俺とバカと召喚獣   作:屋代屋

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第二十二話

「たっだいまー」

 

「おーっす、戻ったぞー」

 

「おう、お疲れ明久。お茶でも飲めよ」

 

大会から戻ってきた僕達を出迎えたのは遼平だ。今は喫茶店の接客中なのかエプロンに蝶ネクタイというちょっとシュールな格好だ。

 

「ほい、明久頑張ってるな」

 

「もちろんだよ!姫路さんが転校なんて嫌だからね・・・」

 

僕は遼平から渡されたお茶を飲む。冷たくて丁度いいや・・。教室を見回すと、秀吉や姫路さん達も接客で大忙しだ。何故だか、葉月ちゃんまでチャイナ服を着ている。多分・・・いや、絶対にムッツリーニ絡みだろうな・・・。

 

「明久、悪いんだがホールの方に出てくれないか?」

 

「ん?いいけど・・・須川君たちは?」

 

この時間帯は須川君率いるFFF団のDグループがホール担当の筈なんだけど・・?もしかして、また妨害!?

 

「いや・・・須川たちは・・・・鉄人に・・・・」

 

「―――――あぁ、そう言う事か・・・いいよ」

 

遼平の「鉄人」という単語からしてバカだと言われている(心外だけど)僕でも何があったか予想は付いた。あらかた、Aクラスか何処かの教室にカメラ片手に乗り込んだんだろう・・。

 

「おい、遼平。客の数はどうだ?」

 

さっきまで静かだった雄二が話し始めた。

 

「客足も殆ど戻ってきてるぞゴr―――ゴリラ」

 

「言い直したなら直せよ!!――妨害のほうは・・」

 

「全く来ないな・・・不気味なほどに」

 

「嵐の前の何とかってやつだね」

 

遼平の話だと僕たちが大会に出ている間は何にも起こらなかったらしい。姫路さんたちに何も無かったのは嬉しいけど、なんだか不気味だ。そんな僕に気付いたのか遼平が頭をくしゃくしゃと掻き回して「大丈夫だ」と小声で言ってきた。

 

『やっぱり・・・あの2人・・デキてるんじゃ・・』

『そ、そんなの・・ふ、不健全です!!』

『お主らは一体何を言っとるんじゃ!?』

『・・・・一部に売れる』《カシャカシャ》

 

うん。後ろから聞こえてくる声は聞こえなかった事にしておこう。その声の人たちの為にも・・・僕のためにも・・。でも、ムッツリーニの写真は燃やさせてもらうよ。

 

「バカなお兄ちゃん!!」

 

「あっ、葉月ちゃん!?何で、チャイナ服なんて着てるの?」

 

トコトコとお盆を持った葉月ちゃんが僕の方にやって来た。服が、私服からピンクのチャイナ服に変わっている。

 

「葉月も手伝いたいって仕事人のお兄ちゃんに言ったら、この服をくれたです!!」

 

「ムッツリ商店お手製の特別チャイナ服だそうだ」

 

「ムッツリ商店の力を改めて思い知ったよ・・・」

 

盗撮・ブロマイド・抱き枕・女装写真・極め付けにチャイナ服って・・ムッツリ商店がどこに向かって走ってるのか分からないな・・・。

 

「バカなお兄ちゃん、葉月頑張るです!!」

 

「そっか、じゃぁ頑張ろうね葉月ちゃん」

 

「はいです!」

 

チャイナ服の裾を翻して葉月ちゃんはお盆に乗ったウーロン茶を持って行った。本当に健気な子だな・・・葉月ちゃん。

 

「君。注文をしてもいいかな?」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

そうやって葉月ちゃんの後ろを見ていると、近くの席のお客さんから声がかかった。雄二も遼平も厨房に行ったので取り合えず、失礼のないようにさっき遼平から渡された注文票を構える。

 

「本格ウーロン茶と、胡麻団子を」

 

「かしこまりました。本格ウーロン茶と胡麻団子ですね?」

 

