全員の食事の後片付けをした後、ゼダスは自室の窓際で本を読んでいた。
申し訳程度に開いている窓から吹いてくるほんのりと温かい風がゼダスに絡みつく。
部屋内は風の音とペラペラと本のページをめくる音だけが響いていた。その時、
「ゼダス、起きてるか?」
とノックの音とリィンの声がゼダスの耳に届く。ゼダスは、
「生徒手帳か?」
と扉越しに問う。分かっていて質問したんだが。
「よく分かったな。だから、ゼダス用のを渡しに来たんだ。」
「んじゃ、入って渡してくれ。今、動きたくないから」
「動きたくないって……。それじゃ、失礼します」
と言いリィンはゼダスの部屋に入った。そして、リィンは息を呑む。
そこにいたのは人智を離れた存在だった。
もともと、整っていたゼダスの顔が本を読んでいる最中になる真剣な表情。更に、窓から差す月光がその姿の神々しさを何倍にも加速させた。そして、その神々しさが部屋中の威圧感を増幅させる。リィンは
「うっ……⁉︎」
と胸を押さえていた。その姿を見てゼダスは
「やっぱ、初心者にはキツかったか〜。すまんな、お前を実験台にして。」
「あぁ、何…とか、大丈夫だ。」
とリィンは辛そうながら、笑っていた。
「こっちに非があるし、ちょっとした詫びをさせて貰うか。」
とゼダスが言い、リィンに手をかざすと、リィンの体内から一気に疲労が飛んだ。
「何だこれ?」
と摩訶不思議な現象にリィンは問う。
「俺の流派の特異技みたいなモンだよ。後、肩貸せ。お前の部屋まで運んでやるよ。」
「流石にそこまでして貰うわけにはいかないよ。」
「お前ってさ、頼られるけど、自分から頼るって事しないタイプの人間だろ?迷惑を掛けてるんじゃないか、とかの理由で。でも、お前は少し、人に頼るって事を覚えろ。“仲間”は持ちつ持たれつの関係なんだからさ、別に無理難題じゃなきゃ頼っても罰は無ぇよ。」
とゼダスはリィンの返答を聞く前に肩を持ち、寮の廊下を歩き始める。
沈黙をお互い保ちながら、リィンの部屋に着く。ゼダスは、
「ほらよ。お前が悩んでる時は相談にのってやるし、少しは頼ってこい。その胸の事でも相談にのってやるから。」
「なっ……⁉︎」
とリィンは不意を突かれたような表情を浮かべ、何か言おうとしたが、その前にリィンの部屋の扉を閉めた。
―――*―――*―――
「ふあぁぁ……眠い。」
朝日が昇りはじめの頃に起きてしまった。今日は自由行動日なのにこんなに早く起きてしまった。
理由は多分、普段の朝が早いからだろう。全員分の朝食作るのは勿論、一回ラウラを早朝に立ち合った後から毎朝勝負を挑んでくる。その習慣の所為で起きてしまったのだろう。
でも、今日は朝食は作らない。だって、“自由”だもん。などと思って自室の扉を開けてみると、そこにいたのはラウラだった。
「ゼダス、今朝も頼む。」
「はぁ……今日もやるのかよ。飽きねぇのか?毎回毎回やられてんじゃねえか。」
「それでも構わん。」
とやり取りした後、何時も通り街道に出る。そして、立ち合いを始める。
ラウラは素質はあった。現にこの頃、ようやくゼダスを抜刀させるまで追い込める様にはなった。だが、抜刀したら最後、コテンパンにされるのだが……。そして、今回も
「ほらほら、どうした?」
と言い、ラウラの攻撃をいなし、的確に反撃する。ゼダスは気怠そうに
「今日はここまでだ。敗因を自分で考えて次に繋げろよ。」
と言い街道から姿を消した。
立ち合いはせいぜい数分〜数十分程度の時間で行っていた。
そして、ゼダスは自由行動日なのに学院へと向かった。本校舎をくり抜いたど真ん中に中庭があり、正午過ぎの日の角度がベストプライスなのだ。この頃、睡眠不足だからその日に照らされながら寝たかったのだ。ベンチに迷惑なぐらい陣取って寝転がり、睡魔にヤラレチャッタ。
―――*―――*―――
目を覚ますと夕陽が差す、いわゆる夕方だった。体を起こそうと力を入れると、ゼダスの上でフィーが寝ていた。
「おい、何で人の上で寝てんだよ。フィー」
「ふあぁぁ、おはよ、ゼダス。」
とフィーは呟く。
「気持ち良さそうだったから、…乗っかってみた。…案の定気持ち良くて、寝てた。」
「だからって人の上で寝ることは無ぇだろ。」
お互い、ググッと体を伸ばしながら言い合う。
「ゼダス、今日の晩御飯って何?」
とよだれを垂らしながらフィーは問う。
「えぇ、自由行動日だし作る気なかったんだけどな……そんなに食いたいんなら、お前がリクエストしろ。今から買い出しに行ってやるから。でも、荷物持ちぐらいは手伝えよ。」
「
と二人は夕陽に照らされながら、トリスタの街へと歩いて行った。