それから一週間、俺はいつも通りの投球練習をした。で、演習当日。木曾は軽くキャッチボールをした後、演習場に立った。というか浮いてる。水の上に。で、木曾は演習前に球磨に言われた事を思い出していた。
『相手は大和型の二番艦だクマ。一発でももらったらアウトだと思うクマ』
「一撃死亡とかどんな無理ゲーだよ……」
呟きながら海の向こうを見る。肉眼では捉えきれないほどの遠くには武蔵がいるはずだ。すると、耳元のマイクから提督の声がした。
『いい?私がやめって言ったらやめるのよ。これ破ったら二人とも解体だからね』
「うーい」
「了解」
木曾と武蔵が返事をする。
『では、演習開始』
提督の声で、二人は動き始めた。武蔵は偵察機を飛ばし、木曾は真っ直ぐと前に向かった。
「むっ、敵艦隊発見。……なんだ、こちらに近付いて来てるのか」
武蔵が声を漏らした。
「それならありがたい限りだ。こちらとしても狙いやすい」
そう呟くと、砲口を前に向ける。そして、木曾を肉眼で捉えた。
「全砲門開け!撃てぇ!」
ドオォンッ!と音を立てて砲撃。それが正確に木曾に向かっていく。が、木曾は躱した。
「チッ……。撃ち方始め!」
続いて攻撃。だが、木曾は水上とは思えない動きで躱す。
「すばしっこい奴め……!次弾装填!」
と、武蔵は次の砲撃の準備をする。そのタイミングを見て木曾は止まり、ボール型の砲弾を握った。で、武蔵を目掛けて腕を振り下ろす。
(奴の球種は聞いた限りだとストレートとフォーク、チェンジアップにシュートだったな。球の動きをよく見れば躱せない事はない。しかし、威力を見るためにあえてくらうのもいいだろう)
そう判断しら武蔵は直撃してみた。。だが、小破した程度だった。
「ふんっ……軽巡にしては中々やるが、この程度、蚊に刺されたようなもんだ」
(それに、一番力の入ると思われるストレートでこの程度の威力か。やはり戦艦並みといってもこの程度か)
そう判断すると、武蔵は砲門を再び向ける。
「全砲門開け!撃て!」
さらに砲撃。木曾は躱して投げ返した。それをヒョイっと平気で躱した。
「遅い。その程度では捉えきれんぞ」
反撃をしようとしたが、また木曾が振りかぶっていたのが見えたので、砲撃をやめた。
「チィッ……!」
木曾が投げた。さっきと全く同じ球速。またストレートだと判断して、下にしゃがんで躱した時だ。ボールが落ちた。
「んなっ………⁉︎」
見事にまた直撃し、武蔵は更に中破する。
「クッ……‼︎」
煙の中、木曾を見ると、右手をロージンバックに触れながらぷらぷらさせていた。
「ふぅ……やっと落ちた……」
(! ま、まさか…あの威力の球がすべてストレートの投げ損ないだとでも言うのか⁉︎)
木曾はロージンバックを艤装の上に置くと、砲弾をさらに持った。
「さて、もう一球」
そう呟くと、再び腕を振り下ろす。その球はものすごい勢いで武蔵に向かって飛んできた。
「ッッ‼︎⁉︎」
反射的に躱したが、ほとんどマグレで躱せたようなものだ。
(これが、奴のストレートか……‼︎)
そう認識すると、ニィッと口を歪ませた。
「面白い……わたしも油断なく行かせてもらおう」