俺とバカと召喚獣   作:屋代屋

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~清涼祭~
第十六話~清涼祭編~


桜の花びらが坂道から徐々に姿を消し、代わりに新緑が芽吹き始めたこの季節。俺達の通う文月学園では、新学年最初の行事である『清涼祭』の準備が始まりつつあった。

お化け屋敷の為に教室の改造を始めるクラス。焼きそばの為に調理器具を手配するクラス。この学校ならではの『試験召喚システム』についての展示を行うクラス。学校祭準備の為のLHR《ロングホームルーム》の時間は、どの教室を見ても活気が溢れている。

そして、我らがFクラスはというと―――――

 

『考えを搾り出せえええええええええええええええ!!!!』

 

『我等が姫路さんの為にいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!』

 

『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』』』』

 

―――――会議という名の戦場だった。何で、Fクラスの落ちこぼれがこれほどまでに知恵を振り絞っているかと言うと『姫路瑞希の転校』を阻止するという大事な使命の為だ・・・なぜこうなったかというと・・・・

 

 

―――――

―――――――――――

話しは、島田の衝撃発言を聞いたときに遡る。

 

「姫路が転校って・・どういう事だよ!!」

 

「瑞希が言ってたの・・お父さんに『あんなクラスに居てもお前のレベルは上がらない』って言われたって・・・・」

 

島田が顔を下げた。確かに、このクラスで姫路と対等に渡り合えるのは俺ぐらいだろう(数学・英語・物理だけ)そうなると、姫路父の言っている事も一理ある。

 

「それなら次の振り分けまで、待てば良いんじゃないの?」

 

明久が小首を傾げる。

 

「そうも言ってられないのよ。瑞希の転校のもう一つの理由が『Fクラスの環境』なんだから」

 

「えっ?環境?」

 

「そう、正しくは『設備の問題』ってこと」

 

そう言われて、俺たちは思わず納得してしまった。

ハッキリ言って、姫路にFクラスの設備は厳しい。これは誰もが考える事だろう。競争意識を高めるという学園側の考えは否定しないけど、姫路は既に高いレベルのはずなのにこの処遇だ。これはおかしい。ござにみかん箱という設備の上、切磋琢磨しようにも周囲の人間はバカだらけ。(ござにみかん箱の原因は誰かとは言わないが、野生全開卑猥変態異常野郎とだけ言っておこう)まぁ、本人に非がないのにこんな環境では、普通の両親なら誰もが転校させようと考えるはずだ。

 

「それに瑞希は、身体が弱いから・・」

 

「そうだよね。それが一番マズいよね・・・」

 

島田の言葉に悔しそうに顔を歪ませる明久。確かに、身体の弱い姫路にココFクラスは健康に害を及ぼす可能性がもの凄くある。どんなに掃除をしようがたかが学生の掃除では衛生的とは言いにくいし、今はまだいいが、冬場は隙間風が入ってくるだろう姫路もだが他の生徒も体調を崩す可能性があるだろう。

 

「おい、雄二。これはマズいんじゃないのか?」

 

「奇遇だな・・・俺も同じ事を思った」

 

「だよ姫路さん!当たり転校前だよ!?」

 

ボソリと呟いた雄二に向かって明久が叫ぶ。どうやら、姫路の転校話で頭がプチパニックになっているらしい。言っている事が意味不明だ。

 

「日本語を喋れてから叫べ。確かに姫路の転校は戦力を失うからな・・・だが、不味いの設備の問題だ」

 

「「「設備?」」」

 

明久達が雄二の話に耳を傾ける。雄二は試召戦争以来の真剣な顔つきに変わった。

 

「今のFクラスの設備だと身体の丈夫過ぎる俺達は兎も角、他の奴等は大丈夫かは保障できん」

 

