俺が『事件を解決する』と宣言した後、早速証拠集めに向かおうとしたが、オットーが場を収めてくれた礼をしたいらしく、家に招かれたので大人しく伺うことにした。茶も出されたので、それを口に含んでいると、オットーは、
「礼を言わせてもらうぞ。おかげで怪我人が出る事は無かった。」
と礼をして来たので、俺はそれに対し、
「当然のことをしたまでです。それにしても、色々と揉めてるみたいっすね。」
「実はのう………」
オットーの話した事をまとめると、このケルディックの街を納めている翡翠の都バリアハートの公爵家、アルバレア公爵家(ユーシスの実家)が二月ほど前に、大市の売上税を大幅に上げてきたそうなのだ。しかも、その税の量は並大抵の商人だと普通に生活するのも危うくなるレベルなのだ。
その為、元締めであるオットーはその増税の量を少しでも下げてもらおうと、直接公爵家に訴えに行くのだが、全て門前払いに遭っている。しかも、公爵家はそれを煩わしく思っているのか、領邦軍を利用した嫌がらせを行ってくるのだ。今回のような諍いにも不干渉だし、基本困っていても助けない。権力を握ってる者が聞いて呆れてしまう。それを聞いたアリサは、
「何よ、それ。滅茶苦茶じゃないっ⁉︎」
「そうだな。それは流石にやり過ぎでは無いだろうか?」
ラウラも憤りの意を隠せないでいると、俺はスッと立ち上がる。
「お茶、ありがとうございました。そろそろ行きます。」
「えっ、ゼダス⁉︎もう行くの?」
エリオットの問いに俺は、
「生憎、証拠は待ってくれないからな。自然消滅しない内にさっさと調べに行くんだ。つーか悪かったな。勝手に巻き込んで。別にお前らはここでもう少しゆっくりしててもいいぞ。多分………俺だけで解決出来る。というか解決する。」
単独行動しようと、扉に手を掛けるとリィンは、
「ゼダス。俺たちは仲間だろ。そんな悲しい事を言うな。」
俺はベタ過ぎる言葉に逆に笑いが込み上げてくる。だがそれを堪える。俺は笑顔で、
「んじゃあ、お前は俺の手となり足となり働くか?足手まといになるくらいなら、ついて来んなよ。」
「「「「⁉︎」」」」
全員、俺の言う事に驚きを隠せないでいるのは火を見るよりも明らかだった。
掛ける言葉を失い、沈黙へと突き進んでいく雰囲気。それを破ったのはー
「……巫山戯るなっ‼︎」
意外にも冷静さを保っていそうなラウラだった。ラウラは俺の襟元を掴みあげている。あんな大きな剣を振るっているだけあって、腕力は想像通り高かった。
「なんだ?何か文句でもあるのか?」
心理的余裕を醸し出したまま答える。しかし、それも介していないのか、
「何故、そなたはそうも孤独で在ろうとするのだっ⁉︎少しは我らを頼ってくれても良いだろう‼︎」
「んな馴れ合いは要らねぇよ。つーか、時間が惜しい。さっさと離せ」
「そなたが我らを認めてくれぬ限り離すつもりは無い‼︎」
このままでは時間だけを浪費して拉致があかないので、
「
「………っ‼︎」
沈黙に重なる重圧。並大抵の者だと立っているのさえ辛くなりかねんほどだ。ラウラはパッと襟を離してしまった。俺は、
「それでいい。んじゃ、課題の方は頼むわ。」
と言い残し、元締めの家を出た。
俺とⅦ組A班の間に出来た実力の亀裂はそう簡単には埋まらない事を実感するには充分の一幕だった事は言うまでも無い。
―――*―――*―――
一人、ケルディックの街をぶらつく。中央付近の広場にある地図を一瞥して思う。
「(一夜で二人分の商品を盗み出す方法か……。あの高貴な領邦軍が自ら危険な事に手を出すとは考え難い。なら……別の誰かを雇ったか?それなら、人出も確保出来るしなぁ。あとは隠し場所か……。大量の商品を確実かつ完璧に隠せる場所……そうは多く無いはずだ。なら一体……)」
思いに耽りながら街道の方へと歩みを進めていると、酒瓶片手に道の端っこで酔い潰れていた男性を見つけた。何かやけになってるぽかったので、普通ならガン無視スルー確定なのだが、ちょっと“とある事”を確認する為に敢えて話しかける。
「あんな騒動あった中、よく飲んでられるな。しかも、側から見ると自棄酒か。どうした、おっさん?」
男性はおっさん呼ばわりされた事には気にしてないのか、俺の肩を掴んで話してきた。口から漂う酒の匂いが未成年の身体には、だいぶきつかった。
「勤め先をよぉ〜あっさりクビにされちまったんだぁ〜」
