クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~ 作:レイブラスト
俺達がシュタリウスに来てから1週間が過ぎた。俺はこの世界で長期間同じ場所で寝泊まりするのは(まともな場所は)初めてだが、ここでの生活は悪くない。むしろ和平の使者だからと良くして貰っているくらいだ。
今日もある食堂でセシルとご飯を食べていた。
「あむ…いつも思うけど、ここの人達って暮らしそのものは人間と変わらないんだな」
「ああ。はむ…夜目がかなりきくとか僅かな違いは探せばあるが、それでも些細なことだし。俺にとっても、ここはノルトマルクと何ら変わりないな」
地球におけるホームステイと同じだ。他の国に住んでみることで、そこに居る人達がどんな生活をしているかを理解し、わかり合うことができる。ただ……わかり合おうとしない奴らの方が俺らの方には多いが。
そう考えていると、紫音が店内に入って慌てて俺に近づいた。
「カズ兄、大変! 外で柏木達がまた問題を起こしてるの!」
「またかよ! ああもう、アイツ等本当懲りないな。悪いセシル、行ってくる!」
「おう、気をつけてな」
カウンターへ代金を置きつつ店外へ出てしばらく走ると、柏木達を発見する。例によって問題行動をしているのは柏木の他、深田と大山だった。理由としては魔族が敵だからという訳ではなく、自分達が最強の勇者だから敬えというものらしい。
この1週間で問題行動をしているのはほぼこの3人だけで、他のみんなは魔王の強さを見せられて一時的に戦意を失ったらしく、目立ったことは特にしていない。
「ちっとは反省しろよな……変し―――」
「待ってカズ兄!」
いざ変身しようとした時、展開しかけていたバリアスーツ(メトロイド系の能力を持ってるんだとか)を仕舞った紫音が制止してきた。何故と声を掛けようとしたその時、殺気を全開にしブレストリガーを構えたマジンカイザーSKLの姿が見えた。
俺は思わず立ち尽くすガオファー(ガオガイガー系の能力を持っているらしい)になっている竜也に近づいた。
「あれ……柏木達終わったんじゃないか?」
「終わったな…色んな意味で」
そんでも当人達はやめるどころか自分が最強だと叫んで突撃かましてるが。しかもこの前みたいに真正面から。……えっと、バカなの?
案の定、ブレストリガーを用いた格闘攻撃の前に手も足も出ずに倒されていた。ガンカタアクションって言うのかあれ?
やがて姿を戻すと、柏木達を見下ろして何やらブツブツ呟いていた。あ、これさすがに消されるんじゃ……。
「俺はもう知らんぞ。自業自得すぎる」
「俺も。ていうか助ける義理とかないし」
なんで実力の差とか認めずに自分が最強だと言い張るのか、理解に苦しむよ。
その後、俺達ジェルローナからの使者は魔王によって集められていた。まさかとは思うけど、連帯責任で処刑とかやめて下さい、マジで。
「突然呼び出して済まない。だがとても大事な話があってな。何せ上には上が居ることを教えたのに、残念ながら未だ自分が世界の頂点だと勘違いしている輩が居るのだから」
あの3人ですねわかります。で、どうすると?
「そこでだ。俺は諸君らを引き連れ、まだ未開である遺跡を調査に行こうと思う。道中で俺以上に危険なモンスターなどに遭遇することで、決して君達が最強ではないことを学んで欲しい」
要するにエンペラースコルピオンみたいな奴と戦ってみなよって話か。あのレベルだとセシルでも苦戦してたし、気付薬にはなる筈だ。
「なんか、とんでもない話になっちゃいましたね……」
「仕方ないさ、竜也。彼は今まで寛容に見てくれていたんだ。それを理解していなかった彼らが悪い。それに未だ現実から目を逸らしている者にもいいきっかけとなるだろうしな」
「そういえば何人か居たもんね。相手が悪かっただけだって現実逃避してる奴。そんで好き放題しようとしても後が怖いから結局できないのよね」
「聞けば聞く程、非常識で腰抜けな奴らだな。あそこに居る連中は」
「俺もびっくりしてる。あんなに突き抜けて非常識だとは思わなくて」
あの3人以外にも、同じ考えの持ち主はたくさん居るだろう。魔王は自分がいなくなることで抑圧されたそれが解放されるので、一緒に連れて行って釘を刺すつもりなのかもしれない。
「ソウジ様。未開の遺跡となると、LV-169エリアの曰く付きのものしかありません。ソウジ様や他の方々の安全の為にも、我々の中で護衛を連れて行く必要があると思います」
「ふむ、そうか。ではディクドース、お前は誰が適任だと思う?」
「私の意見としては、防御力の高いヴェルクとかく乱能力に秀でたフィロナスが適任かと」
「わかった。では城の留守はお前とエルティフィルに任せる。フィロナス、ヴェルク、来てくれるか?」
「勿論! バリバリ働くんだから!」
「ソウジ様のご命令とあらば」
何やら魔王側でも会話が繰り広げられているが、エンペラースコルピオン以上の敵が居るとなるとリミッターを解除しなければならないな。悟られないようにできるかな……。
翌日。俺達は魔王の案内によってシュタリウスから離れた森の中を歩いていた。
「クソ、なんでこんなことに……」
「お前達が問題起こしまくったせいだろ。俺や魔王に負けた癖に、最強だって威張り散らしてさ」
「黙れ! あの時はたまたま調子が悪くて負けたんだ。次こそは作戦を立てて必ず勝つ!」
