そんなわけで、試合の日。雰囲気作りのために青葉と衣笠が実況と解説をやるようだ。
『と、いうわけでやってまいりました。鎮守府内野球大会、実況と解説は私、青葉がお送りします』
『いや待ちなさいよ。そしたら衣笠さんは何なのよ』
『あー……衣笠どっちやりたいですか?』
『実況かな、野球別に詳しいわけじゃないから解説できないし』
『えー青葉も実況がいいですー。野球興味ありませんし』
オイお前ら丸聞こえだ。マイクを使って話すなバカ共。
『えーっと、こういう時って打順とポジション紹介しますよね?』
『そうね。じゃ、衣笠さんは紅組を紹介するわね』
『じゃあ青葉は白組を』
グダグダ過ぎんだろお前ら。舐めすぎだろマジで。俺の不満も聞かずに二人は紹介を始める。
『紅組、一番センター島風、二番セカンド神通、三番ファースト加賀、四番ショート大和、五番キャッチャー金剛、六番レフト比叡、七番サード利根、八番ライト瑞鶴、九番ピッチャー提督です』
『やっぱり提督がピッチャーなんだ、わがままだからね』
『ええ、自己主張の激しい人ですし』
「………あの二人キス島500回連続で回してやる」
なんか強い言葉が向こうのベンチから聞こえたが無視でいいだろう。
『続いて白組の選手を発表します』
衣笠の声。ちゃんと俺が渡した順番通りなんだろうな。
『一番ピッチャー天龍』
どうしてもこいつが譲らなかったからな。守備位置も打順も。
『二番ショート響』
こいつも何故か俺にチャンスを繋げたいとかで二番がいいとかなんとか。
『三番ライト木曾』
まぁ妥当だろうな。どーせ俺を四番にしたら向こうから文句来そうだし。
『四番キャッチャー扶桑』
守備の方はまぁイレギュラーが怖いならキャッチャーしかないだろう。それに身長もデカイし、ノーコンピッチャーなら的は大きく見せたほうがいいだろ。打順は戦艦ならではの馬鹿力を期待して。
『五番ファースト翔鶴』
これもほとんど扶桑と同じ理由。送球がしっかりしてりゃイレギュラーなんて起きまい。念のためサードに転がった時は投げないよう言っといたし。
『六番サード大鳳』
一応、装甲空母だし、ゲッツー取れそうなやつを選んどいた。
『七番センター暁』
「ラッキーセブンがいいわ!」だそうです。
『八番セカンド電』
セカンド、ファースト、センターの三人ならなんとかライトの守備範囲でカバーしきれるだろ。それに、電みたいな奴が本当に火事場のクソ力っての持ってるんじゃないかな。
『九番レフト雷』
「一番に繋げる大事な打順だよ!」「なら私に任せなさい!」
そんなわけで、試合開始だ。
○
両選手が並ぶ。俺の目の前には提督がいた。
「今思ったんすけど、そっちが負けた場合、提督への罰はどうなるんすか?」
「ん?あー……考えてなかったわね。だって勝つもの」
うわあ、うぜぇ。
「ずいぶんな自信ですねオイ。じゃあ負けたら勝ちチームに焼肉奢りで」
「いいわよ」
すると、主審の鳳翔さんが言った。
「ぷぇっ……ぷれいぼーる!」
噛んでしまったが、試合は始まった。あとそれ、言うタイミング違うからね。
○△
うちのチームは後攻。つまり、守りから入るのだ。天龍が投球練習をする中、俺は観客席(ベンチ10個)の方を見た。球磨型が全員、こっちに全力で手を振っていた。やめろ、なんか恥ずかしいだろうが。
すると、扶桑さんがセカンドベースに思いっきりボールを投げる。うん、さすが戦艦、いい肩してる。そして、響が上手くキャッチし、電はそのカバーに入る。うん、少年野球レベルにはなってる。………それ、いいのか?
「ぷね……ぷれいぼーる!」
今度こそ正しいタイミングで言ったが、またまた噛んでしまう鳳翔さん。そして、1番バッターの島風が打席に入る。
『1番バッターは島風ちゃんですね〜』
『まぁ足速いし妥当でしょうね』
なんてテキトーな実況が聞こえてくる。大丈夫、全員には一球目は見逃すはずと言ってある。他の打者のために様子を見るはず。そして、二球目を足の速さを活かしたセーフティバント……、
『おーっと!島風、1球目からセーフティバントをしてきたー!』
マジで?しかも上手い具合にサードの方に転がってったし。
「バカッ……!」
提督の声が聞こえた。どうやら島風の独断のようだ。天龍が俺を睨んでる。いいんだよ、セーフティバントは正解だったろ。しかし、俺が鍛えた天龍のストレートを上手く当てるなんて、向こうも相当練習してたっぽいな。
そして、二人目神通。送りバント……いや、神通は確か軽巡最大火力って聞いてた。意外とヒットを狙って来るかもしれない。
と、思ったら空振り。
「盗塁だッ‼︎」
俺が叫ぶが、島風の速さを刺せという方が無理だ。二塁審の蒼龍のセーフの判定。まぁそりゃそうだ。
「OK、OK!次、切り替えよう!」
次は、エンドランのサインだろ?予想通り、神通は電に向かってフルスイングした。が、提督。お前は分かってない。うちの電はビビりすぎるあまり、打球を取ることすら出来ないのだよ!
「は、はわわわ!」頭を抱えて避ける電。それを読んでたかのように俺はボールを拾い、三塁に思いっきりぶん投げた。
「おっそーい……はやっ⁉︎」
島風を追い抜いて俺の投げた球は大鳳のグローブに収まった。その瞬間、観客席も相手のベンチも静まり返った。が、そうしてる間にも大鳳はファーストに投げて神通を仕留めた。
「オッケー!ナイスゲッツー!」
俺が声を張り上げ、周りを盛り上げる。だが、島風は三塁にいる。おい、ルールわかってねぇのかあの速度尉は、と思いながらも今のやり取りを冷静に思い出す。あっ……。
「大鳳、お前島風にタッチしたか?」
「………あっ」
そんなわけで、1死3塁で相手の打順は3、4番と一回表から大ピンチを迎えたのだった。