のんびり艦これ   作:海原翻車魚

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 タイトル修正しまして、こんにちは。
 最新話を追いかけている方はお疲れ様です。
 ここまで読み進めてくださった方もお疲れ様です。
 筆者の海原です。
 今回はちょっと意地悪をしました。
 描写が更に過激になったとかではなく、本編とSSの同時投稿です。

 こちらの話は本編です。また、以前SSの方で告知したリンク先の本編ではありません。タイトル通りカレーの話です。
 万が一飯テロになったらごめんなさい。
 それでは出向、じゃなくて抜錨!


帰ってきた鎮守府カレー大会~2024~

 政府から招聘されて早数年、EVENT海域は数あれど鎮守府イベントはそれ以上に開催していた。

 最たるものがカレーコンテストだった。元の元を辿ると、旧帝国海軍が曜日感覚を失くさないようにするためのカレー曜日なのだ。そのカレーを職員で作って週の終わりと慰労を兼ねた褒賞になるようにしていた。

 ところが、鶴の一声…………もとい僕が甘口カレーにチーズと鶏の唐揚げをトッピングしたものを作ってしまったことから長らく開催されていなかった。

 特別ではないこの日に、安穏としたこの日に、何気ないこの日に、僕は自戒を解く。

 

 『本日、正午をもって金曜日のカレーを変更する。各自、腕を振るえ。』

 そんなメールを職員全員に送った。勿論、送った時間はきちんと配慮して朝の8時だ。職員メールはこの使い古したタブレット端末でしか送れないため少し面倒だった。

 送って間もない頃の廊下。空気がピリついた。スパイシーと言ってしまってもバチは…当たりそうだな。近くにいた瑞鶴の眼光がかなり強かったことや翔鶴の目が戦場のそれだった。

 叢雲も戦闘服をキッチリキメて腕をまくっていた。

 廊下を颯爽と駆ける足柄とそれをどうにか止めようとして彼女の腰にへばりつく大淀や清霜、霞がそのまま引きずられていた。

 「いやあ、みんな気合入ってるねえ。」

 「北上。」

 僕の肩にポンと手を乗せて、いつもの口調で通り過ぎていく北上。

 ただ、心なしか青い眼光の軌跡が見えたような気がした。

 「獲りにいって、良いよね?」

 軌跡は寄り強く、太く、まばゆくなって尾を引いた。こっわ。

 「北上さーん!待ってええええ!」

 「お、おお……」

 いつも通りの大井が北上に追従している、かに見えた。僕と通り過ぎるほんの刹那、茶色の眼光がまた軌跡を描く。

 「……やらかしたかな?」

 先行き、雲行き不安である。

 

 かつてはお立ち台に乗って拡声器を用いて全体に号令をかけていた。今は、増設されたスピーカーからも放送を流せる。耳に入れてある小型の通信機を接続して雑事をこなしながら伝達事項を口にした。

 「今回のコンテストは団体で挑むもよし、個人で挑むもよし。ミーティングの時間を設けるため、開始時間の指定はしない。規定の時間までにカレーを審査員に提出するように。」

 無線を切ってぼやく。

 「あの時はノイズ酷かったよなあ。」

 使い古しの無線機に緊急で仕入れた折り畳み式の机……本当に酷かった。あの時を原人がいた頃と言うのなら今ではいくぶん文明的だ。それでも近代の域を出ないと言ってしまえば揶揄の内に入る。飽くなき探求心ということにしておこう。

 倉庫から審査員用のミニホワイトボードと水性ペンとミニ黒板消しを引っ張り出す。

 「ゲッホゲホ!」

 本当に何年もやってなかったことを積もりに積もった埃とそれによる咳で痛感する。

 ある程度手入れをして会場に向かう。

 

 この季節にしては日和が良い。心地が良いとも快いとも言える。カレー大会を開かなければ中庭で寝るのが最適解……先程の自分の問いに今の僕が答えよう、やらかした!

