クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~ 作:レイブラスト
検問の前に並ぶ列に混じり、順番が来るのを待つ。身分証の見た目はやや大きめのカードみたいだけど、顔写真はなく読み取る為の黒い帯もなかった。と言っても、表面に色々文字で書き込んであるが。
身分証を弄っていると、いつの間にか順番が回って来ていた。
「はい、次の人。身分証を見せて」
門番をしている1人の兵士が催促し、俺は恐る恐る身分証を渡す。これでいいのかドギマギしながら待っていると、兵士から質問があった。
「君、ギルドにはまだ登録してないのか?」
「え? あ、はい」
「そうか。じゃあ、折角だからここで登録してくといい。場所は……」
空返事で答えてしまった俺に、兵士の人は手書きの地図を渡してくれた。「どうぞ」の言葉に従い門を潜ると―――新しい世界がそこにはあった。
「す、すげぇ……!」
何が凄いかと言うと、普通の人間だけではなく様々な種族の人達が歩いたり、商売をしたり、談笑しているのだ。しかも驚くべきことに、その中に黒髪の人は誰も居なかった。
(これだったら見た目変えることもなかったかな。あ、でもそしたら意匠とステータスがなぁ)
あまり騒がれるのはよくない。幸いにも黒髪だけなら珍しいで済むだろうし、気にすることはないかな。
「それよりギルドを探すのが先だ。えっと……」
描いて貰った地図を見ながら道を歩く。しばらくして目的の建物の前へと辿り着いた。
「ここか」
看板を確認すると、この世界の文字で『ノルトマルク・ギルド』と書かれていた。ノルトマルクってのは国の名前なんだろう。にしてもこんな簡単に読めるなんて、自分が恐ろしくなるな……。ため息をつきながら、俺はギルドの扉を開けた。
「いらっしゃいませ。ノルトマルク国のギルドへようこそ!」
受付らしきカウンターにいる女性が挨拶する。近くにある休憩用のテーブルと椅子には、ギルドに登録している人達が座っていた。俺はギルドの中を一瞥しながらカウンターへと進んだ。
「それで、どういったご用件でしょうか?」
「あの、ここのギルドに登録をしたいんですが」
「わかりました。少々お待ち下さい」
そう言うと、女性は一枚の紙を取り出しカウンターへ置いた。
「こちらの紙に必要事項を記入して下さい」
契約書ということか。渡された紙をじっくりと読む。書くことは自分の名前と年齢と性別と、使用武器の名前……えっ、これだけ?
(い、いいのかな?)
疑問を心に隠したまま、置いてあったペンでスラスラと記入していく。武器はドライバーとロックシードにしといたけど、大丈夫かな? とにかく受付の人に渡してみる。
「それでは確認させていただきます。…夕凪一真さん。17歳で、武器は……ドライバーとロックシード? 何かのマジックアイテムですか?」
「え、ええまあ」
「わかりました」
ホッ。無事通過することができたようだ。まずは一安心……と思っていたら―――
「では、これより入団テストを受けて頂きます」
「へ?」
テスト? テストって何だ? 筆記試験だったら絶望的なんですけど。
「テストの内容は、簡単な依頼を受けてそれをこなして貰うことです。と言っても、薬草やキノコの採取等のホントに簡単なものですけどね」
「はぁ……」
「それでテストの際には、S級のギルドハンターが試験監督として同行するんですが……」
受付の女性は、困った様子で周りを見渡した。
「いないんですか? S級のハンターが」
「……はい。みんな長期任務で出払っていまして。ここに居るのはC級の方達だけ…………あ」
そこで何かを思い出したかのように、女性はポンと手を叩いた。
「確か1人だけ、S級ハンターがギルドに残っていました」
「じゃあその人に「それって、俺のことか?」え?」
聞こえてきた声のする方を向くと、ギルドの奥から薄紫色の長髪をした女性が歩いて来ていた。女性は肩や腰、胸部にアーマーをつけていて、肌がやや黒く耳が尖っている。
「ええ、そうですよ」
「冗談か、ニーナ? だとしたら笑えねぇぞ?」
「私が冗談を言ったことがあるかしら?」
受付の女性―――ニーナさんと、現れた女性が対面する。どうやら知り合いみたいだが……。
「おい、お前。お前も俺と一緒に行動するのは嫌だろ?」
「いえ別に?」
「チッ……どいつもこいつも、似たようなことばっかり言うな」
何かイライラしているみたいだが、俺には理由がさっぱりわからない(当たり前だが)。戸惑っているとニーナさんが女性に言った。
「でもセシル。いつもみたいに行ってみなければわからないわよ? もしかしたら……ってこともあるじゃない」
「………………………………」
女性はしばらく黙っていると、ため息をついて俺を見た。
「仕方ない。俺がお前の試験監督になってやる。それと、俺の名前はセシル・フェイスフル……種族はダークエルフだ」
女性―――セシルさんの自己紹介を聞いて、やっぱりあの特徴的な耳はエルフだよね、と思った。