闇影の軌跡   作: 黒兎

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あと一話でケルディック編終了‼︎



VSグルノージャ

 寄りが戻った俺とⅦ組A班。課題の魔獣の討伐位置から近かった事もあり、ルナリア自然公園には簡単に着いた。

 警備員の姿は見えないが、御丁寧に施錠されていた。勿論、解錠する必要がある。俺の器用さゆえにピッキングもしようと思えば、出来るのだろうけど、時間が惜しい。

 入り口で奇妙な事をしている所を見られるのは、事情説明するのが面倒なので、俺は施錠している南京錠を砕こうとしたが思い留まる。

 何故なら、砕くとなると大きな音が発生してしまうからだ。それで中に居ると思われる領邦軍。または共犯者に勘付かれるのだけは避けたい。

 どうやって素早く解錠する?ラウラの大剣も俺と同様の理由で駄目だし、アリサの導力弓やエリオットの魔導杖は破壊に時間がかかる。なら消去法で残るはリィン。俺は、

 

「リィン。音を立てずに錠を落とせるか?」

 

 と問うと、リィンは腰に装備している太刀に手を掛ける。

 居合の構えをとり、振り抜く。八葉一刀流の技。四の型の紅葉斬りだ。南京錠は全くの無傷の様に見えたが、ゆっくりと真っ二つに裂かれてポトリと落ちた。俺らはリィンの技に舌を巻く。

 

「ふむ、《八葉》の妙技、この目でしかと確かめさせてもらったぞ。」

「これなら上出来だよな」

「まだまだ初伝クラスだよ」

 

 自分の事を下げて言うリィンに俺はある事を思い付く。

 

––––ラウラとのトリスタでの朝練にリィンも巻き込んでやろう、と。

 

 そして、ルナリア自然公園の内部に突入する。魔獣も湧いてくるので戦闘になるが、リィン達は全くと言って良いほど働いてなかった。自分からサボろうとしたのでは無く、“そう”なってしまうのだ。何故なら–––

 

「ゼダス。そんな量の戦闘をしてて大丈夫なの⁉︎」

 

 アリサからの気遣いの言葉通り、全ての戦闘を俺一人で片付けているのだ。とにかく時間が惜しいこの状況では、少しでも時間短縮を図る必要が有るのだ。

 だから、今見せれる全力を尽くして戦っている。聖扉戦術もバンバン使いまくっている。つーか、討伐速度が速すぎて、俺以外のメンバーの口がほぼ塞がっていない。俺は、

 

「別に問題はねぇよ。この程度は朝飯前だ。」

 

 ほんの少しだけ汗を流しながら答える。

 聖扉戦術は確かに強力だ。技によっては状況を一転させる様な物や人智を超えた物もある。だからと言うべきか、肉体と精神に凄いダメージが来るのだ。誰も見ていないなら、輝く環(オーリオール)を利用して一気に回復するんだが、今はそうはいかない。流石にあいつらの前では輝く環(オーリオール)を使うのは気がひけるし。

 そんなこんなで自然公園最深部へと辿り着く。すると、風に乗って微かな声が聞こえた。何と言っているかは完璧には聞き取れないが、顔を少し出して敵影を確認する。四人の盗賊。管理人用の服を着ていて、昨日の晩に見かけたシルエットにそっくりだった。俺はそれに関しては驚きを感じる事は無かった。

 

––––やっぱりそうか

 

 とぐらいには思ったが。俺は小声で告げておく。

 

「奴らは銃を持ってる。奇襲が飛び道具に対しての一番の策なんだが、ここから突っ切るんなら無理だしな。さっさと距離詰めて無力化しちまえ。そうすりゃ楽勝だから」

 

 アドバイスを兼ねているが、俺の発した言葉にエリオットが引っ掛かってくる。

 

「ね、ねぇ、ゼダス。その言い方だと………………」

「えっ、勿論あいつらはお前らで片付けろよ。じゃねぇと不公平じゃん。労働力とかがさ。」

 

 硬直して動きが止まった全員を眺めた後、

 

「心配すんな。危なくなったら助けに入るから。というか………決意したお前らなら勝てる。戦術リンク、しっかり利用し尽くせよ」

 

―――*―――*―――

 

 