 「そんなことは、言ったらダメなんだけどさ。」

 ボソリ、と苦笑。

 日差しを避けるための救護用テント……じゃなくて、タープには珍しい組み合わせの面子がいた。

 「Hey、テイトクぅ!」

 「あら司令官。」

 「提督か。」

 「司令、ご指名ありがとうございます。」

 金剛、足柄、長門、赤城が四者四様に挨拶をしてきた。

 「はーい、皆お疲れ様。それで、何このグループ?」

 「What?」

 「何って何?」

 「……ふーむ?」

 「あれ?司令の指名ではないんですか?」

 「指名した覚えがない。」

 『…………?』

 空気が、止まった。全員が首をかしげた。

 「ふっふっふっ、お困りのようですね!指揮官!」

 「えーっと、誰だっけ?」

 「え"っ"?」

 声だけで判断しようとして脳が混乱している。じゃあ顔を見ろよって話。見るわ。

 「……あー、青葉か。」

 「結構本気で忘れてませんでした?!」

 「気のせい気のせい。」

 ぼうっとしてたせいということで……いや、ちょっとボケてたかもしれない。

 端から見ても自分から見ても無理のある方法で流した。

 「それで、改めて聞くけどこの面子は?」

 「ご自分で考えてみてください!」

 膨れっ面でそっぽむかれてしまった。

 「ん~……」

 思案する。身長?年齢?……見た目?精神年齢?……もしかしてこの面子って審査員?

 そうなると、多少合点がいく。あとはベースを補強するために細々としたピースを当てはめる。

 総合審判が金剛なのはベースの時点で得心している。

 次に分かりやすいのは長門だ。彼女はたしか辛いのが不得意だったはず……甘口部門の審査員かな?そうなってくると対極の足柄は辛口部門ってことになる。じゃあ、赤城は旨味担当……?

 「金剛が総合審判で、赤城が旨味担当、足柄と長門がそれぞれ辛口と甘口の担当ってかんじ?」

 「ぶっぶー!満点じゃないでーす!」

 「あれえ?」

 「私は、旨味担当なのは事実なのですが、正確に言うと味とボリューム担当なんです。」

 「そのとーり!」

 自己申告した赤城と得意気に胸を張る青葉。ちょっと悔しいが些事である。

 「じゃあ、実況は?」

 「なっか……」

 「那珂はあたしたちと夜戦カレー作るんでしょ!」

 「ぶーぶー!川内ちゃんひどーい!」

 「姉と妹がすみません、提督。」

 騒がしい夜戦三姉妹のご登壇であったがご降板でもあった。

 「私たち、負けませんから。提督。」

 「おー…………?」

 おかしいな、なんで神通から宣戦布告された?

 こちらの頭の疑問符が見えたのか金剛が来た。余計にクエスチョンである。

 「提督ぅ、シード権ってyou know?」

 「変化球…………シード権ってある程度試合しなくても良い権利のこと?」

 「Hmm…….その解釈は少し間違ってますがAlmost正解ネー」

 なしてシード権の話を振った?

 いや、帰結する結論は燦然と眼前にあった。が、認めたくない。認めたくない一心でしらばっくれる。

 「シード権と僕に何の関係が?」

 「おかしいですネー……。では、More hint.前までのカレーって誰がmakeしてた?」

 「……ぐっ!」

 どうして核心を突くのが巧くなってしまったのか……悲しいよ、金剛。

 「提督が悪いと思うネー。」言葉でも心の中でも言い負かされてしまった。しかも、ぐうの音も出ない事実だから何も言えない。はい、前回の高カロリーカレーは私が作りました。

 で、神通のあの言葉。邪推するとチャンピオンだから決勝まで試合無し……とか。

 「まさか、予選を勝ち残った子達と競え……とか?」

 コクリ。

 綺麗に揃った四人の首肯である。

 「司令官は審査が始まる一時間前からが競技開始です。」

 「その予定組んだ覚えがない……。」

 「明石が組んでいたぞ、提督。」

 「情報ありがとう、長門。」

 余計なことをしてくれたものだ。

 そう言いたいが端を発したのは僕でした。

 

 頭を切り替えて、審査員グループから情報をもらう。

 整理すると、『予選は得点式で各員が25点満点で評価をつける』・『決勝戦は得点式もしくは指名式』とのことだ。

 何かデカいやらかしが無ければ良いのだが。

 

