あっ、秋イベ。
取りあえず復帰は1話で終わちゃうかな?
ご飯を彼女達にあげたかどうかを覚えてない。ただ、無くした筈なのに痛むのだ。
無くしたからこそ痛むのであろう。
そんな痛みが体を凍えさせた。
無いはずの痛みなのに、そこにある。
腕を無くした筈なのに痛む幻肢痛のように。
数時間前になるのだろうか、僕は第一艦隊の生き残った面子に説教ともとれるかもしれない自嘲を怒鳴り散らしてしまった。
人としてなんてフレーズを多用した気がする。
人として最悪なのはお前自身だろうと良心の呵責が悪意に満たされる心臓を握り潰そうとした。
この黒い心臓を潰すにはあと一握りの光が必要だった。
『赦し』という名の光が必要だった。
それがない限り立ち直れはしないだろうと思った。
しかし、その救いはさっき自らの手で揉み消してしまったのだ。
当然、そんな人間を赦す人間なんて居はしない。
人生二十年余りの経験が今の僕を糾弾する。
部屋の片隅の冷蔵庫の隣にもたれて塞ぎこんでいた。
冷蔵庫の熱と冷気の中途半端さが妙に体に染みる。
自分の口から呪詛を紡いでいるような気がした。
何回も同じ文句が僕の口から這い出している。
ふと、口を閉じてみると誰かがドアをノックしていた。
嗚呼、死刑執行の死刑囚もこんな風に救いの手を求めるのかと訳のわからないことを思った。
「司令官、どんな人にもそんな事はあるわ。実際、あの面子の誰も貴方の事を恨んではいないわ。」
「そうデース!悪い人なんて誰もいなかったのデース!」
叢雲と金剛だった。
救いの手は差し伸べられた。
嬉しかった。
「………」
そのはずなのに無言のつぶてを投げる。
慰めの言葉を取り合う気になれない。
それと同時に放っておいて欲しかった。
龍田を殺したのは紛れもない僕であるのは明らかなのだ。
敵の砲撃に当たって轟沈したとしても当たらないように指示を飛ばせなかった僕の責任だ。
「ハァ、全く自分を責めて反省してるフリがそんなにしたいのかしら。子供と一緒ね。」
「わ、what?!」
「結局、自分を責めているだけで彼女を沈めたことに向き合おうとしてないじゃない。そんなんじゃあんたが沈めたに決まっているでしょ?アンタが自分で進まなきゃ誰がアンタの道を進めるのよ?どうなの?」
そうだ。
自分を責めていれば彼女の恨み辛みから逃げられると思っているさ。
何が悪いんだ。
怖いものから逃げて何が悪いんだ。
結局、上から指示を飛ばす人間なんてロクなヤツがいないんだ。
「アンタ、フォローに回る下の人間の気持ちが分かるの?」
ああ、そうさ。
僕は下位の人間さ。
こっちに来てようやく自分を変えられると思ったさ。
でも、結局変わらなかった。
変われなかった。
だから大いに分かるさ。
咎める対象が欲しいんだろ?
さあ、責めるがいい。
咎めるがいい。
そんな負の感情にプレッシャーをかけるような重い静寂。
ドア越しに聞こえたのは何かの駆動音と共に叢雲の大きめな溜め息だった。
「ハァ、世話が焼けるわね。金剛さん、手伝って。」
「Sir yes sir!」
流暢な英語で了解の旨を叢雲に伝えた金剛は一際大きな機械音をたてながら薄い木の板一枚を隔てた僕に会おうとする手助けをしているのだろう。
ひたむきに手を差し伸べてくれる人に余程恵まれなかった過去の自分が恨めしく思うくらいに僕の心は明るくなった。
ああ、素晴らしき世界。
信じられる人間がいるというのはこういうことなのだろうか。
黒い心臓は清光に浄化された。
もう、降参だ。
いじけた自分は負けた。
後は踏み出すだけだと思い、ドアノブに手をかけた刹那。
「……ゥ!Looooove!」
「えっ?」
やかましい程の掛け声と共にぶち破れた板切れは僕ごと空中に吹っ飛ばされた。
執務室内なのは天井を見て分かった。
ただ、高度が分からぬまま着地と同時に受け身もとれず気を失ってしまった?
