闇影の軌跡   作: 黒兎

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第二章
執行者が遊撃士みたいに動く事になってしまった様です


 この世界には遊撃士と呼ばれる職業が存在する。仕事内容は魔獣退治や探し物などの様々な依頼を受け、実行するいわゆる「何でも屋」「便利屋」

「民間人の保護と地域の平和を守る」をポリシーにしており、時には犯罪者を取り締まる事もある。しかも、各国から中立の立場を貫いている事から、国家間の交渉の仲介役を担う事もある。

 何故、いきなりこんな説明をしているのだろう、と思う人も居るだろう。それはとある彼が学院で似た様な事を行う事になったからである。

 

―――*―――*―――

 

 

 5月初旬。

 初めての特別実習の疲れはすっかりと取れて、俺たちは普通の学院生活を送っていた。

 特別実習は、俺が入っていたA班は実習中に色々といざこざが有ったが、しっかりと解決していた為、評価は並より高かったが、問題はB班の方にあった。

問題のユーシス&マキアスのペアでやっぱり噛み合わなかったらしい。ガイウス、エマ、フィーの疲労度は半端じゃ無かった。フィーに限っては寮に帰ってきた瞬間、ぶっ倒れやがったし。元猟兵とはいえまだ15歳というのを改めて実感させられた。

 そして、今日。空には青空が広がっており、屋上で飯を食べるにはもってこいの天気条件(ウェザーコンディション)。しかし、俺は教室で飯である自作弁当を食べる事になっていた。

 

「なぁ………屋上で飯食べちゃ駄目か?」

「そう言って、そなたは何時の間にか何処かへ消えるであろう‼︎」

 

眼前に居るラウラ。ラウラも俺の製作した弁当を食べていた。Ⅶ組の全員分の弁当を作ってるんだから、当然ちゃあ当然だが。

 ラウラはあのケルディックでの特別実習を機に、俺と行動を共にする回数が増えた。飯を作る時は勿論の事、学院内でもトリスタで買い出しに行ってる時も………そして、こうして飯を食べる時もである。

ラウラ自身は、俺の強さの根源を探ろうとしているのだろうが、俺としては四六時中一緒に居られるのは抵抗がある。執行者だった時も、基本は独りで行動してきたし慣れない上、学院の男子生徒から痛い目線を向けられる。それが我慢ならない。

 

「お前は何時まで俺に付いてくるんだよ。俺に関する強さは私生活に現れねぇぞ」

 

と言っても聞かないし、困ったものである。

 そんな側から見たら仲睦まじい雰囲気の中、Ⅶ組の教室のドアが勢い良く開けられ、全員の視線がそちらに向かった。俺は、

 

「(よしっ‼︎今の内に窓から逃げ出そう。誰か知らんがナイス‼︎)」

 

と思い、駆け出そうとしたが、ドアを開いた本人が、

 

「いきなり訪問して済まない。ゼダス君は居るだろうか?」

 

と問うているので逃げ出すのは不可能になった。俺に用があると思われるドアを開いた人は白い制服を纏っていた。即ち、貴族生徒。マキアスは怪訝そうな顔をしているが、誰も取り合わなかった。髪は金髪でロングストレート。俺は、

 

「ゼダスなら俺です。えーと………どちら様で?」

「そうか、自己紹介を忘れてたわね。私はフリーデル。二年生で、フェンシング部の部長を務めているわ。ちょっと貴方に用が有るのだけど………時間頂けるかしら?」

「んー。まぁ、まだ昼休みも有るし良いですよ」

 

俺は肯定の意を示し、教室の外へ出た。

 そのまま、フリーデル先輩に付いて行くと、今日一番行きたかった屋上に着いた。昼休みだと言うのに人気は全く無かった。俺は、

 

「何で場所を変えたかは敢えて聞きませんけど、用は何ですか?」

「君の腕をかって、ちょっと頼みたい事が有ってね」

 

