作者の引きは現実の運とは反比例してるので『ふざけんな死ね』とか言われると本当に困ります。(リア友に言われた言葉なんで辟易としてます)
本編へ、どうぞ。
~執務室~
触れたことどころか見たことすらない軍服に袖を通してみる。
かしこまって『私達』なんて言ってみると変に聞こえる。
実際は、田舎の小学校の一クラスの風景に酷似していると感じるのが正直なところだ。
実はここ数日は何もしていない。
資材は政府から分単位で微々たるものだが送付されるらしく、一日仕事をしないだけでかなり資材が貯まる。
何も無い執務室に胡座をかいているのも退屈極まりないため何か置こうとした。
結果、パイプ椅子と安物の長机を運び入れるに至った。
ボロボロのパイプ椅子だが一応座れる。
年季が入っているためギイギイ椅子が軋むのはしょうがないことだと思いながら、ギイギイ鳴らしているとどこか懐かしい気がしてきてポーッとしてくる。
そうすると目の前の木の模様がぼんやりとして、いつの間にか目の前がぼんやりと部屋という概念が抽象化されて発散せず、収束もしないいい加減さにうっとりとして現実と幻覚の二重写しが出来てきた。
しかし、桃源郷はクラス一生意気な小娘によって壊された。
「司令官!」
バンと机を叩き、身を乗り出す叢雲。
ぼんやりとした感覚が急に境界を取り戻し現実というベクトルに戻りつつあった。
イラッときたが年上だから我慢する。
「叢雲か、どうした。」
「今日の建造はどうするの?」
何かと思えばデイリー任務消化の催促だった。
後回しでいいじゃないかと思う。
「うーん……MAXで。」
どうやら黄昏た後や寝起き後は極論になりやすい自分は幼い頃から全く変わってなくてようでそことなく少しイライラする。
「ついに博打に出るようになったわね。」
呆れられてまたイラッとしたが博打というのは的を射てるため仕方無い。
ここで、あまり関係無いことを思い出した。
トイレから戻って執務室に入ると何故か仲良く寝ている皆がいなくて変わりにいたのはどこから入ってきたのか分からない猫とこれまたどこから入ってきたのか分からない幼い女の子がいた。
どうやら猫を捕まえたい様でさっきから執拗に追いかけ回している。
しかし、こちらはこの子が猫を追いかける詳しい理由はよく分からない。
そこで猫を捕まえて女の子に渡すとペコリと一礼し猫を抱いたまま出ていった。
気になって執務室から出て様子を見るとトテトテと廊下の奥に行ってしまった。
何だったんだと思いながらも執務室に入り直すと皆がスヤスヤと寝ていた。
どうなっているのか一向に分からなかった。
入る部屋を間違えたのだろうと思うことにした。
改めて司令室に忍び足で入って部屋を見る。
狭い部屋に七人分の布団を敷くとなると一人分のスペースにゆとりがなくかなり狭い。
段ボールがスペースを取っているのが原因かもしれない。
そんなことを考えてると先日の建造でこちらに来た那珂が元気よくガバッと起きた。
両脇の叢雲と弥生が少し顔をしかめていた。
誰が誰の隣になるかとかを真っ先に決めた方が良いかもしれない。
「プロデューサー!おっはよおー!」
「那珂ちゃん?他の子が起きちゃうでしょう?」
「アイドルの朝は早いのっ!」
朝からこの声量で起こされる子が不憫でならないからだ。
先日、通信用にもらった大淀さんとの無線機に呼び出し音が鳴る。
ヘッドセットと言われるあの装置だ。スイッチを入れて声を極力絞る。
『提督、先行して作成していた例の部屋が出来ました。』
「グッジョブ。防音とかは大丈夫?」
『大丈夫です。』
「有り難く使わせてもらうよ。切るね。」
『はい。』
この機械も中古でガタがきてるのかノイズが時たま混じる。中古を各鎮守府に配布してるとすれば酷い職場なのは間違いない。
政府に毒づく前に目の前の事に集中せねばならない那珂の事案に目を向ける。
「提督?何をブツブツ喋ってるの?」
「那珂ちゃん、こっちおいで。」
「スマイルが大事だよぉ、スマイルスマイルぅキャハッ!ってプロデューサー?顔が笑ってないよ?怖いよ?そんなに強く手を引かないで?!ごめんなさいごめんなさい!!そんなに怒らないでよ?!元気よく挨拶するのがそんなにイケナイことなの?!なにここ?!!暗いよっ?!!!あっ!?那珂ちゃんに乱暴する気でしょ?!エ」
那珂の手を引き執務室の対面の部屋のドアを開けて、鍵を閉めた。
どうやら穏やかではない顔を僕はしていたらしいがこの際どうでも良いことだ。
確かにこの部屋は暗い。
しょうがないことだ。明かりをつけて那珂と目を合わせた。
「再教育の時間だよ?那珂ちゃん」
「いやあああああああ?!!!!」
数分間経ち、口からエクストプラズム的なアトモスフィアの物を口から出して気絶している那珂を置いて執務室のドアを開けると皆が寝惚けながらも起きていた。