 結果だけ述べる。

 助太刀するまでも無く終わった。無論、Ⅶ組A班(俺ら)の勝利だ。リィンとラウラが速攻で肉薄して、アリサとエリオットは支援しつつアーツを乱射。盗賊に掛ける言葉では無いが、一方的過ぎて可哀想。

 あとは盗賊の残骸を縛り付けて、商品をきっちりかっちり返してもらって終わり。手筈を整えるためにARCUSでとある奴に連絡を入れる。

 

「もしもし………か?うん、俺だ。ちょっと頼みたい事があるからパーっと西ケルディック街道のルナリア自然公園まで来てくれね。出来るだけ早く頼むわ。」

 

 とだけ入れて、返事を聞く前に切る。リィンは、

 

「誰に連絡してたんだ?」

「来てからのお楽しみって事で」

 

 ひと段落ついて気が抜けている中、エリオットは不思議な顔を、俺は怪訝な顔をした。

 木々の騒めきのなかに紛れている為、気付き難いがはっきりとした笛の音色。音自体は清んでいるのだが、何処か不穏さを感じさせるその音色に俺はほぼ本能的に叫んだ。

 

「っ⁉︎お前ら、備えろっ‼︎魔獣が来るぞ。しかも大型の」

 

 その声がリィン達の耳に入った瞬間、

 

ーヴォオオオオォォォォォォッ‼︎

 

 魔獣の雄叫びが自然公園中に聞こえるぐらいの大音量で聞こえた。地響きを立てながら近寄ってくるので、並大抵の魔獣では無いのは確信する。

 俺らが辿ってきた道から姿を現わす“そいつ”は大型の狒々だった。極彩色の剛毛が全身を覆っており、特段と目を惹くのは頭部に生えた4本の角に、巨木と言われても相違無いほどの太さを持つ巨腕。この自然公園の主とも考えられる狒々は固有名をグルノージャと言う。

 俺はグルノージャと相対した時、ある気持ちに襲われた。

 人外の化けもん。人の範疇を超えた攻撃を繰り出すであろう奴に俺は恐怖よりも、心を躍らせていた………………ってのも違うか。

 絶対に負けるはずが無い。どんなヘマをこいても、負けるはずが無い。本当の人外の化けもんなら、少しは心を躍らせたのかも知れないが、今はどうだって良い。必要なのはー

 

「ー安全第一で行くぞ!」

 

―――*―――*―――

 

 

 グルノージャの巨腕から繰り出される重厚感満載の一撃。ヒットすると致命傷を避けられないが、挙動が大きい為、普通に避ける事が出来る。

 執行者である俺は全く焦りは無いが、他のメンバーはどうだ?俺と同じ前衛組のリィンもラウラも疲労を隠せないでいた。一番被弾率が高い為だろうが、かく冷や汗の量は尋常じゃない様に見て取れる。そして、目線をズラすと後衛組。エリオットとアリサは距離を置いてでの行動の為、被弾率こそ少ないが、疲労度で表せば前衛組と何ら遜色無い。前衛組の支援とアーツによる攻撃、更に偶然にも被弾してしまったリィンとラウラの回復も同時並行して行っているのだ。

 いつ集中力が切れてもおかしく無い状況。しかも、グルノージャの脅威的な生命力ゆえに、長期戦になるのは必須。しかし、長期戦になればなるほど、俺らが不利になる。そんな中、リィンは微かにつぶやいた。

 

「……みんな、少しだけ時間を稼いでくれないか?」

 

 戦闘音で紛れてしまいそうな声だが、戦術リンクを介して理解する。俺は人差し指を立てて、

 

「ああ、いいぜ。十秒だけなら持ち堪える。あと、準備出来たなら俺とリンクを強めろ。あの狒々を一撃で仕留める(ワンパンする)

 

 と言って走り出した。

 深紅の大剣は俺の意図を読み取ったのか、強く反応する。

 荒ぶる紅き神。それを体現化したこの大剣はグルノージャの一撃を受け止めた。大剣の軋む音。不快なその音が聞こえたから、折れるのでは無いか?と冷や汗をかくが、何とか折れずに踏ん張ってくれている。