 

 現在時刻は午前9時。正午には最終判定が出る算段のため、僕の出場は10時30分頃となる。その1時間30分の間に敵情視察と洒落こむことにした。

 まずは、一番メンバーの多いところから回ることにした。

 全体を俯瞰して、明らかに人数が多いところに歩み寄る。

 見たところ、暁や電、曙に潮、初月に秋月、占守や佐渡がわちゃわちゃと集まっていた。さしづめ、駆逐艦・海防艦連合艦隊。

 この面子だとレトルトに走りそうな島風がネックに思えてしまうが彼女はタイムキーパーを引き受けているようだ。

 前科と言ってしまえば酷い言い種だが、前例はあったからそういう目線になってしまう。

 そろそろ例のワードが聞こえてきそうだと思っていた矢先、

 「おっそーい!」

 はい、ノルマ達成ありがとうございます。

 「アイデア出しの時間過ぎてる!」

 「島風、そうは言うが……」

 「初月さん……」

 「困ったわね。」

 「はらしょー」

 「……どうしよう。」

 どうにも、初手から詰まっているようだ。

 頭を抱える連合艦隊、指揮官が居れば良いのだろうが。

 「やべっ」

 低いところから多数の目線が刺さった。

 「司令官、丁度いいわ。」

 「……。」

 一番付き合いの長い叢雲が集団から抜けてこちらに歩み寄ってきた。

 「方針、決めてくれないかしら?」

 「決めません。」

 「なんでよ!」

 「参加者!僕!」

 「……そういえばそうね。」

 向こうに取っては船、こちらからすればお駄賃を渡すことにした。

 「だったら、叢雲が指揮をとれば良いんじゃないか?」

 「……?!」

 「僕のやり方は、叢雲が一番近くで見てるでしょ?」

 「あんたのやり方…………」

 「ほら、いってらっしゃい。」

 叢雲の肩を軽く持って引き返させる。

 「一応言っておくわ、ありがとう。」

 「どーいたしまして。」

 踵を返しながら思った。叢雲って史実だと旗艦担当してたっけ?

 

 集団に戻った叢雲があせあせしながら周りに指示を出していた。なんか名残惜しそうに牛缶と麦飯缶を渡してる秋月型が見えたり野菜を刻んで涙ぐむ第六第七駆逐隊の面々が見えた。

 完全な余談だが、使っている調理器具が安全面に配慮されたものだった。「ちっちゃい子向けの雑誌の付録に付いてきそうな調理器具」…………いや、なんか分かりにくい。まあ、いっか。

 

 今度は個人の部門を見ようと足を進めようとした。

 「やっほー!」

 よし、何も見てない。

 「那"っ"珂"ち"ゃ"ん"だよ"お"お"お"お"お"!!!!!」

 「……路線変更した?」

 那珂の凄まじいシャウトで見過ごせなくなってしまった。

 スルーしようとした川内は少し涙ぐんでいた。

 神通はお辞儀していた。

 三者三様のお出迎えだが、どうにも次女と三女はピリついているようだ。テンションが尖っている。

 あれか、ロックってやつか。いや、サイケ……オルタナか?

 思考が飛躍を始めようとした。

 「……ーい、おーい?」

 「はいよ」

 「わ、戻った。」

 ダイブしなければ中止は早い。

 「んで、どうしたんさ。」

 「いや~それがさあ」

 「川内ちゃんがカレーのアイデア浮かばないんだって。」

 「不甲斐ないです。」

 聞き入ってみたら鎮魂歌でした。

 「とは言っても、このメンツならアレでいい気がするけどな。」

 「アレ?」

 「しかし、問題が。」

 得心がいった神通が不安点を申してきた。

 「あくまで問題になるのはカレーの即席だけであって、主食は問題ないはずだけど。」

 「主命、承りました。」

 「ありがとう、プロデューサー!」

 「思い出の味で勝負ってことね、オーケー!」

 話がひと段落したことで別のグループに足を運ぶことにした。

 このアドバイスがあんなことを起こすことになるなんてこの時の僕は想定していなかった。予感がしなかったと言えばちょっぴり嘘になるかも。 

 

 

 次に訪れたのは、礼号組。

 こちらは内容でも話し合いでも淡泊に済んでしまったようだ。大淀がタイムキーパー、霞と清霜が調理、手伝えない足柄がちょいちょい見に来て応援していた。授業参観かしら?

