グラウンド。俺の周りに集まってきたのは……響しか名前わかんねぇ……。
「悪い、自己紹介してくれや」
すると、素直に従ってくれる駆逐's。とりあえず、レディの暁、不死鳥の響、ジョニーの雷電、速さの島風、それとアホの天龍だ。つーかお前は駆逐艦じゃないだろ。
「お前らまさかこの中途半端な人数で野球やるつもりか?」
「だ、ダメなのですか?」
おそるおそる雷……いや電だっけ?多分後者の方が聞いてきた。
「ダメってこたァないけどあれだよ。ゲームは出来ないぞ。野球は9対9でやるもんだからな」
「そ、そうなの?……い、いやまぁ一人前のレディだから知ってたけ……」
「それに一塁審、二塁審、三塁審に主審、それとランナーコーチと監督は選手が兼任するにしても責めて控え選手1人くらいは欲しいから……」
気が付けば全員がただ黙って俺を見ていた。
「………なんだよ」
「く、詳しいね……野球マニア?」
引き気味に島風に言われた。
「あ、ああ。まぁな……」
「どこファンなの?」
「特にない。野球は見るよりやる方が好きなんだ」
「ふーん……」
聞いた割には興味なさそうだなこいつ……。
「そうだ。せっかくなら9人集めようぜ!」
急に天龍が声を張り上げた。
「は、はぁ?なんでそんな……」
「いいのですそれ!」
何言ってんだ電。
「そ、そうね!立派なレディなら野球くらいできるわよね!」
レディなら責めてソフトボールやれよ。
「大丈夫よ、私がいるじゃない!」
何がだ雷。
「よーし!じゃあ提督に頼みに行くぜてめぇら!」
『おー‼︎』
天龍が声を掛けると、駆逐艦のアホ共は出発した。えー……マジでやんのこれ……。
○
提督は二つ返事でOKし、チーム決め。自分で言うのもあれだが、まず間違いなく俺がいるチームが勝つと思う。だって俺、センター四番抑えピッチャーだったし。野球に関しては完璧超人と言っても過言ではない。だから俺がピッチャーをやれば勝ち確定だろう。守備なんていらない。そんな事を考えながら俺はクジ(赤白をクジで決める青の人は審判とかその辺)を引く様子をぼんやり見ていた。
「次、木曾」
おっ、俺の番だ。スタスタと陽気に歩いて俺はクジ箱の中に手を突っ込んだ。
○△
結果発表!
赤チーム
加賀、瑞鶴、金剛、比叡、大和、島風、神通、利根、提督。
白チーム
天龍、暁、響、雷、電、扶桑、翔鶴、大鳳、俺。
また、怪我とかによるメンバーチェンジは勝手に選べる。
「まぁまぁじゃね?正規空母に装甲空母に戦艦いるし、パワーは勝つ事はなくても負けないだろ」
俺はそんな事を呟いた。どちらにしろ、俺がいれば負けはない。すると、提督が言った。
「あ、木曾はピッチャーしちゃダメだからね。ライト固定」
「は、はぁ⁉︎なんだそれ!」
「当然でしょ?レベルが違うもん」
や、まぁ確かに当然といえば当然か……。むしろキャッチャーとかに回されないだけマシだと思うしかない。この時の俺は甘く見ていた。これがどれだけあり得ないチームかというのを。
「ちなみに負けたチームは演習4倍だから♪」
○△□
グラウンド。
「っしゃあッ‼︎テメェら!さっそくバッティングセンター行くぞ!」
気合を入れる天龍に、『おー!』と拳をあげる暁型。その天龍の頭を軽く俺は叩いた。
「アホか、まずはキャッチボールだ。じゃないと身体壊れんぞ」
「はぁ?なめんじゃねぇ!俺はそんなにヤワじゃねぇよ!」
「それにキャッチボールで誰がどれくらい上手いとか大抵分かるから。いわば、そいつの強さを測るためにやるんだよ」
「……強さを?」
「そう、強さ、強度、戦闘力」
「っしゃあ!テメェら!キャッチボールすんぞコラァッ‼︎」
チョロいなこの女。で、困るのは後ろの方で苦笑いしている翔鶴、扶桑、大鳳。俺の言うこと聞いてくれんのかな。いや命令したりするつもりはないけど、俺はついこの前来たばかりの新人だし、「なんでお前に従わなきゃいけないの?」みたいなのが普通の思考回路だろう。この前の演習メンバーなら俺が野球やってたこと知ってるが、このチームにそれは響と大鳳しかいないしなぁ……。果たして俺はやっていけるのか……演習4倍ってそれ地獄だからなぁ……。思わず深いため息をつくと、くいっと手を引かれた。
「あ?」
見下ろすと響がいた。
「大丈夫、響は木曾に従うよ」
「……………」
ちょっと涙が出そうになった。まぁ、チーム作りも練習の一つだよな。
「やるかっ」
軽く気合を入れて立ち上がった。
○△□◇
キャッチボールの様子を俺は見ている。なに、さすが艦娘ってだけあってキャッチボールにはなっている。だけどね、まず天龍、
「消える魔球だぜッ‼︎」
消えてねぇよ。そして暁、
「スペースQ!」
お前エース知ってんのかよ……。と、まぁこんな感じで好き放題やってる。これをまとめんのはダルいぞ……。
「天龍」
「お、なんだ?ピッチャーか?」
「いや違うから。ちょっとグローブ構えろ」
「おう。なんだ、キャッチボールしたかったのか」
「いいか、グローブ絶対動かすなよ。動かしたら怪我するから」
「え?」
天龍のリアクションを無視して全員に言った。
「皆さん、ちょっといいですか?」
すると、こっちを見る皆さん。
「まずボールを投げる時、投げる前に体を半身にして、グローブで投げる的を指してください。で、そこから投げる時はグローブを自分の脇に寄せ、ボールを持ってる方の腕はまっすぐ、振り下ろす」
言いながら俺はビュッと腕を振り下ろした。予告通り、俺の投げた球は天龍のグローブに1mmもズレることなく収まった。
「おお……」
「す、すごいのです……」
「やるじゃない……」
と、感心する面々。
「あとボールの握り方な、螺旋丸みたいにガッチリ握らないで、指二本で引っ掛けるように握る。……おい違うぞ響、指二本で握るってそうじゃない、それフォークの握り方」
なんてやりながら練習はサクサク進む。で、ノック。このとき、俺はこのチームの何処がダメかを知ることになった。
まず天龍→どんな打球もダイビングキャッチ
暁→一人前のレディだのなんだの言って言うこと聞かない
電→ボールから逃げる
この辺はまだ予想できた。だが問題は戦艦空母組みにもあった。
扶桑さん→なぜかどのボールもイレギュラーする
大鳳→同じく
翔鶴さん→なぜかどのボールもイレギュラーして身体に直撃し、中破する
「困ったなオイ……」
後から知った話だが、あの辺の人達は不幸度が高いらしい。なんだよ不幸度って……。ポジション……どうすっかなぁ……。
「これしかないか……」
もうこれしかない。俺のポジションが固定されてる以上は。要は、イレギュラーがが起こらないか、起きても問題ないポジションにするしかない。
「よし、出来た……」
あとは決めたポジションの練習とバッティングの練習させればいい。これで、どこまで行けるか、だな。