そのまましばらく撃ち合いになる。武蔵の砲弾を全部躱す木曾。木曾の投球を躱すかガードする武蔵。完全に正面からのブン殴り合いとなっていた。
(あのストレートだけは喰らったら終わりだ。こちらも気が抜けない……!)
で、武蔵はチラッと残りの弾薬を確認する。
(…………残弾5か……撃ち過ぎた。ここからは無駄には撃てない。落ち着け、奴は軽巡。一撃でも当てればその時点で私の勝ちだ。奴の動きの癖は掴んでる。ここからはタイミングが重要だ)
そう判断し、ふと前を見ると木曾が砲弾を投げつけて来た。ガードしようと腕を前に並べた。が、その球は武蔵に当たる直前、右にグィィィンッと曲がった。
「嘘っ、ヤベッ………」
(これは、シュートか?ここしかない!)
武蔵はそう判断すると、砲撃を開始した。
「撃ち方始めッ‼︎」
砲弾が木曾に向かっていく。
(こちらの反撃の初弾は奴は必ず左へ躱す……!)
予想通り、左へ回避する木曾。そこに向かってもう一撃放つ武蔵。
(これで足を止めた。後は右と真ん中両方に撃ち込めば……‼︎)
そう心の中で呟きながら砲撃すると、木曾はジャンプして躱した。
「そこだッッ‼︎‼︎」
まさにその瞬間を狙ってたと言わんばかりに武蔵は空中に飛んだ木曾に砲撃した。残り一撃、これが決まれば武蔵の勝ちだと踏んだのだろう。案の定、狙い通り直撃し、煙が上がる。
「捉えたッ……!」
そう思い、煙の方向を睨む。だが、その煙から声がした。
「さぁすが大和型二番艦、戦闘中に人の癖を掴むなんてな……!」
「っ⁉︎」
目を見開く。煙が晴れ、そこに出てきたのはグローブで砲弾をキャッチした木曾だった。
「俺の予想通りに俺の動きをカンパしてくれた」
「何ッ⁉︎ほ、砲弾をキャッチだと⁉︎」
そして、木曾はそのキャッチした砲弾をそのまま振りかぶった。
(マズイ……!こちらには残弾はない!なら……!)
と、武蔵は腕で自分を庇うように構えると、木曾に向かってまっすぐ走り出した。
(肉弾戦を挑むのみだッ‼︎)
そのまま、まっすぐと走り出す。それと共に木曾は砲弾を投げた。
「っ⁉︎」
かなりのスローボールだった。山なりに放られたボールは正確に武蔵の上に落ちてくる。思わず武蔵はそのボールを見つめてしまった。
その瞬間、自分の腕と腕の間を通って、顔面に砲弾が直撃した。
「ーーーーッッ⁉︎」
直撃し、後ろに倒れる武蔵。
(戦艦が全速力で特攻してくるのに対して、怯むことなくスローボールで敬遠だと……?どんな心臓してやがる………!)
そのまま倒れ、海の上にプカーッと浮く武蔵。
『そこまで!』
と、耳元で提督の声が響いた。
『勝者、軽巡木曾』
それを聞いてようやく木曾は一息ついた。
○
そんなわけで、演習後。入渠ドッグで顔を赤くして浸かる武蔵の前に、全力でニヤニヤしながら立つのは球磨と大井に便乗し、北上と多摩もだ。その少し離れた所に木曾も立っている。
「え?宝の持ち腐れなんだって?え?」
「それむしろ武蔵の方クマwww」
「はい、木曾ちゃんに土下座〜」
「ついでにタマ達にもなんか奢るにゃ」
「んぐっ………!」
北上、球磨、大井、多摩と全力で煽っていた。その度に顔を赤くする武蔵。だが、約束は約束だ。武蔵は木曾に向かって行った。
「その……すまなかったな……」
「そんな事より俺の改装まだ?」
(い、弄る気すらないだと⁉︎)
とうとう涙目になる武蔵だった。すると、提督がやって来た。
「あら、ここにいたの木曾ちゃん。改造するからおいで」
「やっとかー!じゃ、姉貴たちちょっと行ってくるわ!」
「クマ達も見たいクマ!」
と、提督と球磨型五人は出て行った。が、木曾が戻ってきた。
「あ、武蔵、さんだっけ?」
「なんだ?貴様の姉のように笑いに来たのか?」
「いやいや。違くて。せっかく俺が勝ったんだから1つ言うこと聞いてもらおうと思って」
「…………なんだ?」
悔しそうに木曾を睨む武蔵。どんな要求をされるのか分かったもんじゃないからだ。だが、帰ってきたのは予想外の返事だった。
「キャッチボールの相手、付き合ってくれよ」
「…………はっ?」
目をパチパチさせる武蔵。
「いやーこの艦隊、俺のキャッチボールの相手になれる奴中々いなくてさ。大和さんとか美人過ぎて話し掛ける勇気ないし。でもこの演習で確信したよ。武蔵さんなら受けてもらえるって。だから頼むよ」
「ま、待て!そんな事で良いのか?私が言うのもなんだが貴様の戦闘力も知らずに酷いことを言ったつもりだ」
「じゃ、あとパフェ奢り追加で」
「や、だからそういうんじゃなくて」
「何、暴力系がいいの?マゾ?」
「だから違うってば」
で、武蔵はコホンと咳払いをする。
「貴様の姉達はほんとに人か?ってレベルのことばかり言ってきたが……当事者の貴様はその程度でいいのかといってるんだ」
「いいってば。てか俺をあの人でなし共と一緒にすんな」
それだけ言うと、木曾は提督達のあとを追った。
「…………木曾、か。変わった奴もいたもんだ……」