クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~   作:レイブラスト

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想い重ねて~勇者の迷い

レオンさんがまさかのノルトマルク国の王だったという、衝撃的な事実が発覚した後。俺はギルドの前に疑問を抱えながら戻って来ていた。と言うのも、あの後レオンさんが去り際に「一真、お前を男と見込んで頼むが、これからもセシルの奴を支えてやってくれ」と俺に伝えたからだ。

 

(一瞬恋愛的な意味合いで捉えちゃったじゃんか……全く)

 

ただでさえ、セシルさんを意識してるって言うのに……はぁ……。

 

「すいませーん。今帰りましたー」

 

「あ、お帰りなさいませ、一真さん」

 

ギルドに入った俺をニーナさんが出迎えてくれる。何かもう、行ったり来たりしている気がするよ。二連戦になったし。

 

「あれ、ニーナさん。セシルさんは?」

 

「そこで寝ているわ。それより、少し聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 

「? はい、何でしょう?」

 

あまり変なことは聞かないで欲しいけど。大分前に似たような切り出し方で、とんでもないこと聞いてきた奴いたからな……。あれは余りにも酷かったので、思い出すのも嫌だ。

 

「一真さんは、セシルのことを異性としてどう思っていますか?」

 

「……え? い、異性? 何でまた?」

 

「今までセシルと接した男性達は、彼女を恐ろしがって以後深く接しないようになりました……でも、貴方はこれまでの人達と違ってセシルを恐れないでくれた。なので、どうなのかなぁと」

 

「なるほど……」

 

セシルさん本人からも聞いたけど、そんなに恐ろしいもんなのかな。ダークエルフって。ワイルドな戦い方してて良いと思うが。っと話が逸れた。異性としてか……レオンさんの言葉もあるから、余計に意識しちゃうよ。ここはどう答えるべきだろうか? 自分の容姿のこともあって女子を意識したことはあまり無いし、紫音はどちらかと言うと兄と妹みたいな関係だからよくわからないんだよな。……とりあえず恥ずかしいけど、思ったままを言うか。

 

「えっと、まず第一印象から言うと…美人で可愛い人だなって思いました。それから試験監督という役割故かもしれませんけど、初対面である俺に優しく接してくれて」

 

「結構意識しているんですね」

 

「はい……というよりセシルさんのことが、好きになったんだと思います」

 

ビクッ!

 

ん? 今何か揺れる気配がしたような……気のせいか。

 

「ち、直球ですね、随分と……」

 

「今まで恋愛したこと無かったですし。だからよくわからないんですけど、会ったばかりのセシルさんのことをずっと意識してるというのは、つまり好きということなんじゃないかな……って」

 

こういう時の為に、竜也に色々聞いとけばよかったと今になって思う。でも以前の容姿からして、自分が恋愛をするとは考えもしなかったし、誰かを好きになることも無いだろうと思ってたもんな。

 

「では、セシルの口調は気になりませんか? ほとんどの人の場合、女性が俺と言うのは嫌みたいなんですが」

 

「え、特に気になりませんよ? というかそういう口調だと、むしろその…そそられるというか……」

 

途中で恥ずかしくなり俯く。地球でヤンキーなヒロインが主人公と純愛する漫画読んで、一時ヤンキーっ娘にド嵌りしたことあるからな……すぐに幻想打ち砕かれたけど。やっぱああいうのって二次元の中だけだよね。うん、悲しい!

 

「……大体のことはわかりました。色々聞いてしまって申し訳ありません」

 

「いえ、お構いなく。ああでも、このことはセシルさんには―――」

 

「勿論内密に致します。それと、ギルドの入団試験に合格しましたのでこちらを」

 

そう言うとニーナさんはカードのようなものを渡してきた。ふむ、これが俺の会員カードのようなものか。いやそれ以前に、合格できてたんだ俺。薬草とか取ってきてなかったから心配してたけど、よかった。

 

何て考えながらカードを受け取った時、俺は大事なことに気づいた。

 

「あ! すいません。俺泊まるところが無いんですけど、いい宿とか知りませんか?」

 

「それでしたら、ここの二階をお使い下さい。少し狭いですが十分寝泊まりすることができますよ」

 

「マジですか!? ありがとうございます! それで、宿代の方は?」

 

「定期的にギルドの依頼を受けて、達成して頂ければそれで構いません」

 

要は依頼さえ受ければ自由に寝泊まりできると言うことだ。なんて有り難いことだろう。

 

「じゃあここに住むことにします」

 

「ありがとうございます。ではキーをお渡し致しますので、少々お待ち下さい」

 

一端カウンターに戻ると、ニーナさんは部屋のナンバーが付いた鍵を持って渡してくれた。それを受け取ると、俺は階段を駆け上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………聞いたセシル? 彼、貴女のことが好きなんですって。良かったわね」

