Bクラス戦が終わった翌日。いよいよAクラス戦を残すのみとなった俺達は、もうじきお別れに
なる予定(多分)のFクラスで最後の作戦の説明を受けていた。
「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れ
たのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」
壇上の雄二がいつも一緒にいる俺や明久でも覚えのないほど、素直に礼を言った。
「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」
「総員退避!!コイツは俺らの知っている雄二じゃねぇ!!」
「ブッ殺すぞ、遼平。だけどな・・・・柄じゃねーことは分かってるが、これは偽らざる俺の気
持ちだ」
どうやら本当に俺達に言っているらしい。隣にいる明久はどうやら今の雄二の言葉に感動したら
しい・・・・・まぁ・・・分からんでもないけどな・・・・。
「ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいって
もんじゃないという現実を、教師共に突きつけるんだ!」
『おおーーー!!』
『そうだーーーーーー!!!』
『勉強だけじゃねぇんだーーーーっ!!』
なんでだろう・・・雄二の言葉に皆の気持ちが一つになった。そんな・・そんな気がした。
「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎打ちで決着をつけたいと考えている」
昨日の帰り道に聞いた話だった、クラスの奴等はかなり驚いていたようで、教室中にざわめきが
広がった。
『どういうことだ?』
『誰と誰が一騎打ちをするんだ?』
『それで勝てるのか?』
「落ち着いて聞いてくれ。それを今から説明する」
雄二がバンバン、と机を叩いて皆を静まらせる。
「やるのは当然、俺と翔子だ」
Aクラス代表の霧島翔子とF・・・もといバカクラス代表坂本雄二。まぁ、クラス間の戦争を代
理で行うのだから、代表同士の一騎打ちも当然と言っちゃ、当然なんだが・・・。
「果たして、雄二なんかで勝てるのか・・・・・・無理だぬああっ!?」
思わず本当のことを言った俺の頬をカッターがかすめる。どうやら投げたのは雄二らしい・・・
殺すきかっ!
「まぁ、遼平の言うとおり確かに翔子は強い。まともにやりあえば勝ち目はないかもしれない」
分かってんなら俺にカッターを投げつける必要は無いんじゃねーの?
「だが、それはDクラス戦もBクラス戦も同じだっただろう?まともにやりあえば俺たちに勝ち
目はなかった」
雄二の話に皆が耳をかたむける。
「今回だって同じだ。俺たちは翔子に勝ち、FクラスはAクラスを手に入れる。俺達に勝ちは揺
るがない」
絶望的だった試召戦争を勝利に導いてきた雄二だからこそ言える言葉だ。無理だと思っていても
毎回打ち勝ってきただからだろう、この提案を否定する人間は誰もいない。
「俺を信じて任せてくれ。過去に神童とまで言われた力を、今皆に見せてやる」
『おおぉーーーーーっ!!』
「その事について反対の奴は――――――――って、いないな・・・」
「皆、雄二のことを信じてるみたいだね」
「うむ、仲良き事は素晴らしいの~」
どうやら雄二のかけ声で奴等の心に火が点いたらしい。お前等、出番無いんだぞ?
「・・・・・・・・あっ」
「どうした?明久??」
急に明久が声を上げた。
「あのさ・・・・雄二ってさっきから霧島さんの事『翔子』って言ってるの・・・なんで?」
「むう、言われてみれば・・・・仲が良いのか?」
確かに。雄二はさっきからずっと霧島の事を『アイツ』とか『翔子』って呼んでたな。顔見知り
でなけりゃそんな呼び方はしない。
「ん?・・・・あぁ、その事かアイツとは幼馴染だ」
「「総員、狙えぇっ!!」」
「なっ!?なぜ遼平と明久の号令で皆が上履きを構える!?」
「黙れ、男の敵・・・・いや、全人類の敵めがっ!!」
「Aクラスの前にキサマを殺す!」
「俺が一体何をしたと!?」
男子生徒の意見は言葉が無くても満場一致。クラスの団結ってすばらしいね。
「テメー等、後は頼むぞ」
『『『『『YES』』』』』
俺がそう言い放つと、Fクラスの奴等はいつの間にか縛られた雄二を担いで教室を出て行った。
別に雄二が羨ましいんじゃないアイツが・・・・幸せなのが許せないだけだ。後ろを向くと、姫路と島田が明久に攻撃態勢をとっていた。何してんだ・・・・・?
