プレイヤーとして人として胸糞悪い文章はここで予告するのでご了承下さい。
大丈夫です。タイトル詐欺にはしません!
(のんびりの筈なのに戦いがあってもいいのか疑問。)
夜の十時であろう時間帯。
僕は家とは違う施設の中で猛烈な睡魔と格闘していた。
どうやら戦場から帰ってくる最中に保護した娘らしい。
桃色の髪に叢雲と同じような飾りを浮かせている娘と黒い制服に茶髪の娘がいた。敬礼して指示を待っているのか微動だにしない。
とにもかくにも話してもらわねば。
幸いこちらに主導権があるから気兼ねする必要がない。
「とりあえず、二人の自己紹介宜しく。誰が誰か分からなくなるのも困るから。」
何もないここでは立ちっぱなしも困る所だが、威厳を保つ為に腕組みして肩幅に足を広げる他ない。小物感が漂うのは気のせいだと願いたい。
桃色の髪の娘は先程見たときは手が主砲という妙ちくりんな出で立ちだった。しかし、敬礼をしているその娘の手に物騒な物は無く年頃の可愛らしい手がよく見える。
「こんにちは、子日(ねのひ)だよ~。艦名、読みづらくなんか無いよね?ね?」
読みづらそう…………。艦名か、コードネームだろうか。叢雲といい子日といい、どうしてこうも呼びにくいのか。読みにくいのか。弥生は読みやすいのだが。旧暦を個人で覚えていたのが功を奏した。
「駆逐艦、若葉だ」
先程と比べてかなりあっさり。こんな感じにざっくり名乗ってくれるだけの方が良い。弥生よりも読みやすいねぇ。
「叢雲、この娘達を部屋に案内できる?」
「あ」
「?…そうだった。無いんだ。」
失念していた。政府のいい加減さが早くもこちらの首を絞めてきた。着任初日にこの扱いの酷さは塞ぎこみたくなる。アドバイザーもいない今、何をすればよいのか分からない。
──ティローン
「おめでとうございます」
鎮守府内外にとても軽い効果音のような音が流れる。それとと同時に清楚な女性の声がせせらぎ府内をなだめる。
少なくともそう聞こえた。
眠気をすり抜けて入り込むような声とも言える
「提督。着任早々敵艦隊撃滅。おめでとうございます!申し遅れました。私、提督の補佐をすることになりました艦娘『大淀』と申します。お世話になります。」
天井近くの壁。
ドア側の壁の上部にスピーカーらしき物があった。かなり古いのかどうか分からないがそもそもスピーカーかどうかもまた怪しい器具が取り付けてあった。そこから音がしただけでスピーカーと決めつけるのは安直過ぎただろうか。
「あっ…………うん。」
ノイズを掻き分けて透き通る声というのも妙だが、女性の声はノイズを気にさせなかった。
何かの任務が僕の手によって遂行されたのはだいたい
分かった。でも、面と向かって声と話を聞きたいから彼女と話す方法を模索してみる。2秒くらい考えた。結果として、府内にいると仮定してそれが合っているというのが前提の考えがまとまった。
執務室を出るなり廊下で大声で叫ぶ。
「大淀さんでいいのかなー?とりあえずこっちに来てくれるとかなり助かるんだけどー!」
「あっ、すいません。只今伺います!」
こちらの声が聞こえたのか椅子を慌てて引くような音がスピーカーから微かに聞こえた。
ーブツン。
壊れかけのブラウン管テレビの電源を切ったような音がした。
その直後に
__トタトタ………
ヒールを履いているのかローファーを履いているのかが判別しにくい足音。床からリズミカルな悲鳴が聞こえる。
来てくれているみたいだからドアを閉めて叢雲の隣へ。
ドアの前で床の悲鳴は止まる。
__コンコン
「提督、大淀です。」
「どうぞ。」
ちゃんとノックするあたり基本的な礼儀作法は政府が教えてるのだと思う。それが今のところの艦娘というこの女子達の印象だ。
古いドアを優しく開けてこちらに入ってきたのは眼鏡をかけた黒髪の女性。チャラチャラした女よりもこういう委員長みたいな子は割といいと思う。誤解しないで欲しいが僕は性癖の話をしているのではない、性格の話をしているのだ。
「先程のお話を続けても?」
お伺いが来たので了承する。
「うん。」
「提督はさっきチュートリアルの任務を受注され見事クリアなされたので大本営から資材とアイテムを持ってきました。それと、人材も別任務の報酬という体で派遣されました。」
資材という何だか馴染みのない単語から想像する物はどこにも無い。そして、人材も見当たらない。
「何にもないよ?」
見たままのことを言うとハッとした顔を見せる大淀さん。
「ハッ?!失礼しました!実はすでに資材庫に搬入させて頂いておりました。それに白雪さんもすぐ近くで待機してもらってます。」
倉庫があるそうだ。明るくなったら確認しよう。白雪という娘は一体何処にいるのだろう。
「どこにいるの。その白雪っていう娘は?」
「彼女はそこのドアの近くで待機しています。呼んであげて下さい。」
息を吸い込み、声を大きく出せるようにする。
「白雪。入りなさい。」
周りの娘が顔をしかめながら耳を塞いだ。