 そして、フリーデル先輩から話された話をまとめると、フェンシング部内でとある一年生の貴族生徒が暴挙を振るっているらしい。フェンシング部内で平民最強のロギンスって呼ばれる人を倒して、次にフリーデル先輩を倒して部長の座に就こうとしているそうなのだ。その貴族生徒の名は、パトリック・T・ハイアームズ。ユーシスと同じく、四大名門の一角、「ハイアームズ公爵家」の三男坊である。剣術の英才教育も受けているらしく、まずまずの実力の持ち主らしいが、

 

「でも、フリーデル先輩って俺らⅦ組の奴らを抜いたら、学院最強の武術持ちって聞いた事が有るんですけど………。そんな青二才な奴ぐらい、軽く倒せるんじゃ無いですか?」

「それでも君が良いのよ。同じ学年でかつ嫌っている特科クラスであるⅦ組の人に負けた時を想像してみなさいな」

 

俺はその言葉を聞いて、なるほどな、と感心した。貴族は基本的に優遇されがちの為、自分より優遇されている奴らに不愉快な気分を覚えるらしい。この先輩は、同じ貴族生徒で在りながら、その気分に陥れようとしているのだ。

 

「そういうことか。あんたは部長の座を譲る気はさらっさら無い上、これ以上反抗させない為に、そのボンボンを見せしめに利用するって事か。権力の無駄遣いしている貴族らしい考えっちゃあ考えだが………。ったく、あんたは良い性格してるよ。良いぜ、その依頼、受けてやりますよ。で、時間と場所は?」

「今日の放課後、ギムナジウムでよ。行けるわね」

「了解。さっさと終わらせて、飯の献立を考えねぇとな」

 

 でも、今の俺には分からなかった。この日が俺をこき使われる“厄日”となるとは………

 

―――*―――*―――

 

 

 放課後、俺は依頼主であるフリーデル先輩の指定した場所。つまり、ギムナジウムに来ていた。

ギムジナウムは、士官学院の奥の方にある施設で、鍛錬の為に設けられている。屋内プールに運動部の部室、男女別の更衣・シャワー室や地下には戦術訓練場など選り取り見取りの凄い金の掛かった施設である。

俺はその多種多様の施設の中の一つ、武術修練場に訪れていた。

 

「私より早いなんて、感心感心」

 

と言いながら、依頼主であるフリーデル先輩が訪れてきた。

 

「はぁ、そうですか。で、かの未熟モンは何処っすかね?」

「もう来るはずよ。さっき見かけたし………ほらっ、やって来た」

 

と修練場のドアの方に目を向けるとそこには白い制服を着たボンボンが居た。如何にも貴族風のそいつは俺を一瞥してから、フリーデル先輩に話し掛ける。

 

「先輩、どういう事ですか?こんな所にⅦ組(寄せ集め)の奴が居るんですか?」

「それについては俺から言わせてもらおうかな」

 

フリーデル先輩が口を開こうとした瞬間、俺が横槍を入れる。しかし、貴族風のそいつ、パトリックは、

 

「ふんっ、お前の様な雑魚の言葉など聞く気にもならないな」

「あ、そ。んじゃあ、勝手に条件ふっかけとくから、口出しすんなよ」

 

俺の言葉を聞かなかった事を後悔しろ、という様に俺は続ける。

 

「俺とお前はこれから模擬戦を行う。俺はフリーデル先輩の代役な。お前が勝ったら、この部を明け渡すってさ。俺の事を“雑魚”って言える口が有るし、余裕だよな。」

「もちろ……「その代わり」」

 

パトリックの言葉に被せるように俺は付け足す。

 

「俺が勝ったら、お前が部長になる権利を剥奪。これはフリーデル先輩の要求な。で、俺からは………お前の言う寄せ集め(Ⅶ組)の見解を改めろ。ぶっちゃけ言うと、この戦闘後はそうせざるを得ないと思うがな。これで良いですかね、フリーデル先輩」

「無理ない程度の要求だけど………それだけで良いの?」

「まぁ、これくらいが妥当でしょう。負ける訳無いし」

 

ナチュラルな挑発。しかし、パトリックのフラストレーションを加速させる。俺はそれを面白い物を見る目で、

 

「おいおい、闘志が有りまくりだな。少しは楽しませろよ」

 

