クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~ 作:レイブラスト
「よし、それじゃあ行くか」
あれから、ニーナさんの提案した依頼の1つを受け、俺達は近くの森へと進んでいた。依頼の内容は薬草を数種類採取すること。一番簡単だということで、セシルさんが決めたのだ。
「いいか? 俺を見失うんじゃないぞ? 森で迷子になったら、まず助かりっこないからな」
「ま、マジっスか……」
先ほど迷子になりかけて、転移して抜け出したことは黙っておこう。どうせ信じられないだろうし。
「そんな緊張しなくても大丈夫だよ。今まで帰って来られなかった奴なんて、いないんだし。まあ俺としては、お前の…一真の装備が謎すぎて不安だが」
ごもっともです。だってドライバーとロックシードなんて、字面だけだと意味不明なものになるんだもん。……辛うじてドライバーはプラスやマイナスの方面でいけるか?
「っと、ここだ。足下をしっかり確認しろよ」
「はい!」
頷き、足下の草むらを見渡す。見つけやすいとは聞いたけど……おっ、あれかな?
早速一本抜き取ってみる。
「セシルさん。これですか?」
「ん? ……お、もう見つけたのか。中々やるじゃねぇか」
笑顔で褒められ、ドキッとしてしまう。はっきり言うと、セシルさんはかなり美人だ。きっと戦う姿も綺麗なんだろうなぁ……と考えていたその時―――
「ん?」
「どうしました?」
「しっ、静かに。何か来るぞ」
セシルさんに言われ、息を殺してじっとする。すると目の前の草むらから、体格のいい白いゴリラのようなものがこちらを睨みながら現れた。
「コイツは……テールコング!?」
「て、テールコング?」
「尻尾を使って求愛するからその名がついたモンスターだ。どういう訳か知らねぇが、こっちを敵と認識してるらしい……!」
「えぇっ!?」
何か悪いことしたの俺!? 初めての(安全な)依頼で見るからに凶悪そうなモンスターに遭遇するなんて! ……俺って某幻想殺しみたく不幸持ちなのかな?
「おまけに、どうも囲まれてるらしい」
え? と首を傾げていると、後ろや横からテールコングが更に3匹現れた。
「チッ! コイツ等のレベルはせいぜい40といったところか。俺のレベルは70でなんとか行けるが……一真、お前のレベルは?」
「むげ…58です」
「……案外高いな」
一瞬無限と言おうとしたのを堪える。
「よし……一真! ここは俺がなんとかする。お前はどうにかして身をまも「いいえ。俺も戦います」はぁ!? お前、まともな武器あんのかよ!?」
「ええ。俺にだって、戦う力はあるんです」
『メロン!』
戦極ドライバーを腰に巻き付け、メロンロックシードを解錠する。
「……は? め、メロン?」
頭上のメロンアームズを見て、テールコングやセシルさんは目が点になっていた。この隙に戦極ドライバーにセットし、カッティングブレードを倒す。
「変身!」
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! メロンアームズ! 天・下・御・免!!』
「なぁああああああああっ!!??」
仮面ライダー斬月 メロンアームズに変身するが、セシルさんが物凄く驚いていた。……その気持ちはよーくわかる。初めて鎧武の変身を見た俺もそんな気持ちだったから。
「セシルさん! 俺は2匹を相手しますから、もう2匹はお願いします!」
「っ……わかった!」
気を取り直したセシルさんは、腰に下げている剣を引き抜いて構える。俺はセシルさんに背を向けると、二体のテールコングに向かって歩き出す。
「グオァァアアアアアアアアアア!!」
大きく吠えると、一体のテールコングが拳で殴りかかってくる。メロンディフェンダーで防御するが、そこへもう一体が尻尾を振るってきた。
「危なっ!」
テールを冠しているだけあって、尻尾でも攻撃するのか。どうにか避けたが、パンチよりも威力が高そうだ。
「だったら一気に行く!」
ブライトリガーを引いて無双セイバーの弾丸を二体の顔面に当てて怯ませると、メロンロックシードを取り外して無双セイバーに合体させる。
『ロック・オン!』
『イチ・ジュウ・ヒャク! メロンチャージ!!』
「はぁあああああ!」
横一文字に振って衝撃波を飛ばし、二体を一撃で倒した。
「ふぅ……」
変身を解除し、一息ついて振り向いた途端―――テールコングが凄い速さで俺の隣を吹っ飛んでいった。
その理由というか原因は、セシルさんにあった。
「おらぁぁぁあああああああ!」
叫びながら全力で剣を振り抜くと、最後のテールコングにそれが食い込み、切り裂くと同時に木々を数本薙ぎ倒しながら遠くまで吹っ飛ばしていた。
(何て強さだ……)
見た目からは想像できないパワーだ。そう思っていると、セシルさんは剣を戻して近づいてきた。
「そっちも終わったみたいだな」
「はい」
「随分と変わった装備だが、やるじゃねぇか。……それでだ……見たよな? 俺が戦ってるところ?」
「え? あ、はい」
何だろ? 見られたらいかんものでも見たのかな、俺?
「……怖くなかったか?」
「……いえ、別に? 強いなぁとは思いましたけど」
「そうか、そうだよな………………って、え?」
セシルさんはしばしポカンとした顔になると、少し困惑したように言葉を紡いだ。
「お前、ホント変わってる奴だな……。と、それよりも、何か変だな」
「変って?」
「テールコングは、森の奥地でもっと多くの群れを成して行動するんだ。こんなところで、四体だけで動く筈がない」
「じゃあ、どうして?」
「考えられる可能性としては1つだが……いや、まさかな……」
グラグラ……!
思考しているのを不安げに見ていると、突然地面が大きく揺れ出した。
「うわ! じ、地震だ!」
「いや違う! これは―――」
ガラガラガラガラ!!
直後、俺とセシルさんが立っていた足場が崩壊。落下し始めた。
「うわあああああああああああああっ!」
「セシルさんっ!!」
必死でセシルさんに手を伸ばそうとするが、届かず距離が開いてしまう。
そして落下していく中で1つ思った。……俺って、やっぱり不幸なのかもしれない……。
「―――ぐはっ! ってぇ……!」
俺、セシル・フェイスフルはかなりまずい事態に陥っていた。地面が崩れ、落下した拍子に一真とはぐれてしまい、更に相当深さがあるのか真上に見える筈の空がかなり小さく見えた。こんな高さでよく無事だったな、俺……ダークエルフなのも、こういう時にはありがたく感じるぜ。
「ってんなことより、早く一真と合流しないと」
ダークエルフのことを知らないとは言っても、俺の戦いを見ていたにも関わらず、アイツは俺を恐れなかった。手を伸ばしてくれた。だからせめて、一真だけは無事で返さないと。
「……だがその前に、目の前の障害を倒さないといけないらしいな」
俺が目を向けた先には、一見何も無いように見える。が、陰になって薄暗いところから、滅茶苦茶でかいサソリが現れた。
「やっぱりコイツか……エンペラースコルピオン……!!」
名前だけなら聞いたことがある。かつて様々な毒を操って、地上を我が物顔で闊歩した巨大モンスターで、その凶暴性から当時のギルドハンターによって奥地に封印されたと。
「よりによって封印が解けて、こんなところにまで来てるとはな。テールコングもコイツの支配下にあったって訳か!」
剣を構えながら睨む。正直なところ、勝てる見込みは薄い。だが俺は、勝たなきゃならない! 勝って、試験監督としての勤めを果たさないとな!
「さあかかってこい、サソリ野郎! このセシル・フェイスフルがテメェを狩ってやるぜ!!」