 ここは特に問題なし。次いこ。

 

 腕時計を見て、時間がまだあることを確認した。

 視界の端に間宮と伊良湖と鳳翔がメモをとりながら各グループのレシピをしたためているのを捉えた。

 後学のためだろうか。

 

 次に様子を見るグループを探すことにした僕の鼻孔はカレー以外の匂いを捉えていた。

 朝食を食べていなかった事実に思い至るころには僕の足はカレーコンテスト定番の屋台に向かっていた。

 向かおうとした頃にはもう既に向かっていた。というか着いていた。

 「あら~、どうしたんですか?」

 「ご飯食べに来た。」

 「私しか出せませんよ~。」

 「はいはい、竜田揚げの出店だからね。」

 「あら、張り合いがない。」

 「?」

 『天龍ちゃんはそのままでいて。』

 普段第六駆逐隊と共に遠征している天龍型姉妹。そんな彼女らが営むのは黄色地に赤字で「竜田揚げ」の垂れ幕がシンボルの出店。デザインがシンプルで食指が蠢く。唐揚げだったら即買ってた。竜田揚げはほんのちょっぴり迷う。

 「司令官、私を食べます?」

 「?」

 「今は良いかな。試合前だから。」

 「そう~」

 演技なのは分かるが少し気分がノってる口調に少し驚いた。まあ、天丼だからと龍田の言葉を流した後にはいつもの安穏としてる風な口調に戻った。

 油の弾ける音が僕の後ろ髪を引く。短髪にしてるけども。

 鼻腔をくすぐる香りはまだまだ多い。

 ソースに肉、小麦の焼ける匂いが漂う。獣性と惰性を掻き立てる匂いはやがて手招きを始めた。

 その手が招き入れた先は誰かと飛鷹が営むフランクフルトとホットドッグの屋台だった。車輪付きだから移動できることや元客船の性か周りより少し華があることも強みだった。

 「いらっしゃませ。当店にようこそお越しくださいました。僅かな時間になりますがごゆるりとお過ごしくださいませ。」

 赤みがかった紫の長髪がさらりとなびく。

 誰、と疑問を呈したくなるがちょっと我慢。こんな髪の色はあの飲兵衛しかいない。

 「どうかなさいましたか?」

 暫定隼鷹がこちらを見る。

 人様というか部下をこういうのもヒドイのだが、漂白剤で洗濯したのかと言いたいくらいにキレイな隼鷹だ。

 「ほーら、酒抜きした甲斐あったでしょ?」

 「うしし、確かに。」

 「汚い隼鷹に戻った。」

 「うーわっ、ひっど。」

 先ほど元客船と言ったのは店と視界の端に何も変わってない飛鷹がとらえているのを頭が直感的に判断したのかもしれない。そういうことにしておこう。

 「それで?飲みに来たの?」

 飛鷹がイヤイヤ一升瓶をカウンターから取り出し始めた。

 「うんにゃ、良い匂いがしたから来た。」

 「ほう、旦那のお求めのブツは?」

 「隼鷹、キャラブレてる。……そうだねぇ、腹持ちの良いホットドッグで。」

 「おっしゃ、仕事だ!」

 手早くコッペパンに切れ込みを入れ焼きたてのソーセージをはさみ、宙を踊るようにマスタードとケチャップが螺旋を描く。そうして僕の前に出されたホットドッグ。

 「エチケットに配慮ありがとう。」

 キチンとカバーの紙で巻かれていた。

 「そういえばなんだけどさ、提督。」

 「ん~?」

 もらったお手拭きで手を拭う。関心は90%がホットドッグ、10%は隼鷹に向けられていた。

 「今回は発券制度じゃないの?」

 「あー……」

 そういえば前回はチケット1枚につき1店舗の商品だった。