と言い張る。

そして、フリーデル先輩が審判として、俺VSパトリックの模擬戦が始まろうとしていた。

パトリックは鞘から細剣を抜く。俺はその動作を確認してから、ある事に気付き言う。

 

「ちょいとタンマ。これじゃあ、()()()()()()()

 

と言いながら、大剣を鞘ごと外して修練場の端っこに置いた。その行動を見届けたパトリックは、

 

「………何のつもりだ?」

 

若干の怒気を纏った声。俺はその声に全くの関心を向けずに、修練場の壁に立てかけられている細剣を取った。それを試し振りしながら、言い放つ。

 

「だから、試合になんねぇって言ってんの。絶対勝っちゃうだろ。大剣を使っちゃったら」

 

包み隠す気の無い直球の挑発。パトリックは俯き、怒りに震えていた。そして、少し目線を外すと、フリーデル先輩も同じように俯いて震えていた。が、怒りに震えていたのではなく、あれは笑いを堪えている震えだ。

 

「ったく、軽いな。これならまだマシだろう」

 

俺は細剣を抜き、下段に構える。力の入ってない構え方だが、フリーデル先輩は試合開始の合図を出す。

 

「それでは、始めっ‼︎」

 

その合図を聞いて、先に動いたのはパトリックだった。

剣術の英才教育を受けているだけあって、良く出来た型だ。“模範的”過ぎて笑いが込み上げてくる。そこから繰り出される一突き。俺はそれをスッと体捌きだけで避けた。しかし、パトリックは至近距離から突き技を乱射する。でもー

 

「おいおい、どうした?この程度かよ、貴族のボンボンさんは」

 

全く当たらないのだ。擦りもしない。まるで、数瞬先の未来が見えているようだ。手数だけは多いパトリックに対して、俺の放った斬撃の数は一発だけだった。そうー

 

「もう終わりか?」

 

審判であるフリーデル先輩も一瞬で何が起こったか理解出来ていない様子だった。今の状況だけ述べると、俺の手にした細剣の刃がパトリックの首筋に当てられているということだ。俺が行った事は、無数の連撃を避けながら、流れる様な動作でかつ神速に速さで刃を突き立ててただけなんだけど………。俺はフリーデル先輩に横目である事を促す。その目線にフリーデル先輩は、

 

「勝者、ゼダス」

 

と判決した。その言葉に俺は細剣を鞘に収めた。そして、今まで硬直していたパトリックは腰が砕けた様にヘナっと座り込んでいた。俺はその姿に嘲笑し、

 

「なっさけねぇの。どうだ?Ⅶ組(寄せ集め)に負けた気分はよ」

 

パトリックは悔しさを顔に滲ませている様だったが、全く意に介さず、フリーデル先輩に細剣を投げる。

 

「それ返しときますよ。んじゃあ、お疲れさんです。」

 

お辞儀をして立ち去ろうとドアに手を掛ける。すると、フリーデル先輩はとある物を投げてきた。その物をほぼ、反射条件でキャッチする。

 

「それが今回の報酬よ。ありがとね」

 

投げてきた物は金色の宝玉。俗にクオーツと呼ばれる物だ。クオーツは七耀石の欠片(セピス)と呼ばれる物を材料に作られた結晶回路。戦術オーブメントにクオーツを嵌め込むことで真価を発揮する。例えば、ARCUSとかに。

確かにクオーツは高価だし嬉しいのだが、俺の今の財布事情的にも金には困って無いし、だからと言ってクオーツを嵌めるスロットも何処も空いてないし、どうした物か………

ギムナジウムの外に出て深呼吸をする。室内って事もあった為、湿度が高い。凄くムジムジしていた。俺は、

 

「さっさと帰って、飯でも作っとくか。あいつら、夕方まで帰って来ないだろうしな………。何作っとこっかな?」

 

とつぶやきながら、正門に向かって歩き出す。生徒会館の方を抜けていくと、緑制服の二人組に話し掛けられた。

片方は、小柄の可愛らしい茶髪幼女。皆さんご存知のトワ・ハーシェル。しかし、この幼子めいた外見でも俺より一学年分上というのには驚きを隠せない。さらに、生徒会長。どんだけ凄いギャップだよ、おい。