人数と名前を照らし合わせていると、子日がいなかった。
朧気ながらに記憶を辿ると着任したときに叢雲に艤装を渡して僕自ら子日の艤装を叢雲の艤装に錬成したんだ。そのまま子日だった子は政府に連絡し引き取ってもらったという事実に行き当たった。
彼女は普通の人間として名前を変えてまたどこかで暮らすらしい。
大淀さん曰くこれが『近代化改修』らしい。
僕を含めた全員の着替えが済んだところで冒頭の場面に戻る。
全ての資材を一回の建造に注ぎ込んだ。建造時間はタブレットに表示されるので便利だ。
叢雲がトランシーバーを持って建造の係に指示をとばす。
高速建造材をスタンバイさせておいてとも指示をしているのが聞こえた。
タブレットの「工廠」のバーから工場をモチーフにした枠を見ると建造完了まであと四時間の表示が出た。
叢雲が見せてとせがんで来たが変なの引いたらとやかく言われるから見せないでおいた。
ポコポコと胸を叩いてくるが全く痛くない。
むしろ微笑ましさすら感じられるくらい。
工廠の係がバーナーを使ったのか建造完了までの時間がみるみる減っていって全てが零になった。
連動してるのはスゴいと小学生並の感想が出る。
「…ゥゥゥううう!」ギシギシギシギシギシギシ
新任の娘が走っているのか床の節々が断続的に大きな悲鳴をあげていた。
どんどん部屋に近づいてくるのはサイレンかと一瞬思ったくらいけたたましかった。
ドップラー効果ってこんな感じなのだろうかなどと益体もないことを思っているとドアが勢いよく開く。
ドアノブが壁にめり込んだ。
冷蔵庫の側面に寄りかかっていた響は自分の眼前にドアノブがめり込んだ現場があったので目を見開いて放心してしまっていた。
そんな些細なことは知らないと言わんばかりに僕の前に来た女性。
特徴的なのは髪やら服やらに留まるところを知らずに存在自体が特徴的だった。
髪は綺麗な茶髪。
後ろ髪の横に某ドーナツ店の某ドーナツを彷彿とさせる形状で髪を結わえている。
後ろ髪だけでいうならニスを塗った木の板にドーナツを張り付けた感じとでも言おうか。
例えるのにセンスがないのは分かっているがここまで酷いと笑えてくる。
服は巫女服を彷彿とさせる服だが肩から手にかけての間に布で出来たヒラヒラとした何かがある。いわゆる振り袖だろう。
上半身の格好が特徴的だっただけで下は丈の短いスカートで黒のチェックのスカートを履いているだけだ。
ソックスは膝を少し超すくらいの長さで靴はそこまで高くないヒールを履いていた。
ヒールの高さも加味されてか僕の身長とたいして変わらなかった。
一瞬見てそれくらいしか分からなかった。
性格などはもう少し話してみてからでないと分からない。
茶髪の女性は素早く敬礼をするなり口を開いた。
「英国ヴィッカーズ社で建造された金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
「えっ、あっ?うん、宜しく」
彼女の発言で思考が一瞬止まった。
待て、整理してみよう。
いわゆるイギリスの艦なのだろうか。
片言の日本語を話していることからの推測なのだが…。
強さを推定しようとしたがこの府内では艤装を外してもらっているため判断材料が少ない。
それに付随する艦種を推測するのも置いておいてだ。
どのよう性格なのかを知ろうとこちらが話しかけようとする前に金剛と名乗る女性は数フレームで飛び付いてきた。
「提督ぅ!カッコイイデース!」
「のわっ!?」
本能が働いたのかなんなのかは分からないがゼロフレームで床に滑り込んでいた。
「What?!」
金剛がガラスに突っ込んだのかガラスが割れる音がした。
背中にガラスの破片がパラパラと落ちてきてくすぐったい。
府内の空気が止まったというのが正しいのだろうと思うような余裕があるくらいに長い静けさが後を引いた。
提督LOVE勢筆頭が来ましたね。うちの鎮守府では六番目に来た艦娘で最初に来た戦艦です。
まあ、序盤にここまで資財を溶かそうとした提督は私ぐらいでしょう。
それでは、さよならさよなら。
さらっと白状すると始めた当時は放置サイコーとか言って放置してたので資材は貯まるは貯まるはでウハウハでした。
周回サボって後で苦しんだのは言うまでもないですがね。
対象年齢上げたバージョンいりますか?
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いらない
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いる(R-15まで引き上げ)
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いる(R-18まで引き上げ)