描写等を少しだけ書き加えたので世界観を掴んでいって下さいね!
(愚痴になりますが自動車の路上教習は怖いですね。)
~府内 浴室~
みんなが風呂に入った。
僕は最後に風呂の湯を張りかえてどっぷりと浸かり今日起こったゴタゴタのことばかり考えた。
まず、この鎮守府という職場のことだ。泊地か府はどうでもいいとして、政府が一般人を誘拐して軍人に仕立て上げるという蛮行はどう考えても筋が通らない。
一年前と半年前に消えた知り合いと関係があるのだとしたらどうなのだろう。
あいつらも誘拐されたとすれば…何処にいるのやら。まあ、誘拐されたと考えるなら証拠が足りない。関係の無いところに思考が逸れた。
「はあ」
溜め息一つ。
体中の毒素が出ていくのを感じた。顔の下半分を湯に埋めて息を吐く。
泡沫が目の前で舞い踊る。
先程の思考から辿り着く答えとして…というより推測の領域だが政府は何らかの原因によって追い詰められているということだろうか。
某国の大統領変更による外国人自衛官が0人という痛手のせいだろうか。
それに伴う日本国の自衛戦力の事実上の消滅のせいだろうか。日本人自衛官が真っ先にリストラされその後に外人自衛官がごっそりと消えた。
某国の大統領曰く使う資材やそれの調達資金の払えぬ国に我が国の戦力を割く必要性は皆無であるそうだ。
つまり、節約という名目でケチったのである。
ついでに言うと第二次世界大戦終結時に当時敗戦国だった日本に現在の憲法を提案したのが先の大統領の国家代表であるのにも関わらずに、だ。
「どうなってんだかなぁ。」
ぼやく。
嘆きにも似たそれの返答はある筈がない。
──コンコン
プラスチック製のドアが誰かに叩かれている音がする。
少し驚くが平静を取り繕う。
「司令官、タオル置いとくわ。」
「ありがと。」
叢雲だった。
ほうっと一息つく。
「どういたしまして。」
「早く寝なさい。もう少し入ってるから」
「はいはい、まったく。」
また無愛想に返事をされる。
さっきの顔のイメージがガラスが割れる音ともに崩れ去るのを心で感じた。
さて、落胆はおいておき更に考察していこう。
資材の中でも著しく一般家庭に響いたのが燃料だ。
一リットル当たり5000円という馬鹿げた価格のおかげで都市も田舎も自動車をとんと見かけなくなったのが誘拐される前に暮らしていた環境である。
車に乗れば軽トラックだろうがスポーツカーだろうが石油王やら巨万の富の持ち主と名声を博す程だ。
数千海里沖で起きる石油タンカー沈没事件も度々ニュースで報道される。
もしかすると…そのまさかかもしれない。
それ以上はいけない。
思考のストッパーがかかった。
話題を変えよう。おおよそ全容は掴めた気がする。
次に挙げる事柄は艦娘という存在だ。
街には女性と男性が均等にいた覚えがある。
女性を拉致してまで兵役に就かせている訳ではなさそうだ。
女性を洗脳して兵力に仕立て上げている訳では無さそうだ。
艦というところから読み取ると昔の軍艦等をコードネームにして武器を持たせて戦わせると言った所なのだろうか。
穏やかではないのが丸分かりだ。
しかも同じコードネームを持つ娘が出る可能性も現時点では否めない。
つまり、複製可能な人間を生成してるのだろうか。
憶測でしかないため根拠はない。
それと護衛艦の名前ではないことも分かる。
風呂に入る前に提出してもらった個人資料には艦名しか記載されておらず、ここに来るまでの来歴も不明。
艦名は漢字で書かれていることから現在の護衛艦由来ではないことは分かる。
しかし、軍艦という存在を重視するとなると第二次世界大戦に由来することに相違ないだろう。詳しいことは資料があればどうにかなるんだが‥。
資料を溜め込んでいる部屋でも探してみようと思う。
最後に深海棲艦と呼ばれる敵戦力だ。
