クラス丸ごと異世界漂流記~神と勇者と禁断の果実~ 作:レイブラスト
巨大なハサミと毒針を使って、エンペラースコルピオンは俺を攻撃してくる。ライドウェアを着てるとはいえ、危ないのでマンゴパニッシャーで防いでいるが、さすがパワー系の武器だ。何ともないぜ。
「どうした? お前の力はそんなもんなのか?」
マンゴパニッシャーを肩に担いで挑発すると、見事にそれに乗っかってきた。荒々しくハサミを鳴らし、凄まじい殺気が放たれる。
「お前にも負けたくない理由はあるだろうけど、こっちはもっと負けられないんだ!」
『ソイヤッ! マンゴースカッシュ!!』
「そいやぁぁぁあああああああああああああああ!!」
カッティングブレードを一回倒すと、それに伴ってエネルギーが纏われたマンゴパニッシャーを、全力で投げつける。
回転しながら吹っ飛んだソレは、エンペラースコルピオンの尻尾にクリーンヒット。粉々に粉砕し使い物にならなくした。
「どうだ、見たか!」
ブーメランみたく帰ってきたマンゴパニッシャーをキャッチしながら叫ぶ。が、エンペラースコルピオンは先ほどとは打って変わって、弱々しい姿勢になっていた。どうしたんだ、一体?
「……ひょっとして、尻尾が急所だったのか?」
それも人間の男性におけるシンボル的な。だとしたら……そりゃあ半端なく痛いわな、うん。
少しばかりエンペラースコルピオンに同情してしまう。
「でも悪いな。俺はチャンスを逃さないタイプなんだ!」
『ソイヤッ! マンゴーオーレ!!』
二回カッティングブレードを倒した後、マンゴーパニッシャーのエネルギーを、エンペラースコルピオンに飛ばしてぶつける。
「今だ! ……せいっはぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」
続けてジャンプし、必殺の無刃キックを頭部に食らわせる。エンペラースコルピオンは苦しむ素振りを見せ、やがて動かなくなった。
強敵を倒したことへの余韻が残るまま、俺は変身を解除しセシルさんへと駆け寄った。
「セシルさん! セシルさん、しっかりして下さい!」
「う……あ……か、一真……か? あ、あのサソリは……」
「俺が倒しました。それより、セシルさんの命が危ないんです!」
「知ってるよ……死の毒………って奴だろ……? こんなとこで、死にたく……なかったのになぁ……」
「何弱気なことを言ってるんですか! 今助けますから、下手に動かないで下さいよ!?」
「無茶言うな………死の毒からは逃れることはできない……諦めるしかないんだ…………」
「それでも、俺は諦めません! 絶対に貴女を助ける!」
「……何でそんなに必死になるんだ……俺とは初対面だろ? 恋人や親友が死ぬ訳でもないのに…………」
「っ……違う!!」
俺はセシルさんの肩をガシッと掴むと、虚ろになりつつある彼女の目をじっと見つめて言った。
「俺とセシルさんは、今日ギルドで会った時からの長い付き合いだ!」
「か、一真……?」
「だから絶対に助ける! 見殺しになんてできるか!! それにセシルさんだって、本当はもっと生きたいって、足掻いているんでしょ!? 違いますか!?」
絶叫にも近い説得を聞いたセシルさんは、少し間を開けると涙で表情を歪めながら俺に告げた。
「ああ、生きたいよ……生きて帰りたいよ! このまま死の毒に、命を奪われたくない……!! まだ死にたくない!!」
「……わかりました。俺が叶えます。その願いを!」
手をセシルさんから一端離すと同時に、見た目や能力の偽装を解除。力を解き放ち、右手をセシルさんに翳す。
俺が手に入れた、黄金の果実……その力を以てすれば、治療法が無い毒をも消し去れる筈。確証は無いが、俺はそれに掛ける!
