クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~ 作:レイブラスト
「……うん? ここは……」
俺が転移した場所は、どこかの森の中だった。…………いくらランダムだからって、もうちょっといいとこ無かったの? どうやって生きていけばいいのさ?
「アイテム何も持ってないし、装備だって……いや、待てよ?」
確かゼウスが言ってたな。勇者として戦う為の力、自分のイメージが形になると。それが本当なら、装備くらいは!
「ようし、やってみるか」
目を閉じてしばし黙考する。勇者召喚とかを行っている世界だからファンタジー系なのは間違いないとすると、とんでもない化け物が出てくる可能性が高い。もし俺がソレと対峙した時、ドラクエみたいな装備じゃきっと生き残れない。例えばそう……仮面ライダー斬月みたいなのが良い。俺のお気に入りだし、何より攻防一体でバランスが良いからな。
「…………ん?」
手に違和感を感じて目を開けると、右手にはフェイスプレート部に何も描かれてない戦極ドライバーが、左手にはメロンロックシードが握られていた。
「斬月みたいのが良いとは思ったけど、まんま斬月のじゃん……むしろ嬉しいけどさ」
問題はこれがちゃんと使えるかだ。ステータスを開き、更にアイテム一覧を見て追加された項目を選択する。
戦極ドライバー:特殊アイテム。ロックシードと併用して使うことで各パラメータを通常の10倍に高められる他、ロックシードの特殊効果を引き出すこともできる。現在イニシャライズはされていない。
メロンロックシード:特殊アイテム。戦極ドライバーと併用して使用する。使用した人間の格闘、防御を10アップさせる。
如何にもそれっぽい説明文だ。要約すると戦極ドライバーで変身した時点でパラメータが10倍され、プラスロックシードの効果を上乗せできるということだ。中々便利なものだ。早速使ってみよう。
まず戦極ドライバーを腰に当てると、銀色のフォールディングバンドで巻き付けられ斬月のフェイスプレートが出現。次にメロンロックシードのロックをあの掛け声と共に外す。
「変身」
『メロン!』
頭上にメロンアームズが出現(ヘルヘイムの森内部で現れたような感じ)し、ゆっくり降下してくる。多少ビビリながらもメロンロックシードをドライバーにセットし、カッティングブレードを倒す。
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! メロンアームズ! 天・下・御・免!!』
アームズが頭に被さると同時にライドウェアが全身に装着され、音声と共にアームズが展開。腰と左手に無双セイバーとメロンディフェンダーが現れ、俺は『仮面ライダー斬月 メロンアームズ』へと変身した。
「お、おお……! 本当に変身した!」
自分の顔や身体を何度も触りながら、歓喜に胸を踊らせる。こうして仮面ライダーに変身できる日が来ようとは夢にも思わなかった故に物凄く嬉しい! 変身して引き締まってるとは言え腹回りが太いのは仕方ないが、それを差し引いても大満足だ。
「おっと、ステータスを確認しなきゃ」
夕凪一真
種族 人間
性別 男性
年齢 17
レベル 1
格闘 1×10+10
射撃 1×10
防御 1×10+10
技量 1×10
回避 1×10
命中 1×10
魔力 0
特殊スキル 偵察
アイテム 戦極ドライバー メロンロックシード
本当にパラメータが変化していた。これは凄い……凄いんだけど、如何せん素の能力が低すぎてどうにも言えない……一番アップしている格闘と防御でさえ20なんだよ? これじゃあなぁ……。
「ま、グチグチ言っててもしょうがない。レベルが上がれば能力も上がる筈だし、今は生きることを考えよう」
俺は他のみんなと違い、1人だけでこの森へと来てしまった。碌に地理もわからないこの状況では、食料と水を手に入れることに重点を置く必要がある。
ガサガサ……
「ん?」
突然背後の草むらから音が聞こえてきた。恐る恐る振り返ると、灰色の毛並みを持つオオカミらしき生き物が出てきた。
「な、何だコイツは?」
無双セイバーを構えながら偵察を使ってステータスを見てみる。
レイズウルフ
種族 ウルフ族
性別 雄
レベル 10
格闘 162
射撃 65
防御 72
技量 106
回避 138
命中 160
魔力 10
備考 肉食の哺乳類。高い身体能力を持ち、更に適当に狙いをつけた敵の近くにテレポートすることも可能。非常に凶暴だが食用で、肉は保存性が高く焼いて食べるとおいしい。
中々レベルが高いな。しかも魔力持っててテレポートもできるとは、少し羨ましい。けど大切なのは備考に書かれていた食用という言葉だ。このレイズウルフを仕留めれば、一先ず食事にありつける。これは願ってもないチャンスだ。
「絶対に狩ってやる!」
意気込みを入れて叫ぶと、レイズウルフが飛びかかってきた。俺は無双セイバーのバレットスライドを引いて弾をチャージし、ブライトリガーを引いて放った。弾はレイズウルフの額へと吸い込まれていき、バタリと地面に倒れて動かなくなった。
…………………………………………。
「……………………………呆気なさすぎだろ!?」
てっきり苦戦すると思ってたのに、何なんだよ! 一瞬沸いた緊張感を返してくれ! ……とまあ、叫ぶのはここまでにしといて解体作業に移るとしよう。まずはどの肉が食べられるかの確認だ。偵察で出てくれるかな?