 そんな中、アリサとエリオットは持てる最大火力のアーツを叩き込む。グルノージャの身体はグラっと揺らぐが、勢いは全くと言っていい程落ちておらず、寧ろ今まで溜めた怒りが爆発したのか、込められた力の量は尋常じゃなくなった。だが、ラウラが、

 

「させるかっ‼︎」

 

 俺の抑え込んでいる腕に大剣の斬り上げを叩き込む。それには、流石のグルノージャも耐えれなかったのか、身体を大きく仰け反らす。すると、リィンが、

 

「ゼダス‼︎準備が出来たぞ!」

 

 と叫ぶと同時に戦術リンクの共鳴率が高まる。互いの中に互いの想いが交錯する中、リィンは、

 

「焔よ……我が剣に集えっ‼︎」

 

 その言葉に呼応して、太刀に赤い焔が宿る。俺もそれに合わせるかの様に、

 

「我が剣に宿りし炎神よ……目醒めろ」

 

 と唱え、大剣に焔が上がる。

 

「「はあぁぁぁーー‼︎」」

 

 八葉一刀流の奥義、焔の太刀と、聖扉戦術の武の型、煉牙が混じり合い、途轍も無い程の爆炎を上げる。こ状況を打破する唯一の手段。疲弊した俺らにとっては希望ともなる炎。それが、グルノージャの全身を包み込む。爆炎に焼かれる中、斬撃音が響いてくる。

 そして、数瞬後。爆炎が止むと、そこにあったのはグルノージャの悲惨な姿だった。

 全身に火傷の跡と斬撃の傷がビッシリと付いていた。

 どしんとグルノージャは沈黙し、倒れた。そして、俺らは歓喜に包まれていた。

 

―――*―――*―――

 

 

 戦闘後の疲れた身体に鞭を打ち、盗難品の確認に当たる。エリオットがブラフを張って聞き出した品物の内容とバッチリ一致した。そして、あとは連絡してた彼奴らに手伝わせて、運び出せば終わりだ。

 いやぁ、良かった良かった。しっかりと終わって、このまま何事も無く………………

 

「居たぞ‼︎」

「逃がすな、取り押さえろ‼︎」

 

 現れたのは領邦軍の小隊。そして、取り囲んだのは………盗賊たちでは無く、俺たちⅦ組A班。

 

「……何故、私たちを取り囲むのだ?」

「黙れ‼︎」

「学生だからといって何をしても許されると思うなよ‼︎」

 

 ラウラの常識的な問いすら、答える気が無いらしい。この行動のお陰で、領邦軍と盗賊が利害関係で繋がっている事は、火を見るよりも明らかになった。

 だが、俺が領邦軍の隊長ならここでは盗賊たちの方を取り囲む。理由は冷静に考えたら分かる事だが、自分達を正当化出来るからだ。でも、そうしなかった。どれだけ愚かなんだよ。

 

「ここの縛り付けてある奴らが犯人なんだが………何で俺たちなのか説明してくれねえか?どう見ても悪くないだろ。」

「そこの奴らが犯行をした証拠が無いだろ。可能性で言うなら………君達もあり得るのでは無いかね?」

 

 領邦軍は自分達の管轄内なら、上位の権限を保持している。この状況では俺らが追い詰められるくらいには。

 

「(クソっ………ここで読み違えたっ⁉︎俺らが看破する寸前で権力任せの暴挙に出る事を何でもっと早く考え付かなかったんだ⁉︎俺の馬鹿っ‼︎こうなったら………)」

 

 俺は怒りに震える手で剣の鞘を握る。ここで振り抜けば、確実に退学は免れない。今の俺なら歯止めが利かずに斬り殺してしまう。

 俺の残った理性はこの怒りを抑えつけようと努力してくれているが、正直持ちそうに無い。全員が俺の行動を固唾を呑んで見守る中、

 

 

「そこまでです」

 

 

 緊迫した状況に凛と響いた冷たい声。それが俺の理性を何とか繋ぎ止めた。

 

「遅えぞ、クレア。危うく、退学届けを貰いに行くとこだったじゃ無いか」

 

 この声の主、クレア・リーヴェルトはこの事件を完全収束させると俺が見込んだ最強の助っ人だった。




という事でクレアさんが登場っすね。ゼダスと何らかの繋がりがある様ですが、一体………?
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