そのあと、戦闘を数回したが、誰一人小破することなく奥まで来た。なんか禍々しい雰囲気を醸し出している奥、なんか、こう……ラスボスだよ?みたいな空気を出してる。
「………あそこ行くの?」
「そうよ。覚悟しなさいよね」
大井に言われるが無理。俺お化け屋敷とか無理なんだけど。
「………榛名さん、帰りましょう」
「索敵お願いします」
「ねえ聞いて」
「「索敵開始」」
なんで誰一人ビビってないの……。絶対おかしい。とにかく、汗は敵だ。手を拭いとこう。そう思ってハンカチを取り出したときだ。
「敵艦隊発見!」
「嘘っ」
急いで拭いて前を見る。すると、向こうも艦載機みたいなのを飛ばしてきた。
「うおわぁっ!」
俺は慌てて逃げる。周りの奴は機銃なり高角砲なり持ってたりするが、俺はない。ていうか砲弾とグローブしかない。
「あっぶねぇ……」
そして、大井の雷撃。敵空母を一機撃破した。
「木曾ちゃん」
「なに?」
「あの真ん中の奴に気をつけて。あれは戦艦よ。一発でも当たったらアウトと思いなさい」
「マジ?」
「行くわよ!」
すると、前に榛名が出た。
「榛名、全力で参ります!」
ドォンッ‼︎と太鼓のような音を立てて砲撃。敵戦艦に直撃するが、とてもダメージを負ってるようには見えない。精々、擦り傷くらいだろう。
「上等……ッ‼︎」
俺はロージンバックを使い、砲弾を握って振り被った。
「っラァッ‼︎」
力一杯のストレート。グィィィィンッと空を切って突き進み、戦艦に向かって突っ走る。直撃したように見えたが、砲弾は弾かれた。
「チッ……!」
すると、戦艦の砲撃。俺に向かって飛んできている。俺はグローブを構えた。ズウゥゥゥゥンッッ‼︎‼︎とグラブに収まる。
「ーーーッッ‼︎⁉︎」
いってぇ……なんだこれ……‼︎戦艦はここまで火力が違うものなのか……。
「んにゃろっ……倍返しだッ‼︎」
俺はその砲弾を投げ返した。が、さっきと同じように聞いていない。その時、俺はたまたま見えた。ボールが当たる直前、何か透明の……G-セルフリフレクターパックのあの羽みたいなのが出て防いでる所を。
「………そういうことかよっ」
「木曾ちゃん危ないッ‼︎」
「あ?」
横を見ると、砲弾が飛んできていた。
「ッ‼︎」
反射的にグローブが出た。が、さっきの戦艦の砲撃を防いだせいか、グローブが明らかにボロくなっている。しかも飛んできた砲弾は重巡のもの。耐え切れるはずもなく、グローブは爆散した。
「ッ野郎……ッ‼︎」
「木曾!左手……!」
瑞鳳に言われて手を見ると、メチャクチャ出血していた。
「ってぇ……!」
「大丈夫なの?」
「平気だ。右手さえあれば投げれる」
「そう、無理しないでね」
「ああ」
そのまま瑞鳳はその重巡に艦載機を放つ。
「木曾」
今度は瑞鶴だ。
「なんだよ」
「いい?あの戦艦に大きいダメージを与えられるのはあんたと榛名だけなの。残りのやつは私達に任せて、あんたは榛名と一緒にあいつをやりなさい」
「………分かった」
「頼むわよ」
そう言うと瑞鶴は大井、神通、瑞鳳を連れて他の奴を狩りに行った。
「榛名さん!」
「はい」
「援護に回ってくれますか?」
俺が聞くと、不思議な顔をする榛名。だが、
「分かりました!」
「ああ、すいませんね」
「いえ」
で、俺は砲弾を右手に持つ。残りは6発。これ以内に仕留めなければならない。はっ、ちょうどいい。9回裏2死。ランナー満塁で1対2。全部死球で押し出しで勝ちは無くなる。やってやるよ。
「ッラァッ‼︎」
1球目。思いっきりぶん投げた。ストレート。それが直撃するも、やはり透明のシールドみたいなのに防がれる。ボールか。しかし分かったことがある。あのシールドは自動じゃない。奴の意識的に繰り出されてるものだ。そうならやはり奴はバッターと変わらない。いつも通りやれ。
「ラァッ‼︎」
さらにもう一球。それも弾かれた。残り4球、勝てる。そう思った時だ。砲弾が飛んできた。
「ッ‼︎」
グローブはない、仕方ねぇ。俺はその砲弾に向かって投げた。爆発し、相殺される。
「グッ………‼︎」
爆発に少し巻き込まれ、俺は軽く服が破けた。
「木曾さん!さがって下さい!」
榛名が後ろから声をかけてきた。
「ふざけんな!これからだ!」
「ダメです!中破しています!危険です!」
「バッカお前、バッターとの勝負の最中のピッチャーを下がらせる監督がいるかよ」
「そういう問題では……!」
「いいからやらせてください。お願いします」
俺が言うと、榛名は困った顔をする。だが、
「………次、榛名が危険だと判断したら下がってください」
「分かった」
そのまま再び戦艦を見た。ノースリー。逆転はここからだぜ。俺は4球目を投げた。
「っラァッ‼︎」
ボールは正面に向かう。そして、戦艦がシールドを張った瞬間だ。ボールが落ちた。それが戦艦の足に直撃し、爆発。
「役に立つとはなぁ、フォーク」
『ッ』
向こうが焦ってるのが分かる。そう、切り札は最後まで取っておくもんだ。もちろん、変化球を投げただけあって、ストレートに比べて威力は殺される。それでも奴にダメージを与えるには十分だ。
「ッ‼︎」
さらに5球目。これは右肩を狙って投げた。すると、向こうはバリアの範囲を広げた。だが、甘い。俺のフォークはお前が思っているほど落ちるものだ。そのままさらに足に直撃。
さぁ、ツースリーだ。これで決めよう。この試合を。大きく振り被り、俺は視線で狙いを定める。奴の胸からヘソの間、そこをロックオンし、思いっきり腕を振り下ろす。
投球は今までで一番の速さで奴の正面に突き進む。すると、奴は足にシールドを張った。完全に読み勝った気でいるのか、口を歪ませる戦艦。
だが、その歪ませた口が開き、ゲハッと血を吐き出した。甘いんだよ。野球の読み合いで俺に勝つなんて100年早え。俺が投げたのはストレートだ。そのストレートが戦艦の腹に思いっきり減り込み、貫通、爆発した。
「ッ」
驚いてる榛名。俺は呟いた。
「完投」
ゲームセットだ。