とりあえず木曾に転生してみた   作:フリーザ様

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煎餅

 

目を覚ますと、どこだかわからなかった。いや天国とかそういう意味じゃなくて。知らない天井だった。

 

「お、気が付いた!」

 

元気な声がして、振り返ると川内が座っていた。

 

「大丈夫?」

 

「俺、どうしたんだっけ?」

 

「お風呂で倒れたんだよ。鼻血出して」

 

お風呂?入ったっけ?記憶にねーや。

 

「ごめんね。なんか無理矢理入れちゃったみたいで」

 

「あーいや別に平気だ。気にしてない」

 

「ほらこれ、間宮アイスのお金」

 

「あ、マジで奢ってくれんの?」

 

「うん。ほら行って来なよ」

 

「悪いな」

 

「全然」

 

「ってか、お前は食わないのか?」

 

「食べる予定だったんだけど、これから夜でしょ?」

 

川内の言う通り、気が付けば外は暗くなっている。

 

「って、夜だからなんだよ」

 

「夜戦だよ夜戦!」

 

「何言ってんだお前」

 

「とにかく!夜戦に行ってくるから無理なの!またね!」

 

そのまま川内は飛び出していった。なんなんだあいつは。元気100倍アンポンタンか。ぼんやりと川内の消えてった方向を眺めてると、ふと気がついた。

 

「そういやここどこだ?」

 

とりあえず起き上がって辺りを見回す。服は誰のだか知らないが着物に着がえらせられてる。ベッドの上じゃなくて畳の上。

 

「………どこだここ」

 

「私の部屋ですよ」

 

「うぇあっ⁉︎」

 

急に後ろから声をかけられ変な声が出てしまった。振り返ると、その声をかけた人と思われる女性が立っていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、はい」

 

うおぉ……なんだこの今まで見たことのない女子力の塊のような人は……。というか、嫁力?お母さん力?

 

「どうしました?」

 

「や、なんでもないです」

 

「お茶、飲みますか?」

 

「あ、いただきます」

 

で、ゴクッと飲む。

 

「あちっ」

 

「あ、すいません。温かいお茶です」

 

いや言うの遅いでしょ……お母さんからおばあちゃんにランクアップするぞ。

 

「お煎餅もありますよ」

 

「あ、すいません。お気遣いなく」

 

「今日は新潟の濡れせんべいです」

 

今日は、ってことは他の人とかはよくここに来るのか。日替わりで煎餅変えてんのかな。

 

「てか、煎餅濡らしてどうすんですか。あれパリっとしてるから美味いんでそ?」

 

「ふふふ、まぁ食べてみてください」

 

んだよお前パリッとしてない煎餅なんて塩の聞いてないフライドポテトみたいなもんだろこんなもん食うならニラの入ってない餃子食う方が600倍くらいマシだぜ。あむっ。

 

「うまっ!何これ思いの外美味い!」

 

んだよこれお前今まで食った煎餅のどれよりも美味いわニラの入ってない餃子の1200倍美味いわメカラウロコ。もう一枚あむっ。

 

「美味しいでしょう?私も最近見つけたんです」

 

「いやマジ神。なんだこれ、うめぇ」

 

「喜んでもらえたなら何よりです」

 

て、手が止まらん……!もっしゃもっしゃと食べてる時だ。5枚目を食べ終わったところで煎餅を皿ごと取られてしまった。

 

「あっ……」

 

「そろそろお夕飯の時間ですから、ここまでです」

 

「えー、もう一枚だけー」

 

「駄目です。ほら、そろそろ部屋に戻らないと球磨さん達が心配するんじゃないですか?」

 

「わーりましたよ」

 

俺は仕方なく立ち上がり、部屋の出口に向かった。

 

「それ、取っといて下さいね」

 

「分かりました」

 

そのまま部屋を出た。………そういえばあの人誰だったんだろう。

 

 

 

 

球磨型の部屋の前。あ、そういえば間宮アイスとやらをまだ食ってねぇな。まぁ明日でいいか。

 

「ただいまー」

 

てきとーに挨拶して入室。

 

「おお、帰ってきたクマ」

 

「どこ行ってたの?」

 

球磨、大井聞かれる。てか北上と多摩はまだ帰ってないのか。

 

「どこだろうな……煎餅の国?」

 

「ああ、鳳翔さんのところね」

 

なんで分かるんだよ大井。ていうかあの人、鳳翔って言うんだ。

 

「クマもよくお世話になってるクマ。煎餅超美味いクマ」

 

「球磨ちゃんはいつもあそこにいますからね」

 

「今日の煎餅は濡れせんだったクマ」

 

ふーん、ってオイ待て。

 

「おい、球磨型は全員出撃で今日はいなかったんじゃないのか」

 

「あっ、やばっ」

 

コノヤロウ……俺が必死こいて的あてやってるときに煎餅食ってやがったな。まぁ別に怒るような事じゃないけど。

 

「とりあえず提督にチクっとくわ」

 

「ま、待つクマ!お姉ちゃんを売る気かクマ⁉︎」

 

「おう。1万円にもなれば十分だろ」

 

「そういう意味でも売る気クマ⁉︎悪かったから許してクマ!」

 

「口止め料」

 

「いい加減になさい!」

 

急に大声を出されて思わずビクッとしてしまった。てか標準語に戻ってるし。

 

「人の弱みを握って金儲けなんて最低クマ!ドラマとかで間違いなく死体役クマ!お姉ちゃんはそんな風に育てた覚えはないクマ!」

 

「おい、逆ギレで誤魔化そうとすんなコラ。つーか育てられた覚えねーし」

 

「うっ、バレたクマ……」

 

「ま、俺は優しいから間宮アイス一回分奢りで許してやるよ」

 

「木曾……お姉ちゃん信じてたクマ」

 

言いながら抱き付いてくる球磨を躱して大井に聞いた。

 

「そういえば間宮アイスっての食ってみたいんだけど、大井……」

 

「ムッ」

 

「………大井お姉ちゃん、明日あたり食いに行かない?」

 

「いいわよ。奢りならね」

 

「その点は平気、そこのが奢ってくれる」

 

「クマっ⁉︎」

 

「ならせっかくなら北上さんや多摩ちゃんも誘いましょうよ」

 

「クママっ⁉︎」

 

「そうだな。集団で食えば美味くなるらしいし」

 

「ち、ちょっと待つクマ!クマは木曾に奢ると言っただけで……!」

 

「「サボり」」

 

「ムグッ……」

 

「よし、決定だな」

 

「明日が楽しみね♪」

 

その瞬間、ブチッと何かがキレる音がした。

 

「ああああっ!上等クマ!可愛い妹の分まで全員1人残らず奢ってやるから感謝するクマァッ‼︎」

 

壊れた。

 

翌日、球磨の財布から金は消し飛んだ。

 

 

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