もう片方は、銀髪のバンダナ男。名前はー………

 

「会長、久しぶりっす。入学式以来っすか。で、そちらの方は?」

「お久しぶり、ゼダス君。こちらの人はねー」

「クロウ・アームブラストだ。よろしくな、後輩君」

 

クロウ・アームブラストと言う名の男性を俺は見つめた。何か引っ掛かる。普通の生徒にしか見えないのだが………。クロウはやりにくそうに、

 

「………何か顔に付いてるか?」

「あ、すみません。何も付いてないっすよ」

 

俺はクロウから目線を外して、トワ会長の方を向く。

 

「で、トワ会長は何かしてたんですか?」

「うん。これからちょっと街に繰り出そうかなぁ〜と。買っておきたい物があるし」

「で、クロウ先輩は雑務用っと」

「うん」

「後輩君ヒドくねっ⁉︎あと、トワも同意すんなよっ⁉︎傷つくだろうが‼︎」

 

クロウは弄られ属性が濃いのか、初対面の俺も自然に詰っていた。この和気藹々とした雰囲気。居心地は悪くは無いが、さっさと抜け出したかった。買い出しにも行きたいし、飯も作らねばなら無いし。と言う訳で、

 

「あのー…御二方さん。俺、そろそろ買い出しに行きたいんですけど。」

「それじゃあ、私たちと一緒に行こうよ?行く場所が一緒なんだし」

「いや、でもそういう訳にはー「良いんじゃねぇの?」」

 

俺がやんわりと断ろうとした時に、クロウからのカットイン。俺は若干イラつき、クロウの方を半眼で見る。その視線にクロウは別の方向に目線を向けて口笛を吹いていた。俺はその時、クロウの意を察してしまった。

 

クロウ(こいつ)は雑務を俺に押しつける気だな

 

―――*―――*―――

 

 

案の定、クロウは何時の間にか逃亡していた。その為、トワ会長と二人っきりの状況だった。トワ会長をこうしてゆっくりと眺める事が出来るのは初めての事だが、やっぱり小さい。背とか色々と。

 

「結局、会長は何を買いに来たんですか?」

 

士官学院のある帝都近郊都市のトリスタには色々な店がある。喫茶店や雑貨屋、本屋に服屋も。さらに極めつけは、裏路地にある質屋だろう。何度か訪れた事があるが、店長がやる気の無さそうな人だけど、色々と情報通の為、通う事もある。

そんなトリスタの街にある店の中で俺たちは雑貨屋に訪れていた。俺は夕飯用の食材を買い終わっていた。と言っても、そんなに俺は買って無いが。だって、先日の特別実習で買い溜めしてあるし、新鮮さを求められる食材しか買うつもりが無いし。てな訳で、トワ会長にそう聞いてみたのだ。すると、トワ会長は手にした瓶を眺めながら、

 

「えーとね、保健室から頼まれた医薬品の買い出しと、科学の授業で使う科学薬品の買い出しでしょ。あと、生徒会で使う機材の購入かな。」

「最後の一件は確かに会長がするべき事だと思いますけど、前者の二件は明らかに先生方が行うべき事でしょう。何で会長に………」

「先生方だって大変なんだから、これぐらいは手伝わないと」

「いや、だからって何も会長がやらなくても………」

 

言い出したら止まら無いトワ会長への心配。一歳しか変わらないのにこの働き用は正直凄いと思うけど、心配もしてしまう。変な感じだが、母性本能を刺激されるとはこういう事だろうか?男だけど。

店から少量の食材を持って出てきた俺と、大量の荷物を持って出てきたトワ会長。俺はちょっとは手伝うべきと考えて、トワ会長に手を差し出す。

 

「会長。荷物貸して下さい。せっかくですし運びますよ」

「え、気にしなくて良いよ」

「んな事言わずにさっさと貸して下さい。乗りかかった船ですから。拒否するんなら、会長ごと学院に運びますよ?」

 

