クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~   作:レイブラスト

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真実~出発

翌日。俺はベッドの上で寝間着姿で目が覚めた。差し込む日差しに眉を顰めながら、昨日あったことを少しずつ思い出していく。

 

「そうだ。確か初めて人が居るところに行って、ギルドの入団試験受けて、デカイサソリ倒して、国王様と戦って、ダークエルフの女性と恋人関係になって……」

 

……随分と濃い一日だったな、改めて考えると。人外化したと思ったら恋人ができるなんて、クラスのみんなに言ったら笑い飛ばされるな、うん。

 

「……何にせよ、人生初の恋人が出来たことは十分自慢してもいい…よな?」

 

自分で言うのもなんだが、人間とダークエルフとの種族間を超えてるからな。多分歓迎され……!?

 

「っバカ! 何で気づかなかったんだ! 人間やめてるだろ、俺……!」

 

黄金の果実を手にした瞬間から、俺は人間をやめてしまっていた。しかも助ける為とは言え、事もあろうにセシルまで俺と同じところに引きずり込んでいると言うのに!

 

「今更言えないよなぁ。俺が人間じゃないってこと……それに、助けたせいでダークエルフからかけ離れた存在になってるなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と……」

 

俺…セシル・フェイスフルは身支度を整えて廊下に出ていた。そして一真が泊まっている部屋の前まで来た時、昨日のことを思い出して立ち止まった。

 

「恋人に、なったんだよな。俺…一真と」

 

結局あの後、小っ恥ずかしくて部屋に戻っちまったけど、でも……凄く嬉しい。そう思える。

 

何て考えていると、部屋の中から一真の焦るような声が聞こえてきた。何かあったんだろうか? つい聞き耳を立てる。

 

『今更言えないよなぁ。俺が人間じゃないってこと……それに、助けたせいでダークエルフからかけ離れた存在になってるなんて……』

 

「………………え?」

 

今、何て言った? 人間じゃない? 一真が? それに俺が、ダークエルフじゃなくなっている……? 一体どういう意味なんだ。気になったのでステータスを見てみる。

 

 

 

セシル・フェイスフル

種族 神(ダークエルフ)

性別 女性

年齢 24

レベル ∞(70)

格闘 ∞(480)

射撃 ∞(459)

防御 ∞(478)

技量 ∞(472)

回避 ∞(460)

命中 ∞(484)

魔力 ∞(422)

 

特殊スキル リミッター解除 黄金の果実(コピー)

 

装備 破壊の剣 戦士の甲冑

 

 

 

「な…なんだよ、これ……」

 

俺のステータスがとんでもないことになっていた。種族が神ってどういうことだ!? 何でレベルやステータスが無茶苦茶なことになってるんだ!? それに特殊スキルの『黄金の果実(コピー)』って……これに何か秘密があるのか?

 

 

 

黄金の果実(コピー):特殊スキル『黄金の果実』所有者から分け与えられたもの。自身の能力を無限大に引き上げ、あらゆるダメージを全回復し、全ての状態異常を無効化。ある程度事象を制御できる他、全ての言語を理解・翻訳することが可能。また、見た目や実力を自由にカモフラージュできる。能力行使時に魔力を1消費する。

 

 

 

秘密どころかほぼ核心だった。コピーでこれだけの力があるのなら、大本は一体……。

 

(待てよ。分け与えられたってまさか、あの時か?)

 

エンペラースコルピオンに毒を打ち込まれ、俺は瀕死状態になった。一真は単にそれを助けたとしか言ってなかったが、だとすれば死の毒を浄化できた説明がつく。

 

(んでそのことを打ち明けていないことを、悩んでいるのか)

 

わからないでもない。けど―――

 

ガチャッ

 

「っ、セシル……」

 

「一真…」

 

部屋から出てきた一真は、俺を見て一瞬驚いていたが階段へと向かって行った。その背中に向かって俺は声を張った。

 

「一真! 俺、お前が何者でも、俺がどうなっても、お前を好きになったこと…後悔しない!」

 

「!?」

 

「だから、あんま悩んだりするな。顔に出てるぜ?」

 

「……ありがとう。そうするよ」

 

そう言って一真は階段を降りて行く。……アイツの正体が何でも構わない。俺は『夕凪一真』って奴を好きになったんだ。例えどんな姿になっても、俺は一真を愛し続けるさ。

 

(自分で言ってて恥ずかしくなるな……)

 

などと思いながら、俺は一真の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか聞かれてたとは……迂闊だった。でも彼女の言葉からすると、気にしてはいないようだった。

 

(結果オーライ、でいいのか?)

 

首を捻ったが深く考えないことにし、一階へと降りていく。

最初に目に入ったのは、テーブルを挟んで談笑しているニーナさんとレオンさんの姿だった。

 

「おはよう、お2人さん」

 

「おはようございます。って、朝っぱらからここ来てていいんですか?」

 

「ちょっとぐらいは大丈夫だ。それよりどうだ?」

 

「どうだ…と言うと?」

 

「とぼけんなよ一真。お前とセシルのことだ。ニーナの話じゃ、セシルが告る雰囲気だったらしいが……」

 

ニーナさぁん! 何話してんですか!?