 正直に言うと何も考えてなかった。なので、

 「急に開催決めたから何も考えてない。」

 「たはー!だよなぁ!」

 「はは……デスヨネー。」

 腹を抱えて笑う隼鷹と呆れる飛鷹。

 「だから、来た子には欲しいだけご飯あげといて。」

 「……そういうことなら分かりました。」

 「……クック……クッ」

 「隼鷹、いつまで笑ってるの?」

 「ひー……!……ふぅ、収まったぁ!」

 「ご馳走様。」

 「早っ?!」

 「収まった。」

 「隼鷹はちょっと遅いわね。」

 「せやね~」

 『誰?』

 いつも通りの雑談、なあなあになるとこも。

 「美味しかった。ありがとう。」

 『またお越しをお待ちしております。』

 そして、しめるところはしめるところも。

 

 腕時計を見て、まだ時間があることを認識。

 次は粉ものを食べようかと思い歩みを進めた。

 が、僕を魅了したのは破壊的な油の匂いだった。

 「ようこそ、Admiral.」

 おおよそ匂いの元とは思えない人物がそこにはいた。

 「Warspite?」

 「はい、Warspiteです。」

 屋台の表示を見て納得……出来ない……。

 イギリスで有名なフィッシュ&チップスから派生したと考えるなら辻褄は合いそうだがよりにもよってフライドポテトとは……

 「私もここの文化に影響を受けまして。」

 「……」

 "最後のカレー大会ってウォースパイトいたっけ?"

 そう考え始めた僕の様子を見て彼女はこう付け足した。

 「明石から以前の風景を見せてもらったんです。」

 「?」

 「Videoを見せてもらったんです。」

 「あー、なるほどね。」

 どうやら前に撮影をしていたようだ。その話がこちらに通っていたかは議論の余地がありそうだが。

 「How many?」

 「いきなり来たね。」

 「リュージョーに教わりました。」

 「お客さんには考える時間が要るからその教えは忘れて」

 「Hun?」

 よく分からないと言った表情を浮かべるウォースパイト。龍驤のマーケティング論は後で問い詰めるとして、だ。

 「とりあえず、2つ。細いのと太いのを1つずつちょうだい。」

 彼女は手をたどたどしく動かしながら日本式のハンドサインで"4"、そして首を傾げていた。

 "合計4つで良いのか"ということだろうか。

 少しスマホで調べてOKマークを作った。どうやら、"2"を示すものらしい。

 得心したらしい彼女は握った手を片方の平手にうちつけた。

 「2ツですね?」

 「細いのと太いのお願いね。」

 「Roger!」

 揚げたじゃがいもたちが入れ物に入っていく。

 そうしてフライドポテトを受け取った僕は両手が塞がっていた。

 「ありがとね~。」

 「THANK YOU SO MUCH,ADMIRAL!」

 店から少し離れて、この芋たちをどう食すか考えた。

 結論、手を使わず直に食べることにした。

 塩気が殴ってきた。熱さも蹴ってきた。そのあと、じゃがいもの甘さが優しく癒してくれた。DVかな?

 

 悪戦苦闘しつつ食べ終わる頃には、僕の出場時間の15分前になっていた。

 そろそろ支度をしようと袖をまくり、やたらと目立つ『提督用』の半紙が貼られた調理台へ向かう。

 その頃、審査員席では予選の審査が行われていた。

 遠目で分かりにくいが、審査員のスプーンからさらりとした液体が吸い込まれていたことからスープカレーだろうか……?

