の子五人に向き直る。左から青い髪の子、茶色い髪の子、黒い髪の子、水色の髪の子、桃色の髪の子がいた。
詫びとそのついでの品と言われた。四の五を言っても恐らく後戻りは出来ない。させるつもりもないのは雰囲気で分かる。
背後からスタンガン、無意識での適性検査、考えてみなくとも無理だと分かる。
開き直って受け入れよう。
「じゃあ水色の髪の子、来てくれないか?」
おとなしく、凛々しい表情で敬礼していた彼女に惹き付けられ衝動的に選んだ。
黒服はいそいそと他の子を乗ってきた船に乗せて後に自らも乗り込みスタコラと水色の水平線に帰ってしまった。
横目で置いていかれた者同士の女の子を見る。水色のストレートパーマに兎を彷彿とさせるような機械を浮かべているように見えた。上半身のセーラー服の丈を間違えたような服装だった。
船が完全に消えた。
監視から逃れた。
愚痴が溢れ出た。
「一体全体何が何だって言うんだよ。」
「はいはい、来た人は皆決まって言うセリフね。」
「……。」
「司令官、大本営から文を預かってるわよ。早く読みなさい。」
「司令官?誰のこと?」
考える前に口が動いた。知らない呼称で呼ばれるというのはこういうものなのかと目覚めたての頭にしては大分余裕があるなあっと諦観する。
それと同時に目の前の子供の見た目の印象と実際の性格のギャップのようなものに打ちのめされそうになっている自分がいた。
「アンタよ、アンタ。」
「そうなの?」
「アンタ以外私と話せる人いる?」
至極当然の論理だった。
「そっか、そうだね。首相から電文の前に君の名前は?」
噛み締めるように納得する。
「特Ⅰ型駆逐艦五番艦の『叢雲』よ。よろしく」
「ああ、宜しく。」
「アンタ、名前は?」
親からもらった名前はある。
ただこの名前は僕の中では忌み名でしかない。覚めかけの頭をゆっくりと回した。
「んー、形式的でも良いなら『丸』でいいよ。」
頭の回転が鈍いので何となく丸で良いと感じた。子供につける名前ではない忌み名に比べれば大分ハイセンスなニックネームだ。
「そんなネーミングでいいのかしら?」
「センス無いのは分かっているよ」
「そう、なら良いわ」
こちらの自虐に対し、そう言った彼女はこちらの不満そうな顔をスルーしてキョロキョロし始めた。
職場兼家とは何だろう。
そしてそれは何処だろうと自分の過去から目を背けて今を見る。
『ところで…………』
出鼻を共に挫きあう形になってしまった。
しかし、お互い同じことを言おうとしているのが分かった気がして強行する。
『君(アンタ)道知ってる?』
その問に対しての答えは勿論…。
『知らない。』
なんだろうなあ、この状況。
白目を向きながら嘆息しそうになるのをこらえて叢雲を見る。
「取りあえずこっちに行ってみましょう。何か分かるかも?」
道が分からなくなってしどろもどろになっている叢雲の肩を掴んで止めると、彼女はキッとこちらを睨み付け
「アンタね!酸素魚雷を撃ち込むわよ!」
と怒り始めた。
「ゴメンね」
「まあ、最初だし許すわ。これ以上セクハラ行為をすると憲兵呼ぶわよ。」
主観でしかない解釈だが、僕にとって憲兵とは過去の警察みたいな認知だ。警察もとい憲兵さんのお世話にはならないように気をつけておこうと枷を一つ。
叢雲の言うとおりの方向へ足を向ける。そして、島を回る。島のおよそ四分の三回ったであろう頃。
「全く、鎮守府はどこかしら」
持っていた地図をピンと張って持ち直す叢雲。見た目小学生の娘がよくもまあここまで歩けるものだと感心していると、
「何よ?」
不機嫌が滲み出ている語感で目線と言葉が帰ってきた。同時に話が出来るチャンスが出来たともある意味では言える。
「疲れてる?」
「全ッ然!シャキッとしなさい。男のアンタが音を上げてるだけじゃないの?」
「いや、普通に観光してる気分なんだけど。」
「そう、なら良いわ」
叢雲はぶっきらぼうに会話を切った刹那、彼女はフラッとよろめいた。砂浜とはいえ転んだところに貝殻の破片があったらまずいと思った僕は即座に彼女を抱き抱えた。
「ま、まあ、礼は言っといてあげる。」
頬が少し紅くなってる叢雲だが、口調が荒い。きっと暑いのだろう。
直立の姿勢がとれるように叢雲をおろす。休憩出来そうな場所を探すとレンガ作りの塀があった。
ジャンプして塀の上から見える景色を垣間見ると、塀の向こうには厳かな建物があった。
もしやと思い、叢雲に許可を取って肩車をし、今しがた見えた施設を見せる。
「もしかして、鎮守府ってあの建物じゃない?」
「そそ、そうよ!アレよ!」
赤面して落ち着きを無くす叢雲。
対照的にこちらの頭は冷えている。
彼女の顔が赤いのはきっと暑さだ、そう暑さ。もしくは、同意ありなのに理不尽なセクハラ抗議か。後者なら酷い。
この時の景観から、僕はあることを推測した。詳細に説明すると面倒というか二字熟語の羅列をベラベラと話すことになりかねないため、簡単に解説すると……上陸地点が割と近いところに見えるとこまで回ってきた。
「えーっと、進むべきなのは真逆だったね。」
穏やかな追求に叢雲は取りあわずに僕の腕を掴んだ。
「細かい事は良いのよ!さあ行くわよ!」
嬉しいのか恥ずかしいのか彼女は僕の腕を勢いよく引っ張った。
「痛い痛い!」
思いきり引っ張られ思わず抵抗してしまう。
夕方の光がほんわかと映える薄暗いこれからの拠点に小さな背中の女の子と一緒に雪崩れ込んだ。
というよりもヘッドスライディングする羽目に。
痛い。
これが、彼女との長い長い思い出のアルバムのほんの一行にしかなっていないのを、僕は知るよしもなかった。
2021年末という時期になって本当に今更なんですけど、多分のんびりの方が受けが良いとかじゃなくて純粋に作者がのんびりしたものが読みたいだけの自分向けの作品ではないかと考え始めました私です。
まあ、メタい話というかなんというか、最新話にかけてPV減ってきているので盛り返そうと10万字レベルのものを書いている最中なのですが、また作者がメンタルやられているのとリアルのせいで進行が遅いです。本当に申し訳ない。
何が言いたいかって言うと、心にゆとりがあるときに書ければ作品名に則ったものが書けるんですってことでどうにかよろしくたのんます。
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