演習当日。俺は携帯のバイヴのように震えていた。
「大丈夫だよー木曾っちー。そんな緊張しなくてもー」
「無理無理無理無理。俺のせいで負けたらうっかり自殺するまである」
「何言ってんのさー」
いやいやいやいや、お前分かってねぇよ。もし仮によ?大事な場面でついうっかりミスして勝てなかったりしたらどうよ。精神的にクリティカルヒットですよ?
「大丈夫ですよ」
声をかけてくれたのは大天使榛名。
「リラックスしていきましょう。木曾さん」
「はい、全身の力が抜けて成仏しそうです」
「いや消えられては困るんですが……」
うん、ツッコミもいけるみたい。この子天使。
「行くわよ」
加賀さんに言われ、俺たちは艤装を着けて海へ出た。演習場の海の上。相手の戦力は正規空母二隻に戦艦四隻のハイパー脳筋パーティらしい。提督が言ってた。
「索敵を開始します、大鳳」
「はい」
加賀さんの合図で飛行機……じゃないか、艦載機だっけ?それを飛ばす空母二人。
「おお……ほんとに飛行機飛んでる……」
「艦載機を見るのは初めてなのかい?」
響に声をかけられた。
「ああ、まぁな。ラジコンの飛行機にしか見えねぇ」
「でも上空から爆撃されると思うと怖くないかい?思いっきり死角だよ」
「あー分かるかもしれん。あんまり高く上がるフライとか怖いよな」
「フライ?エビフライ?」
「そっちの揚げるフライじゃねぇ。まぁなんでもいい」
大体あってるし。いやあってねぇけど。
「敵艦隊発見!」
緊張感のある大鳳の声が響いた。すると、北上が前に出た。
「40門の魚雷は、伊達じゃないからねっと!」
言いながら魚雷をたくさん発射。それが海中を進んでいき、見えなくなって数秒後に爆発した。
「うおぉ……当たったのかアレ?」
「戦艦陸奥、中破」
「ちぇ〜、墜とせなかったかぁー」
いや、十分すごいんじゃねぇの?俺だったらまず間違いなく目の前にいる大鳳を轟沈させちまうかもしれない。
「行きますよ!」
「うえっ⁉︎」
榛名が前に出た。
「木曾も、早く」
響にせかされ、俺も慌てて追い掛ける。
「榛名、全力で参ります!」
「さて、やりますか」
その掛け声と共に榛名と響は砲撃を始める。
「木曾も」
「え?お、おう!」
仕方ないので俺も砲撃を始める。落ち着け、何もしてこなかったわけじゃないんだ。今までの訓練を思い出せ。相手をよく見ろ。そして、目測で距離と方向を測るんだ。狙いを定めて、
「当たれええええええッッ‼︎‼︎」
俺は思いっきり砲撃した。が、砲弾は銀河の彼方へ飛んでった。
「……………」
全員がキラーンと消えてった方向を見つめる。その隙に敵艦隊はこっちに主砲を向けた。
「何が火事場のクソ力だこの野郎ォォォォォッッッ‼︎‼︎」
そして、迫り来る砲弾の雨を回避、回避、回避、そして回避した。
「つーか何で俺ばっか狙われるんだあああッ‼︎」
なんてやってると、北上が主砲を撃ちながら言った。
「木曾っちやるじゃん!その回避力は十分囮の素質あるよ!」
「嬉しくねええええええッッ‼︎‼︎」
だが、俺の回避能力は本当に囮として役に立っているようで、こちらの部隊は全員攻撃に集中している。
「よしっ、敵空母の瑞鶴、陸奥を大破!」
「こちらも伊勢を中破、葛城を大破させました!」
大鳳、榛名と声と戦果を上げた。
「残りは2人です。最後まで気を引き締めていきましょう」
加賀さんがそう答えると、周りは頷いた。俺は素直に頷けなかった。囮役疲れたもん……なんて考えながら避けてると、向こうの山城が主砲を構える。しかし、俺に向かっていない。
「! 響!」
「! あっ」
そのまま発射される砲弾。ここから先は反射的なものだった。まるで若干右のライナーを捌くように俺はその砲弾を左手でキャッチした。
「………は?」
「えっ?」
そして、俺はタッチアップを仕留めるかのように砲弾を右手に持ち替えて振りかぶった。
「バックホーム……ッ!」
レーザービームの如く、勢い良く右腕を振り下ろす。その投球はグィーンッと海面スレスレを突き進み、山城の主砲の砲口に吸い込まれていく。
「んなっ……⁉︎不幸だわ……」
見事に砲口に入り、その瞬間爆発した。
「むんっ」
久々のセンターからのバックホーム。完璧に決まり、思わず気合の入った息をついた。
『……………』
気が付けばうちの艦隊は全員黙り込んでいた。あれ、身体が勝手に……。俺、昔こうしてたことあるな……。確かほんの1、2年くらい前に……センターの、4番で……それで……、
「ファイアァーッ‼︎」
何か思い出しかけたとき、別の砲弾が飛んできた。
「っ」
またライナーか。俺は逆シングルで捌き、さっきと同じ様に投げ返した。こっちも正確にこ、金剛だっけ?そいつの砲門へ引き込まれていく。
「シィィィット‼︎」
そのまま金剛も大破した。えーっと……ゲームセットで、いいのかな?