クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~   作:レイブラスト

5 / 20
邂逅

検問の前に並ぶ列に混じり、順番が来るのを待つ。身分証の見た目はやや大きめのカードみたいだけど、顔写真はなく読み取る為の黒い帯もなかった。と言っても、表面に色々文字で書き込んであるが。

身分証を弄っていると、いつの間にか順番が回って来ていた。

 

「はい、次の人。身分証を見せて」

 

門番をしている1人の兵士が催促し、俺は恐る恐る身分証を渡す。これでいいのかドギマギしながら待っていると、兵士から質問があった。

 

「君、ギルドにはまだ登録してないのか?」

 

「え? あ、はい」

 

「そうか。じゃあ、折角だからここで登録してくといい。場所は……」

 

空返事で答えてしまった俺に、兵士の人は手書きの地図を渡してくれた。「どうぞ」の言葉に従い門を潜ると―――新しい世界がそこにはあった。

 

「す、すげぇ……!」

 

何が凄いかと言うと、普通の人間だけではなく様々な種族の人達が歩いたり、商売をしたり、談笑しているのだ。しかも驚くべきことに、その中に黒髪の人は誰も居なかった。

 

(これだったら見た目変えることもなかったかな。あ、でもそしたら意匠とステータスがなぁ)

 

あまり騒がれるのはよくない。幸いにも黒髪だけなら珍しいで済むだろうし、気にすることはないかな。

 

「それよりギルドを探すのが先だ。えっと……」

 

描いて貰った地図を見ながら道を歩く。しばらくして目的の建物の前へと辿り着いた。

 

「ここか」

 

看板を確認すると、この世界の文字で『ノルトマルク・ギルド』と書かれていた。ノルトマルクってのは国の名前なんだろう。にしてもこんな簡単に読めるなんて、自分が恐ろしくなるな……。ため息をつきながら、俺はギルドの扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ。ノルトマルク国のギルドへようこそ!」

 

受付らしきカウンターにいる女性が挨拶する。近くにある休憩用のテーブルと椅子には、ギルドに登録している人達が座っていた。俺はギルドの中を一瞥しながらカウンターへと進んだ。

 

「それで、どういったご用件でしょうか?」

 

「あの、ここのギルドに登録をしたいんですが」

 

「わかりました。少々お待ち下さい」

 

そう言うと、女性は一枚の紙を取り出しカウンターへ置いた。

 

「こちらの紙に必要事項を記入して下さい」

 

契約書ということか。渡された紙をじっくりと読む。書くことは自分の名前と年齢と性別と、使用武器の名前……えっ、これだけ?

 

(い、いいのかな?)

 

疑問を心に隠したまま、置いてあったペンでスラスラと記入していく。武器はドライバーとロックシードにしといたけど、大丈夫かな? とにかく受付の人に渡してみる。

 

「それでは確認させていただきます。…夕凪一真さん。17歳で、武器は……ドライバーとロックシード? 何かのマジックアイテムですか?」

 

「え、ええまあ」

 

「わかりました」

 

ホッ。無事通過することができたようだ。まずは一安心……と思っていたら―――

 

「では、これより入団テストを受けて頂きます」

 

「へ?」

 

テスト? テストって何だ? 筆記試験だったら絶望的なんですけど。

 

「テストの内容は、簡単な依頼を受けてそれをこなして貰うことです。と言っても、薬草やキノコの採取等のホントに簡単なものですけどね」

 

「はぁ……」

 

「それでテストの際には、S級のギルドハンターが試験監督として同行するんですが……」

 

受付の女性は、困った様子で周りを見渡した。

 

「いないんですか? S級のハンターが」

 

「……はい。みんな長期任務で出払っていまして。ここに居るのはC級の方達だけ…………あ」

 

そこで何かを思い出したかのように、女性はポンと手を叩いた。

 

「確か1人だけ、S級ハンターがギルドに残っていました」

 

「じゃあその人に「それって、俺のことか?」え?」

 

聞こえてきた声のする方を向くと、ギルドの奥から薄紫色の長髪をした女性が歩いて来ていた。女性は肩や腰、胸部にアーマーをつけていて、肌がやや黒く耳が尖っている。

 

「ええ、そうですよ」

 

「冗談か、ニーナ? だとしたら笑えねぇぞ?」

 

「私が冗談を言ったことがあるかしら?」

 

受付の女性―――ニーナさんと、現れた女性が対面する。どうやら知り合いみたいだが……。

 

「おい、お前。お前も俺と一緒に行動するのは嫌だろ?」

 

「いえ別に?」

 

「チッ……どいつもこいつも、似たようなことばっかり言うな」

 

何かイライラしているみたいだが、俺には理由がさっぱりわからない(当たり前だが)。戸惑っているとニーナさんが女性に言った。

 

「でもセシル。いつもみたいに行ってみなければわからないわよ? もしかしたら……ってこともあるじゃない」

 

「………………………………」

 

女性はしばらく黙っていると、ため息をついて俺を見た。

 

「仕方ない。俺がお前の試験監督になってやる。それと、俺の名前はセシル・フェイスフル……種族はダークエルフだ」

 

女性―――セシルさんの自己紹介を聞いて、やっぱりあの特徴的な耳はエルフだよね、と思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告