雄二の言うとおり、身体が丈夫な(鉄人に殴られても五分で立ち直れるぐらい)俺達なら兎も角、島田や秀吉、常に血が足りないムッツリーニ、ゲームばかりしているFクラスの野郎共。2~3人欠席ぐらいは良いが、もしもインフルだとか集団感染になった場合、居ても苦しい戦力が居なくなる事によって他の奴の負担が増え又そいつが倒れるという悪循環を生み出すだろう。

 

「ムッツリーニの情報収集能力、秀吉の演技力、島田の数学の点数・・・もしもの時に無いと大変になる物ばかりだろ?」

 

「確かに・・・」

 

静まり返る俺達。すると――――

 

「・・・・・(トントン)」

 

「ん?どうした?ムッツリーニ??」

 

「・・・・良い方法」(スッ)

 

ムッツリーニが取り出したのはさっき鉄人が出て行く前に渡して行ったプリントだ。

 

「何々・・・『召喚大会』?なんだコレ?」

 

プリントには『召喚大会申し込み用紙』と書かれている。ちなみに召喚大会とは外部からの客に召喚システムを知ってもらおうと学園設立当初から恒例でやっている出し物だ。優勝すると何らかの景品が貰えるらしい。基本的には二人一組での参加だ。

 

「なるほど・・・その手があったな・・」

 

ムッツリーニの持っていた紙を受け取った雄二が呟く。今回も又、俺達には分からない雄二なりの考えもとい悪知恵が閃いたらしい。

 

「ちょっと、どういうことよ?」

 

「うむ、ワシ等にも分かるようにせい」

 

秀吉・島田の女子(?)二人の言葉を聞いているのか聞いていないのか、雄二は近くにあったノートの切れ端にペンを滑らせた。暫らくして、書き終るとその紙を島田に渡した。

 

「いいか、これに書いてある事を姫路として貰いたい。ココに書いてある事が成功すれば少なくとも姫路の転校は防げる筈だ・・・多分」

 

「ええっ!?ほ、ホント!?いい、今すぐ行ってくるわ!!」

 

「あっ、ちょっ!みn・・・行っちゃった・・・」

 

明久の声も聞かずに走り去る島田。そんな島田を無言で送り出した雄二は無言で立ち上がり教卓まで歩き出した。

 

「あー、あー、よく聞け野郎共!姫路に転校して欲しい奴はいるか???」

 

『『『『『『居る訳ねええええええええええええええええええええええええええええ』』』』』

 

Fクラスに試召戦争以来の野太い叫びが響く。Fクラスの野郎共の反応を見て、雄二がニヤリと笑う。

 

「そこでだ、もう少しで清涼祭がある。俺はそこで挽回をはかりたい」

 

「え?どういうこと??」

 

Fクラスの疑問を代表として聞く明久。

 

「清涼祭は言わば『設備の向上の資金集め』だと思え」

 

「つまり、このFクラスでおこなった出し物の資金を設備に回すという事じゃな?」

 

「そのとおりだ・・という訳でお前等――――」

 

ダンッと雄二が教卓を叩いた。

 

「この作戦は出し物が肝心だ・・・さぁ、姫路に転校して欲しくない奴は考えろよ」

 

『考えを搾り出せえええええええええええええええ!!!!』

 

『我等が姫路さんの為にいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!』

 

『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』』』』

 

冒頭に戻る。

 

 

――――――――――――――

 

――――――――

 

つくづくFクラスのバカさは計り知れないと肌で感じるぜ・・。でも、姫路を転校させない為にも明久の恋の為にも俺も出来る限りやってみよう。何て考えてると、隣に居た雄二が立ち上がってFクラスから出て行った。明久を連れて。

 

「あの野郎・・明久をどこに連れて行きやがる・・はっ!ま、まさか!?」

 

「よく分からんが、遼平の考えている事は無いと思うぞ」

 

「・・・・・尾行」

 

ムッツリーニに促され俺達は明久と雄二の後をつける事にした。

 

 

今思えば、つけなきゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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