提督に呼び出されて、ついて行った先は工廠だった。
「なんだよ」
「いやーイベント前の作戦の時の木曾ちゃんの戦果が大本営の人達に受けちゃってねぇ。それで木曾ちゃん専用の艤装が届いたのよ」
「マジ?俺専用」
「そう、専用」
てことはアレか、シャア専用的なアレか。
「何それ欲しい!」
「可愛い!だけどまだ練度が足りないのよ。でも、次の武蔵さんとの演習でちょうど使えるようになると思うのよ。もちろん、勝てばね」
「つまり、勝てばくれるってことか……つーか俺の練度ってそんな上がってんのか?」
「だって木曾ちゃんの場合は普通にキャッチボールするだけでも練度上がっちゃうんだもの」
あー……なるほどな。まぁ他の奴とはスタイルが違うし。
「そんなわけだから、勝ってね」
「おー」
テキトーに返事をして、俺は今度こそグラウンドに出た。
○
さて、まずは肩慣らしだ。軽く壁当てでもするか。そう思って俺はボールを握って投げる。それを10回ほど繰り返した時だ。
「これって、なんか友達いない奴みたいだな……」
自分を思わず客観視してしまった……。なんだろう……自分の斜め後ろ辺りで誰かがキャッチボールしてたら尚更……、
「野分ー!行くよー」
「舞風、踊りながら投げないでください」
いちゃったよ後ろでキャッチボールしてる子達。これ完全に俺友達いない奴みたいじゃん。ていうか、今思ったけど俺って姉妹以外友達いなくね?
「……………」
衝撃の事実に思わず項垂れてると、ツンツンと足を突かれた。見てみると、響がこっちを見つめていた。
「遊ぼ」
「……………」
果たして俺と響は友達なのだろうか。が、こいつに「俺たちって友達だよな?」なんて聞くのは少しアレな気がする。
「遊ぼ」
「えっ?あ、ああ。そうだな。何したい?」
「きゃっちぼーる」
「分かった」
で、俺と響は向かい合ってボールを投げ合う。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
その間、無言である。普通、こういう時友達なら会話の一つや二つするもんだよな。やっぱ俺と響は友達ってわけじゃないのか。
「木曾」
「なんだよ。てか呼び捨てか」
「本気、かもん」
「本気?俺の?」
「うん」
「断る。まだキャッチボール始めて数球だろうが。肩壊すわ」
「了解」
で、また黙ってキャッチボール。
「……………木曾」
「なんだよ」
「本気」
「またかよ!少しは落ち着かせろよ!」
「本気」
「ったく……しゃーねぇな。グローブ動かすなよ」
で、響はグローブを止めたまま自分も止まった。ま、本気とは言ったものの6割も出せばいいだろ。内心でそんな事を呟きながら俺は振りかぶった。で、ビュッと音を立てて腕を振り下ろす。ボールは真っ直ぐ突き進み、響のグローブに収まった。かのように見えたが、グローブを弾いて、ボールを収めたグローブは後ろでキャッチボールしてる野分の後頭部に直撃した。
「あっ」
ていうか今、気のせいじゃなきゃ響の手首からゴキって音がしたな。案の定、真っ赤に腫れ上がった手首を涙目で押さえてる響がいた。
「わ、悪い!大丈夫か響!」
慌てて駆け寄る。
「も、問題ない……」
とは言うものの、涙目どころかもう涙流してる。泣かしちゃったよ……どうしたもんかと悩んでたら、肩をトントンと叩かれた。見ると、響とは正反対に怒りの無表情の野分が立っていた。
「木曾さんでしたね。少しお話ししましょう」
「い、一応聞くけど……どっちに怒ってる?」
「両方です」
新たなトラウマが刻まれた瞬間だった。野分は怒らせちゃいけない。