あらすじでも警告しましたが、大分駄文です。
それでもOKならどうぞご閲覧下さい。
ある世界のある時間にある少年がいた。
何をやらせても、並以上に出来た彼は––––たった一つ。そう……たった一つだけ、足りない物があったのだ。
それは幼い頃の記憶。
何処で生まれ、如何育ったのか、欠片も覚えていないのだ。
ただ、分かる事は一つあった。
少年の心には––––明らかに可笑しい程の“穴”があると。
人––––として生きるには、さしたる支障は無いであろう。ただ、その穴は、彼から不必要な感情を零れさせた。俗に––––恋慕感情と呼ばれる物を。
故に彼にどれだけの好意が寄せられようとも、本人は気付かない。逆に彼は何も愛さない。
ただ、それは––––
『––––物凄く不憫な話だ』
だからこそ、世界は––––いや、世界を形成する力の一端は––––
––––少年に全てを託したのかもしれない。
―――*―――*―――
「いつまで……そこで倒れているのですか?」
凛––––その一漢字が似合う程に澄んだ声が少年の耳に届く。
また、いつも通りにボコボコにやられて、気を失っていたらしい。……まぁ、少年にとっては傷なんて些細な物。言い極めれば、有って無い様な物だ。
黒髪の少年は、持ち前の紫眼を動かし、声主の方に視線を動かす。そこに居たのは––––壮麗な女性だった。
あらゆる穢れを跳ね除ける様に輝く金髪。そして、それに劣らなくに綺麗な碧眼。きっと、それだけならば、引く手数多な美人さんとして認められるのだろう。
ただ、それは無い。そう出来ないから。理由は––––身に纏う姿と手にした物にある。
身に纏っているのは、中世の騎士を彷彿とさせる純白の甲冑。手に握るは身の丈を優に上回る螺旋状の
そんな美貌と装備にある種の乖離性を感じる中、少年は彼女の名を呼ぶ。
「……アリアンロード」
別名、《鋼の聖女》。
そう呼ばれる彼女は、この世界における裏社会の組織の一つ、結社《
「俺……何時から倒れてた?」
「数時間前です。急に倒れましたから……」
「無茶、し過ぎかなぁ」
少年は身を起こし、呟く。身を起こした事で、若干長い黒髪は少年の視界に掛かる。それを煩わしそうに手払った時、アリアンロードは純白の籠手を纏いし手で、少年の頭に手を置いた。
「そう……かも知れません。いつも思いますが、貴方は頑張り過ぎですよ、執行者No.Ⅱ、《天帝》のゼダス」
少年の名はゼダス・アインフェイト。そして––––アリアンロードと同じ結社の一員。使徒とは行かなくても、実力者のみが任命される執行者である。
「休むのも強くなるには必要。貴方なら分かるでしょう?」
「分かってる……分かってるけど」
「––––やはり、彼女の事がまだ心を縛っているのですか?」
彼女。それは今のゼダスの記憶がある最近二年間の中において、一番気掛かりな人。
ちょっとしたトラブルから……色々と発展して、取り返しの付かない事になった。
だから、ゼダスという人物を縛る“枷”となり、彼は我武者羅に強くなるしかない。
「……あいつの責任は俺にある。だから、それを償うのが俺の役目だ」
きっと、誰が何と言おうと、その“枷”が外れないと強くなる事を止めないだろう。
それを分かって––––分かった上で、アリアンロードは最後に一言を告げる。
「きっと、いつか––––貴方を救う人が現れます。その時は–––––」
その後の言葉はゼダスの耳には入らなかった。ただ、何を言わんとするのは唇の動きで読めた。
だから、答えを返す。
「––––忠告、ありがとな」
そう残し、ゼダスは居た暗闇の空間から離脱した。