「ほー。そりゃ災難だったな。でもあんた仕事出来そうなのにな。クビにするとか勿体ねぇ。そんだけ落ち込んでるって事は、その職場は気に入ってたのか?」
「そりゃ勿論なぁ〜自然公園の管理が生き甲斐だったってのによぉ〜」
「自然公園?ああ、あの巨大な森林を保全してるとこだっけか。『ルナリア自然公園』だったよな。」
ルナリア自然公園。西ケルディック街道に存在する巨大な自然公園だ。大規模な敷地ゆえ、そこを管理していたなんて、だいぶの手腕である。
しかし、俺はそれよりもっと別の可能性を考えていた。それに関する情報を聞き出せまいかと、さらに探りを入れる。
「なぁ、後任の人ってどんな奴?あんたみたいな優れた管理人より凄い奴って、そうそう居ないと思うんだけど。」
煽て混じりの問い。普通なら答えてくれそうもない問いだが、酒で酔っていたのが功を成し、答えてくれた。
「チャラチャラした若僧でよぉ〜。仕事も出来そうに無いし、礼儀もなってねぇ。極め付けは夜中に木箱を運んでくしよぉ。騒音被害で訴えんぞってんだ。嫌になっちまうぜぇ〜」
–––瞬間。俺の頭の中にある全てが繋がった。
俺は立ち上がり、男性に向けて言う。
「確かにそうだな。そんな迷惑ばっか掛ける奴に職を取られたく無いよな。でも、安心してくれ。」
俺はARCUSのダイヤルを入れながら、ある言葉を言い残して去った。
「ーもうすぐで、自然公園に帰れる」と。
―――*―――*―――
確か、西ケルディック街道の手配魔獣の課題が有ったはず。と考えた俺は自然公園に向かうついでに、討伐しに向かった。色鮮やかな猛禽型の魔獣。固有名をズウォーターと言う。
先手必勝と、深紅の大剣を上段に構えて、一気に踏み込む。魔獣との距離は約20アージュ(20メートル)だが、風をも切る速さで至近距離まで詰め寄る。神速の一撃が、ズウォーターの右翼から胴体にかけて襲う。
その時、さっきのラウラとの一幕が頭をよぎった。少なからず思う事は有ったのだ。あいつらだって頑張っている。一緒に行動する資格もある。なのに俺は突き離した。俺にそんな権限は無いと言うのに………
後ろめたい気持ちを晴らすかの様に俺は力を入れる。その力は剣を伝った。剣がズウォーターの胴体の中心に届いた瞬間、俺は力の向きを変えた。刃は中心から左翼へと。V字の軌跡を描いた後、ズウォーターの身体が真っ二つに引き裂かれた。鮮血が噴き出し、身体に襲い掛かる。それを身体を捻らせて回避した。この技は俺の会得している流派の《
大剣に付いた血を拭いて落としていると、後ろ側から気配がした。
「–––遅かったな。ここまで悠長だとは思わなかったぞ。」
気配の正体は、先ほど険悪な雰囲気で突き離したはずのⅦ組A班だ。皆が色々な想いを込めているのは感じ取れた。だからこそ、俺は問う。
「もう俺には、この事件の全貌は理解出来た。その上で今からケリを付けに行くが……聞かせろ。お前らは“どう”したいんだ?さっきも言った通り、軽々しい馴れ合いなら付いてくんな。足手まといは要らねぇ。」
その問いに対して、アリサは
「そんな馴れ合い以前に付いて行きたいわ。あんなやり方をする領邦軍は許せないし。」
エリオットは、
「僕も……かな。流石にあんな事を見せられたら……ね。」
リィンは、
「俺も付いて行きたい。ゼダスの否定した馴れ合い。確かにそれは必要ない物かもしれないが、俺は必要だと信じている。だから……それを証明したいんだ。ゼダスの為にも」
そして、一番確執が大きいと思われるラウラは、
「……さっきは冷静を失って悪かった。謝っておいて何だが、聞かせてくれないか?ゼダスが何故あんな事を言ったのか」
「別に謝る事じゃ無いんだけどな。ま、俺も言い方が悪かったし、一応謝っとく。あの発言の理由なんてねぇよ。強いて言うなら……お前らを試して見たかった。俺が力を見せるに値するのかを」
俺の本気。まだⅦ組の誰にも見せた事の無い領域。結論だけ言うと、まだ見せるには値しない。でも………………
ちょっとぐらいなら良いかな。
とは思った。俺は、
「合格とは言えないが、及第点か。んじゃあ、これで問題は終わりだ。後は、実習の総仕上げだけだな。それじゃあ、全てが眠る『ルナリア自然公園』に向かうとしますかぁー‼︎」
と高らかに宣言した。
さて、今回は色々と思うところがある回でした。執筆感想などを後で活動報告にまとめようと思います。
そろそろ、聖扉戦術に付いても明かして行こうかなとも思っています。型ごとにまとめるっすよ。
感想、お待ちしております‼︎