最新話は見られにくいことから筆を折りかけましたが、書きたいものを書くエゴで貫き通します。
今回はタイトル詐欺っぽい描写がありますが、"主人公と周りの人との矢印"を描写するための話になります。
今回は風で言うと強風です。ただ、昔の作風へのロールバックは出来てないので悪しからず。
では、出港。
ふと、思う。
自分が好かれているか、自分が慕われているか……
顔色をうかがった、嫌われないように。
顔色をうかがった、怒られないように。
顔色をうかがった、殴られないために。
陰々鬱々としていた、灰色の水銀の空の下。
「…………」
今になって、ここに来る前の夢を見た。
少し、怖い、二度寝。
どうしようかと逡巡、思案する。
背後から迫り来る後ろ髪を引こうとする魔手の数々の気配。
ああ……僕は…………………
目を閉じてねずみ色の世界に身を委ねーーー
「………」
目の前から眩い光とともに気配の違う手が伸びる。
ああ、そうだ。
僕はこの手に拾われた。
僕はこの手に描かれた。
僕はこの手に救われた!
目を開けるとパステルカラーもかくやと言う極彩色の景色。
と、ともに僕の頭を抱き寄せていた金剛。
顔を見ると寝ているようだった。
いつもの癖だろう。
いつもの行為で僕は僕でいられる。
だから
「おやすみ」
少し、優しい、二度寝。
光に背中を押され僕は床に就く。
普通に目が覚めた頃には、朝の8時だった。健康的な時間である。
何を言うでもなくお互いに着替えて、何を言うでもなく歩き始め、何を言うでもなく食堂へ向かう。
同じ歩幅、同じリズム、同じ方向。
横を向けば朝食を何にしようか楽しみにしている様子の彼女。その顔にはかつての仮面の面影は微塵もない。
いや、能面を付けていたのは存外に自分の方なのかもしれない。
そういう意味でも、僕は彼女に救われた。
この光が無くなることを今の僕は考えていない。
そんなふざけた妄言は叩き斬るに限る。
朝食を食べ終わった僕たちは、示し合わせたかのように海辺に歩みを進めていた。
波打ち際より少し離れて互いに腰を下ろした。
いつからだろう、付かず離れずのこの距離で互いに感情を隠さなくなったのは。
金剛を呼んだあの日、僕は笑った能面のようなものを被った猪と遭遇したような得体の知れない何かと邂逅したと思った。色もロクに見えていたのか少し怪しい部分もあった。
そのあたりの頃、どこに行くでも付いてきて先導している風なことをしていたことを覚えている。
絵の具が足されたのはこの辺りだった。
錬度が上がりケッコンに差し掛かる頃、彼女は僕の三歩後ろに付いてくるようにしていた。その時には仮面ではなく彼女の素顔や色をを僕は僕の目線で観測していた。絆された、というとあまりに酷い言い種である。
ただ、グラデーションが足されたのは記憶に新しい。
そして今、資材が足りないため金剛を強化出来ずにいる。
僕は"同じ時間を同じ目線で過ごして欲しい"と誓いを立てて久しい。
現実と錯覚するレベルの液晶にも数度勝るほどの極彩色はまぶたをもってしても防ぐには眩しすぎた。
感慨というには味わい深い思い出を反芻していた。
一体どのくらいこうしていたのか、聞こうとした僕は金剛の方を向く。
彼女も同じタイミングで僕を見ていた。シンクロニシティ
なので、
『どうぞ』かぶった。
「いつも先手譲ってもらってるから金剛が先で。」
「了解ネー。私、てーとくと会った時のこと考えてたネー。」
「……」
「最初は、"好きって言えば万事巧くいく"って習ってたからそうしてた。でも、なんででしょーね。一緒に戦ってる内にいなきゃいけない人になってた。」
「……」
「たまに間違えるけど、それでも私たちを守るために動いてくれる人を好きにならない訳が存在しません。艦娘としての私はそう思います。」
遠く海を見渡している金剛はここで拍を置いた。
「人間としての君は?」
「そうネー……未だにNamelessだけど、貴方が付けてくれた名前と貴方の名字が欲しい。そう思います。」
「……ありがとう。その時は僕のものって分かる名前にするよ。」
生まれる心地のよい沈黙。
漣が、潮騒が、潮風が僕らを包む。
「んっん!」
『うおっ(WHAT)?!』
突然の咳払いでビビる僕ら。
「何やってんのよ、アンタ達」
「叢雲かー……」
「『叢雲かー』じゃないのよ!鳳翔さんが『お昼時なのにいない』って探し回ってたのよ!」
「あ」
慌てて腕時計を見やると正午を指そうとする頃合いだった。
「行こう!」
「Wait.」
『なんで?』
急に止める金剛、今度のシンクロは叢雲とだった。
「叢雲ぉ、どこから聞いてたネー?」
「名前の件からよ、それが何か?」
「私だけじゃ不公平だから叢雲も聞かせるネー。」
「何の話?!」
「てーとくへのFirst Impressionネー。」
「最初の……何?」
「初印象だってさ。」
「……昔の私ならうろたえるとこだけど、今は普通に答えられるわね。」
「それでは、どうぞ。」
「はいはい、確か司令官には開幕ぶちかましたと思うけど……『頼りない』その一言に尽きるわね。」
「あー、そんなことも言ってたなあ。はい、金剛ステイ。」
「Humm……」
立とうとした金剛を止める。
「じゃあ今は?」
長い付き合いからまだ何かあると思った僕は二の句を待つ。
「……照れてもしょうがないし、白状するわ。悪くないって言うのもあるけど、『私たちの城』ね。」
「城かあ」
「もっとも華やかさはないけれど。」
「はいはい。金剛ステイステイ」
また立とうとする金剛。そういう言い回しする子って分かってるはずなんだけど。
「でも、安心感はある。」
「……」
コクコクと腕組みして首肯する金剛。
七変化する彼女の純粋さが心にそよ風を吹かせてくれる。
「ほら、お昼食べよ。」
『了解』
最古参と伴侶を連れて、僕は往く
ここでは多く語りません、では。
(アンケートもよろしく。)
表現について聞きたいです。
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