カツカツカツカツカツ―――誰も通らない静かな廊下に足音が響く。
「―――――遼平、お主は本当に良いのか?」
「・・・・(コクコク)」
隣を歩いてる二人―――秀吉とムッツリーニが真剣な顔で聞いてくる。その場の空気はバカテスには似合わないシリアスな雰囲気だ。
「明久が決めた事だ・・・仕方が無い」
俺は顔を静かに伏せた。零れそうになる雫を隠すように・・・。そんな俺を見て秀吉は静かに語りかけてきた。
「遼平、取り合えず――――
血の涙を拭いてくれんかの?」
「・・・見た目が酷い」
「馬鹿野郎!!コレが泣かずにいられるかっ!!」
俺の目からは秀吉に指摘された様に、血の涙が頬に伝っていた。くそ、目の前が赤に染まってやがる!!俺はブレザーの袖で血の涙を拭く。
「まったく・・・店の宣伝をするはずが逆効果じゃぞ」
「・・・・引いている」
そう。今、秀吉が言ったとおり、今日から二日間文月学園恒例の『清涼祭』が始まった。俺達Fクラスは中華喫茶『ヨーロピアン』を出す事になった。(なぜ、中華喫茶なのにヨーロピアン?と思ったならばFクラスだからだとだけ言っておこう)そして俺・秀吉・ムッツリーニは店の宣伝の為に只今、学園内をぶらぶらと歩き回っている訳だが・・。
「なんで俺が午前中の店番じゃないんだよ!!」
「クジの結果じゃろう」
「・・・運がわるい」
「うっ!!」
秀吉とムッツリーニの言葉に反論できない。確かに、クジはFクラス全員が一斉に引いたし、元々『おい!クジで決めようぜ☆』なんて言い出したのは俺だし・・・。でもでも明久と一緒に居たかった・・・じゃなくて、あの子のこう何ていうか・・・その・・・。
「それとも・・・ワシじゃ嫌かのぅ?」
考え込む俺に秀吉が(可愛らしく)悲しそうな顔で聞く。馬鹿野郎!!(野郎じゃないけど)
「そんな訳ありません!!お母さん、秀ちゃんとまわれて死にそうな位嬉しいんですよ!もし、秀ちゃんともダメだったらお母さんFクラスの奴等惨殺してたからね!!」
「お主はいつからワシの母上になったのじゃ!?」
はっ!やばいやばい・・本音が出てきちまった・・・。兎に角、なっちまったものはしょうがないな・・。
「っで、どこからまわる?」
「・・・・Aクラスに行きたい」
珍しくムッツリーニが答えた。確か、Aクラスは『メイド喫茶~ご主人さ☆ま~』だったっけ?・・・・・・・・。
「よし、Aクラスのメイド服を見に行くとしようか・・・ムッツリーニの為に」
「・・・・・!!(ブンブン)」
必死に首を振って否定するムッツリーニを無視して俺達はAクラスへと足を進めた。あれ?何か・・・忘れてるような・・・・??
――――――――
――――
「『これが格の違いか!』って言った奴の気持ちが良く分かるぜ・・・」
「うむ、コレほどとは思ってもみなかったぞ・・」
「・・・・場違い」
Aクラスの前で立ち尽くす俺達。圧巻だ。Fクラスの模擬店はボロボロの教室をクラス全員でくまなく掃除し、除菌&壊れた所を補強してテーブルに布を被せてテーブルのボロボロさを誤魔化しているのに対して、Aクラスの教室・・もとい模擬店は見事なまでに飾り付けをされている。椅子はフカフカのソファー、テーブルは白を基調としたアンティーク風、効果音の『キラキラ』がリアルに聞こえてくる・・。
「と、取り合えず・・・入るか?」
「う、うむ・・」
「・・・(コクコク)」
場違いな感じもするが、これも敵情視察だ。そんな言い訳を胸にAクラスの模擬店へと入る。そしてそこで目にしたものは――――――
「うおぉ・・・・」
「ぬあ・・・・・」
「・・・・・・!!!(カシャカシャカシャカシャカシャ)」
――まさに楽園と言っても大げさではない美しいものだった。
「ん?この声は・・・もしかして・・遼平?」