何か軽い脅しめいた物が入ったが俺は気にせずに手を差し出したままだ。それにトワ会長はううと唸りながら俺に荷物を差し出す。それを軽々と持ち上げて、

 

「それじゃあ、学院に戻るとしますか」

 

―――*―――*―――

 

 

トワ会長が買い出ししていた医薬品、科学薬品を担当の先生に渡し届けた後、俺は生徒会館二階の奥に存在する生徒会室に招かれていた。トワ会長は、

 

「ゼダス君、今日はありがとね。おかげで助かったよ。ちょっと待っててね。お茶淹れるから」

 

先ほどの唸り声の事はもう気にしていないのか、トワ会長は実に機嫌が良さそうだった。鼻歌まじりでお茶を淹れてる姿は微笑ましい限りだ。その光景を見ていた俺はある事に気づかなかった。もう、夕暮れって事に。

俺はトワ会長に淹れてもらった紅茶を口に含み、フーっと息を吐く。中々の美味だった。

 

「会長は何時もあんなに仕事してるんですか?」

 

無意識の内に口から出ていた疑問。答えは明確に分かっているというのに。それでもトワ会長は、

 

「うん、そうだけど」

「そうですか………でも、程々にして下さいよ。何か心配です」

「心配ばっかりだね、ゼダス君は。そんなに私って頼りなく見える?」

 

勿論、そんな事は無い。だが、ここで仕事量を減らしてくれないと近い内に取り替えしの付かない事になりそうな気がする。迷信とか根拠の無い予想じゃない。

理由としては確信めいたものがある。それは、問題の最終漂流地点がこの生徒会。もっと突き詰めれば、トワ会長になる事を危惧しているのだ。

トワ会長の仕事っぷりは認めるべきだろう。相当、俺たちに尽くしてくれてるし、助かっている。だが、その熱心さが仇となる気がするのだ。トワ会長に依頼が回ってくる→トワ会長が依頼を片付ける→依頼主は喜ぶ→トワ会長の評判が良くなる→トワ会長に依頼が回ってくる…………。そんな悪循環が続けば、何時かトワ会長は過労で倒れる。少なくともその最悪の状況だけは絶対に避けなくてはならない。

その事を頭に留めて、俺は思案する。どうすればトワ会長を納得させたまま、仕事量を減らせるか。そして考える事、数瞬。俺は口を開く。

 

「会長は充分頑張ってます。みんな助かっているでしょうし、頼りにもしています。でも、無理だけはしないで下さい。会長がぶっ倒れたら、会長を頼りにしているみんなが悲しみます。だから、ここでーー『無理をしない』と誓って下さい。」

 

考えを搾った言葉。それにトワ会長は、

 

「それもそうだね。確かにそう考えると確かに働き過ぎかも」

「なら………」

「でも、仕事量を減らせるってのは受け入れられないかなぁ〜。」

「何でなんですか⁉︎」

「だって、積み上げちゃった信頼って案外脆いんだよ。それを私一人の所為で壊しちゃうのは、ちょっと気がひけるなぁ〜と思って」

 

この人は良い人過ぎる。こうなったら、実力行使で………と思っていた俺をトワ会長の一言が考えをぶった切った。

 

「でも、ゼダス君が約束してくれるんなら、受け入れても良いよ。」

 

その言葉に俺は立ち上がり声を上げる。

 

「本当ですか⁉︎」

「うん。本当だよ。それで約束事はねー」

 

トワ会長は小さな指を一つずつ折り曲げなら言った。

 

「一つ目、ゼダス君の私への敬語禁止。二つ目、私のことは“会長”じゃなくて、“トワ”って呼ぶ事。そして最後。ゼダス君が私に要求したんだからゼダス君も何があっても無理をしない事。それを受け入れるんなら良いよ」

「はぁっ⁉︎会長。最初らへんの要求って明らかに俺個人への要求じゃないですか⁉︎俺は士官学院全生徒+トリスタ全市民を代表したのにおかしいでしょ⁉︎」

「ほら、ゼダス君。アウトだよー」

「なぁ⁉︎う、分かった分かりました。俺がそれを聞き入れたら、本当に無理をしないって誓ってくれるんだな、“トワ”」

「うんっ‼︎それを続けてくれる限りは無理をしないよ〜」

 