メモを取り、注文内容の確認の為にお客さんに顔を向ける。・・・・あれ?この人、英語の渋田先生じゃないか。先生がお客さんとして来るのは珍しいなぁ・・・。

 

「ありがとうございます。後ほどお持ちしますので、少々お待ちください」

 

「あぁ、ありがとう。それと一ついいかい?」

 

「はい。なんでしょうか」

 

決まり文句を告げて厨房に向かおうとする足を止め振り向く。

 

「Fクラスの吉井明久という生徒は誰かな?」

 

「え?吉井明久は僕ですけど・・・」

 

脈絡もなくいきなり訊ねられて少し驚いてしまう。渋田先生は3年の英語担当の筈だけど、僕に何の用だろう?

 

「あぁ、そうか。君が・・・いや、観察処分者が一体どういう人物なのか知りたくてね。引き止めてすまないね吉田くん」

 

「先生、吉井です」

 

「おっと、すまない。え――・・・そうだ、そうだ、田中くんだ」

 

「先生、もはや一文字もかすってませんよ」

 

自分から言って何で名前を間違えてるんだ。しかも、笑顔で。

 

「明久、ムッツリーニが倉庫から茶葉を持ってきて欲しいとの伝言じゃ」

 

そんなやりとりをしていると、ホール担当の秀吉が僕のところに来た。秀吉のチャイナ服はミニ丈で生足が眩しいよ・・。これもムッツリ商店製だとしたらGJムッツリ商店。

 

「ん、わかったよ。先生、ちょっと行ってきてもいいですか?」

 

「あぁ、構わんよ。誰か見たかっただけだからね」

 

「?そうだったんですか?」

 

そんなに観察処分者が気になったんだろうか?3年の担当の渋田先生とは廊下ですれ違うくらいだし・・・。

 

「明久、ムッツリーニが急いで欲しいと言っておったぞ?」

 

「はーい」

 

よく分からないけど、とりあえず用事を済ませるのが先だ。ストックの置いてある空き教室へと向かおう。旧校舎の廊下を早足で歩いて目的の場所へ。えっと、いくつぐらい持っていけばいいのかな?きちんと数を聞いておけばよかったな。

 

「おい」

 

「うん?」

 

空き教室の中で考えていると後ろから声がかかった。声の主は同年代くらいの男3人組。困ったことに勝手に空き教室に入ってきている。

 

「ああ、ここは部外者立ち入り禁止だから出て行ってもらえます?」

 

うちの学校では見たことない顔だから、きっと他校の生徒だろう。道に迷ったのかな?

 

「そうはいかねぇ。吉井明久に用があるんでな」

 

そう言って、一番後ろの一人が後ろ手で扉を閉めた。

 

「へ?僕に何か?」

 

「お前に恨みはねぇけど、ちょっとおとなしくしててくれや!」

 

言うやいなや、拳を固めて殴りかかってきた。えぇっ!?なんで?

 

「ちょっと待った!人違いじゃないの!?」

 

屈んで拳をかわす。殴られることが多くて避けるのが上手くなってきた気がするなぁ・・・。

 

「逃げんなコラ!おとなしく殴られろ!!」

 

「それこそ嫌だよ!?何でなぐrうわっ!!」

 

扉側に逃げようと避けたとき、運悪く落ちていた空き缶に足をとられた。手にはムッツリーニから頼まれた茶葉を持っているので身体を支える事が出来ない。

 

「しめた!やっちまえ!!」

 

後ろから聞こえた声に急いで振り返れば、こっちに殴りかかってくる男3人の姿が見える。倒れた状態だと避けられない。殴られると目を閉じた。

 

その時、ガラッと音をたてて扉がひr―――

 

《バゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!》

 

 

 

―――――飛んできた。

 

「「「「       え?       」」」」

 

ガシャンと教室の端に飛ばされた扉を呆然と見る僕と3人組。扉のあった方を見ると――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明久、無事か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――夜sy――遼平が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    笑顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

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