「さっさと、Aクラスに行ったらどうじゃ・・・」
「・・・・・・・・(コクコク)」
二人がこんな会話をしている事には、誰も気付かなかった。
――――――――――――――――――
「一騎打かね?」
「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎打ちを申し込む」
恒例の宣戦布告。
今回は代表である雄二を筆頭に、俺、明久、秀吉、ムッツリーニ、姫路、島田と首脳陣勢揃いで
Aクラスに来ていた。
「フゥ・・・・何が狙いなんだい?」
現在雄二と交渉のテーブルについているのは久保利光。コイツは俺の中の要注意人物ランキング
のトップ3に入っている男だ。ちょいちょい明久を見ている・・・・・殺すぞ。
「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」
久b・・変態が怪しむのも無理はない。最下位に位置する俺らが、一騎打ちで学年トップの霧島
に挑むこと自体が不自然極まりないのだからな。当然何か裏があると考えてるんだろう。
「試召戦争を手軽に終わらせるのは良いのだけどね、しかし僕達には何のメリットも無い」
「そうだな・・・・ところで、Cクラスとの試召戦争はどうだった?」
雄二が腕を組み、顎に手を当てながら訊く。交渉の始まりだ。
「時間は取られたが、たいした事はなかったよ?」
俺との丁重なお話によって、昨日Aクラスに攻め込んだCクラス。結果は、Cクラスの設備は今
やDクラスと同じとだけ言っておこう。
「さて、Bクラスとやりあう気はあるか?」
「Bクラス・・・・・・あぁ、昨日来たアレか・・・・」
ちなみに根本君には丁重にお話をした結果、Aクラスへの宣戦布告モドキをしてもらった。あり
がたいことに、女装までしてくれてAクラスへのインパクトはかなりのものらしい。
「ああ。アレが代表をやっているクラスだ。」
「しかし、BクラスはFクラスとの戦争で負けた。三ヶ月は戦争できない筈だが?」
試召戦争の決まりの一つで、負けた方のクラスは三ヶ月間戦争できない。これは試召戦争の泥沼
化を防ぐために決めた決まりだ。
「確かに俺たちは勝った。でもな・・・『和平交渉にて終結』てことになってるんだなぁ~コレ
が」
「・・・・・・・・・」
「もちろん、Bクラスだけじゃないぞ」
これは設備の入れ替えをしなかったからこそできる裏技だ。
「・・・・・・・それは脅迫かね?」
「人聞きの悪いことを言うな、ただのお願いだよ」
アレ?雄二に根元の姿がかぶって見えるぞ?
「・・・受けてもいい」
「「「「「「ぅわっ(きゃっ)!!」」」」」」
何処からともなく、霧島が現れた。黒い艶やかな髪をなびかせて久保の後ろに立っている。その
後ろには・・・・・・
「りょっ、遼平っ!?アンタ何でここに!?」
「おぉ、優子じゃねーか・・・・よっ!」
「どうしたの―――――って、秀吉のお姉さん?」
俺と優子は雄二たちのいる交渉のテーブルから少し離れた場所で話していた。
「ぬお!あ、姉上!あっちに行かなくて良いのか?」
秀吉が交渉のテーブルと指差した。
「いいのよ、代表もいることだし・・・・それより、遼平・・・」
「なんだ?優子??」
優子が顔を下に向ける。俺から見ると影になって表情は良く見えない。
「なんでアンタ・・・Fクラスなの・・・」
「うぐっ!?そ、それはだな・・・あ、あははははは・・・」
なぜだろう、優子の周りの空間が歪んで見えるのは・・・。
「アタシと一緒なクラスがそこまで嫌なのかしら?」
と、優子の声が聞こえたのと同時に俺の意識は暗転した。
―――――――――――――――――――
「うっ・・・・・・こ、ここは?」
目を開けると見慣れた天井が広がっていた。身体を起こそうにもなぜか激痛が奔る。
「あっ!気が付いたんだね、遼平!!」
「良かったの」
俺が目を覚ましたのに気付いた二人が駆け寄ってきた。
「俺は・・・・一体・・・・・」
「も~ビックリしたよ、急に秀吉のお姉さんが島田さn・・美波みたいになっただから」
あぁ・・なるほど・・・俺は優子に目に見えない速さでお仕置き(拷問)を受けたのか・・・。
ん?あれ・・・・いま、明久・・・島田の事・・・
「なぁ、明久・・・お前、いつから島田の事『美波』って呼ぶようになったんだ?」
「・・・・・・・・グスン・・・グスン・・・」
「泣く様な事にあったのかっ!?」
俺の問に明久がしくしく泣き始めた。俺が気を失っている間になにが・・・!?
「ほれ、明久・・お主、遼平に言うことがあったのではないのか?」
秀吉が明久の頭をよしよしと撫でる。
「あっ!そうだった・・・Aクラス戦のことなんだけど」
「そういやーそれを聞きに行ったんだっけ・・・・」
なんで聞きに行くのに、気絶しなきゃいけないんだろう・・・・。
「代表同士じゃなくて、クラスから五人出てきて、一騎打ちを五回してその内三回勝ったら勝ち
ってルールになったんだって」
ということは・・・向こうは霧島、久保、優子は必ず出るな・・・。
「配役が勝敗の決め手になるやもしれんの・・・」
秀吉が顎に手を当てて考える。その戦いの勝敗で俺達の今までの戦いが泡と消えるか、それとも
実を結ぶかが決まる・・・。暫くの間、黙り込んでしまう・・・・
「・・・・・・・だぁーーーーーー!!めんどくせーーー!!そんなのは雄二の役目だからいい
んだよ!」
俺が言い切ると二人は顔を見合わせてプッっと噴出し、笑い始めた。な、なにが面白いんだよ!
「ハハハハハ、そうだよね・・・雄二の役目だもんね」
「フフフ、遼平らしいの・・」
「なんか、バカにされてるみたいで気にいらねーな・・」
俺の呟きにまた噴出した二人は、カバンを持って教室を飛び出した。
誰もいない校舎を、俺たちは走りぬける。
決戦は・・・・・明日。