おそらく次回は犬の話になりそうです、ワンワンだけに。
そして22回目は猫の話になりそうです、にゃんにゃんだけに。
最近、Google検索で『犬』『猫』と検索すると足跡で画面を埋められるライフハックを知ってほんわかしてます。
それはさておいて、今回は何年前の流行りかに今さら乗ってみます。
はっしんごー
ごく一部の職員しか知らない出来事がある。
それは、僕が『基準世界へ帰る』ことがあることだ。
家に帰るとかではなく、現実やネットの流行り廃りを一通り把握することが主な目的だ。ついでに旨いものを食べて帰ってウチでも再現できないか考案することも目的と言えばそうだ。
ふと、とある動画を見た。そのリンクをリマインダーに突っ込んでおいたからウチでも見れるだろう。前に何回か検証しているからお手の物だ。
手で輪を作り、その後の相手の反応を見るというものだ。
主に動物相手にやっているものを見かけるため自分もオスカーにやろうと思った次第だ。
ついでにホームビデオみたいな扱いで明石に撮影を頼んだ。
「オスカー」
動画の通り手で輪を作りオスカーに向けた。
「……?」てしてし
目の前の輪に疑問を抱いたのか軽めのネコジャブが来る。
加減してくれてるのか痛くない。ワンツーのジャブのリズムで右のネコストレート。これも痛くない。
オスカーは自分の頭を輪の上端にこすりつけ、やがて彼の顔が輪に入る。
「ん"ッ"ッ"ッ"!」
かわいいのである。
「ちょっと拡散しておきますね。」
「ドイツ艦と大淀だけにしといて。」
「承知」
オスカーの存在を知っている職員にのみ公開した動画。
これが後日、波紋を呼んだ。
ここに戻ってから数日。
艦娘同士が例の動画の再現を行っているのを頻繁に見かけるようになった。
駆逐艦や海防艦が真似しているのはまだ分かる。
ただ、目の前の重巡洋艦がキャピキャピしながらやってるのは幾分どころか絶対に承服出来ない。
「足柄、羽黒に何させてるの?」
「すまない司令。行き遅れるのが確定しているからか自棄を起こしているんだ。」
「ちょっと!誰が行き遅れよ!」
「……ごめん。」
「司令官まで?!」
「大丈夫、足柄は若いよ。十代でしょ?」
「当たり前でしょ!」
「なら大丈夫。」
「うぅ……誰も幸せになりません……」
末っ子が爆撃していった。気の迷いに付き合わされた報復とかではなく純粋なコメントで全員を刺していった。
報復というかお返しというか……足柄が羽黒のほっぺをつねって伸ばしていた。羽黒のほっぺはすべすべらしく足柄が何回もつねろうとしてるのが見てとれた。
「……ぅぅん。ところで何してるの?」
「今流行ってるじゃない。アレよ、アレ。」
改めて、というか仕切り直しで本題を切り出したところ何かが流行ってるそうだ。十中八九僕が上げたヤツだろうとタカをくくると、
「これだ、司令官。」
那智が見せてきた動画はビスマルクが輪を作ってレーベがその輪に鼻を入れるといったものだった。ついでに呂ーちゃんもやってる。
「……へ、へーこれが流行りかあ……。」
しらばっくれることがバレないようにしらばっくれる。ちょっと困惑している声音を混ぜておきました。
彼女たちが去った後、僕は思考のモヤの中にいた。以前の瑞鶴の件でだ。
いよいよ、ペットを承認するのか否か。『そのとき』が来てしまったのではないか、と。
リスクとメリットを頭に浮かべ苦慮していた。そして、かつての自分の意志との矛盾。
ふと、だれかとぶつかった。
「…ぁあ、ごめん。」
しゃべってない時間があったからか話し出しがすぼんでしまっていた。
「提督さんじゃん。どーしたの?」
「ずっちんかぁ。…ちょっと考え事。」
「珍しいね、考え事なんて。いつも悠々自適みたいな顔してるのに。」
普段そこまで考えなしだったろうか?
「じゃあさ、おまじないしたげる。」
「おまじない?」
「両手で輪っか作って。」
そのワードで120%察しがついてしまった。可愛いが来るぞ、気をつけろ!