 眼鏡のズーム機能を使って注視してみると予想は正解であった。金剛ってスープカレー好きだもんな。分かってるぅ。

 そして、作られたカレーのコメントをしているのはなぜか大破気味な翔鶴、瑞鶴。

 そして、ボリューム担当の赤城からコメントが入る。

 「美味しい。美味しいのですが、あまりにも量が少ないです。ですので……」

 "8"と書かれたミニホワイトボードを出す赤城。

 「辛さが……足りない……ッ!」

 絞り出す苦慮が滲む表情をしながら足柄が"12"を出した。

 「ふむ、すっきりとした味だ。それでいて食べるのが苦ではない辛み……」

 長門は"21"を出した。

 「SO LONG TIME NO SEE…….」

 感動している金剛は満点をだした。

 計66点。大学なら及第点ギリギリだ。

 審査員の好みを狙い打ったカレーは今のところ合否が判然としない。

 ともかくとして、さっさとシード権を返上しにかかろう。

 

 

 炒めるための具材を刻み終わったところで審査員席に目線を移した。

 「うふふ、たまりませんね。」

 恍惚とした赤城が満点をだした。

 「前回王者を見習う姿勢はいいわ。実際に美味しいし……けれど、チーズのせいで辛さが台無し。あまり好みではないわね。」

 腕組みしながらウンウンと唸る足柄。文句の割には"18"と高評価。

 「ふむ、なんというか私好みだ。こう……言葉にはし難いが……うむ、好きだ。」

 長門は"23"を出した。

 「テートクは好きでしょう、作った本人ネー。だから、だからこそ……copyには点は付けないネー。」

 金剛はまさかの"0"。

 バランスを取るには丁度良いかもしれないが、真似をした子と真似をされた側としては少し悲しくなる。

 件の子たちは北上と大井だった。

 彼女たちのテーブルらしき場所には、僕のカレーを全ての材料を増量したものが悠然に雄弁にそびえていた。

 そりゃ赤城も満足する。

 ……あれ?もしかして、みんな出された皿完食してから評価してる?

 「気のせいだな、うん。」

 そーいうことにした。

 カレーは大盛にした中辛チーズカレーwith唐揚げでした。

 やっぱスルー無理。皆二人前分完食してるんよなあ……。

 センシティブな話題にシフトしかける自分に歯止めをかけ、調理を続ける。

 

 

 野菜に塩コショウをかけて一通り炒めて煮込み始めた頃、騒然とし始めた審査員席を見る。

 完食された皿…………アレどう見てもどんぶりじゃないか?

 脳内のツッコミが食いぎみであった。

 ともかく、空になっているであろうどんぶりを見て、作り手を見る。

 腕組み川内三姉妹がおわした。

 アレ……とは言ったが本当にアレを作るとは思わなかった。カレーうどんを。

 青葉がインタビューを始めた。

 「何故カレーうどんなんです?」

 「企業秘密です。」

 「何かコツは?」

 「守秘しまーす!」

 「最後に一言」

 「プロデュースの裏側は決勝戦で!」

 終始このような調子だった。

 この言動が功を奏したのか、はたまた味も加点となるレベルだったのか高得点を叩き出した。全員23点の合計92点。

 「すごいなあ」

 あっけらかんとそんなことをつぶやく。

 じゃがいもや人参をお玉ですくい竹串で火の通りを確かめる。

 「ちょっと甘いかな?」

 竹串の通りが悪く、このままでは話にならない。

 ふたをしめてもうしばらく煮込むことにした。

 

 時間には余裕があるため、ボケーっとしていたかった。

 「続いては、一航戦と二航戦によるカレーですっ!どうぞ!」

 キャピキャピしてる蒼龍と飛龍、そして腕組み仁王立ちの加賀。二航戦はともかく加賀はちょっと寂しそうに見えた。

 彼女たちのカレーを解説の情報を交えて話すのなら、高級食材とお手頃食材の合の子らしい。『ちょっぴり贅沢カレー』だそうだ。

 ホロホロになるまで煮込んだ牛肉と鎮守府の味がマリアージュした逸品だそう。興味湧くね。

 蒼龍は野菜や肉のカットを、飛龍はタイムキープ、加賀は下味や火力の管理を担当したそうだ。にしても、二航戦が背中合わせで腕組みのポージング。そして、遅れて加賀がしゃがんで両手を翼のごとく広げた。褌見えちゃうよ。にしても、だ。

 よほどの自信か……はたまた蛮勇か……それは点数に出る、それだけ。

 調理に意識を向けた僕は感想と採点の現場を見過ごしていた。ただ、嬉しそうな彼女たちを見ると本戦に出場を果たしたのだろう。あと、加賀さん感涙してません?赤城に食べてもらったのそこまで嬉しい?