叢雲と弥生の奮戦のおかげでこちらの損害は皆無。
しかし、明らかにこちらを攻撃する意志がある以上敵でしかない。
敵というにも許しを乞わせ見逃すという思慮深い手もある筈だが弥生も叢雲も沈めるの一点張り。
となると、死闘をこれからも繰り広げることになる。
こちらの娘達も死ぬことがあるのだろうか。
勿論、殉職ということだ。
考えたくはないが最悪のケースを考えることをしなければならないのが上司の勤め、というよりかは義務だろう。
向こうと同じように沈む最期だろうか。
それとも吐血しながら崩れ落ちて動かぬ肉になるのか。
そう考えるととんでもないことを考え出す自分の心が許せなくなる。
ともかく、深海棲艦は撃滅対象なことだけは理解できた。
恐らくだがこの先政府の考えを掴める機会は必ず来る。
だから今は、のんびりとどっしりと構えて楽しもう。
そう思いながら、湯けむり漂うタイルの上を歩いてスライド式のドアを開ける。
畳まれた軍服に畳まれたタオルが脱衣室のドアの隅にあるかごの中に入っていた。
叢雲の用意した白いふかふかのタオルに顔を埋める。
「はあ、この先どうなるんだが。」
溜め息を一つ二つと吐いてる内に着替えが終わって浴室から廊下に出た。湯気と海辺の環境もあって少し蒸し暑い。
「司令官、早くしなさい。」
「のわっ?!」
ビックリした。
何を隠そう水玉のパジャマを着た叢雲が月明かりに照らされウサギの耳のような二つの鉄の塊から赤い光を出しながら腕を組み壁にもたれかかって足を交差させて待っていたからだ。
「何よ、もののけでも見た顔して。」
「そんなことはないよ。」
「ふんっ、どうだか。さっさと寝るわよ。みんな布団を敷いて寝てるから静かに入るのよ。アンタの分も敷いておいたから。」
「仕事が早いなぁ。」
「当たり前でしょ、新任の補佐は秘書艦である私の務め。この私に補佐をしてもらえることを誉れに思いなさい。」
スゴく、腹立たしいです。
そう思いながらも艤装の様なモノを注視していた。
あることに気付かざるを得なかった。
誉れに思えと言っているときに、目を開けるのが辛いほどの赤い光を発していたことだ。
赤と直結する感情の怒りを表現していると思えるが、違う。
誉れというのは早い話が名誉ということだ。
つまり感謝して欲しいというのとではないかという仮説が出来る。
では、誉めて欲しいというおねだりではないのだろうかと容易に結論付けてみた。
そうっと彼女の頭に手を伸ばす。
「叢雲は偉いなぁ。」
包むように頭を撫でる。
「ッ?!と、当然よ!」
暗がりで顔は見えない。
しかし、赤色灯のように赤く光りくるくる回るところを見るととても嬉しいのだろう。
そう思うとなかなかどうして愛らしい。
割れたガラスのイメージが元通りに直った。
執務室についた時に叢雲の足に注目すると裸足だった。近いうちに皆にスリッパ履かせてあげようか。
それはそれとして叢雲が忍び足で歩いていた。
こちらも倣い裸足で忍び足で歩く。
叢雲が合図した布団を見やる。
僕は案の定、端に布団があった。変態ではございませんと言っていたのに酷いと思った。
叢雲は僕の隣の布団。
疑問が出てきた。
「叢雲。」
かなり声を抑えて叢雲を呼ぶ。
「何よ。」
「どうして隣に?」
「アンタの監視。」
暗い闇の中では叢雲の桃色の光が目に大変よろしくない。
外せば良いのに…。
彼女は疑問を持つこちらの顔に目もくれなかった。
「そうか。」
「ほら、寝なさい」
「はいはい。」
叢雲と反対側の壁側を向き布団にくるまり、寝る。
すぐに心地のよい眠気に誘われ夢の世界へと入っていった。
あと一話で序章が終わります。駆け足気味だったのでもっとペースダウンしながら、投稿は早足で頑張っていきます!
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