「えい!」
瑞鶴が輪の中に顔を入れた。
指先から伝わる温もりと愛しさがゆっくりと、じんわりと脳に染み渡る。
「はーい、誤解招くからねえ」
軽くたしなめる。
「ぅへへへへ」
締まりのない笑顔を浮かべる瑞鶴。
そして僕たちに近付く足音が一人分。
「私も混ぜて」
何の抑揚もない声で金剛が来た。錬度が高い子に対する対応が大分大人しくなったことに一瞬驚いた心を撫で下ろす。
左手の指で丸を作って金剛の前にかざす。
鼻が入った。
右手の指で同じく。
唇が入った。
両腕を広げて、金剛が抱きつく。
「これが正妻ネー。」
あまりに当然、あまりに自然な流れで呆気にとられていた瑞鶴はジェラっていた。ご丁寧にハンカチの端を噛んでまでヒステリーを起こしそうになっていた。
そのまま金剛を追いかけ始めた瑞鶴としまりのない笑顔で逃げ始めた金剛、楽しそうだから混ざろうと乱心し始めた僕の前に叢雲が現れた。
「む」
「早くしてちょうだい。あの人が来てしまうわ」
叢雲と呼ぼうとしたら急かされてしまった。
「あいよ。」
御随意にということで輪を作る。
「んっ……」
ふわふわな髪をなびかせると目をつむったまま顔を控え目に入れる叢雲。あの頃と比べたら性格が丸くなったのは果たして自分か彼女か……どちらだろう。
「君が流行りに乗るのは意外だ。」
英語訳出来そうな文章が口をついて出た。
「最近、流行りに乗っておいた方が楽しいことに気付いただけよ。」
「道理だ。」
「それだけ、じゃ」
鉄血艦娘が来る前に終わらせたかったようでそそくさと行ってしまった。
彼女は流行りに乗りたかっただけなのか、それとも別の意図があったのか……それは僕には判断が少し難しい。ただ、彼女の頭上にあるデバイスはほんのりピンク色を示していた。恥ずかしかったようである。
明石に例の動画の感触を改めて確認するために部屋に向かおうとしたところウチでは府内での夜戦が茶飯事となっている三人集とエンカウント。いや、そろそろ黒星をつけさせてもらえませんかね、ガチで。
「やっほー!」
「はーい、元気があってよろしい!」
「こんにちは、提督。」
「こんにちは、神通。」
「那珂ちゃんだよー!」
「提督はんですよー!」
テンション完コピであいさつ。こういうことしてるから『何考えてるか分からない』って言われるんだよね、きっと。
「姉さんと那珂ちゃんが興奮気味なので私が説明しますね。」
「お、おう」
何の説明だか皆目見当つきませぬ。
「司令官は今の流行りをご存じでしょうか?」
「……朝から見てるアレのこと?」
「ええ、最初はけしからんと思いましたが士気の向上が認められたからには一考する必要があるかと認識を改めたのです。ですので……」
「みんなやる気が上がるならプロデューサーにやってもらおうってこと!」
「あたしは夜戦が良いんだけど~」
「うりうり~」
川内の顔をむにむにともみくちゃにしながら手の輪を作る。
「ひょっと!みゃみひてんの?!」
「何してるって流行り……?」
「ひゃんでびもんふぇい?!」
若くてすべすべでモチモチである。
なんというか、今ならほっぺマイスターを目指せそうだ。
川内を解放した僕は神通に顔を向けた。
「失礼します。」
こちらの輪を作ったのを見てから神通は歩みをこちらに進めた。そして、了承をとった上で顔を輪に入れる。でも、何故だろう。こちらの手首を握っているのは……
「士気の顕著な上昇が認められます。しばらくお待ちください。」
何かの機械だろうか、と思ったが口にしないことにした。
神通から解放された僕は那珂を見た。
輪を作るや否や顔をアクティブに突っ込んできた。
「アイドルにお触りしちゃダメなんだよー!」
「握手会開いたの自分でしょ?」
輪が那珂をトラップしたのを確認してから川内よりは軽くもみくちゃにする。
「びょびょびょ」
「うっわ」
シュールなリアクションに軽く引いた。死にかけの蝉(セミファイナル)の真似なんてどこで覚えたのか。
オチがついた気がして明石の部屋を訪れる。
何をしているのかと思いドアノブをひねれば、例の動画を見てしまりがなさすぎる笑顔を浮かべていた。スライムや水で溶かした片栗粉みたいな笑顔だ。
「明石ー」
「あっ、はーい!」
呼んだら固体になりました。なので、早速本題に入ろう。
「オスカーの動画って拡散した?」
「してませんよ?」
なんというかシリーズで悪役をやってたキャラクターが黒幕じゃない感じってこういうことかとしみじみ思ってしまった。
短く言うなら肩透かしとか期待外れ。
「じゃあ、ビスマルクとレーベの動画は?」
「それは流行ってますね。私の一助が必要のないほどに。」
答えは明白だった。
「元凶はドイツ艦娘の皆さんですが、元凶の元凶は司令官ですよ?」
元凶の元凶の元凶はドイツ艦娘に返ってきてしまうのだが、言わぬが花かもしれない。
後日再び基準世界に帰った僕は、その行為が『スヌートチャレンジ』というものであることを知った。
今回はさんくちのんかん(3000字)程度です。
では、犬の話かカレーの話でお会いしましょう、また。
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