「勇者の衣装を纏うことでパラメータが二倍になるのに調子悪いんだ?」
「ああそうだ!」
アカン。自分が弱いことを認めないどころか、完全に開き直ってやがる。深田の方は……関わるのはやめよう。絶対下品なことしか話題にしない。おまけに他のグループからはお宝見つけたらどうするとか聞こえるし……。
どうしようかチラリと横を見ると、紫音が魔王に話しかけていた。
「あの、ちょっといい? えっと……」
「俺のことはソウジでいい。君達もそう呼んでくれ」
俺や竜也、セシルにディオナさんを見て言う。柏木には目もくれてないところを見ると、この4人だけに言った可能性は高い。
「で、何だ?」
「目的地の遺跡って後どれぐらいで着くの? それと特徴は?」
「もう間もなくだ。特徴は…あまりよくは知らないが、洞窟を入り口として地下に繋がっていることと、入り口付近の地上を4体の高レベルなドラゴンが守っているという」
「ドラゴン? 具体的には―――」
その時、開けた場所に出たと同時にギャオオオオオオーッ!!という叫びが重なって聞こえた。見れば全長5メートル程の大きさのドラゴンが4体おり、地上近くでホバリングしつつ俺達を囲んだ。
「ド、ドラゴン!?」
「これが危険なモンスターのこと!?」
「落ち着けみんな! まずはレベルを見るんだ。魔王程ではなくても、案外高いかもしれない」
冷静に指示を飛ばす柏木だが、碌にレベルを見ずに魔王に突撃した挙げ句、最近激情に駆られているお前が言っても説得力は薄いんだよな……まあ見るけど。
ディフェンスドラゴン
種族 ドラゴン族
性別 雄
レベル 900
格闘 7351
射撃 7493
防御 7070
技量 6500
回避 5837
命中 7066
魔力 8000
うわぁ、とんでもなく強いな。ソウジよりレベル高いとかどんだけ……。
「れ、レベル900!? 魔王より高いぞ!?」
「もうダメだ、お終いだぁ……!」
おい柏木、弱腰すぎるぞ! いつもの勢いはどうしたんだよ!!
「フィロナス! ヴェルク! コイツ等をドラゴンの攻撃から守れ!」
いつの間にかソウジはマジンカイザーSKLになっており、紫音はバリアスーツサムスに、竜也はガオファーになっていた。
俺も変身した方がいいが、遠距離用の武器は通常のロックシードにはないからな……ここはゲネシスドライバーを使うか。
「竜也! お前、ガオファーじゃなくってガオファイガーになれよ! できる筈だろ!?」
「練習じゃ一回も成功したことないんだ!」
「そこは勇気で補え!」
「んな無茶な……」
難色を示すが、ドラゴンが一際大きく吠える。戦闘体勢に入ったということか。
「チッ、仕方ない。お前が言うなら、やってやる!!」
割り切ったのか、竜也はガオーマシンを召喚する。俺はゲネシスドライバーを腰に装着し、メロンエナジーロックシードを取り出す。
「ファイナルッ! フュージョオオオオオンッ!!」
「変身!」
『メロンエナジー!』
ガオファーやガオーマシンが変形しながら合体していくのを見つつ、ロックシードをドライバーにセットし、シーボルコンプレッサーを押し込む。
『ロック・オン!』
『ソーダ! メロンエナジーアームズ!!』
「ガオッ! ファイッ! ガァァァアアアアアーッ!!」
シンセサイザー風の音楽が流れ、頭部に被さったアームズが展開し『仮面ライダー斬月・真 メロンエナジーアームズ』に変身する。同時に竜也も、『ガオファイガー』へと変化した。
「タツ兄! ついにファイナルフュージョンできたんだね!」
「ああ。これで防御と攻撃力に不安はない! ……ブロウクン、ファントムッ!!」
拳を構え早速ブロウクンファントムをぶっ放す。それはドラゴンに直撃し、大きくバランスを崩した。
「って、俺はこっちに集中しないと」
思考を切り替え、専用武器『ソニックアロー』から光弾を連続で放つ。効果があるようで、ドラゴンは口から火を噴いたり尻尾で攻撃してくる。
「これじゃ俺はよくても、他のみんなに被害が及びそうだ……よし、ここは一気に!」
即断即決でメロンエナジーロックシードを取り外すと、ソニックアローにセットする。
『ロック・オン!』
トリガーを引き、照準を動くドラゴンに合わせる。まだ……まだ…………っ、今だ!
『メロンエナジー!!』
発射された必殺のソニックボレーがドラゴンの心臓を貫き、その身を地に落とした。ドラゴンは数回痙攣すると、死んだらしく動かなくなった。
他のドラゴン達もドリルニーで顔を抉られたり、ウェイブバスターで感電死したり、牙斬刀で真っ二つにされたりして死んでいた。……悲惨な死に方してる奴がいるな……。
「死んだみたいだな。よし、先に進むぞ」
ソウジは近くにある洞窟を指す。あれが遺跡への入り口か、随分と物々しい雰囲気を放っているが。
そんなことを考えながら入って行こうとすると……。
「待ってくれ。入り口を護衛して襲撃者を防ぐ者達が必要だと思うのだが」
ディオナさんがソウジに進言する。彼は少し考えると、頷いて言った。
「確かにそうだな。よし、このグループの中で最も防御力に秀でたところはどこだ? それとフィロナスとヴェルクで布陣を作ろう」
ということで、クラスメイトの西川率いるグループと、四天王の2人が残ることになった。別にそれはいいんだが、どうも先行きが不安だ。無事帰れるのだろうか?