「ごめんごめん。」
かなりボリュームをしぼって詫びをいれる。
──コンコン
「失礼します。」
またしても行儀が良いと思った。政府は最低限のことは教えるのであろうと結論付いた。
人拐いを敢行する癖にこの娘たちには実に人道的なことをするところを考えると少しむかっ腹が立つ。
ここで怒っても意味はない。だから話を聞く。脈絡おかしいとは思うが今は一歩を踏み出し続けることの方が重要だ。
どうも今日の自分は余計なことを考えがちだと思う。
「特Ⅰ型駆逐艦、二番艦の白雪です。宜しくお願いしますね。」
特Ⅰ型駆逐艦、何処かで聞いたような…。あっ、叢雲が五番艦だった筈。ということは姉妹なのだろうか。聞いてみることにしよう。
「叢雲。」
「何よ。」
相も変わらずぶっきらぼうだ。気力が減っていくのが分かる。
「駄目でしょ、そんな無愛想じゃ」
ここで白雪が嗜めた。口の聞き方が荒い女子にこう切り込んでいけるのは尊敬する。臆してしまう自分がどうしてもいるからだ。ついでに今までのも相まって心の中で白雪を応援している。
「うるさいわね。」
またぶっきらぼうに話を切った。すると、白雪が叢雲の手を握って自らの胸元に持っていった。
「お姉ちゃんの言うこと聞くのはイヤ?」
この言動に対してどのような行動を叢雲はとるのか観察しようとワクワクした。姉妹という予想も的中し、ワクワクしつつ悪戯心も芽生えた。
「うっ…」
叢雲は気まずそうに白雪から目を逸らす。少し考える素振りを見せて叢雲は白雪の手を外した。
「分かった、私が悪かったわよ。」
非を認めた叢雲はこちらを見るとバツが悪そうに目を逸らした。どこかプライドがあるのだろう。自分の口から言ってもらおうと思い叢雲の目と同じ高さまでしゃがんだ。
「悪かったわ、御免なさい。」
許す時は笑顔で許す。そうじゃないと人間というのはすっきりしない。許しを乞う方も乞われる方もしこりが残る。だから、微笑みながら叢雲に語りかけた。
「よく言えました。」
叢雲の頭をポンポンと撫でる。彼女は少し照れ臭そうに目を逸らしていた。年頃の可愛さが多少なりとも残っていることに安堵すると共に少しだけ叢雲の印象が変わった。
部下と上司のいざこざが終わった頃、空気と化していた一人が喋った。
「提督、大本営からのプレゼントだそうです。」
大淀さんが手渡してきたのはまな板を二回りくらい小さくした大きい端末。スマホの大きいやつって言えばそれまでなのだろう。タブレットという単語が出てくるのに約三秒。
「このタブレットは?」
プレゼント、つまりこの端末でアプリをインストールして遊んでいろとでも言うのだろうか。そんなことはないと心の隅で思った。正直に言うと遊べる端末が欲しい。そんなことも思った。
「遠征や建造、開発などを多面的に指示できるものです。同時に府内の案内ならこのデバイスがあれば十二分だそうです。」
やっぱり仕事用ではないか。旨い話じゃないのは分かってたが分かっていてもやはり期待していた。子供みたいなことを言っても仕方ない。
「良い端末だ。頼もしい。」
仕事仲間に仕事道具、ようやくらしくなってきた……のか?
「それで、部屋は?」
これまでのアドバイザーとしての彼女を振り替えると先程の疑問に明確な回答が返ってくるのを期待した。
「あっ…」
事情はあるのだろう。思い当たる節があるのだろう。思い出したような素振りを見せる。
「大淀さん、詳しく聞こうじゃないの。」
秘書艦こと叢雲も言う。
「…………どうなの?」
弥生も詰め寄る。
「若葉は24時間寝なくても大丈夫」
さらっととんでもないことを言う若葉。
『それは無理』
総ツッコミを入れる。
「お布団がないとやだよー」
同じ新参の子日も言う。
『どうなの?』
全員が大淀さんに詰め寄る。
「もう何日か待って頂ければそれなりには、お布団は10組ありますから。」
嫌な予感がする。それを振り払うべく追求する。
『つまり?』
シンクロした。そんなことは構わない。
「ここ数日は執務室で寝ることになります。」
良いのだろうか、艦娘側の精神衛生的な意味で。
「そうなるのかぁ。」
変態の烙印を押されぬように努めねば。寝相の悪さは小さい頃から変わっていない自分が恨めしい。ここで親の矯正を拒んだツケが回ってくるとは。
『うーん。』
艦娘が一斉にこちらを見る。
「変な事はしないよ。安心して?ね?」
そら見たことか。一気に変態候補に格下げを食らう。
「本当かしら?」
叢雲が少しだけ赤くなってる。私はロリコンではございません。
「本当だってば!」
こちらまで赤くなってしまう。まあ、意味合いは違うけれど。
しかし、僕自信がロリコンではないという発言を撤回することになるとはこの時は知る由も無かった。
というわけでチュートリアル終了!
何回もデータぶっ飛んで書き直してるんですよ。
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