 

 「さて、と」

 しつこい位に煮込んだ野菜に火が通ったことを確認した。

 いい匂いが鼻腔をくすぐ……るわけない。まだルゥすら入れていないから当然だ。

 「ポイポイっと」

 よく実家で食べていたカレールゥをてきとーに放り込む。

 個人的にサラッとしたカレーよりドロッとしたカレーが好きなため通常の分量より多めに入れる。

 ふと、日光が乱反射した。

 そんなノイズが僕の集中を乱した。視界なノイズは聴覚にも響いてきた。

 額の汗をぬぐうと予選通過者の発表が音を割りながら行われていた。

 何の偶然か、はたまた必然か……僕が意識を割いた子たちが予選を通過していた。勿論、叢雲が陣頭指揮を執った駆逐艦、海防艦大連合艦隊も予選をパスしていた。

 「ふわぁ~」

 脳に酸素を送り込んでやる。勢いで晴天の空を仰ぎ見る。

 「うへ」

 しょっぱい、タオルで顔を吹けば良かったと後悔した。

 

 完成したカレーは実家の味にかなり近いものだった。近似しているだけで合同ではない。近似ないし相似の類いなのだろうが、ともかく差異はある。ルゥのミックスやらスパイスへのこだわりやらは実家のごみ捨て場に捨ててきた。

 名前を付ける必要はない。けれど、名目上というか大会の都合上名付けてみるのであれば『里』。

 「ここでなんと!大会の方式が変わりまァすッッ!」

 青葉の裂帛の気合いが空を裂いた。

 「提督のカレーの採点後に改めて皆さんの点数が発表されます!」

 ルールも裂いたね?!

 「なので、提督早くしてください!」

 拡声器で煽られる。

 『あァい、カレーの出前一丁ォォ!』

 府内放送でお返しのマイクパフォーマンス。

 楕円形の皿にライスをよそいルゥをかける。見た目が映えるようにライスとルゥの境目にちょっとしたグラデーション。これを人数分作って審査員たちに配る。

 「さて、司令官!カレーのコンセプトは?!」

 「『家』です。」

 「どういうことですか?」

 「実家の味を再現しました。」

 「なるほど!意気込みをどうぞ!」

 「やることはやったので天に任せます!」

 「それでは、チェックをぉぉ……ぉォお願いします!」

 ビブラートを乗せたシャウトで場を回してる……まるで大会終盤の発声である。

 「やや!この結果はぁ?!」

 全員が8点である。10点満点中の8点、高得点で嬉しいところだが、気のせいとしか思えないほどに小さい違和感がよぎる。それを言語化出来ないのが悔しい。

 「それでは、採点コメントをうかがっていきましょう!」

 マイクを向けられる採点者たち。ここでも違和感。なんと、全員ノーコメントである。

 「まだ採点phaseは終了してないデエエエエス!!!」

 金剛の迫真の叫びを皮切りに縦置きされていたボードたちが横置きになる。ようやく気付いた違和感の正体がこれだった。

 横になった8は無限大を示した。

 『?!』

 審査員以外の僕を含めた全員がただただ驚いた。青天の霹靂である。

 「どどどどど、どういうことでしょうか?!全員が無限大をマークぅ!点数が表現不可能となってしまったあ!!!!!それでは、改めて採点コメントをォォォ……チェケラ!」

 「表現古くない?!」

 久々にツッコんだ感じがした。

 「Husbandのhomeのtaste……infiniteネ~」

 「英語が多いですね……司令官に聞いてみましょう。」

 「『旦那の実家の味は10点って枠には収まらない』ってことじゃないかな?……自分でこんなこと言うのは恥ずかしいけど。」

 「あー……確かに自分で言うと面映ゆいですね。」

 「でしょ?」

 「さて、次に長門さん。コメントお願いします。」

 「皆も観戦していて気付いたかもしれないが、この大会では足柄と私が互いに点を調整するためのバランサーとなっている。そのため、どちらからも点を取ろうとすると辛さを半端にする必要がある。そう、この大会で最も出てきた辛さの中辛だ。」