 

「な、何だよ。俺は別に……第一、アイツが言ってることは曖昧だし……」

 

ソファから身体を起こしながらニーナに言う。俺はニーナの提案で、寝たふりをしながら2人の会話を聞いていた。そしたら一真の奴が……お、俺のことを、その……。

 

「あら、恋愛なんて最初は大体そんなものよ。後、思い切り嬉しそうにしてるわよ。顔が」

 

「なっ!?」

 

「そりゃそうよね。初恋の人と両想いで、しかも口調を褒められたんだもの。直した方がいいって私言ってたけど、必要なかったみたいね」

 

「あ、あうぅ……」

 

やめろ。言わないでくれ。自分の中の想いが大きくなる。会話の途中で気づいた一真への想いが……。

 

「一真さんは上に行ってるから、告白するなら今がチャンスよ。これが部屋番号だけど…どうする?」

 

「……俺は……」

 

気がつくと、俺は部屋番号の書かれた紙を握り締め、二階へと上がって行った。

 

「珍しく早めに認めたわね。ふふ、やっぱり初恋だからかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが今日からの、俺の部屋か」

 

鍵を開けて入った部屋を見渡し、呟く。ベッドやシャワーも備え付けてあり、電球は三段階で明るさを調整できる。かなりいい物件だ。住めることができて本当に良かった。何て運が良いんだろう。

 

コンコン

 

「ん?」

 

誰かがノックしてきた。誰だろう……ニーナさんかな? 多分忘れ物か何かだなと思い、ドアを開けると―――。

 

「よ、よお一真……」

 

「セシルさん?」

 

下で寝ていた筈のセシルさんだった。え、何で? さっき助けたから、お礼を言いに来たのかな?

 

「何かご用ですか?」

 

「それなんだけどよ……お前、俺のこと…す、好き、なんだって……?」

 

「え……えええええっ!? ど、どうしてそれを!!??」

 

あの場には他に聞いてた人は居なかった筈! はっ! まさかニーナさんが喋ったのか!? いきなり約束破ったのあの人!?

 

「寝たふりしてたら、会話が聞こえてきてな……」

 

あ、そっちでしたか! 道理で何かが揺れた気配がした訳だ。……待てよ? じゃあ最初から聞かれてたってこと!? は、恥ずかしぃぃぃいいいいいいいいいいいい!! 今までの人生の中で一番恥ずかしい!!

 

「正直言って……凄く、嬉しかった。だって…俺も、一真のこと……好きだから……」

 

「へぇ!?」

 

い、今何と仰ったセシルさん? お、俺のことが好きって…ま、マジで!?

 

「お前言ってたよな? 会ったばかりの人をずっと意識してるのは、好きってことじゃないかって……俺も、お前と同じなんだ」

 

「………………………」

 

「初対面なのに、お前のことを意識して仕方ないんだよ! 助けて貰った時から、ずっと……それって、好きってことだろ!?」

 

「セシルさん……」

 

顔を真っ赤にし、必死に気持ちを伝えてくるセシルさん。……女の人にばかり言わせておいて、自分は何も言わないのは酷いよな……。

 

「はい…同じです、俺と。お互いに好き合っているんだと思います」

 

「え? か、一真……? じゃあ、お前……」

 

「……こんな俺で、よければ」

 

「~っ!! こんなとか言うな! お前じゃなきゃ、嫌なんだよ!!」

 

涙目になったセシルさんは俺にぎゅっと抱きついてきた。ちょっと苦しい……けど、それも吹っ飛ぶ程の幸福感が胸中に溢れて止まらない。

 

「好きです、セシルさん」

 

「はぅ!? う、うぅ……お、俺も好きだよ、一真! あ、後……俺との会話は、呼び捨てとため口でやれ! こ、恋人同士はそうするもんだって聞いたから……」

 

「……わかった、セシル。これでいいか?」

 

「!! うん……」

 

それから俺達は、時間を忘れてしばらく抱き合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻・ジェルローナ

 

王宮の中庭の一角で俺、如月竜也と紫音は睨み合っていた。別に喧嘩した訳じゃない。ディオナさんの特訓の後で自主練として行っている模擬戦だ。

 

「行くよ、タツ兄」

 

「ああ。全力でかかってこい」

 

金属の装甲で包まれた両手両足に意識を集中し、右腕にアームキャノンを展開した紫音と戦いを始めた―――

 

 

 

―――俺達が召喚されてから一月が経過した。基本的に不自由なことはなく生活することができているが、驚いたことがいくつかある。

 

まず俺と紫音以外の全員が想像した勇者の姿が、ほとんど同じだったことだ。簡単に言うと、ドラクエに出てくる勇者そのままな格好と武器だった(勿論個人で多少の差はあるが)。俺達の学園は基本的にオタクを異常なまでに嫌っているので驚いたが、曰く『国民的人気ゲームに手を出さないのは、さすがに流行に遅れる』んだそうだ。