「おっ、案外出るもんだな」
意外にも偵察のスキルは幅広いようで、食べられる部分や解体方法等の説明も記してくれた。便利なこの能力に有り難みを感じつつ、無双セイバーで肉を取っていく。
「これでよしと。後は水と睡眠ができる場所があればいいんだが」
さすがにそれは贅沢か…なんて思っていた時、耳にチョロチョロと何か液体の流れるような音が聞こえてきた。方向を確かめて歩を進めると、綺麗な水の流れる小川があった。
「言った傍からすぐに見つかるとは、案外俺ってツイているのかも」
肩をすくめて言うと、変身を解除して水辺に近づき偵察で無害なものかどうか調べてから、水を口に含んだ。
「っ……ここは!?」
「どうやら転移したみたいだな。見ろ」
気がつくと俺、如月竜也はテレビとかでよく見る宮殿の中に立っていた。周りには衛兵らしき人達が武器を構えて並んでおり、一番奥の高い位置にある椅子には王様らしき男性(若そうな外見だ)が座っていて隣には甲冑を纏った美しい女性が1人立っている。
「……あれ? こんなに召喚する予定だったっけ?」
「いえ。少人数の筈ですが……」
何やら困惑した様子で隣の女性に聞く王様(?)だが、そんなことよりも俺には大事なことがある!
「おい裕哉! どういうつもりだ!? 何で一真をチームに入れなかった!?」
裕哉の首根っこを掴みながら強引に問い質す。一真は俺と紫音が子供の頃からの親友で、何かあるとよく庇ってくれた。手を差し伸べてくれた……でも最近は逆に一真が虐められ、俺達が手を差し伸べることが日に日に多くなった。それでもアイツは、俺達の評判が悪くなるのを避けようと、辛い筈なのに俺達をいつも止めてきた。凄く良い奴なんだよ、一真の奴は……なのにコイツ等は!!
「何当たり前なこと言ってるんだよ。あんなデブが居たところで足手まといにしかならないだろ?」
「そのせいでカズ兄は、どこだかわからないところに1人飛ばされたんだよ!? これでカズ兄が死んだら、どうするのよ!!」
「知ったこっちゃないね。あんなクズが居なくなったところで何の支障もないし」
「ふざけないで! 今度という今度は、絶対に許さ「やめろ紫音!」タツ兄!?」
「それ以上言う必要はない。俺も今度ばかりは本気で殴ろうと思ったがやめた……コイツは、コイツ等は殴る価値すらない、正真正銘のクズだからな!!」
「っ!? お前、言わせておけば!」
裕哉や周りが俺を睨み付けた時、王様(?)が凄く申し訳なさそうに話しかけてきた。
「あ、あのー……お取り込み中悪いんだけど、私の話を聞いて貰えるかな?」
さすがの裕哉達もクールダウンしたのか、素直に体の向きを変える。……何か悪いことしたみたいだな。
「コホン。諸君、突然召喚してすまない。私はエリック・エンゲルス。このジェルローナ国の国王をやっている。今回君達を召喚したのは―――」
ベタな展開だと魔王を倒す為とかだけど、果たしてどうなのか。案外違うかもしれない。
「―――我が国直属の、特殊部隊として働いてもらいたいからだ」
『『『………………え?』』』
面食らったのは無理ないと思う。勇者召喚した人を特殊部隊? そのまま勇者にするんじゃないの?
「私は前々から戦闘や調査活動を主とする少数部隊の設立を目指していてね。ただ、我が国は人手不足で兵員を割くことがどうしてもできなかった。そこで、勇者召喚をして人員を集めようということになったんだけど……40人も集まるとはさすがに予想外だったなぁ」
苦笑しながら話すエンゲルスさん。そりゃいきなりこんなに召喚されるとは思ってなかっただろう。
「勿論、最初から何かを調査しろとか無茶は言わないよ。ちゃんと訓練を受けて、みんなが戦えるようになってから任務をこなして貰うからね。それと、訓練は隣に居る私の娘が監督をするよ」
「―――ディオナ・エンゲルスだ。基礎から鍛えていくから、そのつもりでいてくれ」
先ほどからエンゲルスさんの隣に居たのは娘さんだったのか。……何か周りが「すげー美人」とか「この人が監督なら、どんな辛い訓練でもやれる」とか言ってるけど、後者は本気で言ってるのか? 案外鬼かもしれないぞ? まあそんなことより、俺は一真のことが気がかりだ。無事に居て欲しいんだが……。