 早口で話した長門は息を吸った。

 「勿論、提督の出したカレーも中辛だった。甘い方が好きな私にとっては少し手厳しい……しかし、ただ乱暴に中辛にしたわけではなく米とじゃがいもと人参の甘さが引き立つ構成になっている。」

 熱が入ったコメントが続く。

 「それに、私たち艦娘が体験することが出来るはずがなかった家庭の味と言うのが大幅なウェイトを占める。それだけでも、十二分に評価出来る。……つまるところ、提督の奥方と同じ評価だ。」

 「ぉ、おー……長門さんから良いコメントを頂きました。確かに家庭の味というのは馴染みが薄い我々です。それは高得点になり得ますねえ!次に足柄さんコメントをお願いしますっ!」

 「私も長門と同意見よ。違うのは辛さと甘さが反転してるってところ。あとは……トンカツを入れても美味しそうってところかしらね。良いことを起こすとか良いことがあった家の味っていうのがここに帰る理由になりそう。」

 「省略と思いきや深いコメント。ありがとうございます。」

 「さて、赤城さん……あれ?お皿三枚目じゃないです?」

 「いっぱい食べることが出来ます。」

 英語に翻訳出来そうな文章来たわね。

 「え、えーと……赤城さん?」

 「……失礼しました。この点を付けた理由ですね。お三方が言いたいことを言ってしまったので私としては……いえ、言えることはありました。以前、司令官が作ったカレー同様このカレーには拡張性、汎用性が備わっています。トッピングや隠し味でどのようにも変化し得るポテンシャルがあります。」

 ゆったりと語る赤城。

 「また、いくら食べても鍋の底が見えても、体重が増えてしまってもそれで良いような幸福感……これが郷愁の味かと思うと型や枠を破りたくなる………………そう言ったところでしょうか。」

 「お、おー……筆舌に尽くしがたいコメントですね。ここで赤城さんの錬度にはアンタッチャブル。」

 「うふふ」

 「ということでてーとくぅ、優勝congratulation!殿堂入りと同時に名誉出禁ネー。」

 「僕、企画者あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 渾身の叫びが鎮守府を震わせた。

 

 青葉がルールを変更した巻き添えを食らった艦娘たちは僕のカレーを食べて納得した風だった。

 あと、川内がカレーうどんにした理由をマイクを青葉から借りて語っていたら金剛と川内が物凄い形相で追走と逃走をしていた。うんにゃ、闘争と逃走か。

 無理もない、あのカレーうどんは夜戦演習を終えてから川内型と一緒にこっそり深夜帯に食べた思い出の味だ。そりゃこうなる。

 あと、隣で鳳翔さんと間宮さんと伊良子ちゃんがすごい勢いでメモ取ってる。カリカリとかサラサラとかじゃなくてギャリギャリって感じでメモ取ってる。

 

 後日、協議をした。結果、このカレーは名前を『里』としてこの鎮守府に定着した。




 久々(10年ぶり)に差し込み投稿をするので、わたわたしてます。タイトルがおかしいことについて、ここで釈明を……。
 どうにか日曜日の深夜帯投稿に間に合わせようとして、寝不足の体で書いた結果、テンションがバグった。そういう話です。また、時間的な余裕がそろそろ無くなるのでそういう面でもテンションのバグに拍車をかけているわけです。
 長々と駄文、失礼しました。

 アンケートに答えて頂けると縛りの解放に役立つのでご協力ご助力を何卒よろしくお願いします。
 あと、YOUTUBERみたいな枕詞を書きますが、『感想、推薦、ここすき、評価、お気に入り登録をして頂けると狂喜乱舞します。』
 
 それでは、以前のSSのリンク先、即売会、例のアンケートの話でお会いしましょう。さらば!
追記:読み直したら登場人物被りしてたので修正しました!すいません!

表現について聞きたいです。

  • 難しいと感じる(やさしく書いて)
  • 今のままでいい(書きたいように書いて)
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