加えてこれまた俺と紫音以外は、四属性の魔法全てが使えるのだ。四属性とは、火・水・風・土のことであり、通常は1つの属性を司る魔法しか使えないという。……余談だが、四属性で『仮面ライダーウィザード』を思い浮かべたのは俺達2人だけだった。畜生。

 

ま、俺と紫音は格好どころか魔法すら違うんだけどな。訓練中のステータス見ればすぐわかるけど。

 

 

 

如月竜也

種族 人間

性別 男性

年齢 17

レベル 65

格闘 501×10

射撃 324×10

防御 498×10

技量 475×10

回避 415×10

命中 486×10

魔力 370

 

特殊スキル 偵察 フュージョン/ファイナルフュージョン ガオーマシンor勇者ロボ召喚

 

武装 ガオファー

 

 

 

如月紫音

種族 人間

性別 女性

年齢 17

レベル 62

格闘 424

射撃 499×20

防御 402

技量 481

回避 480

命中 490

魔力 360

 

特殊スキル 偵察 スーツチェンジ ビームチェンジ バイザーチェンジ

 

武装 アームキャノン

 

 

 

……ご覧の通り、俺は戦う勇者王であるガオファイガー系の能力を、紫音は銀河を股に掛けるバウンティ・ハンターの持つスーツ等の能力を得ていた。これらの装備は全身に装備することは勿論、今みたいに一部のみ装着することも可能だ。

俺達としては別に不満とかはないけど、初めて装着してみた時にクラスメイト全員から嘲笑を浴びたのは納得いかなかった。しかもダサいだの、弱そうだの、碌に原作見てないのによく言えるもんだと思ったよ。

 

「今日も自主練とは、感心だな」

 

回想しながら模擬戦をしてると、突然聞こえてきた声に中断して振り向く。そこにはディオナさんが優しい顔つきで立っていた。

 

「ディオナさん……」

 

「それだけ戦えるなら、実戦で出しても十分通用するだろう。……ま、君達以外のみんなは勝手に行ってしまっているが」

 

苦笑しながらディオナさんは言う。俺達以外のクラスメイトはディオナさんの訓練が実戦形式でないことに腹を立て、自由に行動できる権利を悪用してギルド等に登録。モンスターを狩りまくってレベルを上げ続けているそうだ。

 

「それはみんなが悪いだけであって、ディオナさんが気に病むことはないですよ。ね、タツ兄?」

 

「紫音の言うとおりです。……それよりディオナさん、一真のことなんですが」

 

「……ああ。その件だが『唯今戻りました、竜也隊長』っ、丁度良いタイミングで来たな」

 

会話に割り込む形で、人間程の大きさの紫のロボット『ボルフォッグ』が、ホログラフィックカモフラージュを解除して現れた。『勇者ロボ召喚』の能力で呼び出したGGG勇者ロボの1人で、諜報任務に長けている。大きさが原作より小さいが、呼び出す際に任意で決めることができるのだ。

 

「どうだった?」

 

『残念ですが、夕凪一真の情報を得ることはできませんでした。そちらの方は?』

 

「私も同じだ。それらしき情報は、何も……」

 

「そうですか……ありがとうございました」

 

俺はボルフォッグを戻すと、ため息をついて壁にもたれかかった。

 

「タツ兄、元気出して。カズ兄はきっと見つかるから」

 

「私の方もできるだけ早く情報を集める。だから、あまり気を落とさないでくれ」

 

「……別に、見つかるのが早いとか遅いとか、そういうことじゃないんだ」

 

拳を強く握り締めながら、俺は怒りの感情を露わにする。誰にでもない、自分自身へのだ。

 

「あの時強引にでも名前を書いてたら、一真は助かったかもしれない。なのに俺は、何もできずに一真を……! 何が勇者だ! 何が能力だ! 親友1人救えないで、俺は……!!」

 

目から涙が零れる。親友を救えなかった俺は勇者にはなれない。ファイナルフュージョンが一度も成功してないのが、何よりの証拠だ。

 

「いや…君は、竜也は間違いなく勇者だ」

 

自責の念にかられる俺を、ディオナさんがそっと抱き締めてくれた。

 

「勇者とはただ強いだけではない。他人を思い遣り、大切に思うことができることが、勇者として必要なことなんだ」

 

「そうだよ……だからそんなに、自分を追い詰めないで。そんなタツ兄見たら、カズ兄だってきっと悲しむから……」

 

「ディオナさん、紫音……」

 

俺は、勇者でいいのか……なあ一真。お前がこの場にいて、この光景を見てたら、お前は……。

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