言うだけ言って武蔵は去ろうとした。俺は別段気にしちゃいなかったし、ちょっと心抉られただけだったので流すことにした。だが、
「ちょっと待つクマ」
球磨が口を挟んだ。すると、武蔵は振り返る。
「……なんだ?」
「木曾に謝るクマ。少なくともお前なんかより木曾は強いクマ」
「そうよ!木曾ちゃんに謝りなさいよ!」
大井も被せる。あの……ちょっとやめてくれない?なんか親に庇われてる気分だから。
「ほう、私がそこの眼帯に負けるとでも?」
「呼んだか?」
返事をしたのは天龍だ。
「お前じゃない。引っ込んでろアホ」
俺はとりあえず黙らせておいた。すると、大井が続けた。
「そもそも、あの時の状況をまともに知らない癖に宝の持ち腐れだのなんだの言わないでくれる?木曾ちゃんはちゃんと働いてたわ!」
「どんな状況でも旗艦が倒れるわけにはいかないことくらい分かるだろ。指揮する人間だぞ」
「そ、それはそうだけど……!」
おい、丸め込まれんの速すぎだろ。もう少し粘れ。てかこのままじゃ殴り合いが始まりそうだな……主に球磨が。
「ま、まぁまぁ落ち着けよ三人とも……」
「当事者が宥めに来たよ」
「誰のために揉めてると思ってんの?」
「木曾も引っ込んでるクマ」
ちょっとそこまで言わなくてもいいじゃないですか……。思わずゲンナリしてると、
「そこまでよ!」
と、ビシィッと間抜けな声が聞こえた。どっちだよ。その声の主は提督だった。
「なんか面白いことになってるみたいね!」
「面白いことになってるのはあんたの頭だ」
「まぁまぁそう言わないで!そういうときはやっぱり演習で決めましょう!」
「「はぁ?」」
俺と武蔵の声がハモった。
「そのほうが少年漫画みたいで楽しいじゃない!」
「いや、全然楽しくないと思うが」
「とにかく!一週間後に演習やるから!タイマンで!それまでにお互いにしっかりと練習するように!」
「えっ、ちょっ……」
「それまでに私闘とかは全部禁止!やったら二人とも眼球にデコピンだからね!」
「怖っ」
「じゃあ解散!」
提督の独断で、武蔵とタイマン張ることになった。
○
「どうしてこうなった……」
俺は部屋で頭を机に突っ伏す。
「そもそも!お前らがあんなとこでキレなきゃ良かったんだよ!」
「妹があそこまでボロクソに言われて黙ってられるほどクマは大人じゃないクマ」
「私もよ。あんの脳筋戦艦が……」
なんか怖いなこいつら……。
「いや俺はそんな気にしてなかったし、別にそんな……」
「クマ達が許さないんだクマ!」
「ご、ごめんなさい……」
なんか謝っちゃったよ……。
「と、いうわけだから頑張ってね木曾っち」
「タマ達は応援してるにゃ」
「えっ、待って特訓付き合ってくれないの?」
「木曾の投球練習に付き合える奴なんてこの鎮守府どころか世界にもいないにゃ」
そこまで言うかね……。まぁ別に負けてもいいよな。俺が情けなかったのは事実だし。かるーくゆるーくやらせてもらうわ。
「ちなみに、負けたらわかってるクマ?」
「私たちの雷撃戦の的になってもらおうかしら」
「ち、ちょっと待てよ!なんそれ!」
「これはクマ達の名誉に関わるクマ」
「仮にも北上さんの姉妹の名前に泥を塗る気?」
「い、いやそういうわけじゃ……」
「とにかく、負けたら袋叩きにするからね」
念を押されて俺はため息をついた。
「わぁったよ、勝ちゃいいんだろ」
で、立ち上がるとグローブと練習用のボールを持った。
「グラウンド行ってくる」
それだけ言うと、俺は球磨型の部屋を出ようとドアノブに手をかけた。その時だ。開いた扉にガゴッと頭をぶつけた。
「木曾ちゃんいるー⁉︎」
提督だった。
「は、鼻血が……いい歳して鼻血が……」
「あら、そこにいたの。それよりちょっと来て」
「なんだよ……。ぶっ殺されたいのか?」
「最初の頃の私への敬語はどこへ行ったのかしら……。あっ、いやそんな事より来て」
「なんだよ」
「改造よ!」
「…………はぁ?」