目を閉じ、助けると強く念じると、掌から金色の輝きが現れセシルさんへと吸い込まれていった。
「何だ、これ……? とても暖かいような……」
まるで安心するかのように、セシルさんは目を閉じた。慌てて脈を確認するが、どうやら眠ってしまっただけのようだ。
「本当に上手くいったのかな?」
再び見た目等を戻してから、ステータスを偵察で見てみる。
セシル・フェイスフル
種族 神(ダークエルフ)
性別 女性
年齢 24
レベル ∞(70)
格闘 ∞(480)
射撃 ∞(459)
防御 ∞(478)
技量 ∞(472)
回避 ∞(460)
命中 ∞(484)
魔力 ∞(422)
特殊スキル リミッター解除 黄金の果実(コピー)
装備 破壊の剣 戦士の甲冑
「………………やってもうた…………」
黄金の果実の力借りる時点で、こうなるんじゃないかなー?とは薄々思ってたけど、本当になるとは驚きだよ! コピーって着いてるけど、本物と対して変わんねーよ! むしろ魔力まで無限になってる以上、俺より上だし! これどうやって説明すればいいのさ!? ……ま、まあとりあえず、セシルさんが助かったことに安堵しよう。それとここから帰る方法を探すことも先決だ。
「方法自体はわかってるけどね」
『フォーゼ!』
先ほど仕舞ったフォーゼロックシードを取り出し、再び戦極ドライバーにセットする。
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! フォーゼアームズ! 青・春・スイッチ・オン!!』
「宇宙キ……タと言うのはやめておこう」
さすがにセシルさんを起こしかねない。寝てる時に騒音とか、いい迷惑すぎるからな。
「よっこらせっと」
エンペラースコルピオンを解体して、アイテムボックスに仕舞いつつセシルさんを左腕で担ぐと、ロケットモジュールを起動して地上目掛けて飛び上がった。
「ふぅ……」
ようやく地上に辿り着くと、セシルさんを一度降ろして変身を解除する。
「どうやって帰ろうかな……」
転移で帰ってもいいが、セシルさんと一緒に行けるかどうかわからない。バイクを使おうにも、寝ているから安定がし辛い。
「……俺が運ぶしかないか」
セシルさんを所謂お姫様抱っこの状態で抱えると、起こさないようにそっと歩き始めた。
「ん……ここは……?」
一歩目で起きた……何気に凄いけど、何で?
「外です。俺達は脱出したんですよ」
「んなバカな……あのサソリを、本当に倒したのかよ……初心者とは思えないぜ」
いいえ、初心者です。ステータスがバグってるだけの。
「……ちょっと待て。俺がこうして普通に会話してるってことは、奴の死の毒から助かったってことか?」
「はい」
「マジかよ…一体どんな方法を使ったって言うんだ? ああいや、言わなくていい。それよりも、お前が俺を助けてくれたことの方が驚きだからな」
「え?」
どういうことなんだ? 今まで誰かに助けられたことがなかったとか? まさかそんなことはないよな。
「いいか、一真。俺達ダークエルフってのはな、人間にとっては畏怖の象徴とも言える存在なんだ。個々が高いレベルと戦闘力を持っていて、相当鍛えていないとまともにやり合うことすらできない、化け物。そういう認識だ」
「そうだったんですか……」
「俺はその中でも、特にパラメータが突き抜けていたからな。同じダークエルフ達にも恐れられて、居場所がなくなってノルトマルクのギルドへ来た。だがそこでも同じだった。俺を見る連中は、皆俺に恐怖していた。平気だって言う奴もいたが、俺の戦う様子を見たら一目散に逃げて行きやがった。まともに接してくれたのは、ニーナだけだったよ」
「………………」
「でもお前は、初対面だというのに俺を助けてくれた。恐怖しなかった。それは凄く嬉しい……が、どうしてだ?」
「……理由なんて、ありませんよ」
不思議そうに見つめるセシルさんに、俺は言うとこう付け加えた。
「誰かを助けるのに、理由なんて必要ありません。俺は助けたいと思ったから助けたんです。例え、貴女に迷惑だと思われても」
「……!」
驚いたように目を丸くしたセシルさんは、頬をほんのり赤く染め、目を逸らしながら言った。
「そ、そうか……別に迷惑じゃねぇけど、何か…照れるな。そういうの」
「俺だって、臭いこと言ってるのは自分でわかります」
「あはは……でも……この状況で、そんな台詞言えるお前も中々凄いけどな」
この状況? ああ、お姫様抱っこのこと言ってるのか。…………ヤバイ。これ一歩間違えばそういう意味に聞こえかねんぞ!? い、いや、大丈夫な筈。
「それより、もうすぐノルトマルクに着きます。自力で歩けますか?」
「いや……さっきやってみたが、上手く力が入んねぇ。悪いが、このまま運んでくれ」
「お任せ下さい」
そう言うと、俺はギルドへ向かって歩を進めた。