クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~   作:レイブラスト

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ネゴシエイション~狂乱

「ふう……」

 

セシルを後ろに乗せて共にサクラハリケーンを運転しつつ一息つく。周りにはグループ分、8台の馬車が併走しているが、ディオナさんが乗り込む関係上1人溢れることになってしまい、俺はバイクで行くことになった。ならセシルは何で着いてきたかって? 俺と一緒じゃないと嫌らしい。思わずグッと来たね、うん。

 

ただサクラハリケーンを取り出した時にクラスメイト達が世界観壊すな!と必死に否定してたのには何故か笑えた。気にせずエンジン掛けて発進したけど。

 

(今でも視線感じるが、何でそこまで拘るんだろうか?)

 

オーバーテクノロジーだからと遠慮していては、俺は生き残ることができなかった。みんな平和に過ごしていたから、無駄に世界観で拘るんだ。

……とまあクラスメイト達への悪態をつきながら走っていると、目的地であるシュタリウスらしきものが見えた。

 

(あれか。遠目に見る限りでは普通の街っぽいな)

 

実際に行ってみないとどうかわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして門番にディオナさんが通行許可証を見せて通して貰うと、乗り物に乗ったまま城へと移動する。勿論スピードは落とすがその間暇なので、周りの人達や建物等を見る。

結論から言うと、魔族なので外見に多少の差異はあったものの、生活は人間のそれと変わりなかった。ただ何故か、セシルに注目が集まっているようにも見える。

 

「なんで注目されてるんだ?」

 

「俺達ダークエルフは、魔族の中でも一目置かれた存在なんだ。だからこうして注目されるんだが、少し鬱陶しいんだよな」

 

要するにアイドルみたいな扱いか。人間には嫌われてるのに魔族には好かれるとか、かなり極端だな。俺だったら疲れが溜まって抜けなさそう。

 

暇な時間を色んなことを考えながら移動していると、城の中庭辺りまで行ったところで止められ、長身の男性に降りて歩くよう促された。

 

「失礼だが、貴方の名前は?」

 

「申し遅れました。私はディクドース、現魔王の総治様に仕えている四天王の1人です。総治様より、貴方方をご案内致すよう申し仕っております」

 

「魔王から…わかった。案内してくれ」

 

男性―――ディクドースさんは一礼すると先導し始める。しかし気になるのは魔王の名前だ。ソウジとはまるで日本人の名前みたいだ。まさか正体は、天の道を往き総てを司る男じゃあるまいな? さすがにそれはないか。

 

果たしてどうなのか疑問に思いながら着いて行き、玉座のある物凄く広い部屋に到着すると足を止めて玉座を見る。そこには俺達と同じ黒髪の青年が、立て掛けてある大剣の柄を掴みながらこちらを見下ろしていた。近くには四天王の残り3人と思われる男女が立ち並んでいる。

 

「よく来てくれた、ジェルローナからの使者達よ。……些か人数が多い気がするが、それでもこちらとの対話に応じてくれたことに感謝する」

 

「……貴方が、今代の魔王なのですか?」

 

「如何にも。俺の名前はソウジ・ミナモト。そちらの名前は?」

 

「ディオナ・エンゲルス。エリック王の娘で、今対談の全権を任されています」

 

「そうか…よし。では早速、対談を始めよう。まず諸君らの返答だが、和平には賛成か?」

 

いよいよ始まるのか。それにしてもいきなり本題に入るとは予想外だ。大抵は逸れた話から切り出すものだと思ってたから。

 

「はい。ですが互いの条件を明らかにしないことには、安易に決めかねます」

 

「確かにな。ではこちらの条件を言おう。『我々魔族達を差別的な目で見ず、対等に接すること』、そして『積極的に技術交流や交易を行うこと』。これだけだ」

 

「えっ?」

 

「何か異論でも?」

 

「い、いえ」

 

意外な条件の内容に、俺達全員が戸惑った。もっと高圧的な条件を押しつけてくるかと思ったら、非戦派の肩書きの通り優しい人物なのかもしれない。

 

「次はそちらの条件を言ってくれ。可能な限り善処しよう」

 

「わ、わかりました。こちらの条件は『我々人間を差別しないこと』と、『交易は可能な限り対等で行うこと』の2つです」

 

「了解した。さて、双方の条件が出揃ったところで改めて聞こう。我が国ジェルローナと、どうか和平を結んではくれないだろうか?」

 

「……わかりました。和平を結びましょう」

 

結局勇者と魔王は戦わずに終わったか……。いくらか味気ないが、誰かの血が流れるよりは遙かにマシだ。

 

「ありがとう。ディクドース、調印書を持ってきてくれ。正式な和平講和を「ちょっと待てよ!!」ん?」

 

トントン拍子で事が進もうとしていた時、柏木が声を上げた。今の条件に不備でもあったのか? いや、彼のことだからきっと―――

 

「やっぱこんなのおかしいだろ! なんで俺達勇者が魔王と戦わないんだよ!? これじゃ召喚された意味が無いじゃないか!!」

 

やっぱりそうだ。定番の魔王との対決が出来ないんで、怒っているんだ。

 