 

「ねえ、どうなったのセシル? 詳しく教えて欲しいんだけど~?」

 

「う、うぅ……」

 

当の本人はセシルを弄くりにかかっていた。……え、真面目に仕事しているけど素はそんな感じなんですか!? そんなに会話してないけど、何か意外……。

 

「一真も、黙ってないでさ」

 

「……わかりましたよ」

 

これ以上黙りを決め込んでも迫られるだけだと観念した俺は、セシルと分割し合ってどうなったかを話した。

 

「予想はしてたが、何ともまあ甘酸っぱい話で。俺もその場面を見てみたかったぜ」

 

「今更ながら私もそう思えてきたわ。後つけてたらよかったかも」

 

「「おいやめろ」」

 

ただでさえあの時テンパってたのに、そこを見られるとか今頃悶絶してるよ! ……やっぱり告白は2人きりの時にやるもんだと、改めて思い肩をすくめるとレオンさんが表情を引き締めて言った。

 

「まあからかうのはここまでにしといて。今日はセシルと一真、お前等2人に頼みがあって来たんだ」

 

「頼み?」

 

「それって、例のか?」

 

どうやらセシルは何か知っているらしい。しかし一国の王様が直々に頼み込んでくるとあれば、唯事じゃないのは確かだな。

 

「一真に話すのは初めてだが、これは重要なことだ。心して聞いてくれ」

 

「……はい」

 

「ここから北東に行ったところにジェルローナって国があるんだが、そこに行って特殊部隊のメンバーになって欲しいんだ」

 

「えっ!? 特殊部隊!?」

 

それってSATとかSWAT的な、若しくはそれに近い物か!?

 

「どうしてまた?」

 

「俺とジェルローナ国の王は昔からのダチでな。そいつに相談されたんだ。『特殊部隊を配備したいけど、人数足りないから少し派遣してくれない?』と」

 

どんな理由かは知らないけど、ジェルローナって国は人手不足か何かに陥っているのか? でなきゃそんなこと言わないだろうし。

 

「さすがの俺も言われた時は困ったよ。なんせ上位のハンター達はみんな出払っちまってて、送れそうなのがセシルしか居なかったからな。……種族上、向こうで何されるかわからないから、話だけ伝えておいて諦めかけてたんだ」

 

ダークエルフは現地の人間からは恐れられてるんだったな。それが本能的なものかどうかは知らないけど、1人で他のとこに行くのは確かに危険だ。

 

「だがお前が現れたことで状況が変わった。セシルを恐れないばかりか、早々恋仲になった。しかもエンペラースコルピオンを倒す程の腕っ節ときた。これなら何かの時にセシルを守れるし、文句なしで入隊できる! 正に一石二鳥だ」

 

「は、はぁ……」

 

つまるところ、俺が切っ掛けで事態が良い方向になりつつあるということか? もしそうだとしたら、照れるというか何というか。

 

「そうは言うけど、一真本人の意志はどうなんだ? さすがに来たばかりで色んなことの連続じゃ、嫌だろ」

 

「え? 別に嫌じゃないけど。むしろ行ってみたい」

 

「マジかよ」

 

目を見開いて驚かれるが、俺としては他の場所での情報収集に持ってこいなので、願ったり叶ったりだ。

 

「ホントか!? いやー、マジで助かるよ!」

 

「で、そのジェルローナはどの方角で、どれくらいの距離があるんですか?」

 

「正門を出てから真っ直ぐ北西に進んだところにある。特にこれと言った障害物もないから、今から馬を走らせれば、休憩込みで昼には到着するだろう」

 

かなり時間がかかるな。マップを開いてみたけど、短距離転移でも行けそうにない。ともあれば……アレを使ってみるか。

 

「どんどん話進めてるし…ま、いいか。とにかく俺、馬調達してくる」

 

「あ、その必要はないよ」

 

「は?」

 

「じゃ、行ってきます。レオンさん」

 

「お、おう。頑張ってな」

 

首を傾げながら見送るレオンさんに背を向け、同じく首を傾げているセシルを引っ張って正門へと歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ一真。一体何をするつもりなんだ?」

 

「まあ見ててくれ」

 

訝しむように眉を顰めるセシルを横目に、取り出したサクラハリケーンロックシードを解錠し、軽く放り投げる。

 

ガチャガチャ…ガンッ!

 

ロックシードは巨大化すると同時にバイクに変形し、目の前に着地した。

 

「………………………………………………………は?」

 

「さ、早く乗っ…て…?」

 

振り向くとセシルと偶然見ていた門番がポカンと口を開けていた。そのまま10秒経過し―――

 

「……オーケー、考えるのはやめだ。常識外れな装備ばっかり持ってるもんな、お前」

 

―――諦めたように呟いた。まあ常識外れなのは事実なんですがね……。

 

「んでどうしたらいい?」

 

「俺の後ろに跨がって、振り落とされないようにしっかりしがみついてくれればいい」

 

「馬と同じだな。わかった」

 

バイクに跨がった俺の後ろに座り、腰に手を回して密着してくる。……なんか柔らかい感触があったが、気にしない。気にしないったら気にしない。

 

「よ、よし。そんじゃ……」

 

ハンドルを回してエンジンを動かし、一瞬ビクッとなったセシルに苦笑しながら発進した。

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