このやり取りの最後に見せたトワ会長の笑みは今まで見た中で一番輝いて見えた気がする。

 

―――*―――*―――

 

 

お茶を頂いた後、俺は生徒会室から出ようと立ち上がった。そして、

 

「今日はありがとうござ………ありがとう。美味かったよ。また作ってくれな、トワ」

「うん。また何時でもおいで。ここにいると思うから」

 

別れの挨拶を済まし、俺は学生会館の外に出る。夕陽は地平線の彼方に消えようとしていた。そして、俺はある事を思い出す。

 

「飯作ってねぇ」

 

その事実に気づいた瞬間、俺は全速力で走り始めた。士官学院をトリスタの街を物凄い速度で駆けていきながら、俺は頭の中で目まぐるしいほどの計算とレシピを立てていた。いかに立派にかつ短時間で作れるか。その計算が解ききらぬままⅦ組専用の学生寮、第三学生寮に着く。扉を貫通する勢いで突破し食堂の扉を力任せに開く。すると、何故か料理の匂いがした。俺は、

 

「(誰だ?誰が飯を作ってるんだ?)」

 

そして厨房の方に目を向けると答えが分かった。Ⅶ組が総出で料理していた。まぁ、基礎の食材自体は買いだめしてあるし、出来ない事は無いが………。俺の帰宅にいち早く気づいたのはリィンだった。

 

「ゼダス、お帰り。今日はお疲れ様だったな」

「悪いな。飯作んの忘れてた………って何でお疲れ様なんだ?」

 

その俺の疑問に答えたのは、マキアスとエマだった。

 

「君、今日は会長の手伝いをしてただろう。」

「荷物を運んでいる光景を目にしたので。」

 

そして、続くはエリオットとアリサ。

 

「相当な量を持ってたっていうから疲れてるかなぁ〜と思ったから」

「全員で料理をしようって事になった訳。普段から、食事面ではお世話になりっぱなしだからね」

「お前ら………」

 

俺は柄にも無く感動していた。流石に涙は流さなかったが、思った事がある。

 

ーこういうのが本当の仲間って言うんだろうな

 

俺は荷物を降ろして厨房に入る。そして、

 

「俺も手伝うからさっさと終わらせるぞ。でラウラ、ちゃんと食材抑えろ。ブレて包丁で切り辛いだろ、それ」

 

その一言で始まった俺の厨房介入。俺は仕事をしながら指示+注意を飛ばしていた。

 

「ガイウスはこの材料炒めといて。ユーシスは盛り付け頼む。おい、フィー⁉︎てめぇだけ、呑気に摘み食いしてんじゃねぇぞ‼︎」

 

そんなこんなで料理は終わった。今日の飯は色々と簡素だった。パンに野菜炒め、コンソメスープと言う献立だったが、個人的には好きな雰囲気の献立だった。

味とか手軽さとかでは無い。でも、今の俺には何でかは理解できなかった。仲間と一緒に作ったから、と気付くのは何時になるのだろう。

そんな感じで、執行者なのに遊撃士の様な働きをした1日が終わりを告げた。




ってな訳で、今回は閑話でした。
前半部分のフリーデル先輩からの依頼であのボンボンと戦うのは予想通りというか想定どうりなんですが、文字数を増してみようかな?とトワ会長とのエピソードを付け足してみたら8,000文字オーバー。個人的快挙です‼︎
初めて、トワ会長は真面目に登場させてみましたが、結局のところ、ゼダス君は過労で倒れる心配しかしてませんでしたね。つーか書いてて思ったけど会長可愛い。
最後のⅦ組の一幕は完璧にオリジナルです。なんか、それっぽいのが浮かんできたから書いてみたけど、校正するのが面倒くさい←作者が面倒くさいとか言ってんじゃねぇよ‼︎
ご意見あらば、ご寄せくださいな。
あと、新しいオリキャラが思いついたんで、ノルド実習までに一人は出せるかな?
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