「君達勇者を召喚したのは、万が一魔王との対談が罠だった場合の保険だ」

 

「だったらこんなに召喚することも無いだろ!?」

 

「だからそれは召喚魔法のバグだと何度も……」

 

「とにかく! 俺は魔王と戦いたいんだ! みんなだってそうだろ!?」

 

「ああそうだ! 魔王と戦わずに何が勇者だ!」

 

「勇者と魔王が戦うのは宿命なのよ!」

 

竜也と紫音以外の全員が魔王と戦う意志を示し始めた。おい、君達いつから戦闘狂になったんだ!! そんなに殺し合いがしたいの!? ていうか前々から言おうと思ってたけど、頭の捻子吹っ飛んでるだろ!?

 

「何言ってるんだよおい! 和平は成立しようとしている! 俺達が出る必要は無いんだ!!」

 

「大体なんでみんな戦うことに拘るの!? そんなに名誉が大事な訳!?」

 

「名誉もそうだが、魔王を倒せば国中の女の子達からモテモテ、ハーレム作り放題になるのさ!」

 

「イケメンも選り取り見取りになるに決まってるわ! フフ、涎が出ちゃう……!!」

 

ダメだ……酷い奴らだとは思っていたがここまでとは!

 

「さあ勝負だ魔王! お前を倒してバラ色の人生を楽しんでやるぜぇぇええええええ!!」

 

ついに柏木が剣を抜いた。

 

「貴様! ソウジ様に刃向かうと言うなら「待て。俺が相手をする」ソウジ様!? しかし……!」

 

身構えたディクドースさんを魔王が止めた。

 

「心配するな。和平を放棄した訳じゃない。ただ自分の欲望しか考えられない愚かな偽勇者に、痛い目に遭ってもらうだけだ」

 

そう言うと魔王はその身を変化させた。全身を黒と銀の鎧で覆い、胸には赤い装甲とドクロマークが存在。頭部は片目が潰れたマスクで包まれ……って―――

 

「「「マジンカイザーSKLじゃないか!!」」」

 

奇しくも竜也達とハモったが気にしない。そうか、道理であの剣の形が牙斬刀に似ている訳だ! いやそれより、やっぱり彼も地球から召喚されたのか!?

 

「如何にもって感じの装備だな。だが! 俺達勇者が負ける筈はない! いくぞみんな!!」

 

『『『おうっ!!!!』』』

 

言うが早いか、37人に及ぶクラスメイト達全員が各々の武器を構えて突撃した。だ、大丈夫なのか!?

 

「正面から来るか。いいぜそういうの、嫌いじゃない」

 

「ソウジ様が本気(マジ)になってる……これは巻き込まれない内に離れた方が良さそうだね」

 

「あちゃあー、アンタ達どうなっても責任負わないからね~」

 

牙斬刀を担ぐ魔王に、四天王である2人の女性が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十秒後

 

「どうした? もう終わりか?」

 

手をパンパンと払いながら魔王は言う。その前には、ダメージを負って倒れている全クラスメイトがいた。…………うん、実は知ってた。みんなが襲いかかる寸前にステータス調べたから。どんな感じだったかって?

 

 

 

湊本総治

種族 人間

性別 男性

年齢 20

レベル 600

格闘 4842×30

射撃 4822×30

防御 3675×30

技量 3321×30

回避 4590×30

命中 4613×30

魔力 5000

 

特殊スキル 偵察 魔神化 ウイングクロス

 

 

 

魔神化:特殊スキル。自身の身体をマジンカイザーSKLに変え、魔力以外の全パラメーターを30倍にする。

 

ウイングクロス:特殊スキル。背面に翼を合体させ、封印されていた武装を解放。同時にパラメーター上昇効果を60倍にする。

 

 

 

こんな感じだ。チート以外の何者でもない。チートの極みである俺が言えることじゃないけど。だが仮に戦うとなると、リミッターをしていてはまず勝てない。

ちなみに四天王達のレベルは魔王より20低かった。そんでも強いけどね。

 

「仲間が勝手なことをしてしまい、申し訳ありません」

 

「気にするな。他の種族を認められない気持ちはよくわかるからな。が、そう否定されてばかりではさすがにたまらない。そこでどうだろう。しばらくこの国に留まっていかないか?」

 

「よろしいのですか?」

 

「そうすることで、彼らも我々と人間との間になんの違いもないことに気づいてくれるだろうからな。ヴェルク、宿の手配を頼む」

 

「了解しました」

 

大柄な男性が一礼すると、何処へと歩いて行った。しばしボーッとしていると、竜也が話しかけてきた。

 

「なんて言うかさ…魔王、器でかくないか?」

 

「でかいと言うより、まるで聖人だな。折角の対談を滅茶苦茶にされるところだったのに、みんなを見逃している」

 

「これで反省してくれればいいがな」

 

それもそうだが、俺は魔王が召喚された日本人だというところが気になる。別に争う気はないが、何故彼は召喚されたのか………………いや、あまり詮索するのも失礼だ。まずはここでどう暮らすかを考えよう。

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