気を失うということが今まで無かったのだ。
状況は理解できないに等しい。
ブラックアウトする視界は美しくも醜くもない懐かしいような黒に染まっていった。
身体中の痛みがひしひしと体の奥から沸き起こる。
ゆっくりと意識が戻ってきた。
目の前が黒かった。
目を開けてみる。
天井が見えることからどうやら横になっているらしい。
それはそうであろう。
なにせ床に叩きつけられたんだ。
さて、恩人とも犯人とも言える二人は何処だと思った僕は首を捻って、左を見た。
桃色の髪、碧眼の双眸を持ち大淀さんと何処か似たような服を着た美人さんがいた。
「気がつきました?」
「え、ええ。どうも」
意識がはっきりしてないのか自分の悪癖である人見知りが出てるのか判然としなかった。
「私、明石と申します。大淀さんがお世話になってます。」
「こちらこそ………。」
人見知りが出てると確信した。
自制したばかりなのにつくづく自分が嫌になる。
「提督、具合は?」
「あっ………いたんだ。」
「ええ、寝顔頂きました。」
「それはどうも………。」
「今回は大運営も前代未聞らしくお咎めは無しの様です。
「でも………。」
「下の者に気を揉ませたら龍田さんが報われませんよ。」
「!」
「ご理解頂けたのなら早くお二人に会いに行ってください!」
「うん…。叢雲、金剛入ってきて。」
名前を呼ぶとシンクロ状態で天井をぶち抜いた二人。
見ると泣きながら笑っている。
………正確に言うと涙を浮かべながら笑っているのだが。
「司令官、指揮を」
「提督、please command.」
涙ぐみながら僕の指示を仰ぐ二人。
「心配かけてすまん。俺は情けない奴だな。女の涙に一喝入れられるとわね………大淀。」
「?!」
「任務表は俺が見る。無線の仕事に従事してくれ。」
「はっ!」
「叢雲、金剛。」
「はい!」
「地獄を作るぞ、一心不乱の大戦争をしようじゃないか。あやつらに豚の様な悲鳴をあげさせようじゃないか。私が指揮する小隊戦友の諸君。地獄を作るぞ!」
『はい!』
諸々を吹っ切るためにスイッチを切り替えた。
ここから始まる復讐劇は薔薇色になるのだろうと高揚と興奮を交えていた。
雀の鳴き声と共に目が覚める。
気がつくと寝ていた。
執務室で寝ていた。
皆の寝顔はどこにも無い。
机を見ると101~130までの番号と該当するであろうボタンが存在した。
寝てすっきりしたのか思考が巡る。
恐らく皆の部屋が出来たのだと思い、試しに106のボタンを押す。
カコンと軽い音がしたと思った刹那、金剛が眼前の直径1mくらいの穴から補給資材と同様に出てきた。ただ、慌てていたのかは定かでは無いが髪がボサボサである。
その後興味半分で押しまくると泊地に来た順番で部屋が割り振られているらしい。
指揮をして第一艦隊のみ面子を決める。
紙媒体の任務表をパラリ、ぱらりとめくると「敵空母を轟沈せよ。」という任務があった。
南西諸島にはしばらく行きたくはない。なので、1-4で決行することにした。
日課を悼む様にこなす内に三時間の文字がタブレットに映り込む。
「隼鷹でーす!ひゃっはー!」
艦種を見ると軽空母………ヌ級………………。
しっかりしなきゃならないのに後ろ髪を豪腕で引かれる。
それでも体面を整えねばならない。
崩れそうな諸々を圧し殺し、告げる。
「隼鷹」
「なんだい提督ぅ~」
「お留守番!」
「イエーイ!」
1-4に出向き空母を撃破、S勝利。
敵の撃滅が作業じみてきた頃、任務の条件は達成された。
大淀さんに任務のページを切り取った物を見せると少し待つように言われた。
執務室に戻って待機する。
すると、多少の資材と弓を持った赤い弓道着の女性が現れた。金剛さんと同じ背格好だろうか。
「正規空母の赤城です。宜しくお願いします。」
「ああ………よろしく。」
空母と聞いて思考が固まった。
ただ、軽空母と正規空母は違うと思い直す。
「て、提督?どうしたのですか?」
「いや、嬉しいんだよ。有難う。」
それでも堰を切って溢れる思いは止められず女性の前で涙ぐんでしまった。
泣きながらこう考えた。
『反抗作戦、開始』と。
最初あたりに軽空母が来てヌ級を思い出すから使いたいとか思ってたんですよね……トラウマを抱えて進まないと……まあ、今は4-4に苦戦してるんですがね……
(^q^)ワ―コロセ!
彼女はもう少しで出てきます。
これで分かる人はある意味凄い。
対象年齢上げたバージョンいりますか?
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