駅に出たⅦ組A班が最初に目にしたのは、巨大な風車に自然溢れる町、そして活気のある市場だった。多分あれが大市なのだろう。
「のんびりした雰囲気だけど結構人通りが多いんだな」
とリィンが呟くと、それに答えるかのようにラウラが、
「彼方の方にある大市目当ての客だろう。外国からの商人も多いと聞く。」
その回答に関心したアリサが、
「なるほど、帝都とは違った客層が訪れているのね。」
それに加えるサラ教官。
「ちなみに特産品はライ麦を使った地ビールよ。あれ美味いのよね〜〜。あ、でも君達学生は飲んじゃダメよ。」
「まさか、説明よりビール目当てか?アンタらしいが一応、職業は教官だろうが。自重しろよ。」
とゼダスがツッコミを加える。
そして、A班が泊まる宿へとサラ教官によって案内された。サラ教官について行く間、ゼダスは、
「教官。宿がすぐそこなら先に行っててくれないか?ちょっと気になることが出来た。」
「……良いけど、さっさと戻って来なさいよ。」
と許可を得て、ゼダスは宿と反対方向へと歩き出す。
―――*―――*―――
「何のようだ?」
怪訝な声で問うのはゼダス。
その声を向けた先にいたのは、高そうな白いコートらしき何かを来た男だった。その男は、
「《天帝》よ。こんな所で目にかかれるとは……。学院に入ったのは本当だったのだな。」
「あぁ、何故入れられたか分かんないがな。お前は何か知らないのか?《怪盗紳士》」
《怪盗紳士》と呼ばれた男は、
「何も知らないよ。美しき君に嘘をつく必要は無いからね。」
と答える。
此奴はゼダスと同じ結社《身喰らう蛇》の執行者NO.X《怪盗紳士》ブルブランだ。
表社会では怪盗Bとして自己が美しいと思った物を盗み出している。盗む物は、宝石や美術品、工芸品は勿論の事、人の心や景色など、自分の美学にあった物なら何でも盗もうとする。裏を返せば、此奴の美学に合わなければ、盗まれる事はない。
執行者の中では、戦闘向きでは無いが、実力は執行者としての最低限は備えていて、奇術を用いた戦法を取ってきて、対策をしていなければ、厄介極まりない。ゼダスは、
「ブルブラン、厄介な事する前に消えろ。あいつらを巻き込むと俺への尻拭いが面倒になる」
「中々、手厳しい言葉だ。まぁ、今日のところは帰るとしよう。さらばだ。」
と言い残しブルブランは、虚空へと消えて行った。
―――*―――*―――
ゼダスはA班の泊まる宿、「風見亭」に到着した。中にいた女将に挨拶をして、泊まる部屋へと向かった。
そして、扉を開くとそこには、Ⅶ組A班が集まっていた。部屋の内装は……、ベットが五つと簡素なものだった。ゼダスは、
「悪いな、待たせて。」
と謝っておく。アリサは、
「ゼダス、年頃の男女が一部屋に泊まるっておかしくない⁉︎」
と半ギレ状態で話しかけてくるが、
「おかしいのは、お前だ。」
とゼダスは諭している。その光景にリィン達は安心しているとー
「あの駄目教官が部屋賃二部屋分も払うわけないだろうが。」
と全く説得力の無い答えを発していた。
部屋内で女将から渡されたという封筒をゼダスは遅れて見る。外側には士官学院の紋章が印されてあり、特別実習の内容が入っていると察させた。中身を確認する。内容は、
特別実習・1日目、実習内容は以下の通り
・東ケルディック街道の手配魔獣
・壊れた街道灯の交換
・薬の材料調達
実習範囲はケルディック周辺、200セルジュ(1セルジュ=100メートル)以内とする。なお、1日ごとにレポートをまとめて、後日担当教官に提出すること。
となっていた。ゼダスは、
「(この内容……、遊撃士の真似事かよ。教官は俺らに何を学べと言うんだ?)」
と思っていた。
そして、Ⅶ組A班はケルディックの町へと繰り出して行った。宿を出る前にサラ教官が真昼間というのにビールを飲んでいたのには大して気に留めなかった。リィン達は先程、教官から特別実習についての謎めいた説明を受け、宿の前で議論を始めた。ラウラは、
「ー先日の自由行動日。そなたがどう過ごしたのかと関係があるといった所か。」
とリィンに言う。リィンは、
「ご明察。俺は先日の自由行動日は、今回みたいに生徒会から依頼が回されていたんだ。旧校舎の探索なんてハードな物もあったけど、それ以外は、簡単な手伝いや手助け程度だった。」
その言葉にエリオットは、
「……さっきの依頼と同じパターンってことだね。」
「あぁ、そして一通りこなしてみると学院やトリスタの街について理解できたことが多かった。多分、目的の一つにはそういったものがあると思う。」
とリィンの言葉にアリサは、
「確かにこの町についても本で読んだことぐらいしか知らないわけだし……」
と言う。ゼダスは退屈そうに、
「ま、依頼をこなして行けば分かるだろ。」
と言った。リィンは、
「それじゃ特別実習始めるぞ。」
といい、Ⅶ組A班の初めての特別実習が幕を開けた。
最初に取り掛かった課題は薬の材料調達だ。教会に向かって依頼主に話を聞くと、足りない材料はベアズクローと皇帝人参らしい。何か両方、大市なら手に入りそうなので、向かってみた。人の出入りが多く、商人にとっては大分稼げるのは身をもって感じた。ベアズクローは何とか大市で回収出来たが、皇帝人参が品切れだった。しかし、聞いた情報によると、西ケルディック街道にある農家で育てているらしく、向かってみる。街道に出る魔物は蝸牛型の魔物や狼型の魔物、蜻蛉型の魔物などだ。戦術リンクを駆使すれば、別に苦戦する相手では無く、事実余裕があった。そして、農家に事情を説明して皇帝人参を譲ってもらい、教会へと納品した。
次は壊れた街道灯の交換だ。ケルディックの武具屋からの依頼。魔物避けの街灯が壊れたらしく、危ないので交換して欲しいらしい。換えの街灯を貰い、街道へと繰り出す。お目当ての壊れた街灯を発見。早速、付け替えようとするが、ゼダスは、
「パスコードって何だっけ?」
と初歩的なミスを犯す。それにリィンは、
「466515だ!」
と魔物と戦闘中に叫ぶ。パスコードを叩き込み、街灯を付け替えると魔物避けの効果が効いたのか、魔物が離れていった。
そして、ラストは魔獣退治。目的の座標に行くと、いたのは青い恐竜みたいな魔獣だった。名は「スケイリーダイナー」だ。攻撃パターンは鋭利な牙による噛みつきに、尻尾を薙ぎ払う感じだ。一動作あたりの硬直が大きいので、しっかりと確事に避けて反撃という戦法を使い、十数分で倒した。そして、日が傾いていた。Ⅶ組A班は全ての課題を完璧にクリアして宿へと帰って行った。